マリア 5 (ヤングチャンピオンコミックス)
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ゴトウが俺の仲間をタコ殴りにしてから一週間。
ようやく俺はゴトウを見つけだし、お手合わせ。
俺もゴトウも二十歳そこそこの若造だったからなかなか勝負はつかず、最後はもういいだろって事で仲間に止められた。
ゴトウがタコ殴りにした俺の仲間は結局鎖骨の骨折だった。
しばらく右手が使えないから日常生活と夜の生活に苦労する事になった。
悪いのは俺の仲間だったから結局は手打ちという事になったが、ゴトウは俺を気に入ったらしく、俺の仲間の元へ見舞にもきた。
退院したら風俗をおごる約束までしてくれたわ。
一匹狼だけあって小難しい性格だったが、わが道を行くタイプで、嫌みな面は全くなかったな。
そんな男は放っておけないタイプの俺だから、よく遊びに誘うようになった。
ゴトウは今で言うと市原隼人のような容姿だったから一緒にいるとゴトウだけがモテた。
喧嘩の強さの秘密は、空手の黒帯だったからだ。
本人は、黒帯まで持ってて喧嘩するバカはどうしようもないなんて言ってたけどさ。
出会った当時は塗装屋の従業員だった。
田舎から出てきた男だった。
一旗揚げていつか帰るって言ってたんだけど、別れの日は突然にやってきた。
父親が亡くなってしまって、母親が一人になるから田舎に帰る事になった。
ゴトウが帰る前日、珍しくゴトウの方から俺に誘いがあった。
ゴトウのアパートの近くの河川敷で缶ビールを飲みながらバカ話をした。
そしてゴトウから言われた。
「田舎に帰ってしまうと、お前みたいな奴と喧嘩なんてもうできないだろうからさ、今日で喧嘩は卒業する。だからお前が最後の相手になってくれ」
俺は喜んで申し出を受けた。
華を持たせるなんてつもりは毛頭なかったし、決着をようやくつけられると思った。
勝てばいい。
相変わらずバカだった俺は飲みかけの缶を投げつけ奇襲に出た。
なんて卑怯なんだ。笑
結果、ゴトウの容赦ない正拳突きの嵐。
半泣きの井口。
まぁまぁいい勝負だったけど、最後は打ちのめされた。
ゴトウも俺もしばらく動けない状態だったな。
だってよぉ、誰も止める人間がいねーからお互いトコトンやった。
ありがとな。
ゴトウはそう言ってくれた。
懐かしい。
出会ってからもいろいろドラマがあったんだけどさ、だいぶ省略して書いてみた。
あれから数十年。
ゴトウは今、従業員を何十人も率いる会社の社長をしている。
井口達也
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