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豊田章一郎氏のご逝去ーファミリービジネスについてもご指導頂く

昨日、豊田章一郎経団連名誉会長が亡くなられた。97歳ということで大往生だ。最後にお会いしたのはコロナ前の2019年11月だ。その時はあるパーティに車椅子で参加されていた。

 

早速、近づいていき、「豊田会長、経団連でお世話になりました相山です」と申し上げると、もう絶対に覚えていないと確信しているが、「おお、久しぶり」と言われた。そういうところに気を使われる方だった。

 

「トヨタ」といえば日本一の大企業であると同時に、日本一のファミリービジネスだ。この時は、豊田会長のご意見を聞く唯一無二のチャンスだと思い、思い切って伺ってみた。「大学でファミリービジネスの講座を何年もしていますが、日本ではなぜこんなにファミリービジネスが過小評価されイメージも悪いのですか」

 

豊田会長は間髪を入れずいつもの口調で、「アメリカでも自動車業界で実質的に生き残ったのはファミリーを堅持したフォードだけだっただろう。企業はファミリーの方が強いに決まっているが、日本でイメージが悪いのは嫉妬もあるんじゃないか」という全くの核心をついた回答だった。この間、多分10秒強だ。

 

トヨタは「一代一業」といって、必ず豊田家の社長は新規分野に参入しなければならない決まりがある。佐吉氏のご子息である喜一郎氏は自動車に参入したが、章一郎氏は「トヨタホーム」だ。

 

一度、奈良の学園都市「けいはんな」出張に同行させて頂いたことがある。その時に建材の事業所を訪問され、長時間質問されていた姿が思い出される。「トヨタホーム」も参入後、当初は苦戦したが7、8年で黒字化した。

 

ともかく、偉大なファミリービジネス経営者だった。ご冥福をお祈りしたい。

 

 

 

 

 

 

本日の日経記事「中計はレカネマブを生むか」に賛同ーファミリービジネス・エーザイの強さ

本日の日経にファミリービジネスの強さの本質を分かりやすく指摘する、中山淳史氏の記事が載っている。「中計」とは中期経営計画、「レカネマブ」とはエーザイが開発している抗アルツハイマー薬で、先頃米国で迅速承認を取った画期的な薬だ。日本で承認されれば、また大きな話題となるとともに、我々の人生を変える可能性もある。

 

これを開発してきたエーザイ3代目の内藤CEOからこの新薬のお話を伺ったことがあるが、始めたのは先代だという。もう40年も前で既にその開発費は数千億円にのぼる。これは4年で社長を退任しその間に成果を出さねばいけないサラリーマン社長では「絶対に」できないことだ。長期的な視野で経営できることがファミリービジネスの強さの本質だ。

 

日本の上場企業の過半はサラリーマン社長の会社で、「中計」はその任期である約4年くらいを目途にした経営計画だ。しかし、これではとてもイノベーションは起こせない。日本でイノベーションが少ない理由もここに求められると考えている。社長の任期の長いトヨタやエーザイなどのファミリービジネスでないと、イノベーションを起こすのは難しいだろう。

 

中山氏はこの記事で日本のファミリービジネスが一般企業よりも業績がいいことを指摘しているが、これは世界的な傾向だ。この事実はほとんどの日本人が知らない。私もファミリービジネスに関わるまでは知らなかった。「古くて悪い経営形態」だと思っていた。これは政治家の世襲の擦り込みや岸田総理ではないが、政治家2世との混同も多い。

 

アメリカでも1980年代まではファミリービジネスは「古くて悪い経営」だと思われていた。ところが、アメリカを代表するファミリービジネスであるジョンソンエンドジョンソン社が主力製品のタイレノールの異物混入事件が起きたときに、100億円以上をかけて全ての製品を回収したのだ。この事例からアメリカ国民は「ファミリービジネスは責任のある経営をしている」と認識した。今では「ファミリーでないと責任のある経営はしない」となっている。ヨーロッパでも同様だ。

 

翻って日本ではどうか。私も10年以上前から明治、東大、慶應で「ファミリービジネス」の講座をつくったり、雑誌でその強さを訴えてはきているが、なかなか日本人は擦り込みが強く理解が広まらない。大学やマスコミを通じたこういう地道な活動も必要だと思うが、やはりアメリカのジョンソンエンドジョンソンのような「ファミリーはすごい」という象徴的な事例がないと浸透は難しいと感じている。

