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---アカシと海の話⑨---
迷惑極まりないお下品なブルブルとした重低音がどんどん大きくなってくる。
アカシは足元に置いた荷物を肩にかけ、「2年ぶりだなぁ」と言った。
目の前に現れたのはスカイライン。
真っ黒のハコスカだった。
フルスモークで中が見えない。
俺たちの目の前で下品に止まると、運転席の窓が開いた。
中から下品な、いや、ティアドロップのサングラスをかけたリーゼントの紳士がアカシに向かって運転席から「よぉ」と片手をあげた。
かすれにかすれた低いハスキーボイス。
かすれすぎて「よぉ」の声も空気感が尋常ではない。
俺はこんがらがった頭を整理する暇もなかった。
「おじさん久しぶり!」アカシが言った。
おじさん?
身内か?
サングラスハスキーおじさんは車から降りてくると、アカシとハイタッチした。
ファンキーな感じだ。
アカシはいきなりの展開に完全に乗り遅れている俺たちを向くと、サングラスハスキーおじさんを紹介した。
「俺のおじだよ。強烈だろ?」そう言って笑った。
するとサングラスハスキーおじさんはサングラスを少し下にずらし、上目遣いで俺たちを見据えた。
怖い。
ただものじゃないオーラがすべての毛穴から出ている。
息をのむ俺たちに向かって、サングラスハスキーおじさんは急に顔を緩め、「ようこそ」と笑った。
ギャップに悶絶。
しかし、怖くて笑えない。
実は優しい男なのか。
にこやかに俺たちに挨拶をする様子を見ると優しい感じもうかがえる。
しかし今度はまた唐突に表情を変え、自分の車のホイールを蹴っ飛ばした。
「出てこいゴラぁ!」
井口達也
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