『Pickup Cinema』

『Pickup Cinema』

新作も思い出の作品も おすすめ映画を紹介!

 

(C)STILL VIVID, SNOWGLOBE, HOBAB, MANEKI FILMS, FILM I VÄST, ARTE FRANCE CINEMA

2025年製作/109分/G/アイスランド・デンマーク・スウェーデン・フランス合作 監督:フリーヌル・パルマソン 出演:サーガ・ガルザルスドッティル スベリル・グドナソンほか 原題:Ástin Sem Eftir Er 配給:ギャガ 劇場公開日:2026年7月3日 ★6月30日にマスコミ試写で鑑賞

舞台は北欧・アイスランドの田舎町。

現代美術家のアンナ(サーガ・ガルザルスドッティル)は、しっかり者の長女イダ、いたずら盛りの双子のグリムールとソルギス、そして愛犬パンダと共に暮らしている。

10代で結婚・出産をしたアンナは、漁師の夫・マギー(スベリル・グドナソン)とはすでに別れていた。

しかし、マギーにはまだ情が残っているようで、しょっちゅう家を訪ねてきては、食卓を囲んだり、子どもたちと遊んだり、ピクニックにも出かけたりしている。

そんなマギーにアンナは「子どもたちが混乱する・・・」と良い顔をしない。

アイスランドの四季を背景に、家族の日常のスケッチを時に面白く、時にシュールに描いたドラマ。

変わりゆく夫婦、家族、そして失われてもなお残る愛の行方とは・・・。

いま最も注目を集めるアイスランドの気鋭フリーヌル・パルマソン監督の実子たちと愛犬パンダが家族役として出演しており、2025年・第78回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドッグ賞を受賞した。

冒頭のシーンにまず驚かされ、どんな映画が始まるのかと思わされるが、ごく普通に見える家族のささやかで愛おしい平凡な日常が丁寧に描かれている。ブラックなユーモアも織り交ぜられ、映像のセンスの良さに魅せられる作品。

 

ⓒ 2025 TPC FILM LLC. All Rights Reserved.

2025年製作/105分/PG12/イラク・アメリカ・カタール合作 監督:ハサン・ハーディ 出演:バニーン・アハマド・ナーイフ サッジャード・モハンマド・カーセムほか 原題または英題:The President's Cake 配給:松竹 劇場公開日:2026年7月10日 ★マスコミ試写会で6月25日鑑賞

 

独裁政権下のイラクを舞台に、小学校で大統領の誕生日ケーキをつくる係に任命された少女の姿を描いたドラマ。監督の実体験に基づく。

舞台は1990年代のイラク。独裁政権下で食料不足にあえぐ国民は、アメリカからの攻撃というさらなる苦しみに耐えながら日々を過ごしている。

そんな中、フセイン大統領は自らの誕生日を各小学校で祝うように命じる。教室をきれいにする係、果物を用意する係、そしてケーキを作る係、それぞれをくじ引きで決めるのだ。

祖母と二人で暮らす9歳の少女ラミア(バニーン・アハマド・ナーイフ)は、くじ引きで“名誉ある”ケーキ係に選ばれてしまう。2日後の誕生日までにケーキが用意できなければ重い罰が待っている。

翌日、ラミアは祖母とペットの鶏・ヒンディと共に街に買い出しに出かける。祖母は、ケーキの材料(卵、小麦粉、ふくらし粉)と交換するために、と自宅にあったラジオやラミアの父の形見の時計などを用意していた。途中、親切な郵便配達員に車に乗せてもらい、無事に街に着いたのだが、祖母の目的はケーキ材料の調達ではなく、ラミアを養女に出すことだった。

日々の食料の調達もできない祖母にとってはケーキづくりどころか、ラミアを育てることすら困難だった。糖尿病を患っている祖母はその日、仕事も失っていたのだ。

養女になるより、今はケーキをつくることが何より大切なラミアは、その場を逃げ出し、一人で材料を調達しようとするがうまくいかない。そんな時、クラスメイトのサイードと会い、二人で協力して材料集めに奔走するのだが…。

果たして、ラミアは大統領の誕生日にケーキを用意することができるのだろうか。

当時、テレビから流れてくるイラク戦争の映像を眺めることしかできなかった私は、あの戦禍の下で、子どもたちがこんな日々を送っていることを知る由もなかった。

大人たちの理不尽な要求になんとか答えようとする健気さ、そして純粋な眼差し。病院は爆撃で傷ついた人々であふれている。無差別に攻撃をしかけてくる米軍機。それでもラミアたちには、なんとか生き伸びてほしい。ラストシーンに、そう願わずにはいられなかった。

 

 

 

