晴れ時々ジャズ -23ページ目

晴れ時々ジャズ

日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

2007年に聴いたジャズの新譜で、特に面白かったものを10枚列挙してみました。未聴盤もありますが、それは来年に回します。

10枚のうち、コンテンポラリーなビッグバンド作品が2枚。ミニマル・ミュージックの傾向を持つユニークな作品が2枚。
むむむ、今年はフランス物が少ないですな。



順位に関係なく、左上から右に1) ~10)。

1) ■LESZEK MOZDZER TRIO / BETWEEN US AND THE LIGHT (OM CD 002)

2) ■SERGIO GRUZ TRIO / ENSEMBLE (MDR Records MDR 1435)
http://ameblo.jp/irregular-time/entry-10026246892.html

3) ■ZANUSSI FIVE / ALBORADO (Moserobie Music Productions mmp cd 049)
http://ameblo.jp/irregular-time/entry-10032312226.html

4) ■NILS WOGRAM AND THE NDR BIGBAND / PORTRAIT OF A BAND (Enja Records Horst Weber)
http://ameblo.jp/irregular-time/entry-10060427507.html

5) ■STEPHANE GUILLAUME / INTRA-MUROS (O+Music OP 116)
http://ameblo.jp/irregular-time/entry-10035244479.html

6) ■EVGENY LEBEDEV / FALL (One Records)

7) ■ARI HOENIG / INVERSATIONS (Dreyfus Records DRY 36900)

8) ■LOUIS WINSBERG / DOUCE FRANCE (e-motive records EMO 702)
http://ameblo.jp/irregular-time/entry-10039371680.html

9) ■JOHN HOLLENBECK & JAZZ BIGBAND GRAZ featuring THEO BLECKMANN / JOYS & DESIRES (Intuition 33862)
http://ameblo.jp/irregular-time/entry-10035928948.html

10) ■ERB_GUT / ENGURG (YVP Music 3133 CD)
http://ameblo.jp/irregular-time/entry-10025385764.html


上記のうちブログで感想を書いていなかった作品について簡単に書きますと、

1) これはジャズなのか?などということは、この際どうでもよろし。ポーランドのピアニストLESZEK MOZDZERの、まるで玉を転がすような透明感のあるピアノには、ただもう、うっとりと聴き惚れるしかありません。トリオの一体感も素晴らしい。珠玉の一枚です。

6) 1984年モスクワ生まれのEVGENY LEBEDEV (p)の初リーダー作は2005年の録音。熟練の演奏は、とても弱冠21歳とは思えない。作曲とアレンジの才能、過不足の無い表現も素晴らしい。

7) ARI HOENIGというドラマーの素晴らしいところは、その一打一打に溌剌としたエネルギーが漲り、常に精彩を放っていること。これほどまでに「気」が音に表れていると感じるドラマーは、ARI HOENIGのほかには見当たりませんね。

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旧譜のなかでは、この3枚が特にお気に入りでした。



左上から右に1) ~3)。

1) ■RICCARDO DEL FRA / A SIP OF YOUR TOUCH (Nocturne NTCD 402)
2) ■OLIVIER HUTMAN TRIO / FIVE IN GREEN (RDC Records 6401252)
3) ■ENRICO PIERANUNZI, MARC JOHNSON / TRANSNOCHE (Egea Records SCA 098)
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2007年は、いろんな意味で、私にとってあまり良い年ではなかったかもしれない。来年はどんな年になるでしょうか。



来年の手帳は実用一点張りで遊び心はありませんけれど、表紙の色は私の大好きなブルーです。

今年1年、怠け者のアーティチョークにお付き合いくださいましてありがとうございました。
それでは、皆様、良いお年を!

本作を「2007年度に聴いた新譜の私的ベスト10」へ入れることにしましたので、久しぶりに感想を書きま~す。

ええ~っと、困ったことに、記事のタイトル欄には字数制限があってちゃんと書き込めないのですが、正しくは、
NILS WOGRAM AND THE NDR BIGBAND / PORTRAIT OF A BAND
です。

活躍めざましいドイツの凄腕トロンボーン奏者NILS WOGRAMが、SIMON NABATOV、MATT PENMAN、TOM RAINEYとともに、北ドイツ放送局のTHE NDR BIGBAND(50年以上の伝統を誇り、現在総勢18名で活動中)と共演した本作は、2006年8月14~18日録音。NILS WOGRAM作曲の4曲とスタンダードナンバー1曲の全5曲で、アレンジも全て彼が担当。

