Q13 事業のあり方(官民連携) 1800字
水道事業の基盤強化の観点から、官民連携を推進し、民間的経営手法を採用することが注目されている。①民間的経営手法により遂行できる技術的課題とその観点を3つ以上抽出し、②最重要と考える課題を1つ挙げ、民間的経営手法に関する複数の解決策を示した上で、③解決策に共通して新たに生じうるリスクとその対策を述べよ。
【解答例】
1 民間的経営手法により遂行できる課題
(1)水需要及び料金収入の減少への対応
人口減少に伴い水需要及び料金収入が減少している。さらに水道施設の更新需要の増大、物価の高騰等により支出が増大している。このため、民間的経営手法を活用し、経営環境に応じた戦略の見直しが課題になっている。
(2)水道施設の老朽化への対応
高度成長期に建設した水道施設の老朽化が進んでいる。水道施設の事故は、市民生活に甚大な影響を及ぼす。このため、民間的経営手法を活用し、水道施設の維持・修繕と計画的な更新を適切に実施することが課題になっている。
(3)深刻化する人材不足への対応
人口減少により水道事業に従事する技術者が減少している。このため、民間的経営手法を活用し、水道施設の運転管理や維持管理を将来に渡って適切に実施できるよう、必要な人員を確保するとともに、省力化に繋がる取組みを推進することが課題になっている。
2 最重要課題とその解決策
前述の課題のうち、水需要及び料金収入の減少への対応は、事業経営を継続する上で不可欠である。このため、これを最重要と位置付け、官民連携による支出の抑制策を以下に示す。水道事業の実状を踏まえて、以下の手法を検討し、最も有効なものを導入する。
(1)委託による支出抑制
①個別委託
業務委託を個別で実施する。具体的には、水道施設の保守点検、補修、メーター検針、清掃等を1~4年程度の期間で実施する。委託範囲の拡大は、コスト縮減を期待できる一方で、水道事業者等の技術者の減少に直結し、このことが危機管理体制の弱体化を招く側面がある。水道事業者等で維持し続けるべき技能・技術等を考慮し、適切な範囲で委託化を進める。
②第三者委託
水道法上の第三者委託を実施する。具体的には、個別委託の内容に浄水場の運転管理や配水管の維持管理等を含め、包括的な委託を行う。委託した業務については、危機管理も含めて受託者が責任を負うことになり、水道事業者等は責任が免除される。委託期間としては、4年前後を想定し、民間の高い技術力を活かした業務の効率化によりコスト削減を図る。
(2)DBO・PFIによる支出抑制
DBOを採用し、水道施設の設計、建設、運転管理、維持管理(保守点検・修繕・補修等)までを民間が実施する。現状における水道施設の状態、維持管理レベル、経営状態を把握して、課題を抽出した上で、各課題について目標となる対応レベル、対応期間、発注範囲を決定する。目標となる対応レベルについては、ガイドラインの業務指標を用いて設定する。対応期間については、請負者の倒産リスク等を考慮して最適な期間を設定する必要があり、設備の耐用年数を踏まえて10~30年程度に設定する。性能発注の採用により、競争による民間事業者のインセンティブの向上とノウハウの活用が可能になる。長期および包括的な業務実施により、長期のライフサイクルコストへの民間ノウハウが活用されることから、財政支出の軽減が可能になる。
さらに、PFIを採用することにより、資金調達までを業者が行う。これにより、水道事業者等は、支出の平準化を図ることが可能になる。
(3)コンセッション
資産のみを水道事業者が保有し、水道施設の運転管理、維持管理、料金徴収、料金設定までの経営権を民間が保有し、事業を遂行する。民間企業の技術経営ノウハウ及び人材の活用を通じて、支出の抑制と水道の基盤の強化を実現する。対応期間については10年以上を設定する。
3 解決策により生じるリスクとその対策
前述の解決策を実行することにより、経営基盤を強化することができ、事業運営が可能になる。
しかしながら、人口減少のさらなる進行、物価の高騰等により、事業運営が困難になる可能性がある。
このため、省力化と支出抑制の観点からDXを推進する。さらに、一連の解決策をPDCAサイクルにより継続的に改善するとともに、潜在的なリスクを予見して適切な予防策を実施する必要がある。
【上述以外で勉強するべき事柄】
・広域連携
・アセットマネジメント
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