慶應ビジネススクールでの「ファミリービジネス次世代養成講座」の1年目が終了ー来年はさらに拡充
日本のファミリービジネスにおいて私が問題だと感じているのは、「2代目、3代目の弱さ」だ。もっとも、これは海外でも同じこと。どうしても「初代」(潰さない創業者)は強いので、2代目、3代目が弱く感じてしまう。統計でも企業が3代まで続くのは10%程度。ただ、4代目以降(100年企業)になるとなかなか潰れないというデータもある。
そこで、今年から慶應ビジネススクールで新たに三田新校舎で「ファミリービジネス次世代養成講座」を始めた。受講生はファミリービジネスの2代目、3代目に絞って募集し、ファミリービジネスに関心の深いメガバンクや会計事務所も参加し20名程度が集まり、「実学」となるよう講師も選んだ。
主なテーマはファミリービジネスの後継者が本当に困っていることで、家族の問題や事業承継の悩みに応えられる内容とした。実際のファミリービジネスの経営者で、2代目、3代目の方(あるいは老舗の後継者)を講師として、本音の議論をした。中には婿養子や最近注目されている「跡取り娘」の方からも伺い、質疑も長時間続いた。
ファミリービジネスの後継者に絞った講座は、海外のビジネススクールではよくあるものの、日本ではなかったのではないか。しっかりした後継者を次々に生み出すことが、日本におけるファミリービジネスの「正しい理解」につながる。
こういう講座は、ファミリービジネスの後継者が多い慶應で行うべきことなので(参加者や講師は慶應卒以外の人が多いが)、三田に新校舎ができたこのタイミングで始めた。あと数年は続けて、この講座から日本のファミリービジネスを変えていく人材を生み出したい。
日本における「オフレコ」とは?ー国際的には考えられないこと
またまた、官邸関係での「オフレコ」懇談会から核保有関係の大変な話が暴露された。これを言った「官邸筋」はオフレコだから個人的な意見を言ったというのだろうが、日本では「オフレコがオフレコでない」ということは度々起こっている。最近では、岸田首相の秘書官がオフレコ懇でLGBT関係についてのことを言って解任されたことが記憶に新しい。
しかし、「オフレコはオフレコ」なのでそれを暴露した方が非難されないのもおかしい。もちろん、個人的見解を言った方も、日本のこういう特殊な状況を知っていながらの発言なので論外ではあるが、国際的には暴露側が非難されるだろう。そうしないと、記者会見のオフレコ懇で本音の話もできなくなるし、逆に記者の方も困るのではないか。
例えば、私が頻繁に参加している「ファミリーオフィスの国際会議」はオフレコ、チャッタムハウスルールの下で開かれる。その会議の内容を記事にでもしようものならば即座に出入り禁止となる。私の知る限り、出入り禁止になった人はいないので、欧米のファミリ―オフィス関係者は皆、ルールを守っている。これが国際社会では常識でもある。
よく、「日本は商人国家だからルール破りは許される、建て前と本音の国だ」とか言われる。例えば、就職協定や霞が関訪問の話は「表と裏」があり、解禁日の前に特定の人には会っていたり、長年こういうことが非難もされない。しかし、これは国際社会では通用しないだろう。早く日本も昭和的な商人国家を抜け出し、少なくとも重要な案件は「ルール通り」に行わないと国際場裏からはじかれるだろう。
急激に「ファミリーオフィス」の問合せが増えるーいよいよ日本でも広まるか?!
