日本ファミリーオフィス協会


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奥田元経団連会長の思い出ー最初の言葉が「私はトヨタの番頭です」

奥田元経団連会長が亡くなられた。私が経団連をやめた時の会長が奥田さんで(経団連の内部では誰でも役職ではなく「さん」付けで呼ぶ。外部の人は驚くが)、やめるときにもかなり励ましていただいた。ともかく気さくな方でよく事務室に降りてきて、職員と話をされたのが印象に残っている。私もその一人だ。こんな会長は土光さんくらいだ。もっとも土光さんは「怒鳴る」ために職員と話をしていたようだが。

 

その時はまさか、20年後にファミリービジネスをやっていようとは想像すらしなかったが、奥田さんが最初に私のデスクの背後に来られての一言が「トヨタの番頭です」だった。笑っていいものか分からずとまどったが、これには深い意味があったかもしれない。私はその言葉がずっと頭から離れずに、その後「豊田章一郎さん以後の奥田、張、渡辺の3代の社長は章夫氏に継ぐまでの番頭的な役割をしていた」という新説を出した。これを晩年の豊田章一郎さんに聞いてもらったら「そういうことだろうね」と言われたのは嬉しかった。昔の日経ムックでこの説を披露した。

 

もっとも、章一郎さんの解釈では奥田さんが自分のことを番頭といったのは、自分が豊田家の番頭的な役割をしているという意味ではなく、へりくだった言い方だったのではないかということだったが、私もそれはそう感じている。しかし、奥田さんほどの人が当時は「ファミリービジネスの強さ」を理解しておらず、豊田家の世襲を否定するような発言をしていたことに驚きも感じた。もっとも、今でも「ファミリービジネスの強さ」を理解している一般企業のトップは少ない。それどころか、ファミリービジネスのトップが自信を持ってその強さを主張することもない。

 

そこで私は、9月7日発売の「週刊エコノミスト」で「ハーバードも注目する日本のファミリービジネスの強さ」という記事をハーバードビジネススクールのローレン・コーエン教授との連名で載せる。日本人がこの強さを認識しないと欧米との差はますます開きますよという話だ。冷静に見ると、我が国でも「強い」企業のほとんどが「ファミリービジネス」であることに気付く。トヨタ、サントリー、キヤノン、ソフトバンク、ファーストリテイリングなどなどだ。その結果、業績面ではファミリービジネスの方が一般企業よりいい。このことをほとんどの日本人は知らない。中堅企業でも特に地方で強いのはほぼファミリー企業だ。だから欧米ではファミリービジネスが尊敬もされている。「責任ある経営をしている」というのがその理由だ。

 

もちろん、オーナー一族は通常かなりの株を持っており、会社が傾くと自分の家族までおかしくなるので「責任ある経営」をするしかないという構造的な問題もある。反対にサラリーマン社長の責任のなさよ。一時は「専門経営者」などと持てはやされたが、実態は「自分が社長をしている4年間だけ業績がよければいい」ということで難問は先送りだ。極端な例は日産のゴーンさんのように会社の金を横領し、ばれると海外へ逃亡だ。この人も最初は優秀な専門経営者と日本人は称賛していた。

 

トヨタと日産の例はファミリービジネスを堅持した会社と放棄した会社の一つの典型的な例だろう。アメリカでもファミリービジネス的な要素を守ったフォードとGMやクライスラーの差は歴然だ。特にアメリカではエンロン事件でのサラリーマン社長(専門経営者)の無責任な経営を見て、皆が今度はファミリービジネスの強さを認識した側面が強い。日本でも日産の退潮を見てトヨタとの違いを皆が認識すべきだが、なぜか企業形態の議論にはまだなっていない。

 

 

 

 

 

 

ハーバードビジネススクールのコーエン教授とハーバードで懇談ー経営者が身に着けるべき「人間力」とは

今週はボストンのハーバードビジネススクール(HBS)に行って、ハーバードでファミリービジネスをただ一人教えているローレン・コーエン教授に会って、今後の日本のファミリービジネスの「ケース作り」と「週刊エコノミスト」に掲載するコーエン教授との対談を実施した。2時間のハードスケジュールだったが、超スピードでこなした。もっともコーエン教授の早い英語と信じられないほどの頭の回転にはとてもついていけなかったが。

