鉄板焼 東洋@三越前
老舗のうなぎ屋、「伊勢定」のとなりに見逃しそうな小さな引き戸の入り口がある。
それがレストラン東洋の鉄板焼き部門「鉄板焼 東洋」。
10人足らずが座れるL字カウンタ ーと2人がけのテーブル2つ。6人がけのテーブル1つの小さなお店。しかし、ここのランチは知る人ぞ知るコストパフォーマンスの高さ。定番の焼肉定食、じゅうじゅう焼き定食はどちらも¥1,050。焼肉定食の肉は、薄いステーキと言っても過言ではない。ヘルシーなもやしもたっぷり。リーズナブルに鉄板焼の雰囲気が楽しめる。
今日は風邪気味で咳も出るので、玉ねぎたっぷりの「じゅうじゅう焼き定食」にする。味噌ベースで味付けは濃い目、ご飯がすすむ。肉も柔らかいし、玉ねぎもたっぷりだし、ちょっと量が多めだが栄養面も問題なく体に良さそうだ。これにサラダと味噌汁、漬物が付く。ランチには十分。
これで今日は早めに休めば風邪が治るかも。
カウンターで焼いてくれるコックさんの腕は確かなものだ。
でも以前から全く改善されていないのが接客面。
おじいさん、おばあさんがホール担当で、客の後先、オーダーの後先がメチャメチャになることがよくある。肉が出てきてもご飯が出てこなかったり。東洋の看板の下、決して許されないと思うのだが、そのサービスの悪さがきっと値段に反映されて多少割安になっているのだと自分に言い聞かせている。急いでいて余裕のない人は対応に耐えられないかも。
でもうまいのは確かだから、私は許す。
何のために生きるのか / 稲盛和夫、五木寛之
稲盛さんと五木さんの対談から生まれた本。読む前から期待でワクワクした。
お二人とも昭和7年生まれで戦中戦後は大変苦労されたそうだ。それにお二人は修行にも出られたほどの仏教徒で、稲盛さんは禅宗、五木さんは真宗の違いこそあれ、人生に対する考え方は非常に似通っている。
日本で年間に自殺で亡くなる方は約3万人。これだけ豊かな社会でなぜこれほどの人数が自ら命を絶たなければならないのか。政府は有事法制がどうのと言うが、ベトナム戦争15年でアメリカの犠牲者は6万4千人、日本は1年で自殺者3万人。これは有事ではないのか。広島型の原爆を7年に1発ずつ投下されているに等しい。稲盛さんは言う。戦後日本の教育が倫理観、道徳観、宗教をないがしろにしてきた結果であると。昨日拝聴した藤尾社長と同じことをおっしゃっている。
大阪の商人には伊藤忠の創立者、伊東忠兵衛を始めとして熱心な仏教徒が大勢いた。商人の挨拶「もうかりまっか」「ぼちぼちでんな」の「ぼちぼちでんな」の前にはかつて「お蔭さんで」という言葉がついていた。これは「天地神仏のおかげ、世間様のおかげで儲かってます」という感謝の念があった。
確かに松下幸之助さんもこのようなことをおっしゃっている。
稲盛さんはこの本でもあの有名なエピソードの話をされている。
昭和41年、日本で初めてIBMへの部品納入契約を京セラが結んだが、何ヶ月努力してもIBMが要求する品質に届かない。社員は毎日泊りがけで作業し、稲盛さんが夜中の2時頃に社員を激励に訪れる。社員は「今日もダメでした」と。稲盛さんは「もう寝ろ」と声をかけるが、社員はやめようとしない。そこで稲盛さんはこういう「神に祈ったか」と。精一杯努力して、これ以上自分の力ではどうにもならないと思ったとき、神に祈るような敬虔な気持になったのかと。この社員は「もう一度やってみます」と言って、その後部品は無事にIBMに納入される。
他力の力を受けるためには、まず自ら帆を張らなければならないのだ。
以前から私はいわゆる「プラス思考」には反感を覚えていたのだが、五木さんのこの言葉には非常に共感する。
「温室栽培の、二十四時間人口の光に照らされているところにいて、そこに一条の光が雲間から射したとしても、それを光明と感じて感激することはありません。真っ暗闇のなかで、爪から血がにじむようにして希望を探している。そこへ窓から一筋の光が射してくるから、それを光明と感じて、人は感動するのです。」
最近、私も少しずつだが、こんな風に考えられるようになってきた。
稲盛さんはこう言っている。
