日本ファミリーオフィス協会


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ファミリービジネス後継者に対する「実学」とはー本年の慶應ビジネススクールで思考錯誤

慶應ビジネススクール(KBS)は私のゼミの指導教授であった石川忠雄元塾長が1978年につくったもの。その趣旨は福澤諭吉が言っていた「実学」を体現する場をつくることだった。しかし、「何が実学か」は全くもって難解だ。

 

もちろん、福澤先生の時代の実学と今の実学は全く違うことは言うまでもないが、受講生それぞれにとっての実学も千差万別だ。その最大公約数的なところをとって授業をするしかない。

 

今年はファミリービジネスの後継者2代目、3代目に絞って受講生を募集した。多くが20代だ。日本でも海外でもファミリービジネスは初代は強いが、2代目、3代目で潰れてしまう例が多い。逆に4代目まで行くと(100年企業)なかなか潰れないというデータがある。ここまで続くといろいろなノウハウの蓄積ができるからだろう。

 

今年はファミリービジネスの理論的な座学はほどほどにして、私が今まで経験した中でファミリービジネスの後継者が必ず考えておかねばならないポイントを30くらいにまとめて議論してもらっている。少数の50代の方が議論をリードする形になるが、若者もいろいろと意見を言って、初の試みだが議論はできている。

 

この議論によってすぐに効果が出るものではないが、今の20代の若者が後を継ぐ10年後、20年後には、いま考えたことが役に立ってくるだろう。こういう「実学」もあると信じて、ここしばらくは試行錯誤を続けることになるだろう。

 

 

 

 

悠仁さまの東大進学についての疑問ー祖父の川嶋辰彦教授は望んでいたか?

自民党総裁候補の半数近くがハーバード・ケネディスクールに留学―バブル期は日本人が多かった

今度の自民党総裁選は「11名」が名乗りを挙げている。その中で何と5名がハーバードケネディスクールに留学している(上川、茂木、斎藤、林、小林ー年齢順)。それぞれ、私もそうだが職場派遣の人が多いのが特徴で、斎藤健さんとは卒業同期で、林芳正さんも重なっている。

 

私は経団連から派遣で、1年目はエール大の経済学大学院に行き、そこは1年で修士を取り、2年目はハーバードのケネディスクールと東アジア科大学院に合格し、政治家になるつもりはなかったので、東アジア科大学院に行った。

 

当時はバブル期だったので、日本人が非常に多く、ビジネススクール、ロースクール、ケネディスクールにはそれぞれ1学年15名程度の日本人がいた。ロースクールには今の日銀副総裁である内田氏がいたようだが、面識はない。

 

ケネディスクールというのは、私のようにできない学生には救世主のようなところで(アメリカの役人が多く来ていたが、アメリカの役人は民間よりレベルが低かったため)成績が甘かった。そこで私はケネディスクールの授業を多く履修していた。結構、簡単にAが取れた記憶がある(私の慶應ビジネススクールでの「ファミリービジネス実践論」講座のようだ)。

 

他方、ビジネススクールの当時の花形であったマイケル・ポーター教授の授業にも出たかったので、これは「聴講生」として受講した。こういう「戦略」は実は今は経済産業大臣となっている斎藤健さんから教わった面もある。林芳正さん(現官房長官)からは「バンドを組まないか」と誘われたが、私はボーカルしかできないので断念した思い出がある。

 

今はハーバードにはほとんど日本人がいないようだ。理由は、昔はやっていた「職場派遣」がなくなっていることと、そもそもアメリカの大学が日本人を取らなくなっていることだ。日本の国力の低下はこういうところにも影響しており、福沢諭吉が咸臨丸でアメリカに行ったころと時代が完全に逆行しているのは、日本の行く末を考えた時に恐ろしい。

 

 

 

 

ドイツの「アディダスとプーマを生んだ町」に行き、アディ・ダスラーの孫から話を聞くー兄弟喧嘩の顛末

先月はドイツで世界の主なファミリーオフィスの代表が集まる少人数会合があったので、それに参加。その後に以前から行きたかったアディダスとプーマの本社があるバイエルンのヘルツオーゲン・アウラッハという小さな街に行った。

 

わずか人口1万人の街に世界的な大企業であるアディダスとプーマの本社があるのは異様だが、この両社はダスラー家の兄弟げんかから生まれたことは日本ではあまり知られていない(ちなみにドイツではほぼ全ての人が知っている有名な話)。

 

