最新の「婚活」事情(その2)-今は上司の紹介なんてない
日本の金融機関も昨年あたりプライベートバンキング(PB)部のブームに乗り、多くの会社がPB部をつくった。外資系金融は一度ほとんどが撤退したが、また昨年あたりから富裕層分野に参入しPB部門をつくっている。でもなかなか苦戦しているようだ。
その原因の一つが「お客様のニーズをつかんでいない」ことではないか。あるいは彼らもプロなのでニーズはつかんでいるものの、組織では対応できないという実態もあろう。
ある親しい国内大手金融機関のPB部の担当役員と話すと「相山君はお客さんからの結婚の相談はどうしてる?」と困った顔をして聞いてくる。
私の方は、ぼちぼちやっていますよと答えると、その役員は女性の写真やら身上書らしきものの「塊」を見せてくる(もちろん中味は見せないが)。20人くらいいる。もちろん、これは「書類」を出したお客さんのご令嬢であって、口頭で頼まれたのを入れるとかなりの数だろう。
その担当役員は「でも恐ろしくてとても男性を見つけ会わせることはできない」という。相手のご令嬢に会ったこともないからだ。当然の話だ。でもお客さんから何度も押し込まれると、いつまでも「できません」とは言えず誰か会わせるようだが、まあ仕事で会わされた男性の方も迷惑だろう(相手がよければいいが、そういうのは例外のようだ)。
ことほどさように、今は会社のお偉方にお願いしても、昔ほど会社での人間関係が濃くないので、上司も部下のことを知らないので紹介もしてくれない、いやできないのだ。また、昔はよくいた「お見合いおばさん」などもめっきり陰をひそめた。やはり日本社会の人間関係がドライになってきたからだろうか。
今日の「婚活」ブームの背景にはそういう事情もあろう。でも超富裕層のファミリーは、次世代に富を引き継ぐためいい子孫を残したいというニーズは強くある。本格的なファミリーオフィスを標榜する弊社としては、ほっとけない。
次回はこの道のプロからの話を紹介したい。
最新の「婚活」事情(その1)―ファミリーオフィスの重要な業務
ファミリーオフィスの仕事をいろいろなところで説明すると、一番質問が
集中するのが「結婚」サポートの部分だ。まずは、「そんなことまでやるの」
ということだ。つぎに「なぜやるの、それでお金がとれるの」という質問。相手が金融機関のプライベートバンキング部門の方だと「確かにお客さんと雑談しているとかならず「その話」は出るけど、そこまではできないよね」というものだ。
冷静に考えると、ファミリーオフィスとは「個人富裕層のニーズがあることを
ワンストップで請け負う」仕事だ。個人富裕層は、もう一生涯生活していくだけのお金はある。一般の方が一番意外らしいのだが、超富裕層には資産を増やすニーズはあまりない。むしろ、家族の健康とか子息の教育、結婚の関心が高い。弊社のお客様も皆そうだ。
中でも「結婚」は超富裕層の方々の最もニーズが高い分野だが、ファミリーオフィス側では最もやりたくない分野だ。相手が人間だからだ。紹介するにしてもその相手が100%わかるわけもなく、そこでトラブルが起きたら本体の仕事に影響が出るので、誰もやらない。特に組織では絶対にやらない。
次回はある大手金融機関のプライベートバンキング部の役員の話を紹介したい。
スイスのプライベートバンク(PB)もついに守秘義務放棄か?