最近は日本でも資産の二極化が進んできたせいか、いろいろなところで「ファミリーオフィス」という文字を見るようになった。旧財閥系を初め、一代で資産を築いた方も〇〇ファミリ―オフィスというような事務所を持つことが増えた。私がこのことを始めた2003年にはこんなことをする日本人はおらず、よく「相山は経団連を辞めてから頭がおかしくなった」と言われたものだ。
広まったのはいいことだが、世の中いいことずくめにはならない。広がる過程で「変な」自称ファミリーオフィスも出てきているのが問題になっている。4年前に世間を騒がせたウォール街の「アルケゴス」のような、単に超富裕層を狙ったファンドを売るだけの会社が増えてきたことだ。こういうファンドの会社が、今のところ規制のない「ファミリーオフィス」と名乗ってきて、数では圧倒的に多くなっている現状がある。
そもそもファミリ―オフィスとは、超富裕家族(ファミリー)のニーズを全てワンストップで引き受ける事務所であり、ロックフェラーやロスチャイルド家などの大富豪が自分でつくる「シングルファミリーオフィス」と、私の永田町ファミリーオフィスのように外部の複数の超富裕家族のニーズを聞いて、それぞれに最適解を提供する「マルチ(クライアント)ファミリーオフィス」のことを指す。
ところが、多分10年ほど前からファンドを売る会社への規制が各国厳しくなり、規制を逃れるために「ファミリーオフィス」と名乗って超富裕層をターゲットにファンドを売る「自称ファミリーオフィス」が急激に数を増やしている。世界全体だと既に10万件を超えていると思われる。「ファミリーオフィス」は各国とも名乗ることに規制がないのですぐに誰でも名乗ることができるのだ。
最近ではこういうファミリ―オフィスを「マルチコマーシャルファミリ―オフィス」と言ったりして、数では圧倒的に多いのでこれが主流になりつつある。「アルケゴス」のような会社だ。今後とも問題を起こすのはこの類型だと思われる。
この事態にどう対応したらいいのか。アルケゴス問題が起きた時に、ヨーロッパのファミリーオフィス協会の会長をしていた経験の長いピエールさんに聞いたところ、そもそもファミリ―オフィスの定義も国際的に決まっているわけではなく、また規制にもなじまない業態であるので自然に任せるしかないのでは。しかし、問題を起こす会社が多くなり「ファミリーオフィス」全体が悪のようなことになったら、何らかの規制も必要ではないか、ということだった。しばらく様子を見るしかないのか。
ともかく、世間に知れ渡ってきたのは歓迎だが、「変な方向」に行くのは困る状況で、一つの転換期、過渡期にあると個人的には考えている。
囲碁「日本棋院」の苦境ー囲碁人口は1000万人から150万人に激減
今日のニュースで日本棋院の経営問題が出ていた。もうかなり前から問題にはなっていたが、ついに来るものが来たかという感じだ。ここ20年ほどは、「免状」の乱発で急場を凌いでいたようだ。そのおかげで囲碁の「段位」はかなりインフレが進んでおり、30年前の5段は今の7段くらいになっている。30年前に7段を取った自分はどうなるのか。
そもそもの大きな原因は、囲碁人口の激減だ。これに日本棋院が真剣に取り組んでこなかったことが一因だ。20年ほど前は一時的だが「ヒカルの碁」ブームがあった。慶應囲碁部出身の梅沢由香里氏が監修をして、小中学生に囲碁が広まった。しかし、最近の統計だと日本の囲碁人口は150万人まで激減しているという。
私が小さい頃は、囲碁人口は1000万人だった。サラリーマンの趣味として代表的なものは「囲碁とゴルフ(いわゆるG2)」だった。学校の先生はほとんど囲碁を打ったので、私は小学校のころからよく担任と囲碁を打っていた。もちろん相手にはならなかったが、皆ヘタでもルールくらいは知っていた。
囲碁ファンが少なくなると、プロ棋士も指導碁が打てなくなり食い扶持がなくなる。囲碁の世界も圧倒的にレッスンプロが多く、しかも将棋のプロの2倍もいるそうだ。将棋の世界は厳しく9段になっても降格があるが囲碁にはない。しかも定年制もなく退職金や年金もある「甘い」世界だ。これでは日本棋院が破綻するのは目に見えている。
