いつもありがとうございます。一葉です。
こちらのお話は2018年キョコ誕から2019年蓮誕までを結ぶ原作沿いSS連載の6話目です。お楽しみ頂けたら嬉しいです。
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③真の目的
またもやヤッシーsideでお届け。もうこうなったらこのシリーズ、全てをヤッシーで届けます!(笑)
2018年キョコ誕SS~2019年蓮誕・VDまでの6話目
■ 深まった謎 ■
5つ以上の全プレに応募してくれた人のリストが欲しい…と依頼をしたのは1月中旬。
少しお待ち頂くことになるかと思います、と言われてから10日以上が過ぎてしまったのは、もしかしたらコンプライアンスの問題があったのかも。
とはいえ約束通りのリストをわざわざ手渡しでくれたトリラーメンの担当者には丁寧に頭を下げ、感謝の意を伝えた翌日、俺は雇用主に呼び出されてLMEビル内にある社長室を訪れた。
「 おお、来たな、社。わざわざスマンな。これ、これを蓮に渡してやってくれるか? 」
これ、と言って手渡されたのは現在トリラーメンメーカーが展開している京子グッズのうちの一つ。
それを見た瞬間俺の心は鳴り響いたホイッスルを合図に攻撃を開始するアメフト選手さながら、クォーターバックのような意気込みで視線を鋭く尖らせ社長を射貫いた。
「 これは一体どういうことなんでしょうか?! 」
「 なんだ?どういう事とはどういうことだ? 」
「 俺が聞いているんですよ! 」
もちろん判っている。
これが社会人として、ましてや雇用されている立場の人間としてあるまじき行為であることは。
けれど俺は昨日からずーっと疑心を覚えていて、そこにきて追い打ちをかける社長からの依頼を聞いてむかっ腹が即立ちになってしまった。
そう。俺は怒っていたのだ。
トリラーメン担当者から手渡されたリストに一通り目を通してから。
「 社さん、お待たせしました!時間がかかって申し訳ない 」
忘れているのかも…と思うほど間が空いてしまったものの、トリラーメンの担当者はちゃんと俺に連絡をくれた。
「 こちらが5種類以上の全プレに応募してくれた人の名前と都道府県一覧です。全国分なので結構たくさんいらっしゃるでしょう? 」
「 ええ、本当ですね。予想外です。……これはいつまでの、ですか? 」
「 あーねー。お待たせしちゃった分、だいぶ長い期間でして。それとこれは一応お知らせしますが、アドレスホッパーが2人含まれていたんですけどそれは除外してしまいましたので 」
「 アドレスホッパー?って、なんです? 」
「 社さん、ご存じないですか。いわゆる固定の家に住まない究極のミニマリストたちのことをそう呼ぶんですよ。都内にいらっしゃるんですよ 」
「 家に住まない?ってことは、家が無いってことですか?え?ソレでどうやって生活… 」
「 最小限の服と洗面具、携帯とPCさえあれば特段生活には困らないらしいですよ。ほら、都内の家賃って高いじゃないですか。なのにいまは一泊3千円で素泊まり出来るところが結構あるんですよね。シャワー付きのネットカフェもありますし。…で、季節の洋服はネットレンタルで借りたり、自前のは倉庫サービスに預けたりして、昼間は普通に働くらしいんですよね 」
「 へぇ~…凄いですね。でもそれ、健康じゃなきゃ出来ないですよね 」
「 ねぇ!でも確かに、素泊まり3千円なら月9万で済みますし、自分の部屋じゃないから掃除の必要は無いし、水道光熱費を払わなくてもいいわけだし、好きな街にお試しで住めるとか、確かにメリットはあるのかなって僕は思いましたけどね。で、色々言いましたけどそれに該当する人は除外しましたのでって話です 」
「 了解です。……でも、住所を持たないのにどうやって応募? 」
「 ああ、そういうのは局留め郵便になっているんですよ。身分証明書があれば引き取り出来ますから 」
「 なるほど。便利な世の中だ 」
「 ですよね!そんなことより社さん!これ、くれぐれも内密にお願いしますね!一応上司には了解を貰ったんですけど、でも内密にして下さい!! 」
「 はい、もちろんです。ご協力ありがとうございました 」
そうやって手に入れた5つ以上の全プレに応募してくれた人名リストを昨日、俺はキョーコちゃんの現場で受け取り、待機の間に目を通した。
