日本ファミリーオフィス協会 -4ページ目

蓮舫氏の都知事選出馬で小池知事はピンチー学歴詐称はどうなるか?

何度も言っているが、学歴詐称は政治家であってもなくてもダメである。特に私のように苦労して外国で学位を取った人には、非常に失礼な行為だ。小池知事も仮に甲南女子高卒だったらこれまでのキャリアや現在の地位は有り得なかっただろう。「カイロ大学首席卒業」ということでのし上がった人だ。しかしこれは「砂の器」ではないか。

 

そうはいっても、まだまだプレゼン上手の「小池人気」は根強い。今回も自公推薦で何とか乗り切ることを心配していたが、「東京都知事」はやはりいろいろな人にとって魅力的なポジションなので、チャンスと見れば誰かが出てくる。今回は蓮舫氏が出てきた。もちろん、「勝てる」見込みが出てきたからだ。

 

これで、もと小池側近である小島さんも蓮舫側に付くだろうし、石井妙子の筆も活気付く。小池知事は大ピンチではないか。注目は「カイロ大学卒」とまた明記してくるかだが、今さら引っ込めるわけにはいかない。これは自らウソを認める行為なので必ず明記してくる。ここで小島さんが刑事告発をするという流れだ。

 

現実にも、東京都知事がエジプト軍事政権に弱みを握られていていいはずがない。報道によると、東京都の税金の1億円くらいがエジプトに流れているらしい。都民としては冗談じゃない。小池都知事にはご退場願いたい。できれば都知事選にも出てほしくない。まともな政策論議ができないからだ。

 

これから自民党もどう動くか分からないが、ともかく蓮舫氏が決断してくれてよかった。神宮の大樹も守られ、築地はもう手遅れだが、都民の血税が小池氏の人気取りのために変に使われることもなくなるだろう。

 

 

連日の小島敏郎さんの発信に拍手ー石井妙子氏も喜んでいるはず

小島さんは相変わらず切れ者で人格者だ。連日のマスコミ報道を注視しているが、「正義の味方、月光仮面」を地で行っている。私は経団連に入った時にまず環境問題の担当になったので、当時の環境庁の人々とよくお話をしたが、小島さんの同期で後に環境省の事務次官になった小林光さんからも小島さんのことを聞いていた。

 

小林さんは面白系の人物だったが、小島さんは堅物系で水俣病問題を何とかうまく解決することに真摯に取り組んでいた。小林さんからは「小島は環境庁一の切れ者だし人格者なので、相山君も見習ったらいい」と言われ、夜、環境庁に小島課長補佐(当時)を訪ね薫陶を受けたりもしていた。

 

他方、「女帝小池百合子」を上梓して世間を驚かせた石井妙子氏は、白百合女子大の「囲碁部」出身だ。慶應囲碁部と白百合囲碁部は一緒に活動していたので彼女が学生の時から話をしていたが、当時はキャピキャピした女子大生だった。その後、卒業後は「囲碁ライター」になったので驚いた。文学部なので文章に自信があったのだろう。

 

石井氏はその後、文才を発揮しいろいろなノンフィクションもので賞を取ったり有名になっていった。そこで目をつけたのが「女帝」だった。2020年に単行本で20万部以上のベストセラーになり、昨年の文庫本では仮名だった早川氏が本名の北原で出てきている。何せ相手は「女帝」なのでいつつぶされてもおかしくない。石井氏も北原氏も身の危険を感じながらの暴露だったと書いている。

 

問題は小島さんが「女帝」を完全にノックアウトできるかだが、あんなに頭のいい小島さんが始めたことだから、最後までのシナリオはできていることだろう。今度こそ「学歴詐称」は許さずに「月光仮面」に退治してもらいたいものだ。但し、小池氏はなかなか倒されないのが「女帝」と言われる所以なので、これからが大変だろう。

 

小池知事もこれだけ騒がれているのだから、本当に卒業しているのなら手元にある「卒業証書」を持ってきて、コピーして記者に配って「右からでも左からでも調べて」と言えばすぐに解決する話なのに(少なくとも本当に卒業しているのなら誰でもそうする)、それができないのは卒業していないからだと思われても仕方がない。本人は苦しくないのだろうか?鋼のメンタルだ。ほとんどの人間はこんなに強くはなれない。さすがは「女帝」!

