クラバート・ガレージ -51ページ目

西尾×浅井 造形怪物怪獣対談-4

猫「造形怪物怪獣大全集、構想にあった浅井篇、原篇を入れて復刊はどうでしょうか。」

西「浅井さんは、業界で初めてインターネットを導入して、価格設定だとかも、革新的なのはいっぱいありますよね。だからやっぱり記録しておきたいっていうのは、ありますね。」

猫「じゃあ浅井造型10周年記念ってことでどうでしょう。」

浅「10周年、とっくに済んだやんけ(笑)。」



西「浅井さんは原型師の中ではかなり異質ですよね。凄く陽気な感じで。」

猫「完全に、ラテン系ですもんね。一緒にいて、面白いんですよ。丹羽さんでも僕でもそうですけど、遊びにきてそのまま周りに定着しちゃった。」

浅「こういうボンクラばっかり寄ってくるんですよ(笑)」

猫「カメラマンの武尾さんが、ここはマタンゴの森って言ってましたね(笑)」


猫「やっぱり、近すぎると書きにくいというのはありますか」

西「あぁ、それはありますよ。あんまり近いと書けない。批判以上に、褒めるのも難しくなりますよね。浅井さんのギドラの初版にも総論+浅井評みたいなのを書いたんですけどちょっとまずいかもしれないと、すぐに自粛した筈です。」

猫「あぁ、なるほど。」

浅「俺は、全然構わへんのやけどなぁ。自分とこのキットにそういう評をつけるのはどうかっていう周囲の声もあったし、一応。」


西「私は仕事が詰まっていて、多分浅井篇は無理じゃないかとも思います。猫族さん浅井篇どうですか。」

猫「僕は書けるかもしれませんけど、造形怪物怪獣~に参加するのが、ちょっと恐れ多いですね。やはり西尾さんの切り口あってのものでしょうし。そうなると、これまでの分だけの再販でもしたいですけど。」

西「本当に、データとして残しておけばよかったですね。せめて総論みたいなのを書いたフロッピーが見つかればいいんですけど、それも行方不明で。」

猫「なんでしたら今までの分は、僕が手入力しますよ。」

西「それ、大変ですよ(笑)」

浅「本当に、今日は懐かしかったです。10年て本当にあっという間ですね。こうやってお会いすると、この先10年も頑張らんとって思いますよ。」

猫「骸骨剣士で遊んでる場合じゃないですよね。」

浅「いや、あれ楽しいんやって(笑)」





2011.4.23浅井造型旧本社にて収録。



西尾×浅井 造形怪物怪獣対談-3

-その後、ノートPCにストックしていたガレージキット画像を見ながらいろいろと語り合った。


西「あ、原さんのモスゴジ(45cm)ですね。これ、エラク良いモスゴジですよ。当時の写真が良くないんだけど、ホント凄くいいモスゴジで。原さんの代表作、これとガメラでしょう。」

猫「20cmくらいのガメラですか。」

西「ええ。」

浅「原さんは、喋ってると、ほんと凄いですよ。A作戦わざわざ買いに来てくれたんですけど、チキサイゴジの1/1の頭、お前が造ってくれって、写真を山ほど持ってきましたよ。『無理です、すみません』って断ったけど。東宝怪獣で一番恰好ええのはバランとゴロザウルスやって断言しておられました。」

猫「原さん、モスゴジとチキサイはたくさん造っておられますよね。安丸怪獣以上に、モスゴジの人っていうイメージもあります。」

西「当時、原さんはしょっちゅう井上さんところに行ってましたよ。井上さんも原さんは凄く認めていて。それは、タッチがどうこうより、怪獣好きとしてのレベルをですね(笑)。速水さんも、ボークスの人たちも、よく井上さんとこに集まってたみたいです。」

猫「西尾さんは火の鳥の我王に例えておられましたけど、井上さんのガレージは本当に祠ですよね。」




西「ファルシオンは良かったですよね」

浅「ソフビでも(レジン)キャストとほとんど変わらなかったですよ。結局、ソフビは素材云々以上に、型が重要なんやろなぁ。」





西「ギドラは製品化難しいんですよね。ギドラを出すっていうのは本当に大変で。浅井さん、(製品化が)難しかったでしょう。」

浅「途中、もう無理やと何度も思いましたよ。当時、西尾さんの熱意に押されましたけど。」

猫「あ、そうだったんですか」

浅「初期はホントうちはお世話になってる。参考にした写真も西尾さんが提供してくれたやつで。ギドラは下半身が難しいですよ。本当に難しい。」




ハイカラスター金曜クラブ

西「井上さんの水爆大怪獣、やっぱり凄いですね。当時、かなり大石さんを意識しておられて。内田模型から『今、井上さん凄いの造ってますよ』って連絡あって。で、この写真送られてきて本当に驚きましたよ」

浅「そら当時、この写真送られてきたら、ビックリするわなぁ」

猫「初ゴジのイメージって実物以上に、この水爆大怪獣で根付いちゃってますよ。」




西「あ、これはからかさの原型ですね。これ、ホント滅茶苦茶いいですよね。浅井さんは、こういう日本風のタッチぴったりですよ。大魔神武神像も凄く良くって。この路線、ドンドン続けてほしいですね。」