 

実際の内容は9月6日発売の「週刊エコノミスト」を見て頂きたいが(トピックが多すぎてまだ取捨選択ができていない)ここでは、教授の「人間力」に関する洞察を簡単に紹介したい。コーエン教授は40歳以上の「世界重量挙げ選手権」で優勝した稀有な人物だが、同時に子供が6人いて、またファミリービジネスやファイナンスの分野で世界的な業績も挙げているスーパーマン、大天才だ。ハーバードに天才教授多しと言えども「二人といない」人物であろう。

 

そんなこともこの教授の「人間力」であることは間違いない。おそらく私だけでなく誰もが彼に会うとファンになるに違いない。しかしその原因は何であろうか?もちろん重量挙げの世界チャンピオンであることもその一因だが、とてもそれだけでは説明ができない。またそれを言葉で説明することも相当困難だ。

 

教授は「人間力」は「知恵の蓄積」だという原則論から話した。知恵の蓄積は「人間力」を身に着ける第1歩だし究極かもしれない。私からは「生まれつき人間力を持っている人もいる。先天的な要素も大きいのでは」という問題提起をしたが、それを言い出せば議論が拡散しすぎるし、また「お互いビジネススクールの教員」であるならば、授業では身に着けられない話はここではよそう、と言われてしまった。確かに今はハーバードビジネススクールで議論をしているのだ。

 

教授からは、「AI時代には人間力は必要でなくなる」という人もいるが、YUTAKAはどう思う?と聞かれた。これについては、私はAI時代になっても仕事をするには人間同士だし、特に経営者には社員に好かれる「人間力」が必要だ。さらに社員にもこれは必要だ、と力説した。教授も概ねそういうことだろう、という反応だった。

 

議論は尽きないし正解もないが、とても楽しい2時間だった。帰りにチャールズリバーを渡る時、昔よくポーター教授の授業で言いたいことの10分の一も言えず、落ち込みながらこの橋を渡ったことを思い出した。今日ほどすがすがしくこの橋を渡ったことはなく、その時にボートをゆうゆうと漕いでいる人がチェールズ川を通り、その姿が脳裏に焼き付いたのだった。

 

 

ファミリービジネス経営者に必要な「人間力」とはー麻生・麻生セメント会長の例

企業経営者に「人間力が必要」とは言い古された話だ。ところが「人間力とは何か」とか「どうしたら人間力が身に着くか」と聞かれるとうまく答えられる人は少ない。おそらく人間力とはその人の魅力だと思うが、それは先天的なものも後天的に身に着くものもあるだろう。

 

その曖昧模糊とした人間力だが、確かに企業経営者、特にファミリービジネス経営者には必要だ。昔、あるファミリービジネス企業の顧問をしていた時に、取引先の方に「なぜこの会社と取引しているか」と聞いたら、「他の会社でより安く仕入れられるところはあるが、社長が好きだから」と言われて驚いたことがある。

 

そういう意味で、ファミリービジネスの社長や後継者は「人間力」を身につけなければいけないので大変な仕事だ。今年も慶應ビジネススクールの三田の新校舎で秋から「ファミリービジネス/ファミリーオフィス次世代養成講座」を行うが、テーマの一つは「人間力」だ。昨年もこのことを強調した講師が複数いた。

 

今年の講座のトップバッターは麻生セメント会長の麻生泰氏にお願いした。慶應のOB会のトップに立つ連合三田会会長だ。先日、打合せのためにお目にかかったが、「またお会いしたい」と思わせる人だ。まさに「人間力」のある方だ。これは兄の麻生元総理も同じだと聞く。「それはなぜか」と聞かれるといろんな理由を列挙することはできるが、どれも的外れで、「何となく」としか答えられない。これが人間力の本質かもしれない。

 

今年の講座で、一人でも多くのファミリービジネス後継者が「人間力」を一歩でも高められることを目標に講座を進めたい。

 

 

ハーバードビジネススクール(HBS)のローレン・コーエン教授ー天は2物も3物も与えている

ファミリービジネスというと、やはりハーバードビジネススクールとなるが、ここにはかつてジョン・デービスという教授がいた。この人は有名な「スリーサークルモデル」というものを編み出したのだが、MITに移った。代わりにファミリービジネス分野で台頭してきたのが、若手のローレン・コーエン教授だ。HBSで「インサイド・ザ・ファミリーオフィス」という講座を始めている。