 

 

 

 

 

 

 

小島敏郎さんの小池知事学歴詐称告発に一票ー元環境省幹部で純真な人

今日、ネットで騒ぎになっていたのは、元小池都知事の側近で環境省のNO.2だった小島敏郎さんの告発だ。明日発売の文芸春秋に載るらしいが、くすぶり続けている小池都知事のカイロ大学卒業の学歴詐称の告発だ。何か月か前に「女帝」本に匿名で出ていた元カイロ大学学生だった方が「実名告発」をしたがほとんど注目されなかった。

 

私はアメリカでかなり苦労して修士を取ったので、通訳の一平さんやショーンK、あるいはサッチーのように「言ったもの勝ち」のように学歴詐称をする人間に非常に嫌悪感、怒りを覚える。たまたま、白百合女子大の囲碁部出身の石井妙子氏が「女帝」を書いたことから、彼女に拍手もした。

 

今日は、小島さんがこんな告発をしたことに驚愕するとともに敬意を表したい。小島さんはウソをつく人間ではないので、この話は相当の信憑性がある。私は経団連に入った最初に環境問題を担当したため、当時環境庁の課長補佐だった小島さんに、環境問題に関する薫陶を何度も頂いた。ほぼ水俣病に関する話だったが、官僚でこのように純粋に真摯に取り組んでいる人がいることを知って非常に刺激を受けた。

 

その記事の要点だけを読んだが、要は自分が小池知事の学歴詐称の「手伝い」をしてしまったことの懺悔だ。確かにあの時にカイロ大使館が唐突に「小池知事がカイロ大学を卒業している」と言ったのにが大きな違和感を覚えたが、そのことで小池知事は先の知事選で大勝した。

 

今突然、小島さんが告発したのは、あの人なりの正義感や国を思う心からだろう。今の政治情勢ではまかり間違えば「小池総理誕生」も有り得ない話ではない。そうしたら、自分の学歴でウソをつくような人間が日本のトップに立つことになる。これは日本のためにも有り得ないだろう。

 

ともかく、小池都知事にはいい加減に学歴詐称を認めて、別の意味で小島さんのように懺悔し、政界から去って頂きたいものだ。

 

 

 

 

 

 

小林製薬の危機対応にはがっかりー40年前のジョンソンエンドジョンソンの事例から学ぶべき

最近の小林製薬の紅麹事件。同社の対応の「遅さ」には唖然とする。小林製薬は言うまでもなく小林家のファミリービジネスだが、この会社は「ファミリービジネスの強み」は全く活かされていないと言わざるを得ない。小林社長は40年以上前のジョンソンエンドジョンソン社の「タイレノール事件」を知らないのであろうか。

 

この事件は、アメリカでのファミリービジネスへのイメージを大きく変えた歴史的なできごとで、ジョンソン社が「タイレノール」に異物が混入し死亡者が出た時に素早く製品を回収し、「ファミリービジネスの意思決定の迅速さと責任ある経営」を世界に見せつけた。広いアメリカで回収には100億円以上のコストがかかったようだが、ジョンソン社の得た「信用」はそれ以上だった。

 

まさか同業の小林社長がこんな基本的な事件を知らないはずがないが、それならなぜこういう事例から学ばないのか不思議だ。今回は「ピンチをチャンスに変える」絶好の機会ではなかったか。それとともに、まだまだ「遅れた経営」と思われている日本でのファミリービジネスを「実はすごい経営」だと知らしめる好機でもあった。同社得意のTVCMより、よほど効果があったと考える。

 

同社は伊藤邦雄教授が30年以上顧問をしている会社だが、伊藤先生からは「非常にいい会社」だと聞いていたので、個人的には非常に期待していた。しかし、今回の対応で「これではサラリーマン社長の会社によくある責任逃れと同じではないか」と感じ、期待を大きく裏切られた気持ちだ。

 

まだまだ日本のファミリービジネスはアメリカに比べて40年以上遅れているか、というのが率直な感想だが、全企業の98%を占め、GDPや雇用でも3分の2をファミリービジネスが占めている日本では、この分野がしっかりしないと経済成長も日本復活もない。

 

