近江商人の「三方よし」の大誤解ー社会貢献を考えていたわけではない
いろいろな経営本を見ると、最近のCSR(企業の社会的責任)の高まりの文脈の中で、日本には既に江戸時代に社会貢献を考えていた近江商人がいる、としたり顔で書いている人が結構多い。実は私も、以前は近江商人の「三方よし(=自分よし、相手よし、世間よし)」は素晴らしい考えで、近江商人は私の出身の甲州商人とは違って広い見地で商売をしていたと思っていた。しかし、果たして江戸時代にそんな商人が本当にいたのか。。。
これを確かめるため、私は以前、近江商人の代表格であるⅠ家の方に「三方よし」の真意を伺ったことがある。
当然のことながら、この方は「三方よし」の背景に詳しく、また一般の人の誤解についても解説してくださった。
問題は三方よしの「世間よし」の解釈だ。これを、近江商人は商売を通じて社会をよくしようという意思があった、
と理解している人が多いが、これは大きな間違いだ。商人はあくまで商人で、金儲け第一で社会がどうなるとか
考えるべきではないと江戸時代の商人は考えていたようだ。いわゆる「分をわきまえる」という発想だ。
「世間よし」の真意は、具体例で説明するとわかりやすいが、江戸時代に関東が米の不作で、大阪から江戸にすべての米を持っていけば儲かるが、それでは地元の人が困るので近江商人は3割の米は地元で売ったという、こういう事実がある。これが「世間よし」の実例だ。社会貢献とかいう大きな話ともまた違う。
こう見てみると、「三方よし」の真意は、商売をうまくやるための知恵の一例といえそうである。それはそれで、
非常に大きなノウハウだ。
富裕層ビジネスは富裕層にしかできない!?ーある富裕層雑誌の大御所の話
昨日はある先輩の紹介で、富裕層雑誌の大御所にお会いする機会を得た。この方は今日ある富裕層雑誌のほとんどに係わっている。今日、私がこの方に聞きたかったポイントは「なぜ富裕層関係のビジネスはうまくいっていないか」だ。金融をはじめ、百貨店、雑誌に至るまで「富裕層」に関係するビジネスはどれも不調だ。雑誌などは「お金を出して頂ければ記事を載せますよ」という本末転倒の「営業」をしているところもあると聞く。悲惨だ。
もちろん、ビジネスは需要と供給のバランスのもとに成立している。うまくいっていないのはニーズがうまくつかめていないからだ。あるいはニーズはつかめてもそれに対応する商品、サービスが生み出せない場合もあるが、
こと富裕層ビジネスに関しての問題は前者だろう。
この大御所はポイントだけをいう方で、一言「富裕層でない人が富裕層ビジネスをしているからだ」とだけ言われた。私なりに解説すると、自分が富裕層でないから富裕層の気持ち、ニーズが分からず、それではそもそもビジネスがうまくいくはずがない、ということだろう。単純明快な話だが、どっこい富裕層ビジネスに係わっている人で
このことが分かっている人は少ない。
でも、「それは分かったが、富裕層でない自分はどうしたらいい」という声が当然沸きあがるだろう。私は、この疑問に対しては、「数多くの富裕層(本当のお金持ち)と深く付き合うことで、ある程度富裕層の気持ちは分かるようになる」とこたえている。
だから、私も日々、富裕層の方々と深く付き合うべく、いろいろな努力をしているのだ。
5月4日の日経経済教室「エコノミックトレンド」―大竹さんの明快な解説に感銘
毎月1回の日経のミックトレンド、今月は大阪大教授の大竹文雄さんだった。
大竹さんは私がエールの経済学大学院に行った時に研究員として来ていて、そのときによく懇談した。ゲーム理論とか、今の行動経済学とか、新しい経済学を研究しており刺激を受けたものだ。
4日の日経では、大竹さんが不況脱出の学説を明快にまとめている。
まず、今回の不況の原因は「需要」側にあることは衆目の一致するところである。だから大恐慌の時と同じ「ケインズ政策」が各国でとられているわけだ。ただし財政支出をアメリカ、日本を初め各国で行っているが、それが「有効需要」の創出につながらなければ何の意味もない。昔の日本の公共投資と同じになってしまう。
問題はどの分野の需要を喚起するかだ。個人的にはエール大のロバート・シラー教授(「ケース・シラー指数」の創始者)の「金融部門の信頼回復」が最重要だと考える。いうまでもなく世界金融危機への対処が不況克服への直接的な方法と思われるからだ。