 

先月末にファミリーオフィスの国際会議がロスで開かれ、それに参加したが、コーエン教授のこの講座に「外部講師」として参加したファミリーオフィスの経営者に複数会った。コーエン教授のパーソナリティを聞いたら、誰もが口々に、非常に他者のことを考えるNICE GUYだ、というのだ。しかも、アメリカの重量挙げの大会でも優勝したことがある筋肉マンでもあるという。子供は6人いるそうだ。まさにスーパーマンだ。

 

この話を聞いて私の脳裏に浮かんだのは、ポール・サムエルソンだ。2002年にハーバードの客員研究員をしていた時に毎週お会いして頂いたが、学問だけでなく全てに超人的な人だった。私が知っているのは超人的な体力と記憶力だ。1000件以上の電話番号が頭に入っており、自分でどんどん電話をしていると秘書が驚いていた。

 

コーエン教授は「虎屋」のケースをつくり、HBSで講義していることで日本でも話題になった。佐藤智恵さんがそのことを本にしている。私がHBSへ行くと言っても、日本からわざわざ来ていただくのは申し訳ないとZOOMでの会話になっているが、殺人的な日程をやりくりして頂いているのはこちらが恐縮してしまう。彼が来日した時にはいろいろな老舗を回り、是非ハーバードで日本のファミリービジネスの優れた点をいろいろなケースにしてもらうのが今のアイデアだ。

 

日本人は「ハーバード」に弱い。エズラ・ボーゲル教授の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」も教授がハーバードでなかったら日本でそれほど広まらなかっただろう。ボーゲル教授はハーバードの東アジア科の中ではそれほど目立たない存在だったが、コーエン教授はHBSの若手ホープだ。これからおそらくマイケル・ポーター並みの教授になると私は見ているし、現地の評価もそのようだ。

 

ハーバードからファミリーオフィスやファミリービジネスの発信が出てきたら、日本におけるこの分野のイメージも大いに変ってくると推測しているが、さてこれからどうなりますか。外圧でしか変わらない日本という側面はまだまだあるような気もしている。

なぜかターゲットにされた今井尚哉氏ー私にとっては大変な恩人

今月号の雑誌「選択」で、高市総理と今井内閣官房参与の確執が面白おかしく書かれている。多分事実は違うのだろうと思っていたが、今井さんが今週の「文春」で反論するようだ。なぜこのタイミングでこんな記事が出てきたのか、裏がありそうだ。広く報道されているように、1月の解散は今井さんのアイデアだったようで、高市政権にとっても大恩人のはずだ。

 

私と今井さんの接点はもう40年近く前になる。私が経団連に就職したときにまず環境問題を担当した。この時に環境庁(当時)の総務課に通産省(当時)から出向していたのが今井さんだった。私が大学の時に囲碁部だったという話をしたら、今井さんの祖父がアマチュア囲碁の本因坊だったそうで、これにはかなり驚いた。今井さんのおじさんたちも全て囲碁6段以上ということだが、なぜか本人は囲碁には関心がないようだった。

 

当時私は留学を考えていたため、先に留学経験のある今井さんにいろいろと教わった。ハーバードやエールを受けるというと、通産省でそういうところに留学した人を紹介もして頂いた。当時はインターネットもない時代で、情報は口コミ頼りだったので非常に助かった。私がそういうところに行けたのは今井のおかげだった。

 

ということで、留学から帰国後もお世話になっていたが、今井さんは経産省の事務次官とはならず、安倍内閣の政務秘書官となり「影の総理」とまで言われた。今後もその実力を活かして、日本を正しい方向に導いて頂きたいものだ。

 

 

日本人は何度も騙されるー政治家、官僚の「検討する」はやらないこと?!

