日本ファミリーオフィス協会


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仙台一高の野球部の躍進に「あっぱれ」ーなぜこんなことができたのか?

連休中にネットを騒がせたのは、宮城の仙台一高野球部の躍進だ。県大会で決勝まで行き、さすがに仙台育英には敗れたが準優勝だ。公立の快挙で、来年の選抜の21世紀枠の最有力候補になったのではないか。仙台一高は今年は甲府一高と同じように東大合格者1名までになったが、「そう来たか」という感じだ。何年も前から野球では宮城大会で上位に来ていたようだ。

 

仙台の事情は分からないが、仙台一高は旧制一中ではあるが進学では仙台二校に後れをとっている感じだ。仙台二校は囲碁の団体戦で昨年まで全国優勝3連覇をしていた。これもすごい話だったが、多分世間的には仙台一高の野球の方がアピールしているだろう。なぜこうなったのかは不明だが、少なくとも想像できるのは学校が野球を重点化し、いい選手を入れたりいい(有名な)監督を雇ったりしていることだろう。

 

どこの県も同じだろうが、戦前は私立も野球に力は入れておらず、旧制一中が甲子園に出ていたはずだ。山梨でも同じで戦前は甲府中学がほとんど毎年県大会で優勝していた。戦後も昭和40年くらいまでそうだった。日本人初の大リーガーも甲府一高卒だった(今となっては信じられない話だが)。ところがそのころから私立高校が全国から有望選手を取るようになり、世は私立の天下となった。山梨でも山梨学院や東海甲府など私立の天下だ。公立はベスト4も厳しくなっている。

 

もちろん宮城でも状況は同じで、仙台育英と東北の天下だろう。そこに近年、仙台一高が割って入ってきたわけで、おそらく全国の旧制一中で甲子園経験がある学校は、仙台一高詣でをすでに始めているのではないか。少なくとも来年にかけていろいろな調査をするだろう。どこでも古いOBは「もう一度わが校歌を甲子園で」と学校に言ってきているはずだから、仙台一高の活躍は「やればできるだろう」という声にもなりうる。

 

今の甲子園を見れば上位には私立ばかりで、以前問題となった「県外からの野球留学の規制」は最近聞かれなくなった。しかし、これでは見ている方は面白くなく、公立の活躍も見たいところだ。特に文武両道で頑張っている若者を応援したくなるのが人情だ。東大が、甲子園で活躍した野球エリートの集団である他の6大学に勝つ姿を見たいという思いは誰にもある。

 

何事もそうだが、現状打破には何かの象徴的な出来事が必要で、仙台一高の活躍はそのモデルケースにならないかと期待するところ大だ。

甲府一高の強行遠足は行事ではなく「文化」だー卒業して何年経っても皆その話をする

全国で戦前は「強行遠足」というのはかなりの旧制中学でやっていたようだが、戦後まで残ったのは少ない。甲府一高の他には水戸一高(恩田陸の「夜のピクニック」で有名に)と北見北斗高(現在は甲府一高と提携している)くらいだ。その中で一番過酷なのが甲府一高のものだ。その理由は距離(105キロ)だけではなく、国鉄最高地点の野辺山を通ることにある。

 

高校の標高は280メートルだが、野辺山は1375メートルで標高差1100メートルだ。これはかなりきつい。いくら田舎で日々高低差を歩いているとはいえ、せいぜい50メートルの丘くらいだ。ちょうど行程の半分の野辺山でボロボロになりリタイアする男子は多い。私も1年生の時には野辺山でヘトヘトになりリタイアを考えたが、ここからは下りだという教師の甘い誘いに乗り、そこから下り50キロを完走し意外に上位で到着した思い出がある。

 

終点の小諸では、地元の小諸市長の出迎えもあり、上位20位までは小諸市長の色紙がもらえる。これを目標に頑張る男子も多い。私もその一人だったが、2年、3年と20位には届かなかった。残念だったが、この行事にかけて1年間片道10キロを歩いて登校する人物もいた(残念ながらその男も20位には届かなかったが)。個々人でいろいろな思いがある行事だった。

 