スイスのPBといえば、「ゴルゴ13」も使っていることで今や誰もが知っている存在だ。危ない仕事をしている
ゴルゴ13の報酬はスイスのPBに振り込まれ、彼は税金も払うことなく蓄財できたわけだが、そうも言っていら
れなくなってきたようだ。アメリカ政府の圧力に最大手のUBSやスイス政府は情報開示をする方向だという。
やはりスイスのPBを活用した租税回避行為が、アメリカでは相当な額になっているらしい。どこの国でもこの
経済情勢では税収不足で、それを埋めるために今まではお目こぼしをしていた分野にもメスを入れてきた
のだろう。でも情報を開示したら、スイスの強みがなくなり、金融立国スイスはどうなるだろうか。
それよりも、日本の超富裕層も困るのではないか。直接スイスのPBに行って口座をつくっている日本人の超富裕層は意外に多いのだ。もちろんいいヘッジファンドがある(いやあった)ことは事実だが、何と言っても守秘義務
という言葉の響きは魅力だったろう。自分が犯罪を犯さない限り、銀行は自分の秘密も守ってくれるのだから。
超富裕層にとって、今後の世界は窮屈になることは間違いない。各国政府は、節税のテクニックをどんどんつぶしてきている。もちろん日本もその一つだ。オバマ政権も富裕層への課税を強化する方針だ。
でもこういう時代だからこそ、超富裕層のさまざまなニーズも出てきて、弊社のような富裕層向けの仕事の存在意義が出てくると感じている。
麻生総理の「株屋は信用できない」発言に思う
麻生総理がまた問題発言をしたようだ。「株屋は信用できない」というものだが、確かにここまではっきり言うのは
問題だろう。でも内容的には皆、賛同ではないか。だから、いくら政府が「貯蓄から投資へ」とか言っても、
日本ではいっこうに株式投資など広まらないのだ。
今株を持っている人は、皆ひどい目に合っている。20数年前の水準なのだから当然だ。一昨年の高いところで買った人が多いので、3分の一くらいに目減りしている人が多い。2年前にもし1億円株を買っていたら、今は3000万円程度になっていて(私の友人でもこういう人が多い)、大変な被害だ。中には某大手証券の営業マンから、
絶対に上がりますよ、などという証券取引法違反の勧誘を受けひどい目に会っている人もいる。でも、営業マン
との会話など録音している人はいないので、訴えもできない。泣き寝入りだ。このあたりが「株屋は信用できない」
という総理発言の背景にあるだろう。
アメリカなどはこの点は進んでいて、証券マンとの会話は録音している人が多い。だから証券マンも絶対に上がりますから、などというセリフは言わない。日本人も大事なお金の話などで、このくらいはやるべきだ。それが
今度は証券会社のためにもなるのだ。国民の信用を上げない限り、証券会社の将来もないのだ。
私がファミリーオフィスをつくり、さらにNPOの「日本ファミリーオフィス協会」をつくった背景には、証券会社をはじめ日本の金融機関が顧客寄りに変わらないと、この国は持たないと考えたからだ。日本が本当に金融立国を
考えるならば、金融機関が国民に信用されるようになることが、間違いなく第一歩だからだ。
今日の総理の「失言」は単なる失言で終わる話でなく、日本の将来を考える上でもキーになる内容を含んで
いると考えている。
ハーバード・スクール・オブ・デザイン(建築学部)-丹下健三や槙文彦も卒業
昨日はハーバードの建築学部の学部長が講演するハーバードクラブがあった。私はもちろん建築学部出身ではないが、案内を頂いたので出席したのだ。でも個人的にはど素人だが、建築には興味があり、ハーバード留学中には単に建築をみるため「だけ」にシカゴに行ったりしていた。多少の興味はあるのだ。
建築学部長の話は、非常に興味をそそられる内容だった。ハーバードの建物というのがまた凝ったものが多く、
見ているだけで楽しめるのだが、これを学術的に分析していたのだ。個人的にはエール大学の校舎がゴシック様式で非常に好きだった。オックスフォード大学の校舎を真似たものらしいが、ハーバードは基本的にケンブリッジ大学の校舎を真似てつくられたものらしい。
日本でもっとも有名な建築家である丹下健三さんもハーバードの建築学部卒だが、昨日はその息子さんが
来ていて、お話ができて嬉しかった。建築や設計をしていると聞くと、自分などは非常に固いオタクっぽい人の
集まりかなと思ったが、実際にはそんなことは全くなく(一部全くのオタクもいたが)、皆さん普通の方々だ。
だいたい東大の建築を出た人の集まりだった。相当頭は緻密で、理系人間ばかりだった。
こういう場は非常に刺激になる。また建築学部の集まりにも参加したいと強く感じた一時だった。
