俺が部屋から出て行ってもアカシたちは追ってこなかった。
俺がすねて面倒くさいガキになり、五本松で石投げをしていたらワン公とアカシがようやくやってきた。
こてっちゃんやノブオはいなかった。
それはそうだ。
ナンパに行くのに小学生のガキがいたら邪魔以外の何ものでもない。
俺のもとにやってきたワンコウもアカシも笑っていた。
人の気も知らないで。そう思っていた俺にアカシが「最後まで話聞けよ」そう言った。
「なぁワンコウ」アカシは続けた。
ワンコウはうなづいて「いじけるなよ達也」と」言った。
その自信ありげで上から目線の発言に、なんだか自分が恥ずかしくなり、それを誤魔化すために短すぎる導火線に火をつけて「うるせえ!」と大きな声を出した。
するとアカシとワンコウは顔を見合わせて笑った。
どうやら俺の反応が予想通りといった感じなのだろう。
「女のケツでも追いかけてろよ」
俺は精一杯の強がりでアカシに言った。
アカシは口元だけ笑い「それもいいんだけどな」と答えた。
「お前も女好きだろ」アカシに切り返された。
「湘南に親戚がいるからよ、そこ泊まってわいわいやれたらいいなーと思ったんだわ」
アカシはそう続けた。
「女とわいわいだろ」俺が返した。
「それもいいんだけどな」
「いいのかよ」
「それ以上におもしれー奴らがいるんだよ。俺にとっても、お前にとってもな」
アカシはそう言うと俺の頭をポンと叩いた。
井口達也