卒業して何十年も経っても、同級会があるとまず「強行遠足でどこまで行ったか」を聞くのが定番だ。ここで「3年間小諸まで上位で行った」などというと「面白くないヤツ」という烙印を押される。「野辺山でやめた」とか、「臼田のおばさんと話をしてやめた」とかいう者が人気者となる。特に、強行遠足のドキュメンタリー番組で必ず登場するのが依田さんという「臼田のおばさん」だ。亡くなるまで毎年おにぎり1000個をつくって長野県臼田町の自宅牛乳店で高校生を待っていた人だ。

 

私自身もなぜこの人がこんなことを無償で行っていたか、不思議ではあったので、2005年に軽井沢に行った帰りに臼田の依田牛乳店を訪ねた。その時には臼田のおばさんは既に亡くなっていたが息子さんが説明してくれた。何とおばさんではなく父親(おじさん)が昔甲府の人(甲府一高の卒業生だったようだが)にお世話になったので、その恩返しで始め、亡くなるときに妻(臼田のおばさん)に続けるように言ったそうだ。今の時代には稀有な泣ける話だ。

 

このように、100年も続いていると、もはや行事ではなく地元では「文化」の領域にも達しているように感じる。20年ほど前に高校生が飲酒運転のトラックにはねられ死亡するという事件があり、何年か中断されたが、その後地元の有志の動きもあり復活している。今度の熊騒動で来年はどうなるかだが、おそらく地元からは復活の強い動きが出るだろう。

 

 

 

 

母校、甲府一高の「強行遠足」がクマで中止にー来年以降は大丈夫か?

甲府一高といえば、有名なのは100年以上続く「強行遠足」だ。「強行」なので台風が来てもやる。10月初旬開催なので台風が来ることもあるが、そんなことはおかまいなしだ。しかし、熊相手ではなかなか強行もできない。男子は甲府から小諸まで24時間で100キロを歩く行事だが、山梨長野の県境あたりは夜にほぼ一人で歩かねばならない。ここで熊に出てこられたら地獄だろう。

 

しかし冷静に考えると、熊は今後もどんどん数を増やすだろう。天敵もおらず、猟友会が駆除といっても、猟友会自体が高齢化し人も減っている。これでは熊の天下だ。昔は「熊が出た」といえばかなり山の中での話だったが、今は市街地にも出てくる。県庁所在地の駅のそばで熊が出現となると、全国どこでも熊が出てくる可能性がある。

 

山梨の場合はどこでも近くに山があるので、甲府市街でも安心できなくなっているらしい。甲府の身延線の次の駅で「金手」という駅があるが、ここは甲府駅からわずか800メートルくらいのところだが熊が出たようだ。閑静な住宅地なのでこれには驚いた。近くに小さな山があるが、とても熊とは結び付かない。

 

問題になったのは北杜市という八ヶ岳の麓の市で、ここで熊が出没しているようだ。まさに暗くなってくるところで、危ない。ここは昼ではないと危険だろう。となると深夜スタートで八ヶ岳周辺は昼間通るようにして、佐久のあたりから夜になるという時間設定はありうると思うが、警察や父兄の協力も得なければならないし(もちろん学生の意向も)、帰りの電車のこともあるので難しいのだろう。

 

伝統行事が「熊」で終了になるというのも、意外過ぎる話だが、1年かけて熊対策を専門家を交えて話し合うのだろう。しかし、危険を回避するには相当な人員が必要となるのでかなり難しいのではないか。今の時代「熊」がいても強行だとは言えないだろう。事故が起きたら校長は大変なことになるので、そこまでのリスクは取れない。

 

ところが、11月に予定されているOBの強行遠足は今のところ予定通りだ。もちろん距離は短いし、ずっと明るい時間だし、市街地を通るのでいくら山梨でも熊のリスクは少ない。しかも集団で歩くことになるので熊にも対抗できる(熊スプレーで)ということだろう。これも中止になる前に参加しておこうというOBは多いだろう。

