いつもありがとうございます。一葉です。
こちらのお話は2018年キョコ誕から2019年蓮誕を結び、バレンタインを最終話とする原作沿いSS連載の完結話です。
実はまたもや夜の出来事。おまけ付きなので長いです。
お楽しみ頂けたら幸いです。
前のお話はこちら↓
③真の目的
2018年キョコ誕SS~2019年蓮誕・VD最終話
■ 逆チョコ逆襲 ■
実は2月に入ってすぐの頃。
蓮のドラマ撮影現場で一足早く、こんなことが話題になった。
「 最近、逆チョコも珍しくなくなっているじゃないですか。だからオレ、今年は逆チョコしようと思っているんですよ!! 」
逆チョコとは、つまり女性から男性にチョコを渡すのではなく、欧米のそれに倣うかのごとく男性から女性へチョコを渡す、ということ。
まだ少年と称しても違和の無い、若干15歳の若手俳優からそう告白された蓮は、5秒ほど間を置いてから彼に頑張れ、と微笑んだ。
たぶん…だけど、蓮はこの時から心のどこかでそれを考えていたのだろう、と俺は思う。
だから自分の誕生日にキョーコちゃんの手作りチョコケーキを蓮は希望したのだ。
何のためか?
そりゃ、手っ取り早く今日に結びつけるためだろう…。
「 よし、ちゃんと焼き上がりましたね。じゃあスポンジを冷ますまでの間に生チョコホイップを作りましょう。それぞれボウルを持ってください 」
「 最上さん、材料はこれだよね?生クリームとチョコレート 」
「 はい、そうです 」
2月13日の23時過ぎ。
いつもだったら仕事をしている事もあるこの時刻。
俺は自分が担当している人気俳優の蓮と、蓮の想い人でもあるキョーコちゃんと三人で蓮宅キッチンに詰めていた。
理由はお察し頂けると想像する。
もちろんきっかけは3日前の蓮のバースディパーティもとい、トリパーティで蓮が上手い事この約束を取り付けたのだ。
「 ……え?逆チョコ? 」
キョーコちゃんが作ってくれたチョコケーキを食べながら蓮が振った逆チョコの話題でキョーコちゃんは眉間にシワを寄せた。
「 っていうのが流行っているんだって。最上さん、知ってた? 」
「 いえ、ベインデー情報なんて興味ありませんので 」
「「 ベインデー? 」」
「 何でもありません。それで?それがどう…? 」
「 でね、俺もやってみたいかなって思ったんだ。それに、さっき社さんが言っていただろ。今日のトリパーティも3人で楽しく作りたかったのにって。でも今日それが出来なかったからリベンジの意味も含めて出来たらなって思ったんだけど、最上さんはどうだろう? 」
「 ……どうって、私がなに… 」
「 なにって、こんなに美味しいチョコレートケーキを作れる君に是非ご教授願いたいと思って。ね?社さん!! 」
……お前、またその手を使うのか。
顔文字や絵文字付きのメールを要求した時のように、さりげなくお前は俺を巻き込んでくれるよな。
ま、いいけど……。
「 うん、そうそう。俺でも蓮でも作れるレベルのヤツをぜひ 」
「 ということで13日の夜、最上さんの都合はどう? 」
「 ……はい、大丈夫ですけど… 」
「 じゃあ決まりだ 」
…ということになったのだ。
それで結局なにを作っているのかというと、蓮が所望してキョーコちゃんが作ってきてくれたバースデーケーキよりも随分小さなチョコケーキ。
小さくしたのは蓮の家のオーブンで3人のケーキが一度に焼ける大きさにしよう、ということで合意したから。
しかしキョーコちゃんの腕前は本当に凄いと思う。
蓮と俺の面倒をみながら自分の分もちゃっちゃと作り、しかも売り物レベルでそれを完成させるのだから。
「 生チョコクリームをキュピっと絞って~~~~~……完成です 」
「 お~~!!すごい。けっこう見られるレベルですよね 」
「 なっ!俺たち結構やるな、蓮! 」
ケーキが完成したのは日付を跨いだ0時過ぎ。
つまりバレンタイン当日だった。
もちろん蓮はコレを狙っていたと思うんだ。
「 ええ、本当ですね。そうだ。ちょうどバレンタイン当日になりましたし、今から出来たてを味わいませんか? 」
「 いいぞ。だったら俺が作ったのは半分こにして蓮とキョーコちゃんへ 」
「 へ??????社さん、誰かに渡すために作っていたんじゃ…? 」
「 もちろんそうだよ?俺は担当している二人にあげるつもりで作ってた 」
「 そうだったんですか、社さん。ちなみに俺のは最上さんへ 」
「 へえぇぇぇ? 」
「 ……けどそうか。そうすると社さんの分を俺はどうすれば……。社さん。この飾りで作ったチョコの残りでもいいですか?生チョコを丸めてコーティングしたやつで 」
「 別にいいけど……キョーコちゃんと比べるとずいぶん愛が薄いな 」
「 え?え? 」
「 じゃあ俺、コーヒー淹れますね 」
蓮がたたみかけるように行動に移すと、キョーコちゃんはイニシャルKのペンダントトップを揺らしながら慌てて口を開いた。俺と蓮の二人を交互に睨みつける。
「 ちょっと待って下さい!それじゃ私が作ったのを半分こにして敦賀さんと社さんにプレゼントしたって私が一番多く食べることになっちゃうじゃないですか!