「旅立っていく私のたましいをより美しいものにしたいという気持があるのです。それがどうも神さま、あるいは自然が。われわれに与えてくれた「人生の意味」なのかもしれないなと思います。」
- 五木 寛之, 稲盛 和夫
- 何のために生きるのか
出会いの人間学
月刊到知 という雑誌がある。この夏に存在を知り9月から購読を始めた。
書店では販売しておらず年間契約だが、人間学・道徳を学習するには最適の雑誌だ。毎月何度も読み返す。非常に学ぶところが多く、心の成長を促す現代では稀有な雑誌だと思う。
幸運にも、本日その到知出版社の藤尾社長の講演会を拝聴する機会があった。本来は千葉県倫理法人会の研修会の一環なのだが、月刊到知の読者も出席可能とのこと。喜び勇んで会場となるホテルに向かい、会費を払う。会場に入ると・・・さすがに法人会なので、ある程度想像はしていたが想定以上に若者は皆無。到知の読者もいらっしゃるようだが、みなさんそれなりにお年を召されている。みなさん50代以上女性も男性もスーツ姿。私は唯一30代、ジーンズ、セーター、ダウンジャケット。後ろに座ろうと思ったが、「どうぞ前へ」と勧められ、「では遠慮なく」と前から2列目へ。
講演会は大変感銘を受けた。
泣けたし、あっと言う間の1時間半。まだまだ聞いていたかった。
演題は「出会いの人間学」
以下内容兼備忘録。
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・人生成功する人、しない人の違い。
成功する人 ― 縁、仕事に何らかの価値を見出す。
成功しない人 ― 現在の環境に価値を見出せない。価値を見出せないため、心がいつも外に向いて惑う。
・繁栄する会社、しない会社
繁栄する会社 ― トップと呼吸の合うNo2がいる。
(そういえば今日の朝日beはビル・ゲイツとスティーブ・バルマーだったな)
繁栄しない会社 ― トップのことを尊敬できない社員ばかり。
・米長邦雄 将棋連盟会長。彼は実力No1と言われながら名人位だけは獲得できなかったが、49歳11ヶ月で名人となった努力家。彼が羽生世代の強さの秘訣を調べようと、若手実力派棋士の家庭訪問を徹底的に行った。その結果、強い棋士の家庭には共通の特徴があった。母親が父親のことを尊敬している家庭の棋士は強い。離婚していても関係ない。離婚しているのであれば、「お父さんとは事情があって別れたけど、今でもお父さんのことを尊敬している。」という母親に育てられた子供は将棋が強い。
・服部幸應 服部料理専門学校長が対談で持ってきたデータ。
20カ国での中学校3年生への調査結果。質問は「教師を尊敬しているか」
中国 80.3%が尊敬している。
アメリカ 予想に反して82.2%の生徒が尊敬していると回答。アメリカでは教育改革の成果が出始めている。
EU平均 82.7% が尊敬している。
韓国 84.8%が尊敬している。
日本は・・・21%しか教師を尊敬していなかった。調査国中ダントツの最下位。19番目の国は70%が尊敬していた。尊敬する人を持たせる活動をする必要がある。
・人間学や生き方を学ぶことを「本学」という。一方、知識や理論を学ぶ事を「末学」という。
戦後の日本は末学教育しか行ってこなかった弊害が出てきている。
日本は名経営者ばかりが牽引しているわけではない。無名だが立派な方々はたくさんいらっしゃる。子供達の為に「現代人の伝記」という副読本を作った。
(脳性まひの親子が作った詩の内容朗読、会場すすり泣き、自分も大泣き。購入したので後日レビュー)
人を殴ったりして笑いをとるTV番組は公害。子供への悪影響は計り知れない。
・現代の覚者たち(これも書籍購入、後日レビュー)
・森信三先生の言葉
西田哲学を学ぶが、より庶民に近い「生きる力」を学ぶべく独自の道を歩む。
「人間は一生のうち会うべき人には必ず会える。それは一時も早すぎず、一時も遅すぎず」
「性欲の萎えた者に偉大な仕事は出来ない(会場感嘆!)しかし、みだりに性を放出する者も偉大な仕事は出来ない(会場爆笑)」
教育とはしつけである。1.おはようの挨拶、2.「はい」と言う返事、3.脱いだ靴はそろえる、これを「つ」のつくうちにやりなさい。(ひとつ、ふたつ・・・ここのつ、9歳までに)
