【400文字作文】下半身は地球を救う。 -25ページ目

【動画で読む400文字作文】カフェのち雨

【400文字作文】カフェのち雨

 雲が太陽の光りをさえぎり、今にも雨を降
らせようとしている。薄汚いゾウキンに水を
たっぷり含ませたような雲だった。
 晴天だけが良い天気ではない。降水確率を
高く予想した予報士は雨を願うだろうし、夏
の太陽はサッカー選手にとっては敵だ、と自
分に言い聞かせながら雲を見ずに歩いた。
 女から、お話があるのでカフェに来てくだ
さい。という金属的なメールを受信した時か
ら私の体の中に、この雲はあったのだ。今そ
の雲は私の体から放たれ空を覆っている。こ
の曇り空を生んだのは自分ではないかと自己
嫌悪に陥いりながらカフェに入った。
 席につくと、憂鬱そうね、と微笑みながら
女が言った。どうして天気で気分が左右され
てしまうんだろうな、と言い訳するように呟
くと、女はゆっくりとカップから唇を離し、
人間も動物なのよ…と寂しそうに言った。
 外を見ると、雨粒が灰色のアスファルトを
黒く、丁寧に塗りつぶしていた。

【400文字作文】終わりなきカーヴ

 そいつはアゴを上げて言った。俺はどんな
曲線からでも女の身体に辿り着けると。
 木綿が作り出す柔らかで毒の無い曲線でも、
金属が作り出す張りつめた曲線からでも、プ
ラスティックが作り出す型にハマったツマラ
ナイ曲線からでも。うっとりとした表情で、
植物や水や砂が創り出す曲線の美しさについ
て語りだし、たまんねぇよ、とワイングラス
のカーブを指先で撫で、残っていたワインを
飲み干した。
 俺は、そいつが「どうしても辿り着けない」
と、うなだれる姿が見たくて、風はどうだ、
と聞いた。風も女の身体じゃないかと、逆に
驚いた表情でそいつは言った。道を尋ねたら、
お前がいるココが目的地だと言われたみたい
で俺は恥ずかしくなった。
 じゃあ世界は女で創られているのかと、呟
いた時、隣の女がくすくす笑った。微笑む目
と口元は三日月のように丸く、笑い声は風鈴
の音のようだった。俺は何かに負けた気がし
たが、何に負けたのか、よくわからなかった。

【400文字作文】The last train,last kiss

 たくさんの人たちが最終の電車をホームで
待っている。酒に酔った人がほとんどで、性
の粒子がホームに漂っていた。
 電車が近づいていることを駅員がバカな子
供を諭すような口調でアナウンスすると、ゾ
ンビのような泥酔者もよたよたと列に並んだ。
電車に乗り込み、泥酔者が本物のゾンビにな
っていないか首を伸ばして見ていると、隣に
立っている女と視線が合った。女は化粧の上
からでもほんのりと頬が紅くなっているのが
わかり、瞳は少し濡れていた。
 電車が揺れ少し身体が近づくと、女の少し
湿った体温を感じ、俺が顔を横に向けると、
女は滑らかに顔を伏せ目を逸らした。俺はキ
スを断られた時のような恥ずかしい気持ちに
なり、つり革をつかんでいる自分の指を眺め
た。電車の窓の向こう側は闇で黒く塗られ、
車窓は鏡のように俺と女を映している。
 そこに映っている自分の姿を俺はじっと見
つめた。俺は間違いなく、酔っていた。

【動画で読む400文字作文】靴下売りの醜女