 

その意味で、今注目しているのはエーザイの「レカネマブ」だ。これはサラリーマン社長の会社では「絶対に」できないことだ。内藤家の悲願であり、またこれが製品化すれば世界中の多くの人が助かるものすごいイノベーションだ(個人的にも期待している。高そうだが)。

 

我々日本人も誇りにできる発明だし、そこから「やはりファミリーはすごい」となれば日本人もファミリービジネスの良さが分かり、そこから学ぶことによって日本再生の一助になることは間違いない。

 

 

 

 

官僚の質の低下に驚きー経産省荒井氏の「暴言」の背景

昨晩から世間は経産省出身の首相秘書官の荒井氏の発言で大騒ぎだ。結局は即日解任となったが、それにしても不思議に思うことがある。荒井氏は「オフレコ懇談会」を本当にオフレコだと思っていたのか?

 

私も20年以上前に経団連の広報部にいたことがあるが、その時にも経団連会長や副会長と財界記者クラブの記者との「オフレコ懇談会」はあった。記者からの要請で行われるものだが、もちろんこの席で出た発言は記事になる。それじゃあ「オフレコ」ではないじゃないかと感じたものだ。

 

しかし、記者の立場になるとオフレコもオンレコもない。ともかく目ぼしい情報を知ったらそれを記事にするのが彼らの仕事だからだ。そこでベテラン記者は「挑発」が非常にうまくなる。怒らせて発言させるなど、そこがプロの腕だ。応える方も当然、わきまえないといけない。オフレコとはいえ、お互い真剣勝負の場だからだ。

 

こんなことは、経産省の局長も経験し首相秘書官にも抜擢された荒井氏が知らないはずがない。多分、記者の誘導に乗ったのだろうが、もちろんそんなことは言い訳にはならない。お互い仕事でやっていることだ。

 

経産省のOBとは誰とも話していないが、おそらく後輩の質の低下を憂えるのではないか。日本は、「政治は三流だが優秀な官僚がいる」ということで成り立ってきたと言われてきたが、上がこれでは、若手の劣化が問題になっている現状を鑑みると一国民として将来が本当に不安だ。そろそろ本気で、国家の問題として、官僚の質の劣化問題を考える時が来ている気がする。

豊田章男氏がトヨタ会長にー経団連会長への待望論

先日は意外な時期にトヨタ社長交代の発表があった。「ファミリービジネス」の講義をしている者として、私はよく「日本企業の98%までがファミリービジネスで日本一のトヨタから隣のラーメン屋まで全てファミリービジネスです」と言っている。その時価総額日本一でかつ日本一のファミリービジネスのトヨタは、ビジネススクールでの講義では必須のケーススタディの題材でもある。

 

昨年の1年目の慶應ビジネススクール「ファミリービジネス概論」でも、「ファミリービジネスの進化系」としてトヨタを取り上げた。豊田章一郎氏から章男氏までトヨタ家以外から3人の社長が続いたが(奥田、張、渡辺)、この3人を私はトヨタの次世代につなぐための「番頭」的な役割を担ったと言っている。となると、佐藤新社長も豊田大輔氏につなぐ「番頭」的な役割を今後するのだろうか。

 

それほど「トヨタ」では豊田家の影響力が未だに強いのだ。また、豊田家の人が社長の時期には業績も伸びている。これがファミリービジネス経営学でいう「ファミリーネス(家族力)」なのか。慶応での授業では、「トヨタは大輔氏に将来の社長を委ねるべきか」という質問をしたが、全員が「YES」だった。これは章男氏、大輔氏とも高校から慶應だったこととも関係があるかも知れない。

 

日本経済という観点からみると、すでにマスコミ各社での報道のように、豊田章男氏に経団連会長としての期待が膨らむ。最近の経団連会長は失礼ながら影が薄い。「経済界代表」として経済同友会の代表幹事がインタビューされることも多くなり、経団連OBとしては忸怩たる感がある。昔では考えられなかった。

 

しかも経済同友会は、次期代表幹事にプレゼンのうまいサントリーの新浪社長

が就任する。マスコミはそちらに流れよう。もちろんハーバードに同じ時期にいた身として新浪さんには活躍してもらいたいが、やはり財界総本山は経団連なのでそちらが目立たないといけない。

 