1曲目のHOGWARTSって、あの「ハリー・ポッター」の「ホグワーツ」ですか?ちょっぴりミステリアスでシリアスなムード。バンドの演奏には抜群の一体感とバランスの良さがあって聴いていて非常に気持ちがいいです。SIMON NABATOVはこの曲だけフェンダー・ローズを演奏していて、個人的にはローズはさほど好きではないのですが、硬軟取り合わせた多彩でよく考え抜かれた演奏になっていて、こいつぁー文句無く素晴らしいです。
2曲目のPORTRAIT OF A BANDは、始まりはごく気楽でのんびりした雰囲気。徐々にテンションが高まって、中間部は豪快にスウィングし、終盤にはクラシック的な趣もチラリ...と16分を超える長尺ながら、どこを切り取っても聴き応え満点。各人のソロには繊細さあり、大胆さありで楽しませてくれます。
3曲目のスタンダード曲、YOU'RE MY EVERYTHINGは、ゆったりした静かなムードと優美な演奏が心落ち着くといった感じになっていて、これまたよろしなぁ。気分転換と思えるこういうメロディアスで繊細な演奏も、次のハードでエキサイティングな2曲をじっくり聴くための心と体(?)の準備と思えば丁度よろしいかもしれませんぜ。SIMON NABATOVって、てっきりシュガー・フリーのピアニストだとばかり思っていましたので、これほど甘美な演奏が聴けるとは思っていませんでした。
4曲目のRECYCLE OR DIEというタイトルには、個人的にいろいろと考えさせられますね~(脱線しそうなのでこれ以上は書かないでおこう)。いわゆる「ガヤ」(ここでは人の話し声、笑い声、のんきな口笛、グラスのかち合う音、物音)と呼ばれる効果音に始まり、アルトサックスのソロからド迫力のアンサンブルへ移行すると、そのけたたましさが気持ちいいのなんのって(笑) シリアスでありながら、ところどころにユーモアもちりばめていて楽しい演奏になっていますし、SIMON NABATOVのとんがりピアノ、強烈にスウィングするリズム隊、CLAUS STOTTERのトランペットソロと、この曲にも聴きどころは多いです。
一番のお気に入りは、5曲目のTHINKING OF AIR。まずは、マシンガンのごとく連打されるスネア&バスドラとベースの迫力に「うひゃーっ!」と大喜び。そして、トランペット、トロンボーン、サックス...の順でセクションごとに跳躍するフレーズをカノンのように追いかけて重ね合わせて行くところのかっこええこと。聴くほうは面白いけれど、演奏するのは難しいんだろうなと思います。MATT PENMANのベースソロもドスがきいてますし、SIMON NABATOVのピアノのとんがり具合も◎。中間部のTOM RAINEYの豪胆なドラミングにもひとしきりエキサイトして...と、これほどかっこよくてスリリングでシビレさせてくれるビッグバンドは、そうそうあるもんやないです。演奏を終えた直後の静けさの中でプレイヤーが漏らしたつぶやきとか、かすかな楽器の軋み音といった「ざわつき」や「気配」がカットされず録音に残されているところも臨場感があって、聴き終えた私も満足感で思わず「はあ~...」とため息が出てしまいました。

ビッグバンドならではの魅力と強みを最大限に発揮させている彼の作曲とアレンジの手腕はまったく驚くばかりで、作品としての完成度も高く、なんべん聴いても飽きないです。楽曲はコンテンポラリーで凝っていますが難解さはなく、都会的で洗練されたサウンドになっていますし、4ビートでちゃんとスウィングもしていて楽しいんですね。NILS WOGRAMが連れてきたリズム陣はもちろんのこと、THE NDR BIGBANDの面々も個々の演奏レベルが非常に高く、テンションも申し分なく、緩急も自在です。聴き応え満点のソロはもちろんのこと、怒涛のごとき迫力満点のトゥッティなどはもう快感!という表現がぴったり。家人に「うるさいなー」と文句言われても、音量上げたままじっくり聴いてしまったほど(;^_^A こいつぁー愛聴盤になりそうです。
本作のSIMON NABATOVは、私がこれまで聴いた中では一番とっつきやすくて、かっこよくて、迫力があって、最高に面白い演奏でした。
それから、おそらく今回初めて聴いたTOM RAINEYは、ほんと良いドラマーですねー。今後彼にはちょっと注目してみようと思います。TOM RAINEYがかっこよく叩きまくってる作品をご存知のかたがいらっしゃいましたら、どうか教えてくださいませ<(_ _)>

御用とお急ぎでないかたは、こちらでTHE NDR BIGBANDのことを知ってください(ただしドイツ語が読める人)。
    http://www1.ndr.de/orchester_chor/ndr_bigband/ndr362.html