・平沢興先生
「人生はニコニコ顔の命がけ」
「教育とは心に火をつけることだ。しかし、自ら燃えてる人でなければ火をつけることが出来ない」
「人の悪口を言う人は成長できない、短所を言うのは成長が止まった人だ」
人のアラなんて誰でも探せる。長所を見つけることが重要。
・一流の条件
学びつづけること、変化しつづけること。
・到知出版を立ち上げしばらくうまく行かなかったとき、森先生の言葉
「逆境というのは、常にその人一人だけのものだ」
「逆境はせいぜい3年だ。じたばたせず、すたすたと信念の元に歩け」
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ウォーム・BIZ
さて、すでに下火かウォームBIZ・・・
考えとしては非常によろしいようで、それほど評判は芳しくないのでは?かくいう私も、ウォームBIZにはかなり否定的。
というのも・・・冬でもオフィスは暑いのだ!ベストはまだしも、カーディガンなんか羽織ろうものなら汗が噴き出すること間違いなし。それどころか上着脱いだ上に、日中はクーラーをつけていたりすることをファッション業界の方は知っているのだろうか。営業担当など、帰社すると汗だくだ。それもこれも、電子機器が発する熱がかなりのものだからなのだ。さすがに、土日はオフィスに人がいないので月曜日の午前中は非常に寒い。しかし、午後以降は到る所でクーラーがうなりをあげている。私のいるオフィスでは一人あたり2台程度のPCを使っており、その他プリンタ、コピー機。暑がりのオヤジたちは、「冬こそクール BIZ導入を 」なんて言ってたりする。
偉いセンセイ達は議場が寒そうだからサラリーマンの現状など想像もつかないだろうが、ファッション業界はそれくらいわかってるよね?来年の春になって、「ウォームBIZが、予想以下にとどまったため売上が伸び悩んで」などと言わないように。
レストラン桂@三越前
北海道の牡蠣の名産地の近くにいながら、かつ、知り合いの漁師さんが取れたての牡蠣を魚箱一杯に持ってきてくれるような恵まれた環境に育ちながら、どうしてもあの味だけは苦手だった。ひとつだけ食べられた調理法は、焼き牡蠣。殻のままガスレンジでガンガン焼く→親父がマイナスドライバーで殻をこじ開ける→レモン汁をぶっ掛ける→そのまま食う。天然の塩味が程よく、レモンの酸味が臭みを消してめちゃウマだった。
そんな私もこのごろは牡蠣が大好きになり、「牡蠣って本当に海のミルクだよな」と実感している。ただし、新鮮じゃないのは口に入れた瞬間にわかってしまい、飲み込むのが大変だ。
三越前にある昔ながらの洋食屋さんの雰囲気、「レストラン桂」。
ここのかきフライは宮城・松島産の新鮮で大きな牡蠣を使っている。
写真でもうまく伝わらないが、ひとつひとつのフライがかなり大きい。それを口に運ぶと、まずふわっとした柔らかな感覚、その後で濃厚な牡蠣のエキスが「じゅわー」とにじみ出てくる。まさに海のミルクを実感できる。自家製と思われるタルタルソースも牡蠣を引き立てる上品な味。とんかつ屋で出てくる「かきフライ」とは違うメニューみたいだ。
ここの店のクオリティを感じるのは、付け合せのキャベツの千切りの「パリッ」としていること。こんなにパリッとしているキャベツの千切りは他の店では経験できない。
かきフライ ¥1,250。
FAKE
ファミレスで「安いのに意外とうまいな」などと感心している場合ではない。
Yahoo新語探検 より
レストランなどで出される、天然乳化剤などを加えて人工的につくった霜降り肉。150グラムで1000円くらいのサーロインステーキは、ほとんどなんらかの形で加工された肉であるという。この分野で最大手とされるホクビー(北海道石狩市)では、天然乳化剤の特許を取得。乳化させた和牛の牛脂を注入した赤身肉(搾乳を終えたオーストラリア産乳牛)に「メルティーク」の名をつけ、レストランや外食産業向けに販売している。生産量は年間約2000万食で、ファミリーレストランやシティーホテルからの注文が相次いでいるという。赤身肉がベルトコンベヤーで「打ち込み機」をくぐると、およそ100本の針が肉に食い込んで牛脂を注入。この肉の表面をぬぐって金属型にはめて形を整え、筋の除去による裂け目を手でならして、外食産業が求める均質規格の霜降り肉に仕上げる。オーストラリア産の乳牛の赤身肉はかたく、これまではひき肉にしてハンバーグにする以外になかったが、「メルティーク」によってジューシーなステーキに生まれ変わった。