幸い、昨年から経団連はモビリティ委員会をつくり豊田章男氏を共同委員長にしている。章男氏は財界活動に消極的というウワサもあったが、これで副会長から会長への道筋も開けた。久保田事務総長と岩崎常務理事に頑張ってもらい、豊田章男会長のもと経団連の復権も期待したい。

 

 

日本の「失われた30年」からどう脱却するか?ー企業はいいかげん欧米のマネはやめるべき

私が経団連に勤めていたころは、まだ「失われた10年からいかに脱却するか」などと経産省の役人と話していたものだが、その後日本は何にもできずに失われた30年となった。この間にやってきた改革といえば、ガバナンスコードなど欧米流の手法を入れたことだ。しかし結果は、ますます日本は弱くなった。

 

欧米人、特にイギリス人はああいう規範をつくるのが好きだ。ISO9000も14000もイギリスの規格から始まった。しかしこれは、欧州には合うかも知れないが、当然日本には合わない。欧米流の経営手法を入れるとますます日本は弱くなる。

 

金融行政もしかりで、エール大元教授の浜田宏一氏は第2次安倍政権発足時の2012年12月に「アメリカは日本経済の復活を知っている」という本を書き、要は米国流の金融緩和さえすれば日本経済は復活する、という信じられないことを経済政策に疎い安倍さんに吹き込んだ。自身は安倍政権のブレーンとなり、金融緩和を推奨したが、結果はこの有様だ。金融政策も元に戻すのが大変で既に大混乱となっている。そもそも、魔法の杖はどこにもないのだ。

 

ここ30年、欧米流の何をやってもダメだったのだから、いいかげん軌道修正を考えるべきだろう。それは古き日本の経営に戻ることだ。「青い鳥」は実は手元にある。今年の慶應ビジネススクールの講座でこういうことを言ったファミリービジネスオーナーがいた。

 

日本で江戸時代以来、ここ300年間続いた「家族的経営に戻れ」ということだ。これがおそらく日本的風土には合うのだろう。さらに言うと、実は欧米の歴史のある優良企業のほとんどがこの「家族的経営」を取っていることを日本人は知らない。

 

アメリカのSCジョンソン、フランスのルイ・ヴィトン、ドイツのBMWといった優良企業は「昔の日本的経営じゃないか」と間違うくらい、従業員を大事にする経営をしている。日本で目立って報道されるのはゴールドマンの大量解雇などで、「欧米企業は恐い」という印象になるが、実は欧米でも強い企業は長期的視野のもとに家族的経営をしていることに驚く。

 

古き良き日本的経営を守っているのが、トヨタに代表される強い「同族企業ーファミリービジネス」だ。星野リゾートの星野佳路氏が「ファミリービジネスをライフワークにしたい」と公言しているのは、ここに日本復活の肝があると考えているからではないか。ここから日本経済復活の狼煙を上げたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

元旦は京都の「一文字屋和輔」を訪問ーあぶり餅だけで1000年

昨年の慶應ビジネススクールの「ファミリービジネス概論」の講座の中で、京都の1000年企業である「一文字屋和輔」の話が出たので、たまたま今年は年越しを京都で迎えたため元旦に行ってみた。

 

「一文字屋和輔」は我々ファミリービジネスに携わっている者には有名で、飲食分野で日本一(=世界一)古い企業だ。創業は西暦1000年、994年創立の今宮神社の門前で営業を始めたようだ。メニューは何と「あぶり餅」一つだ。

 

「養命酒」も養命酒だけで100年以上続いているが、多角化はしている。一文字屋の方は多角化も何もない。11本600円のあぶり餅だけだ。これで1000年も続くとは何かあるに違いないと思って伺ったのだ。

 

注文をして待つこと20分、あぶり餅は出てこない。元旦の超混雑の中では仕方がないと思ったが、後で来た人の方が早く出て来た。完全に忘れられていることに気付き、アルバイトの学生風の女性に言った。

 

その後すぐに出てきたが、何と奥からおかみが持ってきたのだ。600円の客に対してである。そうしてお詫びの意味で11本が16本入ったものを出された。「いやいや申し訳ない」と言いながらいただいたが、何かこの店が1000年続いている理由も分かった気がする。

 

あぶり餅の味はシンプルである。この味を1000年間変えていないという。今宮神社の門前なので参拝客は来るだろうが、この神社は地元の人は知っていても全国区とはいいがたい。京都には他にいくらでも有名な神社はある。