個々のファミリー企業が責任ある経営をしていくことが大前提だが、特に小林製薬のように目立っている企業はそれなりの社会的責任もある。多くの責任あるまともな経営をしているファミリー企業にも迷惑が及ぶのだ。今回の件で「やはり世襲はダメだ」と多くの人が感じ、いい世襲をしている企業まで同類項だと思われてしまう。

 

まだまだ日本のファミリービジネスが世界に伍する経営をするまでは時間がかかりそうだが、逆に「伸びしろもある」と考えて日本経済復活のために微力をつくしたい。その前に、当のファミリービジネスが責任を持った経営をすることが最低条件だが。

 

 

 

祝「H3ロケット」打上げ成功ー1994年のH2ロケットの1号機打上げは種子島で体験

私は経団連に入って海外留学から帰国後、1992年から1998年まで宇宙開発を担当していた。経団連生活でISO9000(標準化)と並んで最も長く担当していた分野である。今でも当時お世話になった官庁(旧科学技術庁、JAXA、経産省など)やメーカー、宇宙飛行士の方々とお目にかかることもある。

 

日本の宇宙開発は現在でも「国の予算」に頼る傾向にあるが、私は1990年代から商業化の必要性を強調してきた。役所の人々は予算で動いているし、メーカーの方々も予算をもらって動いた方が楽なので(収支見通しが立つ)顰蹙ものだったが、唯一経産省だけは立場上からも私の意見に賛成してくれた。

 

1990年代の状況は今とは違ったとはいえ、私は長期的に見ると「宇宙の商業化」をしないと国際的にやっていけないという確信があったが、今まさにそれが世界中で証明されつつある。イーロン・マスクの参入はこの分野が「儲かるブルーオーシャン」であることを世界に示した。

 

日本の官庁もメーカーも2010年代以降は「商業化」に舵を取り、まずは衛星の輸送手段としてのロケットのコスト削減に努めてきた。日本のロケットは失敗は少ないものの欧米に比べると2倍以上のコストとなっており、「商業化」するにはH3ロケットで欧米並みの50億円(従来のH2Aロケットの半分以下)にする必要があった。

 

今回、ほぼそれを成し遂げ、技術的にも打上げに成功したので、これから欧米とガチンコ勝負できる基盤はできた。但し、相手は天才イーロン・マスクなのでこれは大変だ。今日の日経新聞にも、この天才は既にコスト10億円以下にする計画があるようで(ロケットの再利用作戦)、三菱重工としても大変な人物を相手にしなければいけない。

 

とはいえ、「商売」は今やどんな分野でも世界を相手に戦わなければならない。自動車でも日本はそれをやってきた。宇宙分野では、日本は失敗が少ないという「信頼性」をウリにすれば、多少高くても引く手はあまたではないか。何といっても衛星は数百億円するものあるし、ロケット代で数十億円をケチって失敗したら元も子もないのだ。

 

まずは日本が「宇宙の商業化」の一歩を踏みだしたことを大いに祝いたい。

 

 

 

花巻東高校の佐々木選手がスタンフォードに入学ー「やっちまったか」?

先週は花巻東高校の佐々木選手が、米国の名門スタンフォード大学に入学することがワイドショーで話題となった。昔はアメリカのトップ大学は東部3大学(ハーバード、エール、プリンストン)だったが、今ではスタンフォードを入れて4大学になっている。それほどの名門で、世界ランクも一位になることもある。

 

日本で最高ランクは東大の30位で、早慶にいたっては500番以下だ。佐々木選手もご両親もそのあたりは調べたはずで、「スタンフォードに入れれば大得」と考えたのも無理はない。確かに日本の大学の「入れば卒業」という環境ではそうだろうが、アメリカの習慣や価値観は大きく異なる。

 

アメリカでは大学は「卒業できなければ入学しなかったと同じ」なのだ。冷静に考えれば当然だ。大きな大学には日本でも同窓会組織(〇〇クラブという)があるが、基本は卒業した人間のみが入れる。だからハーバードに合格しても1割以上は「辞退者」が出る。卒業できる自信がないことが主な理由だ。他方、東大は名門医学部に行く人以外、基本的に辞退者ゼロだ。

 

スタンフォードは東部の大学と違って、なぜか「スポーツ枠」がある。タイガー・ウッズなどがこれで入ったがさすがに卒業はできなかった。佐々木選手もまずは英語が壁になるだろう。普通のアドミッションだと、スタンフォードの学部には灘や開成のトップが受けても受かるかどうかというレベルだ。