9月7日発売の「週刊エコノミスト」の記事ー日本人は日本の強みに気づいていない

先週の「週刊エコノミスト」に日本発ファミリービジネスの強さ、という記事をハーバードビジネススクールのローレン・コーエン教授との連名で掲載した。ハーバード大学ビジネススクールで「虎屋」のケースが今大変注目を集めているので、他の長寿ファミリービジネスのケースを作りたいという要望がコーエン教授から寄せられた。日本のビジネススクールでファミリービジネスの講座を持ち、かつハーバード大学院出身の私に白羽の矢が立ったのだろう。

 

人間というものは誰でも「自分の強み」になかなか気づかないものだ。それが「当然」だと自分では感じるからだ。ところが、自分では当然と思ってもそれが実は大変な「強み」であることは珍しくない。日本には長寿企業が多いので、皆それが「当然」と感じているのだが、世界では実は珍しい存在なのだ。企業を取り巻く環境は激変するし、その企業を継ぐ人がいないのもよくあるからだ。

 

日本は世界に類をみない「ファミリービジネス大国」である。このことも日本人は「当然」と思っているが、世界では珍しい。ファミリービジネスが多いことが企業が長く存続していることの一因だ。それにも関わらず、日本人はマスコミの報道もあり、ファミリービジネスは古い形態で不祥事も多く、よくない経営だと思っている。実はこのファミリービジネスという形態こそが日本の強みであり、それを否定することは自らの強みを捨てることになる。日本経済にとって大きな損失なのだ。

 

私はここ10年以上、海外でファミリービジネスの国際会議に出ているが、日本のファミリービジネスが賞賛されることはあれ、否定されたことは一度もない。日本のマスコミ報道により、日本のファミリービジネスは不祥事が多いイメージがあるが、全企業の98%までがファミリービジネスのこの国で「不祥事の98%までがファミリービジネスで起きているか」と考えるとそんなはずもない。

 

今回私がハーバードのコーエン教授とこんな記事を連名で載せたのは、海外からの日本のファミリービジネスへの評価の「象徴的な事例」だからだ。コーエン教授は日本のファミリービジネスの最大の強みはその「歴史」であり、そこから日本のファミリービジネスはもっともっと学んだ方がいいという持論を展開された。

 

確かにその通りで、長寿企業が多いのは日本の一つの大きな特徴であり、そこから学べることは多いはずだ。最近ではこれに対応して、日本のファミリービジネスも自ら気づき始め、自社の過去の記録を調べて「ファミリー憲章」をつくったり「企業経営指針」を明文化するなどの動きが急激に出てきた。私も微力ながらこういう動きを支援し、日本のファミリービジネスの強さが日本人にも理解され、「日本的ないい経営」が日本に広まるように努力していきたい。

 

奥田元経団連会長の思い出ー最初の言葉が「私はトヨタの番頭です」

奥田元経団連会長が亡くなられた。私が経団連をやめた時の会長が奥田さんで(経団連の内部では誰でも役職ではなく「さん」付けで呼ぶ。外部の人は驚くが)、やめるときにもかなり励ましていただいた。ともかく気さくな方でよく事務室に降りてきて、職員と話をされたのが印象に残っている。私もその一人だ。こんな会長は土光さんくらいだ。もっとも土光さんは「怒鳴る」ために職員と話をしていたようだが。

 

その時はまさか、20年後にファミリービジネスをやっていようとは想像すらしなかったが、奥田さんが最初に私のデスクの背後に来られての一言が「トヨタの番頭です」だった。笑っていいものか分からずとまどったが、これには深い意味があったかもしれない。私はその言葉がずっと頭から離れずに、その後「豊田章一郎さん以後の奥田、張、渡辺の3代の社長は章夫氏に継ぐまでの番頭的な役割をしていた」という新説を出した。これを晩年の豊田章一郎さんに聞いてもらったら「そういうことだろうね」と言われたのは嬉しかった。昔の日経ムックでこの説を披露した。

 