浅「からかさは、めっちゃ楽しかったです(笑)。怪獣でもそうやけど、やっぱり好きなもん造っていくのが一番ですよ。」


ハイカラスター金曜クラブ










西尾×浅井 造形怪物怪獣対談-2

西「この10年、客層っていうのは変化あるんですか」

浅「うちは、そんなにないですね。うちのキット購入してくれてる中ではこいつ(猫族)が一番若かったと思います。次が丹羽やったかな。」

西「購買層も高年齢化ですよね。30代までは買うけど、40代は厳しい人もいると思うし…。世代的に帰りマンとかのラインナップも増えてきましたね。」



猫「(手元にあった『宇宙船』誌を見て)怪獣王子とかどうですか?」

西「高山良策ですね。すごく好きですよ。獣竜とか、角竜とか…。昆虫指令とか鳥人指令だとかもエラくいいですよね。キャプテンウルトラなんかも本当に良くって。」

浅「キャプテンウルトラ、良いですよね。ガレージキットっていうのは、当時の思いを立体化してこそでしょう、俺はね。まぁそんな俺も後発組なんやけども。平成以降の映画はわからんですね。」

西「私も、思い入れがないですね。」



猫「この本の執筆にも深く関わっておられる、ウエノ(ヌメロ)さんはどのような方ですか?」

西「本当に、凄く的確な批評をする方で、凄い人だと思いますよ。全般的に、辛口です。浅井さんのも最初は、ボロカスでした(笑)。僕も当時自分で造ったのを持って行って、本当に何度も駄目だしされて。」





-執筆のきっかけ



西「90年代の終わりに、ガレージもそろそろ纏めの時期かと思って、これ書いたんです。ただ、その直後に、商業メーカー主導で10年近く一方通行だったこの業界が、ちょっと変化したんですよ。インターネットの普及によって。初期の、それこそ『宇宙船』誌のように、『自分で造ったものを見せる』人達がまた現れた。それで(そこからしばらくの間は)双方向に戻ったんです。ちょうど、そのタイミングで浅井さんが出てきて、ネットを導入したメーカーの先駆けになりました。」

猫「なるほど。奇しくもネットの構造が、黎明期の状況を再現したんですね。僕は、そこまでは全然気付いていませんでした。」


浅「なるほどなぁ。パオパオさんとこの掲示板で皆、盛りあがってたもんな。フルスクラッチで投稿とかもあったし。」

猫「ネット上でのガレージの初動に、本当に大きな役割を果たして下さった掲示板ですよね。井上さんの訪問記とか衝撃でした。その後、各自ブログ等に分散していくわけですけど、あそこがないと、今の状況は絶対にないわけですし。」

西「本当に、そうですよね。」

浅「東宝だけでも、ああいったデータベースみたいなものが在るのも凄いですよ。過去の作品のポーズとか、ちょっと見たいと思ったときにぱっとでてくるでしょう。それは本当にありがたい。」

西「ええ、だからやっぱり業界史的にも浅井造型を書くにも、そのあたりは要りますよね。」

西尾×浅井 造形怪物怪獣対談-1

2011年、4月23日、「造形怪物怪獣大全集」著者である西尾氏が浅井造型を訪問されました。

その時の記録です。

以下、

西尾氏→西

浅井氏→浅

猫族→猫

と表記します。


ハイカラスター金曜クラブ

浅「今日は、久しぶりにお会いできてうれしいですわ。」

西「メールはしてますが、直接にお会いするのは、10年ぶりですよね。本当に、お久しぶりです。」

猫「はじめまして。お会いできて、光栄です。」


猫「ガレージの総括みたいなのは、ビリケン篇に書かれたんでしょうか。」

西「ええ」

浅「本になってるの、あるんですね。俺のやつと全然ちゃうわ。中身も全然違うやん」


西「井上さんのは全然違います。別物ですよね。今思えば、フロッピーか何かでの、配布にしておけばよかったですよ。」


ハイカラスター金曜クラブ

猫「パラダイスの40cmモスゴジの写真、パオパオさんとこの3枚だけだと思っていました。こんなにあるんですね。僕は、モスゴジの立体物ではこれが一番好きです。」


西「いいですよねぇ、これ。今回の浅井さんのモスゴジ、イメージ的にはこれに近くて、凄くいいんですよ。浅井さんこれはご存知でしたか。」


浅「いや、知らなかったです。井上さん、40cmでも造ってはったんですね。」

猫「変なこと言うようですけど、このモスゴジはこの状態でいいと思うんです。ラフのこの状態で、もう完璧ですよ。この状態でレジンで欲しいです。」


西「もうジオラマも作って、そこに置いてるし。だから一度ほとんどできてたんだと思うんですけど、色塗った上から、また盛ったり削ったりしてますよね。」



浅「(ビリケンの号を見ながら)これで23000円でしょう。やっぱり、すごいですよ。バルタンなんか完璧ですよ。」

西「この出来が2500円で買えるんですからね。本当に凄いとしか。人物造型も完璧で。最近は、海外製の完成品の映画俳優の玩具がありますけど、あれも凄いですけど、立体物としてはちょっと面白くないんです。そのへん、ハマさんは完璧ですよね。」