■NILS WOGRAM AND THE NDR BIGBAND / PORTRAIT OF A BAND (Enja Records Horst Weber enja 9178)
DIETER GLAWISCHNIG (cond)
NILS WOGRAM (tb) http://www.nilswogram.com/
SIMON NABATOV (p, Fender Rhodes) http://www.nabatov.com/
MATT PENMAN (b)
TOM RAINEY (ds)
STEPHAN DIEZ (g)
MARCIO DOCTOR (perc)
trumpets
THORSTEN BENKENSTEIN (lead trumpet)
INGOLF BURKHARDT (tp) http://www.ingolfb.com/
REINER WINTERSCHLADEN (tp)
CLAUS STOTTER (tp)
trombones
DAN GOTTSHALL (lead trombone) http://www.gottsha.com/
NILS LANDGREN (tb) http://www.nilslandgren.com/
STEFAN LOTTERMANN (tb)
INGO LAHME (btb)
reeds
FIETE FELSCH (lead alto sax, fl)
PETER BOLTE (as, fl)
CHRISTOF LAUER (ts)
LUTZ BUCHNER (ts, cl) http://www.lutzbuechner.de/
FRANK DELLE (bs, bcl)
入手先:HMV(通販)

ANDRE CECCARELLIが大好きなので、こんな本を入手してみました。



著者のDANIEL DUMOULINはバイヨンヌの音楽一家に生まれました。ECOLE DE BATTERIE DANTE AGOSTINI(注1)を卒業後、ECOLE DE BATTERIE DANTE AGOSTINI TOULOUSE(注2)を設立し、校長として後進の指導にもあたっているドラマーです。
本書は、2003年1月20日~24日に開催された第3回DRUMS SUMMIT(注3)の会期中にDANIEL DUMOULINが行ったANDRE CECCARELLIへのインタビューをまとめたものです。
同SUMMITで開かれたANDRE CECCARELLIのコンサート等の写真が多数掲載されており、巻末にはANDRE CECCARELLIのディスコグラフィー(抜粋)もあります。また、同SUMMITでのコンサートを収録したCD(未聴)1枚が付録としてついています。
写真を眺めるだけでもけっこう楽しめますが、インタビュアーのDANIEL DUMOULINはドラマーですからインタビューの内容は濃いのではないでしょうか。辞書と格闘しながらぼちぼち読むことにいたしましょう。

(注1)ECOLE DE BATTERIE DANTE AGOSTINI : 1964年、パリに創設された欧州初のドラマー(子供を含む初心者からプロまで)を養成する学校で、フランス国内の各地と近隣諸国に分校があります。STEPHANE HUCHARDは、ここを卒業しています。
   http://www.danteagostini.com/

(注2)ECOLE DE BATTERIE DANTE AGOSTINI TOULOUSE : DANIEL DUMOULINが1990年に本校の認可を得てトゥールーズに設立した分校です。
   http://www.agostinitoulouse.com/

(注3)DRUMS SUMMIT : 世界中から著名なジャズドラマーを招聘してトゥールーズで行われるドラマーのフェスティバル。上記トゥールーズ校を含む様々な会場でコンサート、ワークショップ、公開レッスン、会議などが行われます。ちなみに、2007年3月月19日~24日に開催された第5回DRUMS SUMMITには、ARI HOENIG、ANDRE CECCARELLI、PASCAL REY、ELIE DURISが招かれました。

   http://drumsummit.agostinitoulouse.com/


   http://drumssummit.agostinitoulouse.com/


   http://www.drumssummit.com/


届いたドングリだけでも書いておきましょう。

1) ■PIERRE-ALAIN GOUALCH / DUC (Cristal Records CRCD 0711)
2) ■LUDVIG BERGHE TRIO / VOL Ⅳ 48 AND COUNTING (Moserobie Music Productions MMP CD 050)
3) ■MARIA SCHNEIDER ORCHESTRA / CONCERT IN THE GARDEN (ArtistShare AS 0001)
4) ■ALEX RIEL / CELEBRATION ((Stunt Records STUCD 00232)
5) ■MAURICE VANDER / ST (Dreyfus Records FDM 36502-2)


3) だけ聴きましたが、なんかピンとくるものがなかったわ~。

あとは全て未聴で、 4) と 5) は、とりあえず土中で保存。


1) は、ようやく入手できたPIERRE-ALAIN GOUALCHの新譜!発売されると分かってから手に入るまで、えらい長いこと待たされました(-_-;) 今年中に聴こ。
2) のLUDVIG BERGHE TRIOは、前作もすでに注文済み。
4) は、クマのぬいぐるみにつられて衝動買い(笑)
5) は、リイシュー盤です。1968年録音のピアノトリオ作品。