 

しかもアメリカ社会は「フェアネス(公正)」を重んじるので、大学の入学時には寄附とか親が卒業生、全米一のスポーツ選手などには優遇制度はあるが、入ってからは全員全く同じ基準で成績が付く。そこでフェアネスを保っている。「卒業できなければ入らなかったと同じ」という原則からいうと、結果的に全くフェアだ。

 

もちろん、佐々木選手もこのあたりの「基本」は分かっての入学だろうが、はっきり言って「学業と野球の両立」は相当難しいだろう。というか、語学のハンデがある日本人が、まさに灘や開成のトップでも、24時間勉強しても普通の成績を取るのが難しい現実がある。

 

なかなか前途多難だが、それでも佐々木選手の「挑戦」は大いに称賛されていい。

 

 

NHK古舘伊知郎の有名海外大学入試番組「ニュー試」に異議ー実際の合否判定は基礎学力を重視

昨日のNHKのシリーズ「ニュー試」はエール大学だった。この番組をずっと見ているが、非常に視聴者に「誤解」を与える内容になっていると感じている。いかにもあの「変なエッセー問題」で合否が決まるという誤解だ。

 

先日のエール大学ピーター・サロベイ学長との立食しながらの懇談では、サロベイ学長は「SAT(日本の共通テストのような試験)」などの基礎学力を見る試験結果を重視するという明確な話があった。もちろん「変なエッセー問題」もある程度書けていないと話にならないが、やはりペーパーテストの点数や大学での成績を重視している。

 

もちろん、こんなことを言っていると番組としては成り立たないので、インパクトを与えるため、かなり意図的に「海外の一流大学では記憶力よりも想像力を重視」と言っているのは分かる。それでも、この番組の内容を信じて基本的な学習をしないと、合格からはますます遠ざかるだろう。

 

昨日の番組では、笠井淳吾君が登場していたが(彼も年をとった)、笠井君も当然のようにSATでは満点を取っていた。大学院の場合はTOEFLとGREという試験があるが、これも相当高い点でないと「足切り」を食らうことになる。

 

それどころか、ハーバード日本同窓会の元会長の加藤さんは、ハーバードの学長に「ペーパー試験の成績で合否を決めるな」という要望をしたという。ハーバードの入試が「日本的」な入試になってしまうという危惧だ。確かに先日のサロベイ学長の話で私もそういう危惧を感じた。

 

大学入試に「正解」がない以上、欧米の歴史のある大学といえども試行錯誤の連続なのだろう。それだけ「いい学生」を選んで入れようという強い意思も感じる。日本の大学入試は当面変わらないだろうが、少しは欧米の一流大学を真似してもいいと思う。韓国ソウル大学はかなり欧米化している感じを受けた。

 

 

エール大学のサロベイ学長が来日ーレセプションには早稲田大学田中愛治総長も出席

先日、17年ぶりにエール大学の学長が来日した。前の来日は2007年にレビン学長が東大との提携で来日した時だ。今回は東大と早稲田と慶應で講演を行うためだ。私はいつものように、エール大学日本同窓会の元会長の伊藤公一さん(伊藤公平慶大塾長の父親)と参加した。

 

そもそもエール大学と東大、早稲田は歴史的に関係が深い。エール大学に日本人で最初に留学したのは山川健次郎だ。後に東大総長になった。また日本人で初めてエール大学の教授になったのは朝河貫一(「辞書を食べた」ことで有名)で早稲田出身だ。

 

本来なら、当日、東大の藤井総長と慶應の伊藤塾長も参加予定だったが、お二人は「ダボス会合」に参加でこれなかった。早稲田の田中総長だけ参加だったが、もし、この4大学のトップが集まれば珍しい貴重な場となっただろう。

 

田中総長とは初めてお話させて頂いたが、評判通りの人格者だった。伊藤公一さんが、公平塾長が「コロナ対策」で田中総長からいろいろとご指導頂いたことの礼を言っていたが、私が石川忠雄塾長のゼミ出身であることを申し上げると若い頃、石川先生にお世話になったという話をされた。

 

