エッセンシャル・ディグニティーだけに頼るアルムーテンの計算方法は、中世の世界で生まれた方法ですが、ひじょうに優れた方法ですからある点では評価できます。先のブログでもお伝えしたように、玉石混交の中の優れたものの一つだと思います。ただし、「他のアルムーテンの概念も知ったうえで使えれば」との前提条件付きでです。

アルムーテンの計算方法はエッセンシャル・ディグニティーだけを頼る方法以外にも存在し、特にホラリー占星術のアルムーテンの議論は特別に難しい部類になります。その例をお示しします。これも、8~9世紀にかけて生きていた占星術師マーシャー・アラーの On Reception(第三章)からのものです。下記のチャートは、このブログではおなじみのチャートです。「私は、この病で死ぬのか?」からです。

 


第三章のチャート
 

今回は、アセンダントのロードをどうこうするとか、アスペクトはサインを越えるとか、ボイドが別の意味を持っているとかを議論しません。チャートのアルムーテンがどのように導き出されているのか、エッセンシャル・ディグニティー以外の方法で導き出されたチャートとして議論をしていきます。

マーシャー・アラーは、第三章のこのチャートでアルムーテンの話も展開しています。

しかし、実際のチャート上の木星の話ではありません。金星と太陽がコンジャンクションしていたなら、とか、太陽が木星とアスペクトしていたなら、とか、木星がエッセンシャル・ディグニティーをそれほど持っていなくてもと、仮定上の話を展開し、木星がそうであればアルムーテンになり得ると話します。つまり、マーシャー・アラーは第三章で、エッセンシャル・ディグニティーだけに頼らず、惑星の動きや、アクシデンタル・ディグニティーも参照するアルムーテンの話を〔仮定〕法で展開しているのです。だからややこしい。

月は金星へ結合〔事実〕。
金星は太陽へ結合〔仮定〕。
太陽は木星へ結合〔仮定〕。
木星はベネフィック〔事実〕。

太陽はこのチャートではベネフィック〔事実〕。
木星は求められた事柄の表示星〔事実〕。
太陽は生命のロード〔事実〕。
太陽は木星へ光を送る〔仮定〕。
木星は最終受領者〔仮定と事実〕
よって〔仮定では〕 → 木星がこのチャートのアルムーテン(最強のディグニティー保持者)となります。

実際の木星は、バウンド(ターム)だけですし、太陽とのアスペクトも持ちません。
しかし、アルムーテンとなる惑星は、光の連鎖の最終受領者であることが多いとも言えますから、マーシャー・アラーの見解がそこへ結び付きます。

では、実際のチャートのアルムーテンは誰なのでしょうか。ASCのロードも水星、MCのロードも水星、太陽の光を受けていてコンバストされずに牡羊のサインに入っている水星か、月です。水星が8ハウスにあることでアル・ムーテンであることを否定されるならば、月だと言えます。

月は現に、主たる表示体となっていますし、エッセンシャル・ディグニティーでもイグザルテーションにあり、金星というベネフィックにアスペクトし、金星によって月の光は木星というベネフィックに到達します。つまり、月は最終の木星までずっと運ばれ続けていくのです(光の連鎖に最後まで関わっている惑星です)。9ハウスは、もともとASCとアスペクトできるので、ケーダントでありながらここに入っている惑星はアルムーテンになり得ると他の古代の文献類でも語られます。が、マーシャー・アラーは実際のアルムーテンはどれかという議論をしていません。

こういったアルムーテンのお話は、ケルンテルのヘルマンが、サエル・ビン・ビシュル(マーシャー・アラーと同時代[8世紀頃]のアラビアの占星術師)のものを元に執筆したThe Search of the Heartに、アルムーテンの出し方の幾つもの方法が書かれています。ご参照のほど。