*本日のオマケ


 愛嬌があって可愛らしいミニブタのはなちゃんはみんなの人気者。

12月号の表紙は、「MILES DAVIS、見目麗しきご婦人にトランペットの吹き方を指導」の図。



今号では、制作されてから50年となるフランス映画「死刑台のエレベーター」とMILES DAVISを大きく取り上げて特集しています。貴重な写真も豊富に掲載されているようで、なかでも、デザイナーにオーダーして作らせたと思しき「トンガリ肩パッド入り・幅広襟・細身」のスーツ、顔の3分の1が隠れるぐらいに大きくてド派手なサングラス、首には何故か可愛らしくドット柄のスカーフ、アフロヘアーというファッションでパリのオランピア劇場のステージに立つMILES DAVIS(1973年)には、ちょっとビックリいたしました。足元は写っていなかったけれど、靴はどんなの履いていらしたのかしらん。私の想像では、ちょっと踵の高いブーツです(笑)

『JAZZ magazine』 は、ウェブでも楽しめますよ。
  http://www.jazzmagazine.com/

秋なのでドングリがたくさん届いていたのですが、書くの怠けてました。
どっかへコロコロと転がっていったまま忘れていなければ、これで全部のはず。ロシア、アメリカ、ドイツ、フランス、イタリアと産地は様々です。


聴いて良かったドングリを上から順に並べてみると。

■EVGENY LEBEDEV / FALL (One Records) ←こいつぁー素晴らしい!エフゲニー・レベデフ?名前覚えとかな。2007年度に聴いたCDのベスト10入りかな。

■OREGON / 1000 KILOMETERS (CAM Jazz CAM 5025) ←PAUL McCANDLESSをたどってOREGONへ飛びました。RALPH TOWNERのギターもステキ。気に入りました!ああ、しぶちゃさんの予言どおり深みにはまってます(笑)

■FLORIAN ROSS / EIGHT BALL & WHITE HORSE (Intuition INT 3408 2) ←相変わらずとっつきにくいところはありますけれど、かっこエエです。

■KARTET / PRESSION (Deux Z ZZ 84118) ←新譜も気になりますが、まずはBENJAMIN HENOCQ(ds)参加の旧譜を入手。アコースティック楽器によるアブストラクトなジャズにミニマリズムを融合させている。

■BOULOU & ELIOS FERRE / LIVE IN MONTPELLIER (Le Chant Du Monde 274 1512) ←銀座松坂屋の屋上で拾いました。STEPHANE & LIONEL BELMONDO、DIDIER LOCKWOOD等が参加。DJANGO REINHARDT SWINGING WITH STEPHANE GRAPPELLIというCDの豪華オマケ付き。

■ELISABETH KONTOMANOU / BACK TO MY GROOVE (Nocturne NTCD 406)

■BAPTISTE TROTIGNON, DAVID EL-MALEK / FOOL TIME (Naive NV 811311)

■STEFANO DI BATTISTA / TROUBLE SHOOTIN' (Blue Note / EMI Music France) ←以前に比べると甘口になった(?)。


こちらは未聴です。

■STEPHANE CHAUSSE / RUE LONGUE (Nocturne NTCD 432)

■BIRELI LAGRENE GIPSY PROJECT / JUST THE WAY YOU ARE (Dreyfus Records FDM 46050369082)

■STEPHANE KERECKI TRIO / FOCUS DANSE (Zig-Zag Territoires ZZT 070801)

■ENRICO RAVA & STEFANO BOLLANI / THE THIRD MAN (ECM Records ECM 2020)

■OLIVIER KER OURIO / SIROKO (e-motive records EMO 503) ←旧譜です。RALPH TOWNER(g)参加。


今日届いたばかりの新ドングリ。未聴です。

■TIGRAN HAMASYAN TRIO / NEW ERA (Nocturne NTCD 4502)

■OLIVIER KER OURIO / OVERSEA (Dreyfus Records FDM 46050 369122)

■PAOLO FRESU DEVIL QUARTET / STANLEY MUSIC ! (Blue Note / EMI Music Italy 50999-512845-2-7)


*オマケ

 名前が分からないチョウチョ
いつもより2週間ほど遅れて届きました。早よ書いとかな次の号が届いてしまう。


11月号の表紙を飾るのは、KEITH JARRETT、JACK DeJOHNETTE、GARY PEACOCK。今号は何故かイラストですが、私は写真のほうがいいな。
さて、今号では23ページを割いてドイツのレーベルECMを特集。そのうちの4ページでは、GUILLAUME DE CHASSY(p)、STEPHANE KERECKI(b)、FABRICE MOREAU(ds)(←このドラマーは知らんわ~)の3人がKEITH JARRETT TRIOについて対談しています。
付録のCDはTENOR SAX 47というタイトルで、ILLINOIS JACQUET、ARNET COB、LUCKY THOMPSON、DEXTER GORDON、WADELL GREY、LESTER YOUNGによるいずれも1947年録音の演奏ばかりを集めたものでした。