このような「なんちゃって肉」を開発した会社の記事 。
ステーキ換算ですでに年間2千万食分。さらに需要は増えつづけている。記事に出てくる乳化剤は風味を「改良した」と言ってるのだから、天然ではないのだろう。
ファミレスで肉を食べた事がある方は、確実にこの「なんちゃって肉」を口にしている。表示義務がないのをいいことに消費者は騙されている。肉ではないものを口に入れている。
恐ろしいことだ。
人生が全部うまくいく話
意識して口にするようになってどれくらいだろう。4週間くらいは経っただろうか。なんと、早速幸せがやって来た!私が尊敬する某ブロガーさんが、私の娘にクリスマスプレゼントをくれる、とメールを頂いた。昨年までは赤の他人。ブログを通じて知り合うことが出来ただけではなく、素敵なプレゼントまで。間違いなくツイている。ありがとうございます。感謝いたします。信じられない幸運だと思う。
いい調子を継続させるべく、今日も斎藤一人さんの本を読む。
「人生が全部うまくいく話」。
これは講演会の書籍化ではなく、一人さんの書き下ろしのためニュアンスは若干キツ目だが、メッセージはストレート、シンプル。気持いい。一人さんの本を読むと、実は当たり前のことしか書いていない。しかし、その「当たり前」のことが出来ていない人間がほとんどだからためになるのだ。
最初から一人さんにガツンとやられる。
―上の人(上司)のご機嫌もとれないような奴が客の機嫌を取れるはずがない。私(一人さん)の本も感想を書いてくるような奴はどうしようもない。「このような良い本を読ませていただいて、ありがとうございます」と上の人が喜ぶようなことを言わなければならない。―
すいません、感想を言うつもりはありません。ありがとうございます。
お金が貯まる人と貯まらない人の違い。
―欲しいものを買うか買わないか―
スプーンを曲げたり、座禅を組んで宙に浮いたりするのを見たとき。
―だからなんなんだ。って思わなきゃ。スプーン曲げてなんか意味あるのかって。伏せてある紙の裏の数字当てて楽しいか?裏返せばもっと早くわかる。効率的だ―
一人さんはすごい
- 斎藤 一人
- 斎藤一人 人生が全部うまくいく話
まるき@上野
いつもの「まるき」へ。
「まるき」は上野駅前。アメ横を抜けたガード下にひっそりあるまさにオヤジのオアシス。おそらくご夫婦と思われるお二人で切り盛りされている小さな飲み屋。客層の平均年齢はおよそ50代。カウンターは7人くらい座れる。テーブルは4つ。カウンターの客はほとんどが一人客で、だいたい日本酒2合飲むとサッと勘定を済ませて帰る「粋」な飲み屋。粋の仲間入りを目指しているのだが、まだまだ年季が足りないようだ。
今日は手取川の大吟醸。さかなはうるめ。それに味噌。
久しぶりに帰りがけに飲む酒。五臓六腑に沁み渡るぜぃ。うるめをかじりつつ、ちびちび飲るのは至福の時だ。これで帰れば「粋」なのだが、やはり物足りない。もう一杯。
田酒とにこごり。にこごりはふかひれだ。
コラーゲンたっぷり。米のエキスもたっぷり。心もゆったり。気分もほっこり。こんなに幸せになって¥2,050也。年齢層がかなり高いので、場違いな感じもするが、慣れれば気にならない。ただ流行りの立ち飲み屋のように、女性客は皆無。それが独特の安定感のある雰囲気を醸し出しているのかもしれない。非常に貴重な飲み屋である。
変な人が書いた、驚くほどツイてる話
一人さんのことは結構知っている気になっていたが、よく考えてみたら著作を読むのはこれが初めてだ。大阪での「最初で最後」の講演会を起こしたものなので、語りかける文体が非常に読みやすくなっている。
シンプル、前向き、素直、楽しい、ポジティブな言葉をかき集めると一人さんに少しは近づけるだろう。とにかく、ネガティブな言葉を生活、思想から排除しよう。