私は20年ほど前にアディダス(弟の会社)とプーマ(兄の会社)の話を知ったが、その後、ファミリービジネスの事業承継が起きたときに頻繁に起こる「兄弟げんか」について、なかなかうまく対処できないことが悩みだった。おそらく世界一大きな兄弟げんかであるアディダスとプーマの実例から何か参考になることはないか、興味はあった。

 

今回はまったく偶然だが、ダスラー兄弟の生家(小さい家だった)で写真を撮っていたところ、中から弟のアディ・ダスラーのお孫さんが出て来て、雑談風にお話を聞くことができた。もっとも、現在はこの2社は創業家が経営から全く離れており、むしろ関係良好で、アディダスの社長はプーマから来ている現実もある。両社の広報に問い合わせをしたが、ダスラー兄弟の兄弟喧嘩に関しては一切ノーコメントだった。

 

詳細は、今年の慶應ビジネススクールあるいは東大で復活するファミリービジネス講座で話すので、ここでは省略するが、ともかく「兄弟げんかの修復は容易ではない」ことは分かった。親子の喧嘩もよくあるが、これは「親子の情」があるので実は何とかなるケースが多い。ところが兄弟だと「兄弟は他人の始まり」なので、第3者が入ってもどうにもならないことの方が多い。

 

仕事以外でも、知り合いの兄弟が親が亡くなった「瞬間に」喧嘩を始めたケースを、私は少なくとも数件は知っている。実数はこの数倍から数十倍はあるだろう。日本人は家族紛争を口外しない人が圧倒的に多いからだ。

 

結局は、親がいなくなると兄弟はけんかをするものだと割り切り、事前に対策をするしかないのかも知れない。それもなかなか困難だが。

 

 

時代は「婿養子」から「跡取り娘」へー「跡取り娘」の協会も設立

世の中はアメリカ大統領選を見るまでもなく「女性の時代」だ。パリオリンピックでも日本選手団の中でも女性の方が元気があった。企業経営でも同じだろう。

数年前までは経営学の世界でも「婿養子の強さ」が話題となり、私も同調はしていたが、何か違和感があったのも事実だ。

 

私の中で見直しのきっかけは、2022年に慶應ビジネススクール(KBS)の講座でお招きした、ロート製薬の山田会長の一言「相山君は婿養子がいいと言っているが、あれはセクハラではないか」という衝撃の発言だった。

 

要は婿養子はさすがに今の時代にマッチしていないという山田会長のご指摘であるが、その年は受講生の中に婿養子数名と跡取り娘候補数名がいた。たまたま文明堂の婿養子の社長に外部講師として来ていただき、その時あるいはその後に皆で議論ができた。

 

跡取り娘候補の人々は、経営までできるいい婿養子はなかなかいないという実感を持っており、確かにその通りだと思うが、それなら「自分でやったらどうだ」と私は言った。世の中、いつまでも社長は男である必要はなく、今はむしろ女性社長の方が注目されるし有利ではないかというのが背景にある。

 

そんな中で先日、ある勉強会で「跡取り娘協会」というものが設立させたことを知り、その代表(とはいっても以前、東大で「ファミリービジネス講座」をやっていたときに来られていた方だったが)とお話ができた。もちろん「ムコの会」というのもあるのだが、これからは「跡取り娘」の方が伸びるのではないかと予想している。

 

昨年も「跡取り娘候補」の受講生がおり、今年も、今の少子化なら間違いなく複数いそうだが、また議論してみようと思う。今までの結論は、KBSに来ているような跡取り娘は「自分で社長をやる」ことを基本に、もしいい婿養子と結婚できたら任せるなり、手伝ってもらうなりすればいいのでは、ということだが、果たして今年はどういう議論になりますか。

 

 

今年の慶應ビジネススクール「ファミリービジネス実践論」の受講生は27名ー全員、後継者候補

時の経つのは早いもので、9月からの慶應ビジネススクール(KBS)の講座の受講生が教務から知らされた。本年は「ファミリービジネスの後継者候補」に絞ったが、土曜日の午後にも関わらず27名の参加者がいるようだ。慶應ビジネススクールではいかにファミリービジネスの後継者候補が多いかを物語る数字だ。

 

もちろん、時間割の関係でこの講座を履修できなかったファミリービジネス後継者も、この倍はいると思われるので、全体で250名のKBSの在学生のうちファミリービジネスの後継者は相当な割合に上る。これはビジネススクールの高額な授業料が一因と思われるが、同時にファミリービジネスのオーナーは後継者である次世代の教育に苦心している表れでもある。

 