こんな夜中に冗談じゃないです。太っちゃう 」
眉間にきゅうっとシワを寄せて、頬を膨らませたキョーコちゃんを見て足を止めた蓮は直立不動。
その間、何を考えていたのかは判らないけど、少なくとも蓮はキョーコちゃんの反意を予想していたに違いない。
だって蓮、全然余裕そうだったから。
「 最上さん 」
キョーコちゃんの名を囁き、自分が手がけた出来たてホヤホヤのバレンタイン逆チョコケーキを蓮がおもむろに持ち上げる。
左手の平でケーキを支えながらキョーコちゃんの前に跪き、右手でキョーコちゃんの左手をすくい上げた蓮は気持ち小首を傾げてキョーコちゃんにこう言った。
「 ……これ、食べなくてもいいから貰って? 」
「 ぶふふっ…!!!! 」
瞬間、思わず俺は吹き出してしまった。
そんなこと言わずとも、キョーコちゃんは受け取らない…という選択肢を選べなかったと思うんだ。でもきっと蓮はそれだけじゃ嫌だったに違いない。だからこんなお茶目な逆襲を。
――――――― だってあの子も悪いんですよ!CMとはいえ画面いっぱいのアップで、食べなくてもいいから買って?…なんておねだり顔をされたらつい買ってしまうじゃないですか!!
「 ……うもぉぉぉぉ!!食べますよ、食べますよ、食べればいいんでしょ、食べればぁぁっ!! 」
食べなくてもいいから…と言った蓮のこのおねだりがキョーコちゃんにどう効いたのかは分からないけど、結果として俺たちはこのあと出来たてケーキを3人で味わった。
自分だけが多く食べるのはイヤだと言ったキョーコちゃんの言葉を受け、最終的にはキョーコちゃんが作ったケーキは俺と蓮が、俺が作ったケーキはキョーコちゃんと蓮が、そして蓮が作ったケーキは俺とキョーコちゃんで等分に分け合い、3人で仲良く夜の夜中に完食した。
E N D
おまけはこちら↓
■ しちゃえよ、蓮 ■
チョコレートケーキの材料は蓮が事前に準備した。
事前、とか言っても難しいことは何もなくて、マンションに直結しているスーパーに注文しておいたそれを引き取ってきただけなのだが。
だけどチョコの量が半端じゃなかった。どう見たって多かった。
蓮は間違えて多く注文してしまったのかも…なんて笑っていたけど、その笑顔を見た俺は直感した。それは絶対に嘘だと。
大量のチョコレートは蓮の計画的購買だったに違いない。
その証拠に蓮はキョーコちゃんにこう言ったのだ。
「 最上さん。せっかくだからこれで今年のバレンタインチョコを作っていいよ。無駄になっちゃったら勿体ないから 」
「 えええっ?急にそんなこと言われても、今年は私、配るつもりがなくて… 」
「 あ、そうだったんだ。そうか、じゃあどうしようか。あ、じゃあいっそ俺と君からってことにするのはどう?そうしたら材料費のこととかも気にならなくていいだろ? 」
「 えええっ? 」
「 作るのは君で、俺は飾りを少し手伝うよ。…とかでいい? 」
「 ……本気ですか? 」
「 嘘気のつもりはないけど 」
予定外のことだったのにキョーコちゃんは流石だった。
彼女は自分のチョコレートケーキを作りながら俺たちの指導をし、同時に配る用のチョコもあっという間に作ってしまった。
以前、俺はキョーコちゃんから手作りトリュフを貰ったことがあったけど、今回キョーコちゃんが作ったのはそれとは違うチョコだった。
そうしたのはもしかしたら蓮が大量に購入してきたチョコが、テンパリング不要のそれだったからかも知れない。
キョーコちゃんはチョコレートに生クリームを加えたガナッシュを作るとそれをすかさず丸め、溶かしておいたテンパリング不要のチョコレートに次々とダイブさせた。
それを手早く取り出しトレイに乗せ、手際よく冷蔵庫に納めてゆく。
本当は一時間ほどで固まるらしいけれど、今夜一晩はそのまま冷蔵庫に入れておこう、ということになった。
なぜかというと、蓮がトッピングを自分一人でやりたいと言ったから。
明日の朝、俺がキョーコちゃんを早めに迎えに行って、蓮を迎えに来ると同時にキョーコちゃんをここに連れて来る。それまでに蓮がトッピングを済ませておくことを宣言。ラッピングは明日の朝…ということになったのだが。
「 ……蓮 」
「 なんですか 」
「 なんだよ、トッピングって。何を披露したいんだお前は。何か技でも身につけてきたのか? 」
「 技って程ではありませんけど、俺は知ってしまったんです。世間にはいまチョコペンというのがあるってことを… 」
「 チョコペン?ああ、知ってる。ケーキ屋なんかで板チョコに名前を入れてくれたりするやつだろ?……なに?それでなんて書く気だ? 」
「 義理 」
「 ぷっ!!!! 」
あのな。
そこまで激しい主張を持っているなら、もう告白しちゃえよ、蓮!!
END
蓮くんの、『食べなくてもいいから貰って?』…と、おまけ話の『義理』…が書きたくてこのシリーズを組みました(笑)お付き合いありがとうございました。大感謝!!
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