紀元前2～3世紀に始まったヘレニズム占星術から続く西洋占星術の伝統は、1000年を遥かに超えた西暦1600年代の後半まで、一貫したテクニックの継承が続けられてきました。
モダンな西洋占星術の一部には、明らかにこの継承が破られた事実があります。一つには、文化的な背景があるものと思われます。それは、古い運命論的な占星術に対して、全ての面で人生は自らの思い通りに変えていけるとするポジティブな思想のアプローチがあったのだろうと思います。その現象の一つが、アルファベティカルな占星術と呼ばれる、サインとハウスを同等に並べる混合体系です。これは、単純化には役に立ちました。その代りに、長く続けられてきた様々なテクニックを葬り去る効果も生じてしまいました。
このポジティブな考え方は、今日、欧米諸国や日本にも影響を与え続けていて、その反動として、ここにきて「ポジティブ病の国、アメリカ」（バーバラ・エーレンライク）などの考え方も出て、行き過ぎたポジティブに警鐘を鳴らしています。
人生には自分の力ではどうにもならないことが起きるのです。その部分が、ポジティブ・シンキングからは抜け落ちています。ウクライナの戦争や、中国がやがて台湾を有事に巻き込む姿勢を示していることなどは、どれほどポジティブ・シンキングを行ってもどうにもならないことでしょう。もし、このような事態に自衛隊が存在しなければ、中国はフィリピンに行ったように好き勝手に島々を占領し、日本の自治にも（既に介入していますが）強く介入してくることでしょう。
内側を整えることで外側が整うのは事実です。だからといって、全ての外側の部分が自分の思い通りになっていくといったことではありません。いや、エネルギー保存の法則が事実なら、自分が幸せになった分だけ、どこかで誰かの不幸が増えているのかもしれませんよ。仏教や神道には「うけい」といって、相手の苦を背負う行が実践されることがあります。
古典的なサインの意味を続けます。
これまでにこのブログで紹介してきたものは、初めて目に触れる方もいらっしゃるでしょう。今では、この考え方は、時々他のウェブ上でも散見されるようになりました。ヘレニズム占星術が、メソポタミアのものと、エジプトのものが融合して以来、あまり変化のなかったものです。
がしかし、古代の占星家たちも、エレメントに基づくサインの意味の構築は、ことさら行ってこなかったようでもあります。ルーラーとなった惑星の意味も加えてサインの意味を見直すということも、ほぼ今日まで、欧米で行われているほど再考はされてきていないようなのです。これらは、新たなモダンな占星術を構築するために必要だから、行われているようにも思います。
古典的な占星術は、決定的な弱点を抱えています。それは、内面を見るという思想がなかった時代に作られたからです。心の推移を観察する面では、遅れていることを否めません。「彼の心が、別の女性に移っていってしまう」というような心の移動は観察できますが、ある事態に直面した時に、どう心が動くのかは、これから経験していくしかないようです。
♐のサインは、コールドでドライな季節にある、ホットでドライなサインです。これにミュータブル（柔軟宮）の性質と男性格であることが付随します。このサインに太陽を持って生まれた人は、必ず秋のコールドでドライな哲学的、内面的な性質を受け取ります。
火のサインの元々の意味合いは、火と共に、生活に必要な知恵を表すサインです。つまり、煮炊きをする火を使う知恵に関連しているのです。動物は火を消すことを知らないので、火を使えません。
火の柔軟宮ですから、智的で思慮深いサインです。望みを達成するにはどうすればいいのかを考える時間になります。これは、周りからは静的に見えますが、内面では動的な行動力となります。思考があって、始めて物事は実現します。欠点は、他の考え方を採用しない（モイストの欠如）ことです。それで、モイストな惑星である、木星がルーラーとなる意味が増すのでしょう。ここに木星がたまたま存在すれば、モイストが補われます。♐のサインに入っている惑星と、アスペクトしているだけでもいいでしょう。
♐のサインのシンボルマークは、半獣半神のケンタウルスの持つ弓です。その弓に文が添えられた矢文です。矢文には将来のビジョンが経験豊かに描かれていて、それを手に取った誰彼は、その物語りを確実に実行できるほどに描かれています。
水星はここでは、矢文に嘘を書き付ける立役者になる可能性があります。水星は確かに文筆の才があり、 コールドでドライな季節にマッチするのです。けれども、ホットでドライな環境は、水星を信頼できないふざけ好きの欺瞞的な輩に変えてしまうのです。
古代から伝えられたサインの意味は、♐のサインで水星の多大な性質を持つ人物によって「書き換えられた」可能性が高いのです。（ジョークです）