りんごは赤じゃない-正しいプライドの育て方- | [A] Across The Universe

りんごは赤じゃない-正しいプライドの育て方-

ノンフィクションライター山本美芽が綴る、カリスマ美術教師太田恵美子の驚くべき教育。

子供2人を連れて離婚した太田は、実家へ戻り早速職探しを始める。美術大学を卒業しているが、年齢はすでに36歳。中学の教員採用試験の制限年齢は超えていた。残されているのは小学教諭の道。それも年齢制限まで残り1年。親の協力を得ながら太田は無事試験に突破し、6年間の小学教諭の後、念願の中学での美術教諭の職を得る。ここから伝説的な太田の美術教育が始まる。

太田の美術の教室は、チリ一つない。窓際はすべて鉢植えの花で彩られ、壁一面には額入りの生徒の作品。まるでアトリエのようだ。ほとんど太田の自費でまかなわれている。この空間に足を踏み入れる生徒は、他の教室との格差に唖然とし、自分が尊重されていると実感する。
1年生の最初の授業では太田は声を荒げて注意する。「鉄は熱いうちに打て」。その後からは授業を妨害する生徒はいなくなる。生徒も真剣に授業に打ち込むため、皆他人を妨害する気も起こらない。太田も授業を、生徒を大切にする気持から、服装、身だしなみには人一倍注意を払う。

草は何色か、リンゴは?、バナナは?発泡スチロールで実際に果物や野菜のレプリカを作る。
りんごは赤じゃない!
固定観念から開放されて行くにつれ、生徒は心の目で物を観察し始める。徹底的に観察し、色を調合し、人が驚くほどそっくりのレプリカが完成する。それでも本物の色は出せない。
生徒は言う
「よく見るとやっぱり本物とは少し色が違います。でも、それでいいと思いました。どうやったって本物の色は出せるはずがないんです」

太田の授業の真骨頂は調査研究である。制限はまったくない。生徒一人一人が思い思いのやり方、調べ方、書き方で決まったテーマを掘り下げて発表する。誰も自分を非難しない、どころかお互いを尊重し、発表の際にはそれぞれ賞賛を与えられる。生徒が自信を持たないはずがない。
中には調査研究で職場訪問等をしているうちに、自分の内面と向き会って早くも将来の職業を決定する子も出てくる。


教育のテクニックとして目新しい内容があるわけではない。しかし、驚くべき実績を残した太田先生。何が違うのか。そう、信念を持って「やる」か「やらない」かの小さな違いなのだろう。毎日の小さな違いが積み重なると大きな差になる。「やる」ことは簡単そうに見えて難しい。それどころかもっと簡単な批判する側に回ってしまっていないか?自問自答する。


先生の元気の素ってなんですか?

「子どもって、始めは全然光っていなかったのに、一生懸命磨き続けると、ピカッ!ってダイヤみたいにものすごく光りはじめるの。磨くのはとっても大変なんだけど、それがあるから、やめられないのよね!」


山本 美芽
りんごは赤じゃない―正しいプライドの育て方