今度の衆議院選で高市自民党は、消費税の食料品ゼロを国民会議で「検討する」と言っている。世間の常識ではこの発言は前向きに聞こえる。しかし、政治家や官僚の「検討する」というのはほぼ「やらない」と言っているに等しい。私はこのことを社会人になったその年に、経団連の諸先輩から教わり、ひどいショックを受けた。

 

最初は経産省や財務省の若手官僚と付き合うことが多かったが、よく彼らは「この案件は検討します」とか「善処します」とかいう。職場に帰ってそういう報告をすると、上司は「それではマダマダ駄目だな」とか言う。具体的にどうするとまで持っていかないといけないわけである。

 

政治家になると、彼らは官僚よりもずっと調子がいいので、すぐにできないことも「検討しておくよ」という。その結果は毎回同じだ。これは選挙公約でも同じで、できないことを言われて、選挙後に国民は騙されたことに気付くのがいつものパターンだ。

 

しかし、人情としては消費税は下がれば誰でも嬉しいし、期待してしまう。そこが自民党の狡猾なところだ。既にネットでは、自民党が大勝すれば消費税下げは実施されないという予想が複数出てきている。その通りだろう。国民会議で「検討した」結果、総合的に考えると適切ではない、というわけである。一応の筋は通る。

 

「検討する」という曖昧な「業界用語」には注意が必要だ。

 

モーリー・ロバートソンさんに合掌ーハーバード日本同窓会にも協力

モーリーさんの突然の訃報が入り、驚くとともに生前の姿を思い出した。私はそもそも全く接点はなかったが、あるパーティでお会いし、その時にたまたまハーバード日本同窓会の副会長をしていたので、会合に来てほしいという話をした。その時の話しぶりから積極的ではない感じはしたが、一度電話で誘いサクラを見る会に来てくれたのは嬉しかった。

 

彼は同い年で、受験の年に東大とハーバードに合格したアメリカ人の超人がいるとマスコミで騒がれたので名前だけは知っていた。音楽関係の仕事だったので永年会うこともなかったが、話をしてみるとエリート臭は全くなく、ともかく明るい人であった。しかしテレビでコメントをしている時には別人のようだった。

 

同じことはパックンにも言える。やはり花見の会で会ったが、テレビで見る時には固い感じだが、普段は柔らかい。それでいて、政治や経済の話をするとちょっと日本人とは違った観点からの意見を言う。この点はモーリーも同じだが、ハーバード卒業生の矜持を感じる点で非常に勉強にもなった。

 

モーリーと会えなくなったとは非常にショックでもあるが、ともかく冥福を祈りたい。

 

 

 

 

 

慶應ビジネススクールでの「ファミリービジネス次世代養成講座」の1年目が終了ー来年はさらに拡充

日本のファミリービジネスにおいて私が問題だと感じているのは、「2代目、3代目の弱さ」だ。もっとも、これは海外でも同じこと。どうしても「初代」(潰さない創業者)は強いので、2代目、3代目が弱く感じてしまう。統計でも企業が3代まで続くのは10%程度。ただ、4代目以降(100年企業)になるとなかなか潰れないというデータもある。

 

そこで、今年から慶應ビジネススクールで新たに三田新校舎で「ファミリービジネス次世代養成講座」を始めた。受講生はファミリービジネスの2代目、3代目に絞って募集し、ファミリービジネスに関心の深いメガバンクや会計事務所も参加し20名程度が集まり、「実学」となるよう講師も選んだ。

 

主なテーマはファミリービジネスの後継者が本当に困っていることで、家族の問題や事業承継の悩みに応えられる内容とした。実際のファミリービジネスの経営者で、2代目、3代目の方(あるいは老舗の後継者)を講師として、本音の議論をした。中には婿養子や最近注目されている「跡取り娘」の方からも伺い、質疑も長時間続いた。

 

ファミリービジネスの後継者に絞った講座は、海外のビジネススクールではよくあるものの、日本ではなかったのではないか。しっかりした後継者を次々に生み出すことが、日本におけるファミリービジネスの「正しい理解」につながる。

 

こういう講座は、ファミリービジネスの後継者が多い慶應で行うべきことなので(参加者や講師は慶應卒以外の人が多いが)、三田に新校舎ができたこのタイミングで始めた。あと数年は続けて、この講座から日本のファミリービジネスを変えていく人材を生み出したい。

 

 

 

 