もっとも、章一郎さんの解釈では奥田さんが自分のことを番頭といったのは、自分が豊田家の番頭的な役割をしているという意味ではなく、へりくだった言い方だったのではないかということだったが、私もそれはそう感じている。しかし、奥田さんほどの人が当時は「ファミリービジネスの強さ」を理解しておらず、豊田家の世襲を否定するような発言をしていたことに驚きも感じた。もっとも、今でも「ファミリービジネスの強さ」を理解している一般企業のトップは少ない。それどころか、ファミリービジネスのトップが自信を持ってその強さを主張することもない。

 

そこで私は、9月7日発売の「週刊エコノミスト」で「ハーバードも注目する日本のファミリービジネスの強さ」という記事をハーバードビジネススクールのローレン・コーエン教授との連名で載せる。日本人がこの強さを認識しないと欧米との差はますます開きますよという話だ。冷静に見ると、我が国でも「強い」企業のほとんどが「ファミリービジネス」であることに気付く。トヨタ、サントリー、キヤノン、ソフトバンク、ファーストリテイリングなどなどだ。その結果、業績面ではファミリービジネスの方が一般企業よりいい。このことをほとんどの日本人は知らない。中堅企業でも特に地方で強いのはほぼファミリー企業だ。だから欧米ではファミリービジネスが尊敬もされている。「責任ある経営をしている」というのがその理由だ。

 

もちろん、オーナー一族は通常かなりの株を持っており、会社が傾くと自分の家族までおかしくなるので「責任ある経営」をするしかないという構造的な問題もある。反対にサラリーマン社長の責任のなさよ。一時は「専門経営者」などと持てはやされたが、実態は「自分が社長をしている4年間だけ業績がよければいい」ということで難問は先送りだ。極端な例は日産のゴーンさんのように会社の金を横領し、ばれると海外へ逃亡だ。この人も最初は優秀な専門経営者と日本人は称賛していた。

 

トヨタと日産の例はファミリービジネスを堅持した会社と放棄した会社の一つの典型的な例だろう。アメリカでもファミリービジネス的な要素を守ったフォードとGMやクライスラーの差は歴然だ。特にアメリカではエンロン事件でのサラリーマン社長(専門経営者)の無責任な経営を見て、皆が今度はファミリービジネスの強さを認識した側面が強い。日本でも日産の退潮を見てトヨタとの違いを皆が認識すべきだが、なぜか企業形態の議論にはまだなっていない。

 

 

 

 

 

 

ハーバードビジネススクールのコーエン教授とハーバードで懇談ー経営者が身に着けるべき「人間力」とは

今週はボストンのハーバードビジネススクール(HBS)に行って、ハーバードでファミリービジネスをただ一人教えているローレン・コーエン教授に会って、今後の日本のファミリービジネスの「ケース作り」と「週刊エコノミスト」に掲載するコーエン教授との対談を実施した。2時間のハードスケジュールだったが、超スピードでこなした。もっともコーエン教授の早い英語と信じられないほどの頭の回転にはとてもついていけなかったが。

 

実際の内容は9月6日発売の「週刊エコノミスト」を見て頂きたいが(トピックが多すぎてまだ取捨選択ができていない)ここでは、教授の「人間力」に関する洞察を簡単に紹介したい。コーエン教授は40歳以上の「世界重量挙げ選手権」で優勝した稀有な人物だが、同時に子供が6人いて、またファミリービジネスやファイナンスの分野で世界的な業績も挙げているスーパーマン、大天才だ。ハーバードに天才教授多しと言えども「二人といない」人物であろう。

 

そんなこともこの教授の「人間力」であることは間違いない。おそらく私だけでなく誰もが彼に会うとファンになるに違いない。しかしその原因は何であろうか?もちろん重量挙げの世界チャンピオンであることもその一因だが、とてもそれだけでは説明ができない。またそれを言葉で説明することも相当困難だ。

 

教授は「人間力」は「知恵の蓄積」だという原則論から話した。知恵の蓄積は「人間力」を身に着ける第1歩だし究極かもしれない。私からは「生まれつき人間力を持っている人もいる。先天的な要素も大きいのでは」という問題提起をしたが、それを言い出せば議論が拡散しすぎるし、また「お互いビジネススクールの教員」であるならば、授業では身に着けられない話はここではよそう、と言われてしまった。確かに今はハーバードビジネススクールで議論をしているのだ。

