【400文字作文】ぶらっく珈琲 | 【400文字作文】下半身は地球を救う。

【400文字作文】ぶらっく珈琲

 目の前に黒い服を着た女が座っている。そ
の服はまるで、怠惰な夏風に撫でられている
薄いカーテンのように滑らかに、女の肌に吸
いついている。
 機械的な味と香りの珈琲を出すカフェには
珍しくないタイプの女だが、私と同じくらい
視線に落ち着きが無い。そのことに気が付い
て、つい笑ってしまいそうになるが、私は笑
いを微笑に変える技術を10代の時に身につけ
ていたので、いかにも珈琲を飲んでリラック
スしているんです、という微笑みに変えた。
 だが、その女には見透かされているようで
また、笑いそうになる。
 何が欲しいんですか?貴女は。と、黒い服
の女に聞くと、欲しいものなんて無いの。捨
てたいものはたくさんあるんだけど…。捨て
たいってことも欲望だから欲しいものになる
のかしら。と、女が言っている気がした。 
 気が付くと私は、トイレの鏡の前で笑って
いた。焼けた黒い肌の自分を眺めながら。