日本における「オフレコ」とは?ー国際的には考えられないこと

またまた、官邸関係での「オフレコ」懇談会から核保有関係の大変な話が暴露された。これを言った「官邸筋」はオフレコだから個人的な意見を言ったというのだろうが、日本では「オフレコがオフレコでない」ということは度々起こっている。最近では、岸田首相の秘書官がオフレコ懇でLGBT関係についてのことを言って解任されたことが記憶に新しい。

 

しかし、「オフレコはオフレコ」なのでそれを暴露した方が非難されないのもおかしい。もちろん、個人的見解を言った方も、日本のこういう特殊な状況を知っていながらの発言なので論外ではあるが、国際的には暴露側が非難されるだろう。そうしないと、記者会見のオフレコ懇で本音の話もできなくなるし、逆に記者の方も困るのではないか。

 

例えば、私が頻繁に参加している「ファミリーオフィスの国際会議」はオフレコ、チャッタムハウスルールの下で開かれる。その会議の内容を記事にでもしようものならば即座に出入り禁止となる。私の知る限り、出入り禁止になった人はいないので、欧米のファミリ―オフィス関係者は皆、ルールを守っている。これが国際社会では常識でもある。

 

よく、「日本は商人国家だからルール破りは許される、建て前と本音の国だ」とか言われる。例えば、就職協定や霞が関訪問の話は「表と裏」があり、解禁日の前に特定の人には会っていたり、長年こういうことが非難もされない。しかし、これは国際社会では通用しないだろう。早く日本も昭和的な商人国家を抜け出し、少なくとも重要な案件は「ルール通り」に行わないと国際場裏からはじかれるだろう。

 

 

急激に「ファミリーオフィス」の問合せが増えるーいよいよ日本でも広まるか?!

最近は日本でも資産の二極化が進んできたせいか、いろいろなところで「ファミリーオフィス」という文字を見るようになった。旧財閥系を初め、一代で資産を築いた方も〇〇ファミリ―オフィスというような事務所を持つことが増えた。私がこのことを始めた2003年にはこんなことをする日本人はおらず、よく「相山は経団連を辞めてから頭がおかしくなった」と言われたものだ。

 

広まったのはいいことだが、世の中いいことずくめにはならない。広がる過程で「変な」自称ファミリーオフィスも出てきているのが問題になっている。4年前に世間を騒がせたウォール街の「アルケゴス」のような、単に超富裕層を狙ったファンドを売るだけの会社が増えてきたことだ。こういうファンドの会社が、今のところ規制のない「ファミリーオフィス」と名乗ってきて、数では圧倒的に多くなっている現状がある。

 

そもそもファミリ―オフィスとは、超富裕家族(ファミリー)のニーズを全てワンストップで引き受ける事務所であり、ロックフェラーやロスチャイルド家などの大富豪が自分でつくる「シングルファミリーオフィス」と、私の永田町ファミリーオフィスのように外部の複数の超富裕家族のニーズを聞いて、それぞれに最適解を提供する「マルチ(クライアント)ファミリーオフィス」のことを指す。

 

ところが、多分10年ほど前からファンドを売る会社への規制が各国厳しくなり、規制を逃れるために「ファミリーオフィス」と名乗って超富裕層をターゲットにファンドを売る「自称ファミリーオフィス」が急激に数を増やしている。世界全体だと既に10万件を超えていると思われる。「ファミリーオフィス」は各国とも名乗ることに規制がないのですぐに誰でも名乗ることができるのだ。

 

最近ではこういうファミリ―オフィスを「マルチコマーシャルファミリ―オフィス」と言ったりして、数では圧倒的に多いのでこれが主流になりつつある。「アルケゴス」のような会社だ。今後とも問題を起こすのはこの類型だと思われる。

 

この事態にどう対応したらいいのか。アルケゴス問題が起きた時に、ヨーロッパのファミリーオフィス協会の会長をしていた経験の長いピエールさんに聞いたところ、そもそもファミリ―オフィスの定義も国際的に決まっているわけではなく、また規制にもなじまない業態であるので自然に任せるしかないのでは。しかし、問題を起こす会社が多くなり「ファミリーオフィス」全体が悪のようなことになったら、何らかの規制も必要ではないか、ということだった。しばらく様子を見るしかないのか。

 

ともかく、世間に知れ渡ってきたのは歓迎だが、「変な方向」に行くのは困る状況で、一つの転換期、過渡期にあると個人的には考えている。

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