金利と割引現在価値 | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

ふつうの小学生の生活とは相当かけはなれたトピックですが、今年の一般入試のなかで出された預金、利息の複利計算、割引現在価値に関する適性検査型の問題です。

 

お金を預けることを預金といいます。銀行に預金をすると利息が付き、預金額と利息の合計金額を総預金額と呼ぶことにします。利息は預金をした日から1年ごとに付くものとし、利息の割合は、銀行が定める年利率(%)とします。
例えば、年利率が10%である銀行に、今日10000円を預金したとき、1年後に付く利息は、10000(円)の10%なので10000 (円)×0.1=1000(円)となり、1年後の総預金額は、10000(円)+1000(円)=11000(円)です。
2年後に付く利息は、11000(円)の10%なので11000(円)×0.1=1100(円)となり、2年後の総預金額は、11000(円)+1100(円)=12100(円)です。
これらのことをふまえて、次の森君と先生の会話文1と会話文2を読み、以下の問に答えなさい。(森村学園2024第2回)

               <会話文1>
森君:新聞を読んでいたら「割引現在価値」という言葉を見つけました。「将来得られる価値を現在受け取れるとしたらどの程度の価値になるか計算したもの」という説明が書いてあったのですが、よく意味がわかりません。先生、わかりやすく教えてください。
先生:これは難しい言葉を見つけましたね。「割引現在価値」の説明をする前に、次の問題1を考えてみてください。

問題1:年利率が5%である銀行に、今日60000円を預金したとき、今日から1年後と2年後の総預金額をそれぞれ求めなさい。

森君:これはできます。1年後の総預金額は(ア)円、2年後の総預金額は(イ)円です。
先生:正解です。ここで、最初に預金した60000円は、毎年利息が付いて総預金額は増えますから、1年後や2年後の60000円とは同じ価値ではないと考えることができます。
森君:ということは、現在の60000円と、1年後の(ア)円や2年後の(イ)円がすべて同じ価値と考えるのですか?
先生:その通りです。つまり、1年後の(ア)円の「割引現在価値」は60000円、 2年後の(イ)円の「割引現在価値」は60000円、ということになります。
森君:なるほど。お金は時間が経つと価値が変わることがあるからこのような言葉があるのですね。

⑴ (ア)、(イ)にあてはまる値はそれぞれいくつですか。

 

右矢印右矢印右矢印

…60000×(1+0.05)=63000円

…63000×(1+0.05)=66150円           

 

               <会話文2>
先生:それでは、次の問題2を考えてみましょう。

問題2:年利率が5%である銀行に今日預金をするとき、今日から5年後の60000円の「割引現在価値」を求めなさい。

森君:急に難しくなりました…。
先生:「割引現在価値」の意味をよく考えてごらん。5年後の総預金額が60000円になるために今日いくら預金すればいいか、ということですよね。
森君:なるほど!先ほどの問題1を逆に考えればいいんですね!5年後の総預金額が60000円になるとき、その1年前にあたる4年後の総預金額は(ウ)円÷(エ)になるから…。
先生:そうです。その考え方をくり返してみてください。
(エ)×(エ)、(エ)×(エ)×(エ)などのおおよその値を、下の【表]に載せました。計算が簡単になるように【表】の値を使って求めてください。
森君:それなら簡単です。5年後の60000円の「割引現在価値」は(オ)円です。先生:はい、正解です。よく理解できましたね!
森君:先生、「割引現在価値」の計算って、何か役に立つんですか?
先生:会社を買収する際の投資額の算定や、不動産投資の判断などに使われるんですが、その話はまたの機会にしましょう。
森君:なんだか難しそうだけど、面白そうですね!

⑵ (ウ)、(エ)、(オ)にあてはまる値はそれぞれいくつですか。

 

右矢印右矢印右矢印

ウ…60000(円)

エ…1+0.05=1.05

オ…4年後の総預金額は(ウ)円÷(エ)」のように「問題1を逆に考えればいい」から

  • 3年後は(ウ)÷(エ)²
  • 2年後は(ウ)÷(エ)³
  • 1年後は(ウ)÷(エ)⁴
  • 現在は(ウ)÷(エ)⁵
という計算式となる。
よって5年後の60000円の「割引現在価値」は
 60000÷1.28=46875(円)
 

⑶ 年利率が5%である銀行に、今日10万円を預金します。次の①〜⑤のうち、正しいものをすべて選び、記号で答えなさい。必要であれば、上の【表】の値を用いて計算してもよい。
①総預金額が初めて15万円を超(こ)えるのは、今日から10年後である。
②今日から2年後と今日から4年後の総預金額の差は、1万円より大きい。
③今日から9年後の総預金額は、今日から2年後の総預金額の1.4倍より大きい。
④今日から3年後と今日から6年後の総預金額の差は、今日から7年後と今日から10年後の総預金額の差より小さい。
⑤今日から5年後の総預金額を今日から1年後の総預金額で割った値は、今日から11年後の総預金額を今日から8年後の総預金額で割った値より小さい。

 

右矢印年利率が5%である銀行に、今日10万円を預金」したとき

  • (総預金額が初めて15万円を超えるのは今日から10年後である)…【表】によると(エ)⁸=1.48、(エ)⁹=1.55なので、総預金額は8年後に14万8千円、9年後に15万5千円となる。つまり「総預金額が初めて15万円を超える」のは9年後なのでバツレッド
  • (今日から2年後と今日から4年後の総預金額の差は1万円より大きい)…10万円を今日から2年間預けるときでも10万×5%×2=1万円より大きい利息がつく。ましてや「今日から2年後」の総預金額(利息がついてすでに10万円より大きい金額になっている)を「今日から4年後」まで同じ2年間預けたときの利息はあきらかに「1万円より大きい」から二重丸
  • (今日から9年後の総預金額は今日から2年後の総預金額の1.4倍より大きい)…いまある預金額(10万円)を1とするとこれを7年間預けたときの総預金額は (エ)⁷=1.41。すると「今日から2年後の総預金額(すでに利息がついて1より大きい数になっている)を「今日から9年後」まで同じ7年間預けたときの総預金額はあきらかに1.41より大きい。つまり「1.4倍より大きい」から二重丸
  • (今日から3年後と今日から6年後の総預金額の差は今日から7年後と今日から10年後の総預金額の差より小さい)…今日から3年後の総預金額は(まだ3年分の利息しかついていないから)今日から7年後の総預金額よりあきらかに小さい。となると「今日から3年後と今日から6年後の総預金額の差」は「今日から7年後と今日から10年後の総預金額の差(同じ3年間でもすでにスタート時点の総預金額が大きいため利息も大きくなるより小さいから二重丸
  • (今日から5年後の総預金額を今日から1年後の総預金額で割った値は今日から11年後の総預金額を今日から8年後の総預金額で割った値より小さい)…「今日から5年後の総預金額を今日から1年後の総預金額で割った値」は(5-1=)4年間預けたあとと比べるから(5%×4=20%なので)1.2より少し大きい値となる。一方「今日から11年後の総預金額を今日から8年後の総預金額で割った値」は(11-8=)3年間預けたあとと比べるから(5%×3=15%より)1.15より少し大きい値にしかなずこちらの方が小さいのでバツレッド
 
5つぜんぶ【表】を使って計算しているとかなり時間をとられてしまうため、【表】を使わなくても正解が出せる②④⑤は論理で解いていきたいところ。
よって正しいものは②③④ 完了