ハーバードの女性たちー同級生二人がネットブランドショップを開設
今日の朝、テレビを見ていたら、ネットで女性用ブランド服を売る「GILT」という会社が日本でも攻勢をかけている
というニュースが大々的に報じられていた。山本モナをモデルで使っているのは考えた戦略だろうが、それよりも、このショップを立ち上げた二人はハーバードの同級生で才色兼備という感じの女性だ。
一人はネットオークションの世界最大手「eBAY」の創業者の一人というからすごい。日本でも最近は才色兼備の
女性がたくさん出ているが、アメリカでは昔からこういう女性は多かったのだ。
私が最初にハーバードに行った1990年の夏、正直、ハーバードに行くような女性は勉強はできるがダサイ女性
だろうと勝手に想像していたが、実際には全く違っていて驚いたのだ。身長は175センチ以上でモデルでも通用するような女性がゴロゴロいたのだ。当然、同じ日本人の男と話をする時には「こちらの女性はすごいね」となるわけだ。
私は大学院の寮に住んでいたが、大学院の寮は個室で男女一緒だ。両隣はまさにそういうモデルのような女性がいた。もちろん、私などは(いや日本人などは)相手にされなかったが、そのせいか、よく夜などは向こうから
「議論しよう」とか行って部屋に入ってくるのだ。私などは(いや日本人などは)容姿でも負け、議論でも負けるというわけである。これではとても眠れない。。。
今日の朝のテレビを見て、ハーバードに留学経験のある男は、「ハーバードによくいるタイプの女性だな。参ったな」と思ったに違いない。
白洲次郎の薫陶を受けたⅠさんー本当のカレーの食べ方に驚き
週末は久々に軽井沢に一泊したが、現在テレビで白洲次郎のドラマが人気を博していることを思い出した。白洲次郎もよく軽井沢でゴルフをしたそうだが、軽井沢ゴルフクラブで白洲次郎の薫陶を受けた人がいる。私がよくお世話になっているⅠさんだ。
Ⅰさんと白洲次郎の接点がどこかは不明だが、多分、吉田茂つながりだと思われる。
ある日、Ⅰさんと白洲次郎が軽井沢ゴルフクラブで昼食をとっていたところ、政界の実力者の元首相が
カレーを食べていたという。それを見た白洲次郎が、あの男は田舎者だ、と言ったそうだ。Ⅰさんも俄にその
意味がわからなかったが、どうもその元首相がスプーンでカレーを食べていたのがいけなかったようだ。
カレーはイギリス紳士はフォークで食べるものらしい。これには驚いた。
どうも白洲次郎というのはイギリス生活が長かったせいか、本当の紳士を目指していたようだ。この一件から
だいたいその生活ぶりも想像できる。調布市鶴川で農業をしていたようだが、まあ本場イギリスのカントリージェントルマンとは環境も違い、ジェントルマンとはいいにくいが、実際には真の紳士の風貌があったようだ。
戦争に反対し、マッカーサーにも筋を唱えたイギリス育ちの日本人は、今見直されているが、やはりⅠさんのようにご本人にかわいがってもらった人からの生の情報は貴重だ。テレビドラマは当然のように本人を美化する
ものだから。
経団連会館がリニューアルへ
今はこれだけ景気が悪化したにも関わらず、都心は再開発ラッシュだ。2,3年前の不動産のバブルの時代に
計画されたものだが、大手町にも大きな再開発の計画がある。私が長年勤めた経団連会館も再開発の
中に入ることになった。1月には「さよなら経団連会館」という現役、OBが集まった会合が開かれた。
何と会合では、経団連会館の写真(前後から撮ったもの)が配られたのだ。
もう建設から40年以上も経っているので、そもそも建替えの時期でもあった。会館の設備自体も陳腐化して
おり、ちょうどいい話でもあった。しかし、この会館は会員(大企業中心に1400の企業、団体)向けの施設でも
あり、会員が会議室を借りるときには大手町にしてはとても安い。私自身も会合の時に使おうと思ったくらいだ。
大手町の駅の真上だし、参加する方もわかりやすいというメリットもある。
今日は、たまたまMITの日本同窓会があり、私も参加させてもらうが、経団連会館で行われることになっている。
やはり自分が大学を卒業し、経団連に就職してから、経団連会館でのできごとは思い出に多く詰まっている。
サラリーマンだと一日のほとんどを職場で過ごすので、どうしてもそうなのだが、テレビでしか見れないような
政治家(首相をはじめとする)や財界人が毎日経団連会館には来ているので、日常的にそういう方のお顔を
拝見する日々をすごしたというのは、やはりユニークなサラリーマン生活だったのだろう。
あの会館がなくなるまでに機会を見つけて、また思い出に浸ろうと考えている。もう中年かな。