早稲田は従来、総長選の後は負けた側の教授や職員に冷や飯を食わせることが慣例になっていたようだが、田中総長は選挙の後はノーザイドで一致団結を訴え、従来の悪習をやめたという評価がある。なるほど、そういう感じの方だった。

 

エール・サロベイ学長には私の指導教授だったノードハウス教授(2018年ノーベル経済学賞受賞)の消息を聞いたが、80歳で元気に講義をしているということで安心した。ともかく貴重な機会で伊藤公一さんともども大満足の一日だった。

 

 

豊田章男氏も訪問した「伊那食品」の塚越社長の話ー古き良き「日本的経営」を継承

先週、ファミリービジネス学会で伊那食品の塚越社長(2代目)から、伊那食品の経営のお話を伺った。この会社はトヨタの豊田章男氏が「年輪経営」のお話を聞きに訪問したことで有名だ。

 

「年輪経営」とはまさに老舗の経営そのものだ。決して後退することなく、じわじわと成長する。急成長は意識して避けるのはすごい話だが、これは急成長の後は後退しかないのでそれを避ける意味だそうだ。

 

その経営の本質は「会社は家族」というまさに、古き良き日本の経営だ。社員は家族なので「年功序列で終身雇用」だ。給与も苦しい時でも毎年3%程度上げているという。最近の岸田政権が強制しているような話だが、これをサラッと数十年行ってきたのだからすごい。

 

日本人はバブル崩壊後、自信をなくし、何でも欧米の経営手法を真似しようとして「失われた30年」になってしまった。アベグレンが喝破した「日本的経営」とは実は日本の風土や習慣に合っていた方法ではなかったか。今日の日本の経営学では「日本的経営などは古い。今はROE8%、SDGs、ガバナンスコードの時代だ」という人が主流になりつつあるが、これは本当か?

 

「伊那食品」は日本的経営を守り、30年以上増収増益だ。豊田章男氏が注目するくらいだから、ここには経営の本質が眠っていると直感した。今日、日本の弱った大企業で「終身雇用や年功序列」ができるとは思えないが、中堅企業だとまだまだ「日本的経営」で行けるのではないか。その方が、欧米の日本に合わない経営手法を真似するより、よほど成果が上がる気がする。

 

 

今日的な「実学」とは?ー福澤先生の時代とは大きく違うはず

福澤諭吉が慶應義塾をつくった目的は、言うまでもなく、時代の先導者を養成するため「実学」を教えることだ。最初福澤先生はブラウン大学学長だったウェイランドの経済学の本をニューヨークの書店で大量に買い込み、それを学生に講義していたようだ。これが当時の「実学」だ。

 

時代は変わり、教科書はウェイランドからサムエルソンやマンキューに変わったが、それを教えるのが今日的な「実学」とはとても思えない。学部の授業はそれでいいのだろうが、ビジネススクールではより実務に役立つような授業が要求されるのは言うまでもない。

 

私の指導教授であった石川忠雄先生から聞いた話だが、石川先生は1977年に慶應塾長になると改めて「慶應義塾とは何をするところか」と自問したという。もちろん「実学」を教えるところだが、慶應義塾全体を見渡して実学を教える拠点はなかったので、ハーバードビジネススクール(HBS)をモデルに慶應ビジネススクール(KBS)を1978年4月につくった。これが日本のビジネススクールのルーツだ。

 

HBSは「ケーススタディ」中心なのでKBSも授業はケース中心だ。私の「ファミリービジネス概論」にいたってはほぼ全ての授業がケースだ。実際のファミリービジネスの「困った」ケースを取り上げているが、受講生である二世経営者候補にはこれが「実学」になるだろうという仮説だが、これがうまく機能しているかどうかはまだ分からない。

 

ファミリービジネスの経営者であるゲスト講師からは、自社の強みよりも「弱み」をお話し頂くようにしている。強みは各社バラバラだが、「弱み」は自社との共通点が多いからだ。よくある経営者からの講演は、ほとんどが自社の強み(自慢話)になりがちだが、これでは聞き手の経営上の役には立たない。

 

今日的な意味での「実学」は、定義もなく、また受講生個人個人によって異なっている。それを如何に一つの授業でできるかは永遠の課題だが、より受講生にとっての実学になるよう、一年ごとに経験値を積み重ね、ベターなものにしていきたい。