(C)2023 MINSTINCT INC. ALL RIGHTS RESERVED

2024年製作/94分/G/アメリカ・ベルギー・フランス・イギリス合作 監督:ブノワ・ドゥローム 出演:アン・ハサウェイ ジェシカ・チャステイン アンデルシュ・ダニエルセン・リー ジョシュ・チャールズほか 原題:Mothers' Instinct 配給:ギャガ  公開日:2026年7月24日 ★マスコミ試写会で6月21日鑑賞

 

舞台は1960年代のアメリカ。

大都市郊外の隣り合った瀟洒な邸宅に暮らす二組の家族。

美しくてお洒落なセリーヌ(アン・ハサウェイ)とアリス(ジェシカ・チャステイン)は同じ年齢の一人息子をもつ母親で親友同士だった。

周囲からみると完璧に思えるような裕福な暮らしぶり。平穏で幸せな日々が続いていたのだが、ある日、不幸な事故でセリーヌの息子が亡くなってしまう。

二人の母親はそれぞれ悩み、苦しみ、その挙句に関係性が変化していく。喪失感に苛まれるセリーヌが自分の息子・テオに執着を見せる様子に危機感を募らせるアリス。

元々、精神的に不安定だったアリスの頭の中はセリーヌに対する疑惑が沸き起こり妄想が膨らみ、次第に狂気じみていく。そんなアリスに夫は、取り合ってくれず、精神科を受診するように勧めるのだった。

ある晩、セリーヌ宅を家族で訪れたアリス。そこで、一人息子のテオに異変が起こり…。

嘘をつき、相手を陥れようとしているのは、果たしてどちらなのか?

悲劇的な事故をきっかけに、良好だった二人の母親の関係性が崩れ、緊張感に満ちた駆け引きが繰り広げられる。まるでヒッチコック作品のようなサイコスリラーを、アン・ハサウェイとジェシカ・チャステインが圧巻の演技で魅せる。

60年代のアメリカならではのファッション、インテリア、暮らしも素敵。

 

 

 

 

Ⓒ2026「マジカル・シークレット・ツアー」製作委員会

2026年製作/116分/G/日本 監督:天野千尋 出演:有村架純、黒木華、南沙良、青木柚、斎藤工ほか 配給:アスミック・エース 劇場公開日:2026年6月19日 ★マスコミ試写会で5月10日鑑賞

 

平穏な日々を送っていた二児の母・和歌子(有村架純)は、ある日、夫(塩野瑛久)が会社の金を横領し、解雇されたことを知らされる。

しかも夫は倒れ、意識不明の重体。夫の借金を返済するため、和歌子が選択したのは金の密輸という闇バイトだった。

指示役に言われるまま、子どもたちを連れてシンガポールにやってきた和歌子は、同じ目的で来ていた二人の女性と知り合う。

研究員の清恵(黒木華)は、非正規採用のため生活が苦しく、未だに学生時代の奨学金の返済に追われていた。

未婚で妊婦のキャバ嬢・麻由(南沙良)は貯金がゼロ。

似たような境遇の3人は、最初の密輸を成功させて味をしめ、今度は自分たち自身で金の密輸をすることを企む。3人には、まだまだ現金が必要だったのだ。

最初は緊張したものの、意外と簡単にできた密輸。自由と金を手に入れた彼女たちは回を重ねるごとに大胆になり、滞在先のシンガポールで羽目を外すようになるのだったが・・・

2017年、中部国際空港で主婦たちが金の密輸で逮捕されたという実際の事件を基に生まれたオリジナルストーリー。密輸という犯罪で絆を深めた3人が、積極的に自らの人生を生きようとする姿には、きらびやかな映像とは対照的にむなしさや憐れみの感情を抱いてしまった。罪を犯せばどうなるのか。

それは一生、消えずにつきまとい、家族や子の将来にも影響をあたえてしまう。密輸の手口を紹介してしまった感のある作品だが、3人の役者の芝居の上手さに救われたような気がした。

 

© 2025 Refugee The Film.LLC

2024年製作/104分/G/アメリカ・ヨルダン・パレスチナ合作 監督・脚本・製作:ブラント・アンダーセン 出演:オマール・シー ヤスミン・アル・マスリーほか 原題:I Was a Stranger 配給:ハーク 劇場公開日:2026年6月19日 ★マスコミ試写会で5月18日鑑賞

 

世界の映画祭で41冠を成し遂げたシリア内戦の実話に基づく群像ヒューマンドラマ。

2011年に始まったシリア内戦。アサド大統領の長期独裁政権への不満を発端に勃発し、罪もない市民が戦禍に巻き込まれ、国外への退避を余儀なくされてきた。その数は1400万人を超えると言われている。