ちなみに蓮は先に違う現場に置いてきたので俺がこのリストを手に入れたのをアイツは知らないはず。
「 社さん、行ってきますね……って、それ、さっきトリラーメン担当者さんから受け取ったものですよね。それでどうしてそんな真剣な顔つきなんですか? 」
「 ん?これはね、京子グッズプレゼントに複数回応募してくれた人の名前リストだよ。あとでキョーコちゃんにも見せてあげる 」
「 ええっ?!そんなのまで頂ける物なんですか?それって個人情報とか… 」
「 名前と都道府県だけなら大丈夫ですよって言われてもらったから平気だよ。それよりキョーコちゃん、もうすぐスタンバイの時間でしょ。早めに行った方がいいよ。頑張っておいで! 」
「 はい、行ってきます!! 」
「 うん、頑張って~ 」
思えば俺は蓮を応援していて、同じようにキョーコちゃんも応援している。
キョーコちゃんの誕生日でもあるクリスマスに、俺と蓮、そしてキョーコちゃんの3人でトリパーティをしたのは偶然の流れだったけれど、後日キョーコちゃんの新CMを見た蓮がメーカーに出前カーを依頼したりして、自力で京子グッズコンプリートに乗り出している気がしたときにはちょっと微笑ましくもなっていた。
そうだったらいいよな、と心のどこかで思っていたし、もしその確証を得られたらそれとなくキョーコちゃんに耳打ちして、蓮がそういうことをしているみたいだよ…と言ったらキョーコちゃんはどんな反応をするんだろうって、それを見てみたいとも思った。
そうだ。
俺は別に、蓮の本名を暴きたいと思っている訳じゃ無いのだ。それどころか俺を頼らず自力で何とかしようとする蓮の姿勢に感心していた。
なのに裏切られた気分だった。
蓋を開ければコレか、と思った。
結局、蓮は俺を通さなかっただけで、社長を頼りにしたのだ。それがとてつもなく面白くなかった。
「 それで?お前が俺に何を聞いてるって? 」
何の事なのか本当に判らないのか、それともいつものように面白がっているだけなのか。
ソファの背もたれに右手を掛け、だらしなく寄りかかりながら愉快そうにひげ面を緩めた社長の目の前に俺はリストをぶら下げた。
「 ん?なんだ、これは… 」
「 京子…キョーコちゃんが出演したトリラーメンで、全プレを5つ以上応募してくれた人の全国リストです 」
「 ……お前、そんなのを手に入れていたのか。…で? 」
「 リストの中に社長とマリアちゃんの名前があってビックリしました 」
「 ううん?マリアの?ちょっとそれ見せてみろ 」
「 どうぞ 」
「 ……ほー。本当だな!俺とマリアが載っている。マリア、頑張ったな 」
「 頑張ったな、じゃありませんよ、わざとらしい!!だいたい、LMEの社長がどうして所属しているタレントの全プレにわざわざ応募する必要があるのでしょうか?! 」
「 なんだ…。そんなことに腹を立てているのか?理由は欲しいからに決まっとるだろうが 」
「 …っ!!お言葉ですけど!欲しいなら俺に一言添えて頂ければそれで十分だと思います!メーカーさんだって二つ返事で良いですよって言うに決まっているんですから! 」
「 ンなのはダメだ。そんな入手方法、そもそもヤツが納得せん。ヤツは最上くんのために売り上げに貢献したくて、いわば全プレ応募はそのおまけなんだからな。俺は今ヤツが出来ないことを代わりにしてやっただけだ 」
「 ヤツ…?それは蓮のことですか? 」
先ほど手渡されたばかりのハンドタオルを握りしめながら俺は苦虫をつぶした顔になった。
蓮が自助努力で頑張った、というのならそれは微笑ましいと思う。
何度も言うけど俺に頼りもせずに自分だけでコンプリートしようとしていること自体、頭を撫でてやりたい気分だった。
けれどそれはリストを見る前の話。
俺には何も言わなかったくせに
アイツは社長を頼ったのだ。それがどうにも解せなかった。
だいたいだ。こんなやり方って姑息すぎるだろう?
内緒で社長に頼んだとしたって、詰まるところアイツの家にグッズがあるのをもし俺が見つけてしまったとしたら、蓮がどんな風にそれを手に入れたのかなんてすぐバレることじゃないか。
その先を考えないお前じゃ無いだろうに、何故こんなことをしたんだよ。
内緒にする意味が無い。そうは考えなかったのか?