問題はこれでは囲碁のプロを目指す小中学生がいなくなり、日本の国際的な棋力がますます落ちることだ。徳川幕府が囲碁のプロ制度を作った関係で、日本は長らく世界一の囲碁大国だったが、最近では中国、韓国に完全に抜かれている。日本棋院の現状がここまでひどいとは知らなかったが、何とか日本の囲碁が滅びない手はないものか。
「みんなで大家さん」の実質破綻に思うー20年前の柳瀬社長の話
最近、「みんなで大家さん」の出資金の返還訴訟が話題になっている。実は私は20年前に麹町の本社に柳瀬社長を訪ね、このやり方が「ポンジ・スキーム」(いわゆる自転車操業で、新たな出資者のお金を既存の出資者の配当に充てる)かどうかを確かめに行ったことがある。弊社の顧客がこれへの出資を検討していたからだ。
私は既にこの頃には、いろいろなポンジ・スキームの社長に会っていた。もちろんそれらの会社はその後、数年以内に全て破綻した。最後が「みんなで大家さん」だ。私は10年以内に破綻すると考えたが、意外にも20年もった。柳瀬社長はなかなかの切れ者で役者でもある。
成田空港周辺の再開発に出資しているようだが、通常のポンジ・スキームだと「何もやっていない」ので実態はあったようだ。それが20年持ちこたえた理由だろう。しかし、年7%の配当ではいつかは破綻すると考え、ここには自分の金もお客様のお金も投資することはなかった。当然だろう。
柳瀬社長は話の最後に「これ以上のいい投資があったら教えてほしい」と言い放った。私がその場で数千万円のお金を投資すると思ったのだろう。しかし、こちらもプロとして真剣勝負の場だったので、相手の信頼性などを厳しくチェックしていた。一発、ポンジ・スキームの詐欺にあったら、もう超富裕層のコンサルなど続けることはできない。
現在進行形で同じような大規模の詐欺商法は複数横行している。実際には小さいものを含めれば東京でも数十や数百はあるだろう。100年前にイタリア系のユダヤ人であるチャールズ・ポンジがボストンで始めたこの手法が、今でも世界で横行しているのだから、ポンジはある意味天才だ。生成AIの発展で新たなスキームが生まれる可能性もあり、気を付けたい。
新浪さんのサントリー退場をどう解釈するかーファミリービジネスの本質に関わること?
先月の初めに新浪さんの大麻サプリ問題が発覚し、驚きとともにウワサは本当だったかとも思った。しかし人のウワサほど当てにならないものはないので、特に新浪さんは女性関係も派手で目立ち、嫉妬されやすい状況にあったので自分も半信半疑であったが、ともかく最近は連絡を絶っていた。最後の連絡は2018年の東大でファミリービジネスの寄付講座を行った時にお誘いした時だっただろう。
もちろん、サントリーは日本のファミリービジネスの代表的企業だ。そういう企業が新浪さんのような専門経営者を社長にすることは異例だ。私は「番頭」というものを昔から研究していたので、おそらく鳥井家、佐治家は新浪さんに鳥井さんが社長になるまでの番頭的な役割を期待していただろう。
ところが、新浪さん本人はそうは解釈していなかったようだ。社長としてサントリーに新たな成長をもたらしたいと、むしろベンチャー企業の社長のような役割を自らに課したのではないか。しかしそれはファミリービジネスの本質とは違っただろう。成長より継続がファミリービジネスの本質だ。だから、佐治敬三さんはビール事業が40年も赤字でも撤退はしなかった。このあたりが普通のサラリーマン社長、専門経営者とは違うところで、オーナー社長にしか理解できないところだ。
マスコミでは鳥井さんが育ってきて社長になり、会長の新浪さんが不要になったからこの問題を契機にクビを切ったという説が多いが、どうだろうか。そういう気もするし、そうでない気もする。これは鳥井家、佐治家のオーナー一族に聞かないと分からないが、そんなことは永遠に言わないだろう。
サラリーマンをやっていて社長になった人と、もともとのオーナー企業のオーナー社長とは発想が全く異なる。ここは新浪さんも注意していないといつかこうなっただろう。やはりファミリービジネスの社長は当然、ファミリービジネスを深く理解しないとなかなか務まらないということだろう。
日米関税交渉の意外に早い決着の背景ーやはり山田重雄駐米大使がいた