*どうでもいいオマケ
普段は新譜ばかり聴いていて古いジャズを聴くことはほとんどないのですが、それでもごくたまに「おっ、これは!?」と思うようなステキなジャズに出会うことがあります。

ついこのあいだ、地元で行われたブルースのライヴに出掛けたときのことです。開演前の会場で着席したとたん、そこに流れていたちょっと古いジャズがもの凄~く気になったんですね。音のヴォリュームは小さかったのですが、もう聴けば聴くほどに素晴らしくて、私の耳はそのオルガン・トリオの演奏に釘付け状態。「オルガンでこんだけスウィングしまくる人はJIMMY SMITHしかおらんやろな~。ううむ、ドラムもギターもめちゃくちゃええやんか~」と思いながら、それでもやはりちゃんと確かめたくなったので、PAのお兄ちゃんに「ちょっとすみませんが、今掛かってる音楽は誰のでしょうか?」と尋ねてみるとJIMMY SMITHだとの答え。思わず「アルバムタイトルは何ですかっ!?」と尋ねると「ORGAN GRINDER SWING」だと教えてくれました。

こういうオルガンジャズこそ、LPで聴いたら感じええやろな~と思いましたが、それはこんど都会の中古レコード屋さんで漁ってみることにして、取り急ぎCDで注文しちゃいました。
出会いのチャンスは大切にしなければ。人との出会いも、音楽との出会いも。ね♪
11月15日(木)は、舞鶴市政記念館ホールで行われた山下洋輔ニューヨークトリオのライヴへ行って来ました。



例によって夫を誘ったものの、どうも乗り気でない様子。ほんなら一人で行こか~と思ってましたら、3日前になって「新聞記事で読んだら面白そうやったから僕も行く」って、あーたね(笑)
山下洋輔の生の演奏を聴いたのは、1991年の第一回赤煉瓦サマージャズ以来のことなので16年ぶりです。と、こう書いて「ええっ、もうそんなになるの!?」と自分でびっくりしております。
そういえば山下洋輔のLPがあったっけと、約30年振り(?!)に引っ張り出しました。「MONTREUX AFTERGLOW」と「SUNAYAMA」の2枚だけですが、2枚ともジャケット、盤面ともにピッカピカで新品のまんま!おそらく買った当時は好きになれず、ほとんど聴いていなかったんですね。で、この機会にとコンサートへ行く直前に聴いてみました。そうしましたら、実に刺激的で面白く、山下洋輔の暴れっぷりやら坂田明の絶叫に思わずプッとふきだしたりもして、2枚まるごと楽しめました。

このライヴは「赤れんがジャズミュージアム」開設 を記念して開催されたものです。ミュージアムはこの建物の2階にあり、山下洋輔が学生時代に書いた直筆の楽譜も展示してあるそうです。1階ホールのキャパは150人ほどと大きくありませんが、内壁も全て赤レンガで床は木で出来ていますのでとても趣のある落ち着いた雰囲気です。

ライヴは2セット。タイトル未定の新曲で始まったのですが、これがいきなりの完全アブストラクトで、私はとうとう最後までテーマが分かりませんでした(;^_^A 全くのアブストラクトはこの1曲だけで、他に演奏したのはこんな曲です(曲順と曲名はあやふやです)。

トリプル・キャッツ(確か新曲)
幻燈辻馬車(岡本喜八監督の映画作品のために作曲)
エー・ハー(最初の2音がミとシだからということで便宜上そう呼んでいる曲だとか)
20TH THEME(来年のトリオ20周年にちなんで3+3+4+4+3+3の20拍子)
題名忘れた(ジャズ発祥の地といわれているニューオリンズにちなんだ明るく楽しい曲)
FOR DAVID'S SAKE(DAVIDって誰のことかなあ?)
ブリック・ブロック(第一回赤煉瓦サマージャズでも演奏)
クルディッシュ・ダンス(9拍子)
MY FAVORITE THINGS(アンコールとして)

ベースソロに続いてピアノとドラムによる小節交換というパターンが多いような気もしましたが、20年続いているトリオだけあって演奏の息はぴったり合っていました。山下洋輔のピアノは、往時に感じた強靭で鋭いタッチや鬼気迫るといった演奏ではないものの、肘打ちなども入る熱演でかなり楽しませてくれました。
「ニューオリンズにちなんだ曲」では、聴衆の手拍子の隙間を縫うようにフェローン・アクラフが多彩なフレーズを繰り出して来るところがとても楽しかったです!お客さんも大喜びでしたね。私はフェローン・アクラフの演奏を初めて聴いたのですが、ちょっと複雑そうなラテン系のリズムも楽々で、ところどころユーモアをちりばめたドラミングでも楽しませてくれました。ドラムソロになると特に「ブリック・ブロック」などでは実によく歌っていて、彼はなかなかいいドラマーだなぁと感じました。
セシル・マクビーは、拝見した感じではおそらく70過ぎ(?)。ビート感がいまひとつなのと音を増幅し過ぎているのが残念でしたが、長いソロでもけっこう速弾きが多くて歌心を感じる達者な演奏を聴かせてくれていたと思います。
山下洋輔の強い個性と聴衆を楽しませようとするサービス精神がうまく釣り合っているので、聴いていてとても楽しいライヴでした。ジャズをライヴで満喫したという充実感を得ることが出来てとても良かったです。
山下洋輔の知名度と人気を考えると当然なのかもしれませんが、今夜のコンサートはとても楽しいものでしたから、お客さんもきっと大満足だったのでしょう。終演後に行われたサイン会では長い列が出来ました。