・困ることなど人生に起こらない。子供に「勉強しないとあとで困るよ」というのは、実は親が困っているのだ。
・学校に試験で落ちても、その学校は本人に必要のない学校だったのだ。
・仕事で行き詰まったら、楽しいほうを選択すべし、ただし、楽なほうではない。
・反対意見を言う前に「そうだね、わかるよ」といったん相手を受け入れる。
核心のお金については、
「お金は、お金の好きな人のところに寄って来る。みんなお金が好きだって?好きなら使わずに貯金してるはず・・・」
なるほど。使ってしまうのは好きではない証拠だ。
一円が落ちていたら助けてあげよう、お父さん(十円)、おじいちゃん(百円)、ひいおじいちゃん(千円)と先祖代々の方が次々お礼に挨拶にやってくるだろう。子供を助けてくれてありがとう、と。
一人さんもそうだった。
お金持ちの方々は「必ず」感謝の言葉を大切に信条としている。
「ありがとう」、「感謝します」
それとポジティブな心のあり方。「ツイてる」
個人的にはネガティブな言葉を発しないように気をつけていたが、一歩すすめて最近はポジティブな言葉を意識的に使うようにしている。毎日何かに感謝していると、心穏やかな時間が多くなったと思う。感謝の言葉を口にするだけで、明らかに私は変わり始めている。
1時間足らず、¥514でツイてる人生に近づけるなんて素晴らしい。
- 斎藤 一人
- 斎藤一人 変な人が書いた驚くほどツイてる話
りんごは赤じゃない-正しいプライドの育て方-
子供2人を連れて離婚した太田は、実家へ戻り早速職探しを始める。美術大学を卒業しているが、年齢はすでに36歳。中学の教員採用試験の制限年齢は超えていた。残されているのは小学教諭の道。それも年齢制限まで残り1年。親の協力を得ながら太田は無事試験に突破し、6年間の小学教諭の後、念願の中学での美術教諭の職を得る。ここから伝説的な太田の美術教育が始まる。
太田の美術の教室は、チリ一つない。窓際はすべて鉢植えの花で彩られ、壁一面には額入りの生徒の作品。まるでアトリエのようだ。ほとんど太田の自費でまかなわれている。この空間に足を踏み入れる生徒は、他の教室との格差に唖然とし、自分が尊重されていると実感する。
1年生の最初の授業では太田は声を荒げて注意する。「鉄は熱いうちに打て」。その後からは授業を妨害する生徒はいなくなる。生徒も真剣に授業に打ち込むため、皆他人を妨害する気も起こらない。太田も授業を、生徒を大切にする気持から、服装、身だしなみには人一倍注意を払う。
草は何色か、リンゴは?、バナナは?発泡スチロールで実際に果物や野菜のレプリカを作る。
りんごは赤じゃない!
固定観念から開放されて行くにつれ、生徒は心の目で物を観察し始める。徹底的に観察し、色を調合し、人が驚くほどそっくりのレプリカが完成する。それでも本物の色は出せない。
生徒は言う
「よく見るとやっぱり本物とは少し色が違います。でも、それでいいと思いました。どうやったって本物の色は出せるはずがないんです」
太田の授業の真骨頂は調査研究である。制限はまったくない。生徒一人一人が思い思いのやり方、調べ方、書き方で決まったテーマを掘り下げて発表する。誰も自分を非難しない、どころかお互いを尊重し、発表の際にはそれぞれ賞賛を与えられる。生徒が自信を持たないはずがない。
中には調査研究で職場訪問等をしているうちに、自分の内面と向き会って早くも将来の職業を決定する子も出てくる。
教育のテクニックとして目新しい内容があるわけではない。しかし、驚くべき実績を残した太田先生。何が違うのか。そう、信念を持って「やる」か「やらない」かの小さな違いなのだろう。毎日の小さな違いが積み重なると大きな差になる。「やる」ことは簡単そうに見えて難しい。それどころかもっと簡単な批判する側に回ってしまっていないか?自問自答する。
先生の元気の素ってなんですか?
「子どもって、始めは全然光っていなかったのに、一生懸命磨き続けると、ピカッ!ってダイヤみたいにものすごく光りはじめるの。磨くのはとっても大変なんだけど、それがあるから、やめられないのよね!」
- 山本 美芽
- りんごは赤じゃない―正しいプライドの育て方