参議院選挙の与党大敗で日本中が騒々しい矢先に、突然の日米関税交渉の妥結の報が入った。誰もが8月1日以降も交渉が続くと思っていただけに、驚きを持って受け取られ、株価も暴騰した。しかし私は全く驚かず、山田駐米大使だったら当然にやってくれると4月から確信していた。
日米大臣折衝の時に、常に山田氏は大臣の右側に座って大臣にメモを渡していた。全て山田氏が仕切っているのを見て私は「これは大丈夫だ」と感じていた。但し、4月から見る見る痩せてきているのを見るのは、一友人として辛いものがあった。
ここにきて、ネットでも山田大使の働きに言及する記事が出てきた。トランプ大統領の意図を汲んで、様々な分野の企業トップと会って「投資機会」を探っていたようだ。約2年前にワシントンに着任してから、今日の事態を予想し全国の企業を回っていたというから「仕事師」は違うものだ。
大使としてアメリカに赴任する前、「死ぬまでお国のために働きたい」という魂の叫びにも似た言葉を聞いた時には、霞が関中の官僚に聞かせてあげたいと感じたものだ。今の官僚に果たして本気でこう考えて働いている人がどれだけいるか。官僚はよく「国益より省益・自分の利益」と言われるが、残念ながら私の知り合いでもそういう官僚は多い。
一件落着のようだが、この関税交渉はまだまだ尾を引きそうだ。契約文書は作らないので、どうしても両国で解釈の違いも生じるし、またゴタゴタしそうだ。山田大使にはゆっくり休んでほしいが、それができるのはせいぜい夏休みの1か月くらいかもしれない。
寄附金集めの基本は「ギブ・アンド・テイク」ーある元経団連幹部からの示唆
最近はクラウドファンディングなど、いろいろな寄附金集めの手法がある。かなりの「共感」を集める話だとこれでも集まることもある。しかし、善意に頼るのは持続可能性は低い。大学などの寄附金集めでは、大口への訪問がまだまだ主流だろう。
私も経団連にいたころは、バイオ分野の担当が長く、よく大学教授(医学部の方が多かった)からの研究費寄付要請の応対をした。不思議なことにどの先生も「自分のやっていることは世界一大事なことだから経団連は寄付すべき」ということを言われた。しかし、個別の大学や教授に寄附する慣例はないということでお帰り頂いた。
東大からエール大学に移った浜田宏一教授から、研究費の寄附集めの苦労話をよく聞いた。経団連に行ったらすぐに断られたそうだが、そもそも誰にでもそういう対応ですよ、と言ったら少し安心した顔をした。結局は自分の研究を多とする企業しか寄附はもらえなかった、ということだが、ある意味本質的な話だろう。
つまり、寄附でも何でも基本は「ギブ・アンド・テイク」の関係しか成り立たないということだ。多くの日本の教授は、「自分の研究は世界一だから(ほとんどの場合、この根拠はないが)世界中の人は自分に無償で寄付すべきだ」と考えているきらいがあるが、これは基本を分かっていない。何もギブしていないのだ。
日本にはそもそも寄附文化がなく、皆が経験値が低いこともある。特に国立大学の先生は、昔は税金から研究費が出ていたので、予算を削られた今どうしていいのか分からないのだろう。それにしても、普通の人間が、何もメリットがないのに自分に寄附してくれると思うのは、冷静に考えると異常だ。
昔、私のゼミの先生であった石川忠雄元慶大塾長は、慶應創立125周年で200億円集めたのが話題となった。先生に「なぜそんなことができたのですか」と聞いたら「昔の恩を返してもらったからだ」と言われた。まさに「ギブ・アンド・テイク」の関係で、さすがに本質を分かっていたのだ。
寄付集めの時には、常に「ギブ・アンド・テイク」の関係が成立しているかチェックする必要がある。そうでないと、世間知らずの大学教授と同じになってしまう。心したいことだ。
母校、甲府一高の囲碁部が全国大会に出場ー女子団体戦と個人戦
今思えば、40年以上前になるが、私が高校生の時、1年から囲碁の全国大会に出ていた。一年で個人戦全国4位になったので、残りの2年のうちには優勝できると思ったが(高校時代は伸びる時期なので)、何と2年、3年時と順位は落ちて行った。やはり勝負は時の運であろうか。
