本作を「2007年度に聴いた新譜の私的ベスト10」へ入れることにしましたので、久しぶりに感想を書きま~す。
ええ~っと、困ったことに、記事のタイトル欄には字数制限があってちゃんと書き込めないのですが、正しくは、
NILS WOGRAM AND THE NDR BIGBAND / PORTRAIT OF A BAND
です。
活躍めざましいドイツの凄腕トロンボーン奏者NILS WOGRAMが、SIMON NABATOV、MATT PENMAN、TOM RAINEYとともに、北ドイツ放送局のTHE NDR BIGBAND(50年以上の伝統を誇り、現在総勢18名で活動中)と共演した本作は、2006年8月14~18日録音。NILS WOGRAM作曲の4曲とスタンダードナンバー1曲の全5曲で、アレンジも全て彼が担当。
1曲目のHOGWARTSって、あの「ハリー・ポッター」の「ホグワーツ」ですか?ちょっぴりミステリアスでシリアスなムード。バンドの演奏には抜群の一体感とバランスの良さがあって聴いていて非常に気持ちがいいです。SIMON NABATOVはこの曲だけフェンダー・ローズを演奏していて、個人的にはローズはさほど好きではないのですが、硬軟取り合わせた多彩でよく考え抜かれた演奏になっていて、こいつぁー文句無く素晴らしいです。
2曲目のPORTRAIT OF A BANDは、始まりはごく気楽でのんびりした雰囲気。徐々にテンションが高まって、中間部は豪快にスウィングし、終盤にはクラシック的な趣もチラリ...と16分を超える長尺ながら、どこを切り取っても聴き応え満点。各人のソロには繊細さあり、大胆さありで楽しませてくれます。
3曲目のスタンダード曲、YOU'RE MY EVERYTHINGは、ゆったりした静かなムードと優美な演奏が心落ち着くといった感じになっていて、これまたよろしなぁ。気分転換と思えるこういうメロディアスで繊細な演奏も、次のハードでエキサイティングな2曲をじっくり聴くための心と体(?)の準備と思えば丁度よろしいかもしれませんぜ。SIMON NABATOVって、てっきりシュガー・フリーのピアニストだとばかり思っていましたので、これほど甘美な演奏が聴けるとは思っていませんでした。
4曲目のRECYCLE OR DIEというタイトルには、個人的にいろいろと考えさせられますね~(脱線しそうなのでこれ以上は書かないでおこう)。いわゆる「ガヤ」(ここでは人の話し声、笑い声、のんきな口笛、グラスのかち合う音、物音)と呼ばれる効果音に始まり、アルトサックスのソロからド迫力のアンサンブルへ移行すると、そのけたたましさが気持ちいいのなんのって(笑) シリアスでありながら、ところどころにユーモアもちりばめていて楽しい演奏になっていますし、SIMON NABATOVのとんがりピアノ、強烈にスウィングするリズム隊、CLAUS STOTTERのトランペットソロと、この曲にも聴きどころは多いです。
一番のお気に入りは、5曲目のTHINKING OF AIR。まずは、マシンガンのごとく連打されるスネア&バスドラとベースの迫力に「うひゃーっ!」と大喜び。そして、トランペット、トロンボーン、サックス...の順でセクションごとに跳躍するフレーズをカノンのように追いかけて重ね合わせて行くところのかっこええこと。聴くほうは面白いけれど、演奏するのは難しいんだろうなと思います。MATT PENMANのベースソロもドスがきいてますし、SIMON NABATOVのピアノのとんがり具合も◎。中間部のTOM RAINEYの豪胆なドラミングにもひとしきりエキサイトして...と、これほどかっこよくてスリリングでシビレさせてくれるビッグバンドは、そうそうあるもんやないです。演奏を終えた直後の静けさの中でプレイヤーが漏らしたつぶやきとか、かすかな楽器の軋み音といった「ざわつき」や「気配」がカットされず録音に残されているところも臨場感があって、聴き終えた私も満足感で思わず「はあ~...」とため息が出てしまいました。
ビッグバンドならではの魅力と強みを最大限に発揮させている彼の作曲とアレンジの手腕はまったく驚くばかりで、作品としての完成度も高く、なんべん聴いても飽きないです。楽曲はコンテンポラリーで凝っていますが難解さはなく、都会的で洗練されたサウンドになっていますし、4ビートでちゃんとスウィングもしていて楽しいんですね。NILS WOGRAMが連れてきたリズム陣はもちろんのこと、THE NDR BIGBANDの面々も個々の演奏レベルが非常に高く、テンションも申し分なく、緩急も自在です。聴き応え満点のソロはもちろんのこと、怒涛のごとき迫力満点のトゥッティなどはもう快感!という表現がぴったり。家人に「うるさいなー」と文句言われても、音量上げたままじっくり聴いてしまったほど(;^_^A こいつぁー愛聴盤になりそうです。
本作のSIMON NABATOVは、私がこれまで聴いた中では一番とっつきやすくて、かっこよくて、迫力があって、最高に面白い演奏でした。
それから、おそらく今回初めて聴いたTOM RAINEYは、ほんと良いドラマーですねー。今後彼にはちょっと注目してみようと思います。TOM RAINEYがかっこよく叩きまくってる作品をご存知のかたがいらっしゃいましたら、どうか教えてくださいませ<(_ _)>
御用とお急ぎでないかたは、こちらでTHE NDR BIGBANDのことを知ってください(ただしドイツ語が読める人)。
http://www1.ndr.de/orchester_chor/ndr_bigband/ndr362.html
■NILS WOGRAM AND THE NDR BIGBAND / PORTRAIT OF A BAND (Enja Records Horst Weber enja 9178)
DIETER GLAWISCHNIG (cond)
NILS WOGRAM (tb) http://www.nilswogram.com/
SIMON NABATOV (p, Fender Rhodes) http://www.nabatov.com/
MATT PENMAN (b)
TOM RAINEY (ds)
STEPHAN DIEZ (g)
MARCIO DOCTOR (perc)
trumpets
THORSTEN BENKENSTEIN (lead trumpet)
INGOLF BURKHARDT (tp) http://www.ingolfb.com/
REINER WINTERSCHLADEN (tp)
CLAUS STOTTER (tp)
trombones
DAN GOTTSHALL (lead trombone) http://www.gottsha.com/
NILS LANDGREN (tb) http://www.nilslandgren.com/
STEFAN LOTTERMANN (tb)
INGO LAHME (btb)
reeds
FIETE FELSCH (lead alto sax, fl)
PETER BOLTE (as, fl)
CHRISTOF LAUER (ts)
LUTZ BUCHNER (ts, cl) http://www.lutzbuechner.de/
FRANK DELLE (bs, bcl)
入手先:HMV(通販)