今年は3年目の講義なので、私も「原点に返って」福澤先生の「実学」精神に則り講座名も「ファミリービジネス実践論」とした。またKBSは、そもそも私の指導教授であった石川忠雄塾長が、慶應での実学の拠点にするために1978年に設立した学科でもある。ハーバードビジネススクール流の「ケーススタディ」を中心にした授業が基本だが、私はその「ケースの中味」にこだわりたい。

 

単純にハーバードで昔使っていたケースの翻訳を使うのではなく、「日本企業」のファミリービジネスのケースを使う、全くオリジナルのものだ。これは全く確立されていないケースなので非常に恐い面もあるが、その方が受講生の「将来のファミリービジネス経営」には役立つと思われる。

 

過去2年間で私も受講生の方々から多くを学ばせて頂いた。その最たるものは「今や婿養子経営は古い」という事実だ。少子化の影響で子供は女性だけというファミリービジネスオーナーも増えているので、後継者教育は複雑化している。従来はその場合は「婿養子だ」となっていたが、今は全く違うと思う。現場を知らない学者は未だに「婿養子経営のメリット」などを説明しているが(私もコロナ前はそう言っていた)、ここは今年から完全に否定するつもりである。

 

 

 

 

KBS(慶應ビジネススクール)はかつてKBS(慶應ブライダルスクール)と呼ばれていた?

先週、ある慶應ビジネススクールの教授と打合せしていたら、たまたま婿養子の話になり、私からは「自分はかつて婿養子を推奨していたが、今は一人娘だったら自分で経営をやれ。女性経営者の時代だ、と言っている」と申し上げた。教授からはかつては慶應ビジネススクールは慶應「ブライダル」スクールと呼ばれる程、校内結婚が多かったという話があった。

 

私は2019年まで明治大学のビジネススクールで「ファミリービジネス論」の講師をしていたが、明治から慶應に来て驚いたのは慶應における「女子率の高さ」だ。私の勝手な予測だが、このことは「ブライダルスクール」と呼ばれたこととも関係しているはずだ。

 

その証拠といっては変だが、私の講座でも過去2年間に「婿養子を探しにきた」という雰囲気の女性が複数いた。明言している女性もいた。しかし、何といってもビジネススクールは人数が少ないのでここで適切な相手が見つかる可能性は低い。実際にはここで知り合った人の「紹介」で結婚した人が多いという。

 

まあ「直接」でも「間接」でもここの関係で結婚したことには変わりはない。ビジネススクールの授業料は他学部に比べて相当高いが、ここでいい相手が見つかれば2年間で数百万の授業料も安いものである。

 

私の知る限り、他のビジネススクールでこんな話は聞いたことがないので、慶應ビジネススクールの大きな「強み」と言えなくもない。特に世の若い女性たちはそのあたりの「嗅覚」が男の何倍も優れているので、他の大学を卒業してKBSに来るのだろう。そこにいる男に幻滅しても、彼らに「いい男を紹介」してもらえばいいのだ。

 

私のKBSでの「ファミリービジネス実践論」は、今年から福澤先生の言われた「実学」にこだわり、受講生にとって本当に実になる授業をするつもりである。皆、ファミリービジネスの後継者候補なので、それぞれのニーズもいろいろだが、少子高齢化で「ブライダル」のニーズも切実な人、家族も多い。そういう面も含めて包括的にニーズを満たし、「本当によかった」と受講生に思ってもらえる講座をしてみたい。

 

 

財務省事務次官に新川浩嗣氏が就任ーエール大経済学大学院の同期

昨日、財務省の人事が発表され、予想通り主計局長の新川氏が事務次官昇格となった。そもそも財務省は官房長⇒主計局長⇒事務次官のルートが確立しており、新川氏が3年前に官房長に就任した時から「おめでとう」とは言っていたが、昨年は主計局長留任になったので1年遅れの事務次官就任だ。

 

昨年財務省のトップ人事で留任が相次いだのは、為替介入のプロである神田財務官の留任が原因だった。まだまだ為替の円安は続く気配だが、さすがに3年も留任というわけにはいかない。

 

エール大にいたのはもう30年以上前の話で、あまり出来事は覚えていないが、新川氏は丸亀出身なので「うどん」にこだわりがあった記憶がある。エール大経済には浜田宏一教授(学界のハマコー)がいて、また政界でもハマコーの全盛期だったので、よく政治の話をしていたことを覚えている。

 

今は霞が関の過重労働や「天下り」批判から、東大生のトップが財務省に行かなくなっている。特に私が最近感じているのは、霞が関で局長以上になった人々が7月で退任した後、半年以上何もせず「役所からの天下り斡旋」を待っていることが非常に「カッコ悪い」ことだ。

 