 

教授からは、「AI時代には人間力は必要でなくなる」という人もいるが、YUTAKAはどう思う?と聞かれた。これについては、私はAI時代になっても仕事をするには人間同士だし、特に経営者には社員に好かれる「人間力」が必要だ。さらに社員にもこれは必要だ、と力説した。教授も概ねそういうことだろう、という反応だった。

 

議論は尽きないし正解もないが、とても楽しい2時間だった。帰りにチャールズリバーを渡る時、昔よくポーター教授の授業で言いたいことの10分の一も言えず、落ち込みながらこの橋を渡ったことを思い出した。今日ほどすがすがしくこの橋を渡ったことはなく、その時にボートをゆうゆうと漕いでいる人がチェールズ川を通り、その姿が脳裏に焼き付いたのだった。

 

 

ファミリービジネス経営者に必要な「人間力」とはー麻生・麻生セメント会長の例

企業経営者に「人間力が必要」とは言い古された話だ。ところが「人間力とは何か」とか「どうしたら人間力が身に着くか」と聞かれるとうまく答えられる人は少ない。おそらく人間力とはその人の魅力だと思うが、それは先天的なものも後天的に身に着くものもあるだろう。

 

その曖昧模糊とした人間力だが、確かに企業経営者、特にファミリービジネス経営者には必要だ。昔、あるファミリービジネス企業の顧問をしていた時に、取引先の方に「なぜこの会社と取引しているか」と聞いたら、「他の会社でより安く仕入れられるところはあるが、社長が好きだから」と言われて驚いたことがある。

 

そういう意味で、ファミリービジネスの社長や後継者は「人間力」を身につけなければいけないので大変な仕事だ。今年も慶應ビジネススクールの三田の新校舎で秋から「ファミリービジネス/ファミリーオフィス次世代養成講座」を行うが、テーマの一つは「人間力」だ。昨年もこのことを強調した講師が複数いた。

 

今年の講座のトップバッターは麻生セメント会長の麻生泰氏にお願いした。慶應のOB会のトップに立つ連合三田会会長だ。先日、打合せのためにお目にかかったが、「またお会いしたい」と思わせる人だ。まさに「人間力」のある方だ。これは兄の麻生元総理も同じだと聞く。「それはなぜか」と聞かれるといろんな理由を列挙することはできるが、どれも的外れで、「何となく」としか答えられない。これが人間力の本質かもしれない。

 

今年の講座で、一人でも多くのファミリービジネス後継者が「人間力」を一歩でも高められることを目標に講座を進めたい。

 

 

ハーバードビジネススクール(HBS)のローレン・コーエン教授ー天は2物も3物も与えている

ファミリービジネスというと、やはりハーバードビジネススクールとなるが、ここにはかつてジョン・デービスという教授がいた。この人は有名な「スリーサークルモデル」というものを編み出したのだが、MITに移った。代わりにファミリービジネス分野で台頭してきたのが、若手のローレン・コーエン教授だ。HBSで「インサイド・ザ・ファミリーオフィス」という講座を始めている。

 

先月末にファミリーオフィスの国際会議がロスで開かれ、それに参加したが、コーエン教授のこの講座に「外部講師」として参加したファミリーオフィスの経営者に複数会った。コーエン教授のパーソナリティを聞いたら、誰もが口々に、非常に他者のことを考えるNICE GUYだ、というのだ。しかも、アメリカの重量挙げの大会でも優勝したことがある筋肉マンでもあるという。子供は6人いるそうだ。まさにスーパーマンだ。

 

この話を聞いて私の脳裏に浮かんだのは、ポール・サムエルソンだ。2002年にハーバードの客員研究員をしていた時に毎週お会いして頂いたが、学問だけでなく全てに超人的な人だった。私が知っているのは超人的な体力と記憶力だ。1000件以上の電話番号が頭に入っており、自分でどんどん電話をしていると秘書が驚いていた。

 