 

それでいて1000年継続できるのは、ハードではなくソフト分野での何かがあるからとしか考えられない。その一つが接客なのだろう。

 

1000年企業は奥が深い。今年の慶應ビジネススクールの授業ではこういう観点も入れていこうと思い立った。

初年度の慶應ビジネススクールの講義は終了ー来年に向けていくつかの課題が

今年の慶應ビジネススクール(KBS)での初年度の「ファミリービジネス概論」が終了した。30数名の成績も提出し一段落だ。成績というのは付けられるのも嫌だが、付ける方はもっと厳しい。何らかの理由で途中から授業に出れなくなった人には、その前にいくらいい発言をしていてもDROPを付けざるを得ない。

 

まあ、それぞれの受講者がこの講座で「持って帰れたもの」があればいいので成績は二の次だが、ビジネススクールの授業料は高いので、講師はそれなりの質の授業を提供しなくてはならない。初年度の9回の講義を終え、多くの課題が出てきた気がする。

 

まずは「受講生ファースト」の見地から、受講生のニーズに応えられたか?初年度でどういう属性の学生がいるか分かったのは9月の初めだったが、やはりKBSはファミリービジネスの後継者候補が多い。企業派遣の方々は派遣元がファミリービジネスが多かったが、問題は若い後継者の方だろう。来年はこの層に絞った講義をしたい。

 

第2に慶應義塾の本旨である「実学」ができていたか?そもそも、KBSは私のゼミの指導教授であった石川忠雄先生が慶大塾長になって「実学を体現するにはどうしたらいいか」と考え1978年につくったものだ。受講生にすぐにでも役立つものになっていたかどうか?まだまだだ。来年はファミリービジネスの後継者候補にもっと自社の強み、弱みを発表してもらい、皆で議論するような場をつくりたい。

 

まだまだ試行錯誤だが、日本でファミリービジネスの授業が始まったのは2011年に明治大ビジネススクールで青井倫一先生(元KBS校長)と私が始めた「ファミリービジネス論」だった。それから10年以上たって、どれだけ進化したかを聞かれると正直心もとない。

 

海外の「ファミリービジネス」の授業も参考にしているが、「日本型」はかなり違う気がしている。ハーバードやケロッグやIMDの授業の真似をして、外国企業のケーススタディをしても日本での「実学」とは程遠いだろう。

 

来年からはしばらく「日本型ファミリービジネスの実学講座のあり方」を探ることになるが、1、2年でいい解を見つけたい。

慶應ビジネススクールでロート製薬山田邦雄会長から聞くー日本経済への直言

昨日は慶應ビジネススクール(KBS)の私が担当している「ファミリービジネス概論」の第7回目の講義があった。今回は外部講師として、KBSの元OB会会長でもあるロート製薬の山田会長から「ロート製薬のチャレンジ経営」というタイトルで、ファミリービジネスのリスクや可能性の話を伺った。

 

ロート製薬は奈良県の宇陀市で創業され、最初は「万病の元は胃にある」ということで胃薬をつくる会社だったようだ。2代目がロート製薬初代社長で、ここから目薬を作り出したが、意外なことに収益の中心はパンシロンだった。高度成長の時には飲み会が多かったこともあり、1960年代にはパンシロンが月330万こも売れたことがあったという。

 

1999年に山田邦雄氏が3代目社長になってからは、ファミリービジネスのオーナーのリーダシップで海外シフトや化粧品ビジネス、再生医療へのチェレンジを行っている。それとともに、新たな働き方の方向性も示している。一つがいち早い副業の解禁だ。山田会長いわく「サラリーマンは能力の30%くらいしか使っていないので副業で能力を使うべき」というご指摘は耳に痛い。

 

日本経済の将来には大きな危機感をお持ちで(当然だが)、ここ20~30年に日本企業が忘れていたものを取り戻さねば子供たちに申し訳ないと言われた。いわゆる失われた30年問題だ。日本人は横並びで人と同じことをしているのが一因で、ハミ出さねばアメリカのGAFAのような企業は生まれない。

 

ロートでもいろいろなチャレンジをされているが、だいたい成功は3分の一くらいだそうだ。しかし、ヒット3割は野球でいうと優秀なバッターだ。10割バッターはいない。日本企業は10割を目指している間に海外に先を越されたという指摘は、「減点主義」の日本企業の弱点を示している。