「 ほほう、なるほど? 」
やけに落ち着き払った社長の声で俺は背筋を伸ばした。
社長は釣り針に掛かった魚のように右側の口角だけを持ち上げた。
「 さっきお前に渡したそのグッズ。それをお前は蓮が俺に依頼したヤツだと思ったのか。…が、残念だな。俺は何も頼まれちゃおらん 」
「 ……けど、現にこうしてグッズを… 」
「 それは余ったから蓮にくれてやろうとしただけだ。どうせアイツのことだから何も出来ずに指をくわえているだけだろうと思ったからな。しかし社の話から察するに、どうやらそうじゃなかったようだ。そういうこったろ? 」
「 それ……社長が仰っていることがもし本当だというのなら、なぜ社長は応募したんです?ヤツって誰のことですか 」
「 知りたいなら教えてやる。別に隠し立てする必要もねぇからな。クーだ。クーが欲しいと言ったんだ 」
「 ……え?…クー…ヒズリ? 」
「 そうだ。最上くんが初めて食べ物のCMをやった。そのキャンペーンが期間限定で行われている。内容は外袋を応募すれば貰える物と、運に頼るのと道2つ。…で、売り上げに貢献する傍らでクーが応募も頼むと言ってきた。何しろ期間は1月いっぱいしかないからな。食べるより先にってな 」
「 先に、応募…? 」
「 ちなみに中身は冷凍保存中だ。来日したら絶対自分で食うとクーが言ったんでそうした。たいした量にはなったがあいつなら一晩でペロリと平らげるだろうから問題なしだ。俺のはそんな事情だが? 」
「 クー・ヒズリが……。そっか、そうなんだ… 」
そこでガクリ…と肩の力が抜けた。
てっきり蓮は俺ではなく社長に甘えたのだと思った。けどそうじゃなかったのだ。
それが嬉しかったのか残念だったのかは判らないけど、ただこのときは良かった…と思った。
「 なぁ、社 」
「 はい 」
「 お前にしては珍しく熱くなっていたが、蓮の素性を探るような真似をするなんざ、まさかお前、蓮に惚れたか? 」
「 …っ!!茶化さないで下さい!別にそんなんじゃないんですから! 」
「 じゃあどんなんだったんだ 」
「 俺は、だから、別に…… 」
もしかしたら、ちょっとばかり悔しい気持ちはあったのかも知れない。
蓮がデビューしてからずっと、俺は蓮のためにあれこれ頑張ってきたつもりでいた。
ちょっとぐらい蓮に信用されていると思っていた。…なのに、蓮は俺より社長を…と思った。
そりゃ、社長は俺よりもっと蓮のことを知っているんだろうけれど……。
「 もし俺が、蓮に惚れました、って言ったら、教えて下さるんですか?蓮にまつわるあれこれを… 」
「 するか!アイツが自分で言わないことを何故俺が暴露せねばならんのだ。お前、俺を誰だと思ってんだ! 」
「 クス…。LME芸能プロダクションの社長で、俺に蓮のマネジメントをやれと言った張本人です 」
「 ちゃんと判ってんじゃねぇか。言っておくがな、蓮も俺もお前を信用してんだ。それだって判ってんだろ、本当は 」
「 もちろん、知っているつもりです 」
「 うん、ならいい。……しかしな、社。そもそも蓮がそういう張り切った行動に出るとは俺には思えんのだが… 」
「 いいえ!絶対に蓮はしているはずです!だってあいつ…… 」
大切そうに外袋を扱っていた。
捨てるつもりでいたのならあんな丁寧に袋をまとめたりはしないだろう。
「 だがな、蓮が応募するならもちろん敦賀蓮ではせんだろう。お前もどうせそう考えたんだろう?しかし俺が見る限り、このリストのどこにも蓮の本名らしきものは載っておらん。つまり、お前の勇み足だと俺は思うのだが 」
「 そんなはずはありません!だってあいつ、絶対コンプリートに必要な外袋を集めきったはずですから! 」
冷めた表情の社長を見て、どうやら俺を謀ろうとしている訳では無いらしいことは判った。ならば謎が深まった気がする。
一体どういうことだ?
蓮はどうしようと画策した?
蓮の本名なんて本気でどうでもいいけど
ただ蓮がキョーコちゃんのグッズをコンプリートしようとしたことだけは確信があったから、その方法だけでもいいから突き止めたい、と俺は思った。
E N D
姑息…根本的に解決するのではなく、一時的な間に合わせにする様のこと。現代的に言うと「その場しのぎ」。「姑」はしばらくの意。卑怯という意味に使うのは誤りですよ。
そしてここまで引っ張っちゃって今さらですが、言っておく。このシリーズの蓮キョは成立しないでしょ~!!
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※7話「機智なる者◇前編」 に続く。
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