コーエン教授は「虎屋」のケースをつくり、HBSで講義していることで日本でも話題になった。佐藤智恵さんがそのことを本にしている。私がHBSへ行くと言っても、日本からわざわざ来ていただくのは申し訳ないとZOOMでの会話になっているが、殺人的な日程をやりくりして頂いているのはこちらが恐縮してしまう。彼が来日した時にはいろいろな老舗を回り、是非ハーバードで日本のファミリービジネスの優れた点をいろいろなケースにしてもらうのが今のアイデアだ。

 

日本人は「ハーバード」に弱い。エズラ・ボーゲル教授の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」も教授がハーバードでなかったら日本でそれほど広まらなかっただろう。ボーゲル教授はハーバードの東アジア科の中ではそれほど目立たない存在だったが、コーエン教授はHBSの若手ホープだ。これからおそらくマイケル・ポーター並みの教授になると私は見ているし、現地の評価もそのようだ。

 

ハーバードからファミリーオフィスやファミリービジネスの発信が出てきたら、日本におけるこの分野のイメージも大いに変ってくると推測しているが、さてこれからどうなりますか。外圧でしか変わらない日本という側面はまだまだあるような気もしている。

なぜかターゲットにされた今井尚哉氏ー私にとっては大変な恩人

今月号の雑誌「選択」で、高市総理と今井内閣官房参与の確執が面白おかしく書かれている。多分事実は違うのだろうと思っていたが、今井さんが今週の「文春」で反論するようだ。なぜこのタイミングでこんな記事が出てきたのか、裏がありそうだ。広く報道されているように、1月の解散は今井さんのアイデアだったようで、高市政権にとっても大恩人のはずだ。

 

私と今井さんの接点はもう40年近く前になる。私が経団連に就職したときにまず環境問題を担当した。この時に環境庁(当時)の総務課に通産省(当時)から出向していたのが今井さんだった。私が大学の時に囲碁部だったという話をしたら、今井さんの祖父がアマチュア囲碁の本因坊だったそうで、これにはかなり驚いた。今井さんのおじさんたちも全て囲碁6段以上ということだが、なぜか本人は囲碁には関心がないようだった。

 

当時私は留学を考えていたため、先に留学経験のある今井さんにいろいろと教わった。ハーバードやエールを受けるというと、通産省でそういうところに留学した人を紹介もして頂いた。当時はインターネットもない時代で、情報は口コミ頼りだったので非常に助かった。私がそういうところに行けたのは今井のおかげだった。

 

ということで、留学から帰国後もお世話になっていたが、今井さんは経産省の事務次官とはならず、安倍内閣の政務秘書官となり「影の総理」とまで言われた。今後もその実力を活かして、日本を正しい方向に導いて頂きたいものだ。

 

 

日本人は何度も騙されるー政治家、官僚の「検討する」はやらないこと?!

今度の衆議院選で高市自民党は、消費税の食料品ゼロを国民会議で「検討する」と言っている。世間の常識ではこの発言は前向きに聞こえる。しかし、政治家や官僚の「検討する」というのはほぼ「やらない」と言っているに等しい。私はこのことを社会人になったその年に、経団連の諸先輩から教わり、ひどいショックを受けた。

 

最初は経産省や財務省の若手官僚と付き合うことが多かったが、よく彼らは「この案件は検討します」とか「善処します」とかいう。職場に帰ってそういう報告をすると、上司は「それではマダマダ駄目だな」とか言う。具体的にどうするとまで持っていかないといけないわけである。

 

政治家になると、彼らは官僚よりもずっと調子がいいので、すぐにできないことも「検討しておくよ」という。その結果は毎回同じだ。これは選挙公約でも同じで、できないことを言われて、選挙後に国民は騙されたことに気付くのがいつものパターンだ。

 

しかし、人情としては消費税は下がれば誰でも嬉しいし、期待してしまう。そこが自民党の狡猾なところだ。既にネットでは、自民党が大勝すれば消費税下げは実施されないという予想が複数出てきている。その通りだろう。国民会議で「検討した」結果、総合的に考えると適切ではない、というわけである。一応の筋は通る。

 

「検討する」という曖昧な「業界用語」には注意が必要だ。

 

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