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---アカシと海の話⑧---
またアカシの口から出た「国宝」の言葉。
珍しいものというイメージはつかめたが、アカシのにやけた顔が気にかかる。
そうこうしているうちにこてっちゃんとノブオが駅にやってきた。
単車は近くに止めてきたらしい。
まずはその恰好に俺は笑った。
こてっちゃんもノブオも似合わないアロハシャツに、似合わないサングラス。
ナンパをするために、この男たちなりにおしゃれをしてきたのだろう。
「その国宝ってのがアカシの親戚なん?」
俺がアカシにそう言うとアカシは「ああ」とだけ答えた。
「俺らもまだ会った事がねーんだよ」こてっちゃんが言った。
アカシはタバコの煙を空に一吹きさせ「さぁ、来たぞ」と言った。
すると下品な重低音がかすかにこだましてきたのだった。
井口達也
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