 山下洋輔


「あなたのドラムソロは歌っていましたね。特にブリック・ブロックの演奏が気に入りました」と申しましたら、えらい喜んではりました。「お名前は?」ときかれて答えたのですが、一文字抜けてるせいで男の名前みたいになってます(苦笑)

 フェローン・アクラフ


セシル・マクビーさんと握手したとき「おっ、君の握力はとても強いんだね」と言われてしまいました(汗)
「このページはあなた専用です。大きな文字でお願いします」と申しましたら、「いや~緊張しちゃうね」と笑いながら書いてくれました。

 セシル・マクビー

山下洋輔ニューヨークトリオの皆さん、終演後はビールで乾杯だということでしたが、名物の松葉ガニは召し上がったのでしょうか。この季節、ここへ来はったらカニ食べな話になりまへんで。
あ、こんなこと、ここに書かずにサイン会のときに言うべきだったかな(苦笑)

出演:山下洋輔ニューヨークトリオ
      山下洋輔 (p)
      セシル・マクビー (b)
      フェローン・アクラフ (ds)
日時:2007年11月15日(木)
      開場18:30 開演19:00
会場:舞鶴市政記念館ホール
主催:NPO法人赤煉瓦倶楽部舞鶴
これは、ジャズではなくワールドミュージック作品なのですが、気になるので書いておきます。

HUONG THANH(vo)とNGUYEN LE(g)のデュオ作品が2008年1月28日にリリースされるようです。で、意外なことにSTEPHANE GUILLAUMEの名前が!本作における彼の活躍度がどのくらいなのかよく分かりませんが、これは聴かねば。
もちろんPAOLO FRESUさんも参加。美しい音楽が聴けそうな予感。

■HUONG THANH & NGUYEN LE / FRAGILE BEAUTY (ACT Music+Vision ACT 9451-2)
Huong Thanh - vocals
Nguyen Le - electric & acoustic guitar, synthesizer, computer
Mieko Miyazaki - koto
Hao Nhien Pham - monocorde (dan bau), 16-strings zither (dan tranh), sao, meo bamboo flutes
Nguyen Van-Hong - backing vocals
Paolo Fresu - trumpet, fluegelhorn
Stephane Guillaume - soprano sax, flutes
Renaud Garcia-Fons - pizz & arco acoustic 5-string bass
Etienne Mbappe - fretless bass
Alex Tran - percussions
Francis Lassus - percussions
Illya Amar - bamboo balafon (trung)
Dominique Borker - piano

http://www.actmusic.com/product_info.php?products_id=217
*ちょっと遅くなってしまったが、せっかくなので書くことにした。ただし、たいしたことは書けないので悪しからず(;^_^A

何故か今年も抽選に当たってしまったので(遠くに住んでる人ほど当たりやすいのか?)、11月4日(日)はギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル2007へ行ってきた。



早朝6時に家を出て在来線の特急と新幹線のぞみを乗り継ぎ東京へ。丸の内線でドアが閉まる寸前の電車に飛び乗り、最短コースと最短時間でちゃっちゃと移動したものの、銀座4丁目交差点に到着したのは開場の30分前。家から東京まではけっこう遠いんである。そのうえ今回は夫を道連れに出来なかったので一人寂しく...。

ここ日本において、ERIC LEGNINIとSTEPHANE BELMONDOの演奏を生で聴ける機会などそうそうあるわけではない。今年はモーションブルー横浜のERIC LEGNINI TRIO公演もあったけれど、結局は行けずに予約をキャンセルした。例によって大げさに言うならば、「今聴いとかな一生聴かれへんかもしれん」という思いに突き動かされたわけだが、いったいこれで何枚のCDが買えるんだ?という交通費と、CD10枚はゆうに聴けるぜ!という時間を費やして、とんぼ返りで1時間そこそこの無料ライヴを今年も聴きに行った私は...アホかもしれん(笑)