もう一人、UCLAのファーマー教授のいう中央銀行が証券市場に直接介入する(ETFなどの購入により)という説も直接的な効果があろう。日本ではこういう政府の市場介入政策に抵抗があろうが、そんなことを言っている状況でもないかもしれない。早く不況から回復できる手段があるのなら、政府は何でもするべきだろう。
ともかく、アメリカの経済学者は自分でも会社を経営しているので、実態経済と近い処方箋を考えるので非常に説得力がある。その理論を日本政府が真摯に受け止め実行できるか、そこが最大のポイントであろう。
750分の1ではなく3分の1を選ぶー岩瀬大輔君の選択
先日、ハーバードの後輩の岩瀬大輔君(ライフネット生命副社長)の講演を聞いた。まだ30代前半の若者だが、
ハーバードのある先輩から「おもしろい男」という話を聞いていた。もちろん、若者らしく地に足がついていない
議論もあるし、ライフネット生命も大資本のSBIアクサ生命とほぼ同じビジネスモデルになってしまったことは
残念だ。彼のやっていることが日本で唯一でなく、大企業がやっていることと同じことをしているからだ。
それはともかく、岩瀬君の話で人生の選択を考えるときに共感できる点があった。
彼は東大法学部在学中に司法試験に合格したが、そのまま司法修習を受けることはなかった。当時は司法試験
合格者は750人(現在は2500名)だったので、「750分の1」になることに疑問を感じたそうだ。まあそれなら最初から受けなきゃいい、という反論もあるだろうが、合格後はそう感じたようだ。
そして、3人しか採用しなかったボストンコンサルティングに就職した。今でこそ外資系コンサルは花形だが、
10数年前はそれほど知られてはいなかった。でも「3分の1」になることを選んだそうだ。
私事で恐縮だが、自分も就職するときに誰もがあこがれる銀行から内定を頂いた。しかし、そこは年間採用が
約100人(それでも銀行にしては少ないが)で「100分の1」になることに疑問はあった。本当にここに就職して
「自分しかできない」ことができるのか疑問を感じていた。代わりはいくらでもいるのではないかと(当然そうなのだが)。たまたまその時に思ってもみなかった経団連から内定を頂いたので、そちらに就職した。同期は2人で「2分の1」だ。経団連では2人に一人は留学できることも魅力だった(当時は全く英語も勉強していなかったので)。
岩瀬君は「ブログの天才」としても有名で、彼のブログは何かの「ブログの書き方」の手本になっていた。
しかし、アクセスが多いと荒らされることも多いようで、最近では写真も載せずに難しいことだけを書いている
そうだ。そうすると本当に読みたい人しか来なくなり、荒らされることもなく「心地いい空間」を保てるようだ。
私も、日本では初めてのことをやっているので、本当に読みたい人のみが来るような「心地いい空間」を
ここで作ろうと意を強くした。
国内トップ10に入るファミリービジネスオーナーと懇談ー金持ちケンカせず?
先週、ある関西財閥の方のご紹介で大手オーナー企業のトップと懇談する機会を得た。若干緊張はしたものの、その方の従兄弟にあたる方とは経団連の仕事で何度かお目にかかったことはある。一応慶応の先輩という
こともあり、気楽に懇談させていただいた。
まず驚いたのは事務所の光景だ。銀座の一等地の自社ビルなのだが、中は純和風様式で屏風や扇子が飾られ、応接椅子、机も年代物だった。やはりこういう趣味がないとダメなものかと勝手に解釈した。
人柄もなんともいえずおっとりした方で、今までアグレッシブなオーナー社長のみを見てきた自分にとっては
かなり強烈な体験だった。ファミリー企業オーナー=積極的という図式は結構例外もあるのではと感じた。
私にとっては、その方のお金の使い方、哲学に興味があったが、何とも下々の者とは違うという感じだった。
持ち株はこの株価低迷でかなりのマイナスになっているようだが、そんなことは気にしていない様子だ。
多分、増えようにも減ろうにも売れないし、また一生使い切れない額なので、資産の上下は気にしてもしょうがないのだろう。
むしろ私が感銘を受けたのはそのビジネス訓だ。曰く「終わりのないことを始めてはいけない」ということだ。
つまり、ビジネスで新規分野に参入するときには出口(投資でいうエグジット)を見極めてから参入すべし、という
ことだ。その方針を守っているため、この会社のビジネスで大きな失敗はなかったという。多分家訓のようなもの
なのだろう。聞いてみると当たり前のようだが、実際のビジネスでこれを守れる経営者がどれだけいるか。なかなか含蓄のある言葉だった。