時々、高校囲碁の記事を読んだりするのだが、昨年は女子団体戦で甲府南高校が全国準優勝していて驚いた。決勝は白百合女子高だったので(慶應囲碁部は白百合女子大囲碁部と一緒に活動している)、これは見に行くべきだったと後悔したものだが、今年は何と、その全国2位の甲府南を破って甲府一高が山梨代表になったようだ。
もしかしたら、全国で団体戦、または個人戦で入賞するかもしれない。そうなると多分、私以来だと思われ(そもそも山梨県は囲碁が盛んでもない)、これは快挙だ。こんな嬉しいことはない。
甲府一高はもともと幕府の藩校(今の大河ドラマの蔦重の時代)が起源で、名門校だったはずだが、最近は進学もよくなく、旧制一中で東大合格ゼロの常連校になっている。昔は甲子園にも何度か出たようだが、今は私立の時代なので県予選突破は難しいだろう。
ここは意外にも、「囲碁」で再び全国区になるという作戦もある。おそらく全校で期待もされているだろう。8月に全国大会があるので応援に行こうと考えている。囲碁の日本棋院という「場」にも最近行っていないので、久々に知り合いに会えるかも知れない。
ここ15年間の日本での「ファミリービジネス」の認知度は?ーまだまだ緒についたばかり
私が明治大学大学院ビジネススクールに「ファミリービジネス」の講座を持ち込んでから(担当は当時の青井倫一研究科長)15年が経とうとしている。それまでは日本には「部分的に」ファミリービジネス(同族企業)を扱う講座はあったが、そのものを扱った講座はこれが初めてだった。日本がいかにこの分野で遅れていたかだ。
欧米では1980年代には主な大学にはファミリービジネスの講座ができていた。こんな古典的と思われる経営形態(会社は基本一人の家族から始まる)が、「実は強い」ことに誰もが違和感を覚え、研究が始まったころだ。当時は(今もそうかもしれないが)日本では「ファミリービジネス(同族企業)」は古くて悪い経営形態だから、早くサラリーマン社長(専門経営者)の会社にすべきだ」というのが一般の見方で大学でもそう教えていた。
ハーバードの著名な経営学史の大家アルフレッド・チェンドラーも「所有と経営の分離」を唱え、株式を持たない人間が経営すべきというのが世界の主流だった。しかしそれでは、エンロンや日産のゴーンさんのような「無責任な経営者」が出て来て会社はダメになる、ということが実態的に分かってきた。
今では世界中で「ファミリービジネスは責任のある経営をしているから強いし尊敬できる」というのが主流だが、ほぼ日本と韓国のみが未だに「ファミリービジネスは古くてよくない経営形態」と思われ「下に」見られている。そのことで後継者はファミリービジネスを継ぐことを躊躇ったりする。由々しき事態だ。
日本にファミリービジネスという形態が少ないのなら大した問題ではないかもしれないが、大問題なのは「日本企業の98%までがファミリービジネスで雇用もGDPも3分の2がファミリービジネスから生まれ、しかも業績も全体とすればノン・ファミリービジネスよりもいい」という実態があるからだ。日本でファミリービジネスを否定することは「自分の強みを自ら捨てる」ことになる。失われた30年の一つの原因もここにある気がする。
まだまだ私の力不足で日本人の意識はほとんど変わっていないが、トヨタやサントリー、キヤノンなどの強さは誰でも知るところ。最近では「オーナー社長は責任があるからサラリーマン社長のようにいい加減ではないよね」という人は増えてきた。
大学も今ファミリービジネスを扱っているのは明治(32講座もある)、早稲田、慶應(小生のみだが)、東大(3年間やった)くらいで全国に拡がっていないが、少なくても各地の中核大学で「ファミリービジネス」の講座ができれば、「本当は強くて面白い」ファミリービジネスのことが広まってくるだろう。
少しづついい方向に変わってきたと思えるのは、最近ではいろいろな雑誌で「ファミリービジネスの強さ」を扱う企画がでてきたことだ。老舗やベンチャーが多いがもちろんトヨタやサントリーなどのオーナー系企業の強さを再確認する記事も多い。経産省も最近、ファミリービジネスの研究会を立ち上げた。
問題はこういう動きを「継続的に」していくことで、まだまだいろいろな方面で動かないと世の中変わらないなと実感している。