座った席は前から5列目の真ん中へん。最初はトリオによる演奏だったがタイトルは分からずじまい(あとでLEGNINIが新しいブーガルーだよとか言っていたが)。ドラムのFRANCK AGULHONが冒頭で僅かにコケそうになったものの(苦笑いでごまかしていたが)、ノリのよい60年代ブーガルーふうの曲はつかみとしてはバッチリかなと思いつつ聴いていたら、ステージ袖の暗がりをLLサイズの男性がスーツの上着からワイシャツの裾出しっぱなしでウロウロ。「ほらほら、そこの人、暗がりでも巨体が動くと目立つのよ。目障りだからステージの袖でウロウロはやめよう。それからぁ、シャツの裾はちゃんとズボンに入れる!」と、口うるさい母親みたいにツッコミを入れてしまった私(もちろん心の中で)。が、すぐにそれがSTEPHANE BELMONDOだと気づいてなんだか急に可笑しくなってしまい、顔もろくに見ないうちからBELMONDOさんにえらく親近感を持ってしまった私であった。

ERIC LEGNINIの凄いところは、まず鍵盤のタッチではないだろうか。比較するとはっきり分かるが、彼の生命力漲る生き生きとしたタッチを聴いたあとで他のピアニストを聴くと死んでいるように感じることもしばしばで、凡百のピアニストとは一線を画している。テクニックにしたって、上手いと巷で騒がれているピアニストでさえ下手に聞こえてしまって困るほど。だが彼のタッチの素晴らしさをこの会場で堪能するのは無理というもので、ドラムの音が前に出過ぎて少々うるさく、スネアの響き線がピアノの音にいちいち反応してビリビリ鳴ってしまうし、3つの楽器のなかでは肝心のピアノの音が最悪。ということで、今日はただ理屈抜きに演奏を楽しむことにする。

いよいよSTEPHANE BELMONDOが登壇したとき拍手が少ないと感じたけれど?私などSTEPHANE BELMONDOが生で聴けるというだけでもう指笛ピーピー吹きたいぐらいに嬉しかったのだが、指笛吹けないのでいっぱい拍手してあげた(指笛、上手に出来るようになりたーい!)。
ちゃんと覚えていないが、最初の曲の他に演奏したのは、新譜のBIG BOOGAROOからがほとんどだったと思う。オリジナル曲のBIG BOOGAROO、SOUL BROTHER(アルバム中これが一番好き)、他人の曲のWHERE IS THE LOVEなどで、1曲だけスタンダードナンバーのDREAM(と言っていたが?)を。その気になればその場で踊れちゃうような楽しい曲が多いのだが、まあ、こういう場所でノリの悪い日本人が踊るとなるとよほどのことがない限り無理!(笑)それにしても聴衆の反応がいまひとつのような気がして、彼らのファンとして別に感じなくてもいい責任のようなものを感じてしまった私(笑)は、アドリブに対する拍手も率先して積極的にしてみたつもりだが、やはり今日の聴衆はノリがよろしくない。素晴らしい演奏を披露したプレイヤーに対して拍手で賞賛の意を表明すればよく、ただアドリブがすんだからといっていちいち義務的に拍手する必要はないけれど、LEGNINIが後半にあれだけグルーヴィーなアドリブを弾きまくってもだあれも拍手しようとしないのは何故だ?演奏に聴き惚れるあまり拍手を忘れるという場合もあるが。それでもFRANCK AGULHONのドラムソロのときにはみんな拍手していたね。私はしなかったけど(笑)MATHIAS ALLAMANEの長いベースソロはよく歌っていてなかなか良かったので大きな拍手を送る。

ステージの前半はそうでもなくてなんだかピンとこなかったが、後半あたりからLEGNINIのアドリブも冴えてきてだんだん乗ってきた。体も指もごついのでピアノが小さく見えてしまう。何の曲か忘れたけれど、どこか中東あたりを思わせる不思議な音階で始まり、それが多彩に変化しながらどんどん展開する長ーいイントロを披露してくれて、今更ながらLEGNINIの才能とひらめきに感心してしまった。彼はバッキングもめちゃくちゃ上手い人なのだが、今回はSTEPHANE BELMONDOさんに聴き惚れていてそれどころではなかったかも(笑)このライヴでは、音響が悪かったからなのかなんとなくERIC LEGNINIのピアノを存分に堪能出来ず、私はむしろSTEPHANE BELMONDOの演奏に注目してしまった。