ともかく、ビジネスを通じて自分を磨こうという考えが言葉の端々からにじみ出ていて、非常に貴重な体験となった。ファミリービジネス研究には、やはり実際のファミリービジネスオーナーとの接触がキーになると実感した
ひと時だった。
日本のファミリービジネスの代表=トヨタの強さの秘密
経営学の大家チャンドラーに「古くさい」と言われた家族経営だが、実際にはビジネスウィークなども指摘しているように非家族経営より成功している。何か意外な気もするが、冷静に我々の周囲を見てみると強い日本の企業は家族経営であることに気づく。トヨタしかり、松下しかり、武田製薬しかり、キヤノンしかりだ。最近の経団連会長会社もキヤノンとトヨタだ。大企業でもそうなのだから成功している中小企業はもっと家族経営が多い。なぜか。。。
日本ではファミリービジネスの研究は緒についたばかりだが、本場アメリカでは100以上の大学でファミリービジネスに関する講座があるという。著作で最も有名なのはハーバード大ランデス名誉教授の「ダイナスティ」だろう。邦訳もでている。これを久々に読み直してみた。この本の中で、ファミリービジネスの成功例として世界で10社ほど紹介されているが、日本ではトヨタ一社だ。
トヨタの強さの秘密は「トヨタイズム」の徹底、つまりジャストインタイム制などに代表される「徹底的な無駄の排除」の実行だという。確かに、私が経団連にいたときに名古屋のトヨタの関連会社(それでも一部上場)の社長に
会いに行ったときに、その社長が作業着で出てきたのには全く驚いたのだ。おそらく一部上場企業の社長で作業着で面会する人はそうそういないのではないか。これが「トヨタイズム」だとその時に感じたものだ。
それでも、サラリーマン社長の会社でもしかりした「経営理念」があれば、それを実行できるのでは、という疑問も
沸く。しかし、これこそ創業者一族が指揮をとって推し進めなければ長期的な実行は不可能なのだろう。トヨタは
豊田喜一郎→豊田英二→豊田章一郎→豊田章男と続く一族経営により、豊田佐吉の理念を永続的に引き継げたことが強さの秘訣であろう。サラリーマン社長の連続だったらこうはいくまい。
こう考えるとファミリービジネスはいいことずくめのような気もするが、一族間の不和により消滅した名族も多いことも事実だ。それでも全体から見ると、家族経営の方にアドバンテージが認められるというのが今日の研究の
ようである。
ファミリービジネスへの関心は意外に高い
次回の研究会は「ファミリービジネス」をテーマにすると、当協会の会員の方々などにメールでご案内した
ところ、かなりの反響があった。弁護士、税理士、保険コンサルなどの富裕層を相手にしている実務家は、という
顧客がほとんどファミリービジネスのオーナーなので、ファミリービジネスについての掘り下げた研究の
必要性は前々から実感していたそうだ。ただし、日本ではその研究があまり進んでおらず、書物もないので
何もできなかった、ということのようだ。
確かに日本では「ファミリービジネス学会」が昨年できたという状況なので、研究者も少ないのは事実だ。今後の
研究に委ねられている。当協会としても、実務家の立場から研究をしなければならない。
実務家として興味があるのは、ファミリービジネスオーナーの「ニーズ」だ。このニーズに応えるのが
ファミリーオフィスの仕事だからだ。
問題はそのニーズが、特に超富裕層では個別具体的で、かつ顕在化されたニーズだけでなく潜在的なニーズ
もファミリーオフィスの方で掘り起こして対処しなければならないことだ。私も日々、お客様の潜在的なニーズを
考えながら仕事をしているつもりだが、まだまだ不十分の感は否めない。
その不十分さを少しでもカバーするための研究のひとつが、ファミリービジネスの研究であることは間違いない。
何せ、弊社(永田町ファミリーオフィス)のお客様は皆、ファミリービジネスのオーナーなのだ。
今年からはファミリービジネス学会の倉科会長などからご指導頂き、自分のお客様のニーズを深掘りしてみたい。
ファミリービジネス研究の新潮流
ファミリービジネス(家族経営)は一昔前は「古くさい」と言われていた。経営学の神様チャンドラーがファミリービジネスを否定していたことは有名である。日本でもいわゆる「老舗」のいいかげんな経営がここ数年批判されてきた。ところが最近では、経営学の本場アメリカでもファミリービジネスが意外にメリットのある経営形態だと見直されているようだ。
日本では大企業から中小零細企業まで、ファミリービジネスは主流だ。日本を代表するトヨタ、松下もファミリービジネスだし、大田区の零細企業もファミリービジネスが多い。