猫「まぁ、完成品のは、アクションフィギュアですから。方向性が違いますよね。」

西「ええ。彫刻じゃないですからね。」



西「これ出したあと、更に資料が送られてきて、各号、3版っていう構想もあったんですけどね。(井上さんが)キンゴジ熱海城を造ってる際のスナップとかもいただいて。コングを粘土で捏ねてるところとか、城を紙で作っているところとか。」



猫「これ、井上さんは知ってはるんですか?」

西「持って行って、見てもらったんですけど、自分の過去なんて興味無いみたいですね(笑)」

猫「もう、これだけしか実物がないんですか。」

西「ええ…カラーコピーは色褪せるから、デジタルでスキャンした方がいいよと言われたんですけどねぇ。製本しちゃったから(スキャン)出来ないんですよ。」

浅「マスター原稿はないんですか」

西「マスターは借りた写真を張り付けたやつでして、その写真を返却してるので、もうないんです。」

浅「ああ、そういうことか。」

猫「印刷にしたら、一冊作るのにいくらかかるんでしょう?コンビニのカラーコピーだと原価だけで1万越えますよね、これ。」

浅「全然わからんなぁ」

猫「もったいないから、今、全部目を通させてください。」

西「それはお貸ししますよ。」

猫「指紋とかつけるのが怖いですねぇ」

浅「いや、指紋くらいはつくやろ(笑)」

つづく




時代の空気感


>これからも過度なプレッシャーは感じず「好き」な感情で造って行って下さい。


丁度似たことを考えていたので、語らせていただきますが、結局「好き」という感情が一番の原動力かもしれません。となると、幼少時にどれだけ「好き」なものに触れたか、「好き」なものができたか、そういう点に非常に影響される。そう思いますね。


「造形怪物~」著者である西尾様が「怪獣ガレージは作者の生年が非常に重要だ」と仰っていました。

これを解釈するのなら、

多感な時期にどれだけ怪獣に触れているか、という点

その時代の空気を体感しているか、という点

この2点ではないでしょうか。この2点が、多分なんらかの形で反映される。



前者は、東宝が周囲にあった世代、ウルトラが周囲にあった世代、2期ウルトラが周囲にあった世代、と考えることもでき、ちょうどガレージのラインナップの変化もこれに同調しているように思います。


そしてもう一つ、「空気」。


これが僕らの世代だと非常に難しい。


この空気というのは、それこそ周囲の空の色、地域社会における文化性、砂利を踏んだ感触、雑誌やテレビに使われる“色合い”こういったものを体感できているか、否かということになります。


それらすべてが自分の周囲を取り巻く“空気”だと思います。





僕らの世代で、凄く極端に例えるならば


スーパーX

スーパーX2


この間には5年の開きがあります。

同じ曲線で構成された機械ですが、そのニュアンスの変化っていうのは、その時代を直に体験していないとわからない変化だと思います。


スーパーX2の頃合いというのは、世の家電、玩具、雑誌の書体、すべてにおいて曲線が先端的でした。

スーパーX2にはその曲線が入っているように感じます。


これはもう、絶対にスーパーXとは根本的に違う曲線なんですよ。

デザイナー云々じゃなく。いわば時代が生んだ曲線といってもいい。


こういう微妙なニュアンスの変化ってその時代の空気を肌で触れているかに左右されると思います。

そして、そうなると昭和期特撮の“時代”については、近隣の稲の匂いや、微かに残る時代の残り香から追ってゆくしかない、そう思います。

話をもとに戻します。


モスゴジの製作日記みたいなもんの最後尾に、凄く個人的な話を付けたのは、僕なりに当時「モスゴジ」観て感じた空気感を示そうと思ったからなんです。

友人達とのドライブに感謝してるのは、あいつらと行った山中のドライブでの雰囲気もまた、その空気感に似たものを得られたからでして。だからモスゴジの完成は、やっぱり友人達あってのものです




こういう“時代の空気感”、これは僕は同じガレージファンの先輩方には絶対に叶わないものだと思います
原型師の皆様や、先輩ガレージファンの皆様は円谷監督や本多監督、湯浅監督が生んでくださった怪獣文化に囲まれて育ってこられたと思いますから。


しかし、少なくとも、稲の匂いの中で育ち、モスゴジに似た風景を近隣に見出し、映画館での昭和ゴジラ体験はなかったものの、リアルホビーやポピーの特大、バンダイのthe特撮~のようなショックはありました。

井上さんや速水さんが生んでくださったゴジラに囲まれ、触れさせていただきながら育ったと言えるかもしれません。


そして、その思い出があるからこそ、あそこまで「好き」なのかもしれません。


色々と考えさせられる一文でした。ありがとうございました。


猫族



※故に今後キット化するなら、インスト、パッケージは共同作業でやります。