非常に中味の濃い議論ー第7回研究会(講師:佐藤明夫弁護士)
3月4日は佐藤明夫弁護士(当協会理事)を講師とし「富裕層向け法務の可能性」というテーマで研究会を行った。結果的に、参加者皆が満足するおもしろい講演、質疑の場になった。
超富裕層向けビジネスに携わっている人の悩み(なかなか超富裕層は慎重でお客さんになるまで時間がかかる、非金融サービスの比率が高いがここでいかにフィーを取るか、等々)について懇談する機会というのは、実はあまりない。だから、皆、自己流で失敗を繰り返しながらやっているのだ。
特に、富裕層向け営業の方法というのは、ものの本には出ていない。実際に富裕層をうまく顧客にしている人は本を書かないし(その時間が取れない)、なかなか漠然としている。また一方方向の講演など聞いても実際には役に立たないだろう。そういう意味で、実務家どうしが懇談する機会は非常に貴重である。
佐藤弁護士は、超富裕層というのは非常にユニークな存在で(だから超富裕層になれた)、佐藤法律事務所の部下にも「お金持ちを相手にするときにはお金の話をするな」と言っているそうだ。なかなか分かりにくい話ではあるが、多分、真実をついていると思われる。佐藤弁護士自身の経験では、5年間無料でコンサルをして6年目に仕事になったこともあるようだ。
確かに、お金の話をしないと最後までタダで使われるのでは、という不安もあろう。但し、私の経験だと「まともな超富裕層」ならば無料でコンサルを受け続けることはない。特に成金はともかく伝統的なお金持ちは「価値があると思うコンサル」に対しては多くの金を払う。もしお金を払ってくればかったのなら、それは自分のコンサルが相手に「価値がない」と思われただけだ。
昨日はいろいろな論点が出てきたが、結論は超富裕層と弁護士、税理士などの専門家をつなげるファミリーオフィスが非常に有益な存在になるということだ。おそらく、参加者の中でも現実に超富裕層のお客さんを持っている人は、目から鱗のポイントが多かったと思われる。
味わい深い話が多かったので、私も論点を整理して、会員の皆様にお送りしようと準備をしている。
ハーバードのOB会に参加ーUNDP(国連開発計画)の活動を聞く
昨日はハーバードOBの研究会があった。講師は村田UNDP(国連開発計画)駐日代表だ。
最近はUNDPも地球温暖化問題がメインイッシュのようだ。但し、一般的な先進国も排出量を減らすという
切り口ではなく、あくまで途上国の視点からこの問題を検討している。
私は超富裕層を顧客とする仕事をしているが(ファミリーオフィス)、世界にはこの対極に立つ人の方が圧倒的に
多い。世界人口の約半数(30億人)は一日2ドルで生活している貧困層だ。まだまだ世界中を見渡すと途上国の
方が多いし、貧困問題というのは地球温暖化の比ではない重大な問題なのだ。
村田代表からいくつか問題提起があったが、私がおもしろいと感じたポイントを整理してみる。
第一に、人間は衣食住のうち衣と住が不足してもそんなに不機嫌にならないが、「食」が不足すると不機嫌になり
紛争が起こり安くなるというデータがあるそうだ。だから、国連UNDPでは、だいたい次にどこで紛争が起こるか
予想しているという。
第二に、日本のユニークさは途上国(特にアジア、アフリカ)と共存している数少ない先進国である点。
さらに、日本の特長は「技術」にある点。自動車に代表されるように日本は「大きいものを小さくする技術」は世界一なのだそうだ。そういわれれば、その通りだと納得できる。
第三に、アメリカオバマ政権はブッシュ時代の「一国主義」の失敗から、「国連重視」に変わってきていること。
温暖化関係では京都議定書の枠組みにアメリカは入っていないが、今度のポスト京都議定書では入ってくる
予定だ。アメリカが交渉に入ってくれば日本にとっても手ごわい。日本も国連重視の姿勢が必要だろう。
第四に、一言で経済の「国際化」と言った場合に日本人は先進国間の国際化を考えるが、途上国を含めた
国際化は先進国間とは全く異なる。先進国間では企業の力が強いので安心して企業同士で契約できるが、
途上国では企業にも国の関与が強いので、企業間で合意しても政府の意向を確認しないと契約は反故に
される可能性がある。商社はそういう点で苦労しているようだ。
最後に村田代表も、ハーバードに行ったことの意義は「素晴らしい人たちと出会い、国内外に素晴らしい人脈
ができたことだ」としみじみと語っていた。
今週は金曜日にMITの研究会があるが(私は準会員)、こういう場所に出ると最新の情報や新たな人脈が
できるので時間の許す限り参加している。