どきどき大きな掛け声を出してバンドの演奏に活を入れるSTEPHANE BELMONDO。スーツを着てはいるが、ワイシャツは裾が出しっぱなしなのと襟を中へ折り込んで(?)いびつなVネックにしてしまっているので絶妙なカジュアル感とだらしなさが漂っている。BELMONDOのこういういでたちは、一部妙齢のご婦人方の母性本能を掻き立ててしまったかもしれない(笑)フロントに立ち、アドリブに熱が入ると顔が赤く染まって寄り目になっちゃうところが可愛い。動作はいちいちスローだし、歩き方もクマかゴリラの二足歩行を思わせるところがなんとなくユーモラス(笑)
彼は、もちろん豪放磊落なスケールの大きい吹き方も出来る人で速いパッセージをエキサイティングに吹くところも良いけれど、私はむしろ彼独特の多彩で繊細な表現の方が気に入っている。曲によって持ち替えていたフリューゲルホルンはもちろん、トランペットの音もたいへんまろやかでキンキンと耳障りなところは一切無い。装飾音のつけ方もごく自然でセンスが良いし、メロディをストレートに吹いても決してイモにならない。また、音に繊細なニュアンスをつけるのがめっぽう上手いので演奏が実に味わい深くて、じっくり聴いていると心が休まる。私は、そんなSTEPHANE BELMONDOの演奏がとても好きだ。今日は生で聴くことが出来て本当に幸せ!

終演後のサイン会に現れたのはERIC LEGNINIだけだったのがちょっと残念。
「ボンジュール・ムッスィユー・レニーニ。グラッ・トゥ・ミーチュー」と、英仏チャンポンで挨拶して握手してもらう。
にこやかに笑っているLEGNINIさんを間近で見ると、とにかく羨ましいほどの“もち肌”(笑)サインの上に何やら文章を書いてくれたがなんと読むのだろう。「Please groove !」 かな?そのあとが分からない。

 マジックペンの太い方の芯で書いてもらえばよかったかな~。

LEGNINIさんが、別れ際、愛想よく「Ciao, ciao !」 と手を振って挨拶してくれたので、内心「何でイタリア語なんやろ???」と思いつつ「バイバイ!」と手をグーパーしながら立ち去った私。が、よくよく考えてみればLEGNINIとはいかにもイタリア人らしい名前だ。何で今までこれに気づかなかったのか自分でも不思議だが、彼はきっとイタリア系なのだろう。それにしてもSTEPHANE BELMONDOにも会ってサインを貰いたかったな~。

山野楽器を出て、BOULOU & ELIOS FERREのショップライヴが行われる松坂屋の屋上へ急ぎ足で行ってみた。が、思ったとおり会場は既に人で埋め尽くされていて、ステージは全く見えない状態。強く照り付ける西日をチラシで遮りながら立見席の最後尾で1曲だけ演奏を聴いた。私のいる場所が落ち着いて演奏を聴く雰囲気ではなく音響が最悪だったことと、人波の隙間からBOULOU FERREの特徴的なおでこがチラリと見えたことでなんとなく納得してしまったこともあって(笑)CDを購入して帰ることに。販売員の男性が「あとでサイン会がありますよ」と親切に教えてくれたが、「終演までいると新幹線に間に合わないので」と言い訳をして会場を後にした。BOULOU & ELIOS FERREの演奏はぜひ聴きたかったが、あそこにいるよりも家のオーディオでゆっくり落ち着いてCDを聴くほうがずっといい。

そういえば今日は昼抜きだったなと思い、エネルギー補給のため銀座の大通りから横道に入って最初に目についた喫茶店へフラリと入った。コーヒーも美味しかったが、フロマージュブランを贅沢に使ったと思われるケーキ(名前忘れた)が、ちゃんとチーズの味がしたしフランボワーズなどのベリー類がたくさん乗っていて、めっちゃ美味しかった!

今年で3回目となったギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバルのジャズイヴェントに関しては、会場の音響等々問題点もいろいろあるようだが、現在最も注目すべき海外のアーティストを招聘して日本の聴衆に広く紹介するという点においてその意義は大きいと思う。ただ私としては、ちゃんと料金を払ったうえで、しかるべき音響の整った会場でジャズを堪能したいと望んでいるので、銀座の無料ライヴと並行する形で、小さくてもいいからどこか別のちゃんとした音響設備を備えたホールで有料の公演を行っていただけると嬉しい。
とはいえ、このところ何かと気ぜわしくてなかなか自分の時間が持てなかったし、事情もあってギリギリまで東京行きを決めかねていたので、今日銀座へ来ることが出来たのはとてもラッキーだった。たとえ短い時間ではあっても、自分のお気に入りのアーティストを間近で見、生の演奏に触れることが出来るのは、何物にも代え難い幸せな体験だ。
ありがとう銀座。来年も期待してるぜ!

出演 : ERIC LEGNINI QUARTET
ERIC LEGNINI (p)
STEPHANE BELMONDO (tp)
MATHIAS ALLAMANE (b)
FRANCK AGULHON (ds)
日時 : 2007年11月4日(日) 午後1時開演
会場 : 山野楽器銀座本店 7F JAM SPOT