ファミリービジネスの評価の変遷は、そのまま日本企業の評価の変遷とも重なる面がある。
1980年代のジャパン・アズ・NO1の時代には、アメリカも日本的経営をお手本にしようと日本のファミリービジネスを必死に研究していた。トヨタの看板方式などはアメリカの企業が相当深く研究した。ところが日本のバブル崩壊とともに、日本的経営、ファミリービジネスの研究は下火になった。
しかしまた最近、金融危機後の世界では再び家族経営が見直されているようだ。日本の現状でもトヨタ、松下は創業家に経営回帰しており、時代の流れに逆らっているようだが、むしろ新潮流のような気がする。家族経営にはそれなりのメリットもあり、日本でもトヨタ、松下の業績が回復すれば、ファミリービジネスの見直しにつながる予感がある。
ここ数年の動きには注目だ。
次回研究会のテーマは「ファミリービジネス」
一昨年に、日本ファミリーオフィス協会を立ち上げてから一番質問が多かったのが、「ファミリービジネス」との関係である。ファミリーオフィスをファミリービジネス(同族企業)の小さいものと考えている人が多いようだ。
確かに、オフィスというと日本では事務所という感じがする。でもファミリーオフィスとはoffice for family(大資産家のためのオフィス)という意味であり、大資産家のニーズのあることを何でもする事務所なのだ。
実態的にはファミリービジネスとファミリーオフィスは何の関連性もないが、ポイントは「ファミリーオフィスの顧客のほとんどはファミリービジネスのオーナー」という点である。特に日本の超富裕層はほとんどが同族企業なので(実は弊社のお客様もすべてが同族企業である)、そういう点で当協会としてもファミリービジネスに注目していた。
今回、たまたまファミリービジネス学会の倉科会長の方から当協会との提携の話があり、喜んでお願いした。富裕層ビジネスを展開するには、どうしてもファミリービジネスの研究は欠かせない。私も倉科会長やファミリービジネス学会の方々にはお世話になることとした。
とはいっても世の中狭いもので、同学会の理事でも10年以上の知り合いが二人おられた。青井慶大ビジネススクール教授と米田LPL証券会長だ。青井さんにはしばらくお会いしていないが、ハーバードの大先輩で留学の時に非常にお世話になった。米田さんもボストンに留学されており、ボストンつながりだ。
ともかく、次回5月18日の研究会は興味深い話が聞けそうだ。
「本当の」ファミリーオフィスはお客様を選ぶーある営業マンに驚かれる
世の中は景気後退、いや大不況である。営業マンは全く業績が上がらず、特に超富裕層の人がいれば何とか
食いつこうとするものだが、そんな中「お金がある人でも全てをお客様にしない」奇特な業種がある。
これが「本当の」ファミリーオフィスだ。
なぜ「本当の」といったのか、、、日本では本当のファミリーオフィスが誇張ではなく弊社(永田町ファミリーオフイス)くらいしかないからだ。しかし、これは自慢にも何にもならない。私は日本ファミリーオフィス協会の代表理事も兼務しているので、日本に本当のファミリーオフィスがないことを強調すると、自分で自分の首を絞めることに
なるので、あまり言いたくない点でもある。
日本でも「ファミリーオフィス」で検索すると何社が出てくる。さすがに皆知っている人々だが、残念なのは「ファミリーオフィス」という言葉を使いながら、その実、業務の中味はファンドを売りやすくするためにファミリーオフィスというある意味「神秘的」な言葉を使っているに過ぎないことだ。
欧米でも「本当の」ファミリーオフィスは、目の前に多額の報酬が取れそうな超富裕層がいても、自社がその人の
お役に立てない、あるいはその人との相性(性格的な)が合わないと感じたらお客様にはしない。弊社も僭越ながら、開業以来そういう方針を取っている。現に、お断りさせて頂いた超富裕層の方もいる。これは考え方が自分、あるいはファミリーオフィスには合わないと感じたからだ。
こういう話を先週、ある営業マンに言ったら、死ぬほど驚かれた。曰く、相当な報酬が取れる人をなぜみすみす
逃すんだ、と。でもお断りした理由を言うと、さすがに一流の営業マンだけあって、「理論的には」納得してくれた。
でも自分にはできないが、とぽつりと言っていた。
私も、サラリーマンをしている時にこんな話を聞いたら、自分自身死ぬほど驚いただろうが、この「筋」を曲げると全てが曲がってしまいそうなので、今後も基本方針はブレないでやっていこうと考えている。