たまに親しい人には、はっきり「天下り先など待っていずに何か起業でもしたら」というのだが、決まって「そんな訓練はしていないので天下り先に行くしかない」というのだ。これでは受け入れる企業の戦力にもならない。もっとも企業の方も戦力としては期待していないだろうが。

 

新川さんには、新しい財務省のイメージをつくるため、事務次官になっても天下りをしないなどの斬新なことをやってほしい。若い頃の彼だったらそういうことをしそうな雰囲気もあったが、今はどう変わっているのか。期待させる方に変わっていたら嬉しいのだが。

慶應義塾伊藤公平塾長の「150万円」案に賛否ー誤解も多い議論

慶應伊藤公平塾長が3月の中教審の部会で、国立大学の授業料を150万円に引き上げる「案」を説明した。部会なので、あくまでも議論のたたき台のはずだが、しばらくしてこれが慶大塾長が国立の授業料を150万円にせよと主張、というふうに報道された。数字の一人歩きの典型だ。

 

そもそも、日本の大学の授業料体型は「国際的に見て異常」であることが根底にある。欧米に留学した人は誰でも同じ感想を持つが、「いい教育を受けられるところほど授業料は高い」という当たり前のことだ。アメリカでもハーバードの授業料は最高で、州立大学などは安い。教育の質から言って当然の話だ。

 

しかし日本では「いい教育を受けられるところほど授業料が安い」という、冷静に考えると相当おかしい状態が恒常化している。一番いい環境で最高の教授に学べる東大の学費が、地方のFランク大学よりかなり安いのだ。「日本の常識は世界の非常識」の典型だ。だから日本では国立大学志向が強くなり、それが「官尊民卑」を助長してもいる。

 

もちろん、学費の問題で大学への進学をあきらめる人が出てはならない。大学の授業料の話は、「奨学金制度の拡充」を前提とする議論でもある。事情を知らない日本人はハーバードの学費が年間900万円と聞いて驚くが、ほとんどの学生が何らかの学費免除(100%も多い)や奨学金をもらっているのだ。この点は伊藤塾長も日経のインタビューなどで強調している。

 

この影響もあり、東大で10万円だが、学費値上げを検討していることがまたセンセーショナルに報道されている。大学の学費とはそれほどセンシティブなものだが、日本の学費体型も歴史的な経緯もありこうなっている面もある。

 

ともかく、現状は国際的に見ても「異常」であることは間違いない。しかし、すぐに結論が出る問題とも思えない。明治時代からの流れもある。伊藤塾長も、現状はおかしいのでとにかく議論を始めましょう、という考えだと思う。高等教育に対する公費負担のあり方から掘り起こして、少子化時代の大学の授業料、奨学金のあり方を含め、包括的に議論を始める必要がある。このままでは日本の大学は危ないというのは日本人の共通認識だと思うので。

 

 

 

 

蓮舫氏の都知事選出馬で小池知事はピンチー学歴詐称はどうなるか?

何度も言っているが、学歴詐称は政治家であってもなくてもダメである。特に私のように苦労して外国で学位を取った人には、非常に失礼な行為だ。小池知事も仮に甲南女子高卒だったらこれまでのキャリアや現在の地位は有り得なかっただろう。「カイロ大学首席卒業」ということでのし上がった人だ。しかしこれは「砂の器」ではないか。

 

そうはいっても、まだまだプレゼン上手の「小池人気」は根強い。今回も自公推薦で何とか乗り切ることを心配していたが、「東京都知事」はやはりいろいろな人にとって魅力的なポジションなので、チャンスと見れば誰かが出てくる。今回は蓮舫氏が出てきた。もちろん、「勝てる」見込みが出てきたからだ。

 

これで、もと小池側近である小島さんも蓮舫側に付くだろうし、石井妙子の筆も活気付く。小池知事は大ピンチではないか。注目は「カイロ大学卒」とまた明記してくるかだが、今さら引っ込めるわけにはいかない。これは自らウソを認める行為なので必ず明記してくる。ここで小島さんが刑事告発をするという流れだ。

 

現実にも、東京都知事がエジプト軍事政権に弱みを握られていていいはずがない。報道によると、東京都の税金の1億円くらいがエジプトに流れているらしい。都民としては冗談じゃない。小池都知事にはご退場願いたい。できれば都知事選にも出てほしくない。まともな政策論議ができないからだ。

 

これから自民党もどう動くか分からないが、ともかく蓮舫氏が決断してくれてよかった。神宮の大樹も守られ、築地はもう手遅れだが、都民の血税が小池氏の人気取りのために変に使われることもなくなるだろう。

 

 

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