 

ビジネススクールの教育に関しては「失敗の研究こそたくさんやるべき」というお考えで、これは私の1年目の実感であり、共感もできる。これは教科書よりも実際の経営者から聞いた方が身に付くが、なかなか「失敗を話してくれるオーナー経営者がいない」という問題はある。

 

昨日の講義は「特別講演」として、KBS生誰もが聞けるものだったが、多くの学生が集まり皆、大満足だった。山田会長にはKBSの元OB会会長として、またご指導を頂きたい。

 

 

 

斎藤健さんが再び閣僚へー今の政界では最も骨のある政治家の一人

斎藤健さんが法務大臣となった。ハーバードの大学院で1992年の卒業同期だ。もっとも斎藤さんの方が少し年上ではある。2006年に経産省を退職され、選挙に出た時には驚いたが、そこで落選し、周囲の人は皆去っていったという話を聞いたことがある。まあ、これは誰でもそうで、やはり経産省出身の小林興起さんからも同じ話を聞いた。

 

2009年に議員になってからは、農業政策を中心として農水大臣もされたので、今回の人事は意外感もある。石破派だったが今は無派閥だ。ある経産省の斎藤さんの先輩は、石破派では事務総長とかはしておらずそれほどコミットしていなかったので、石破さんがああなってもダメージは少なかっただろう、と評していた。この辺りの動きもさすがだ。

 

今の自民党は岸田さん以下、どうなっているんだという議員、大臣がたくさんいるが、多分、斎藤さんが最も政策通で、人格識見にも優れている人物ではなかろうか。農水大臣をしていた時の資産公開では預金ゼロになっていた。斎藤さんなら有り得る話だ。

 

思い出すのが、農水大臣の時に安倍政権の閣内にありながら石破さんを応援していたので、「大臣をやめろ」と言った人(ハーバードの先輩だが)に対して「ふざけるな!」と怒鳴りつけたことだ。斎藤さんの方が筋が通っている。閣内にいることと誰を総理候補として応援するかは全く関係がない。

 

優秀な人が政界に行かなくなってから久しいが、地盤沈下の政界の中で斎藤さんには一人でも気を吐いてほしい。自分のためでなく、国家のために働く斎藤さんを変らず応援したい。

 

 

慶應ビジネススクールの授業で文明堂の宮崎社長を招くー婿養子経営の強み

慶應ビジネススクール(KBS)の「ファミリービジネス概論」は既に6回を過ぎたが(全9回)、その第5回では文明堂東京の宮崎進司社長を招き「婿養子経営の強み」について話して頂いた。宮崎社長には、2019年に週刊エコノミストで私が「同族経営の底力」という連載をしていた時に、第3回で婿養子について語って頂いた。当時は大野姓だった。

 

連載の時にも苦労したが、なかなか「婿養子」の方から婿養子経営のことを直接伺うのは難しい。皆、婿養子ということを公表したがらないからだ。今でも特に地方に行くと「あの家は婿養子だから、、、」ということを言う人が多い。嫉妬心もあるのだろうが、そんな雰囲気だから婿養子という文脈では出て頂けないことが多い。

 

ところが宮崎社長の場合は、たまたま結婚した相手が文明堂の一人娘であり、そのことは結婚の直前まで知らなかったという非常にレアなケースだ。だからこだわりもなく婿養子になった。しかも、婿養子を集めた「ムコの会」を主宰している。40名ほどのメンバーがいるようだ。

 

宮崎社長の軽妙な語り口に皆ほれぼれし、婿養子がなぜ強いのか(シガラミがないので事業のリストラや新規事業への進出が容易など)について明解なご説明があり、質疑も時間オーバーまで続いた。特に女性陣からの質問が多かった。受講生もファミリービジネスの現経営者か将来の経営者なので、若い女性経営者候補は婿養子への関心もあるのだろうか。

 

大学の授業も、特にビジネススクールでは外部講師を呼ぶことが多いが(特に「実学」を旨とする慶應ビジネススクールでは必須だろう)、なかなか実務家でうまい説明ができる方は少ない。もちろん経営が本業だからだ。星野リゾートの星野代表も話が上手だが、宮崎社長もファミリビジネス分野では双璧であろう。またお世話になりたい方だ。