シリアの医師アミラ(ヤスミン・アル・マスリー)は、自宅での誕生パーティーの最中に空爆で両親や兄弟を失い、生き残った娘と命がけで国境を越えようとしていた。

国境を守るシリア兵のムスタファは、政府軍の残虐な行為を目の当たりにし、命令に従うべきか、人間らしく生きるべきかと苦悩していた。

トルコの密航業者マルワン(オマール・シー)は、病気の息子とアメリカへ移住するため、シリア難民をギリシャ行きのボートに乗せて金を稼いでいた。

シリア人の詩人・ファティは、妻子と共に難民キャンプを抜け出して、マルワンが手配した簡易なゴムボートに乗り込みギリシャを目指すが、嵐の海で死の危機に直面する。

ファティたちを乗せたボートを発見したギリシャ沿岸警備隊のスタヴロス船長は、一人でも多くの難民たちの命を救おうと奮闘するのだが…

医師、兵士、密航業者、詩人、船長。国籍も職業も立場も異なる5人が紛争の中で交差していく姿を描くヒューマンドラマ。シリア、トルコ、ギリシャ、アメリカの4カ国を舞台に、それぞれの悲劇が緊迫感をもって描かれているが、決してそれだけではない人間の強さと愛を浮かび上がらせている。

この作品を鑑賞し、その悲惨さや理不尽さに改めて心を痛めた。しかし、実際はこれ以上なのかもしれない。そして中東やウクライナ、その他の紛争地帯、独裁国家で、現在も似た状況が展開されているのかと思うと自らの無力さを痛感すると共に安寧な生活が送れていることに感謝の気持ちを抱かざるを得ない。

紛争地帯に足を運ぶことはできないからこそ、こういった作品を通して理解を深め、考えるきっかけにしてほしい。断片的に報道されるニュースだけでは決して十分には伝わってこないと思うからだ。

Copyright (C) 2021 by Banana Yoshimoto All rights reserved.

Japanese original edition published by Shinchosha Publishing Co., Ltd., Japan in 2021.

The permission to use the original novel to produce this movie has been arranged with Banana Yoshimoto through ZIPANGO, S.L.

(C)2026 映画「SINSIN」FILM PARTNERS

 

2026年製作/108分/G/日本 監督:真壁幸紀 出演:岸井ゆきの ツェン・ジンホア 藤原季節、中田青渚、柄本時生、伊勢佳世、飯田基祐、余貴美子ほか 配給:カルチュア・パブリッシャーズ 劇場公開日:2026年6月26日 ★マスコミ試写会で4月15日鑑賞

母を亡くし、悲しみと孤独の日々を過ごしている女性ちづみ(岸井ゆきの)。喪失感のなか時間だけが過ぎていく。そんなある日、ミュージシャンの友人に誘われ、気が進まないまま彼のライブを観るために台北へと向かう。

日本から台湾へ。心の空白を埋められるかも知れない、と異国の地に降り立ったちづみだったが、一人で街を歩いていても、食事をしていても母との思い出が胸をよぎる。歩き疲れたちづみは、ホテルの部屋でベッドに倒れこみ、そのまま眠ってしまう。その夜、彼女は母を亡くして以来、久しぶりに深い眠りについた。

翌日、友人夫婦と昼食を共にしたちづみは、台湾人の母と日本人の父をもつシンシン(ツェン・ジンホア)という青年を紹介される。

夜のライブまでの数時間、シンシンと過ごすことになったちづみは、シンシンの母が有名な女優で歌手であることを知る。幼い頃から多忙な母とはほとんど一緒に過ごすことができなかったと話すシンシン。ちづみとは、また異なる孤独を抱えながら彼が生きてきたことを知る。

何気ない会話を積み重ねながら、お互いに心にできた隙間を少しずつ埋めていく二人。決して癒されることのない悲しみだが、見知らぬ街で異なる文化にふれながら、ちづみは一歩を踏み出すことにした。

“ちいさな光に照らされた人生のよろこび”を描いた吉本ばななの短編小説を、日本と台湾の合作で映画化したヒューマンドラマ。自分を慈しむことの大切さがしみじみと伝わってくる。二人がデートするお洒落なカフェやバー、レストラン、茶芸店なども話題になりそうだ。

 

 

(C)2026「お終活3」製作委員会

 

2026年製作/115分/G/日本 監督:香月秀之 出演:橋爪功 高畑淳子 三田佳子 小日向文世 剛力彩芽 松下由樹 西村まさ彦 藤原紀香 石橋蓮司 藤吉久美子 LiLiCo 勝俣州和 袴田吉彦ほか 配給:イオンエンターテイメント 劇場公開日 2026年5月29日 ★マスコミ試写会で5月10日鑑賞

 

「終活」を題材に家族のあり方や夢への再挑戦を描いてきたヒューマンコメディの第3作。

いつも喧嘩が絶えない大原家の真一(橋爪功)と千賀子(高畑淳子)夫妻。

長女の亜矢(剛力彩芽)が婚約者の涼太(水野勝)との結婚を決意するのだが、式を目前に、2人の関係に亀裂が生じ、両家を巻き込む大騒動になってしまう。

一方、真一の後輩・加藤博(小日向文世)は、母の千賀子(三田佳子)の認知症が進んでいくことが受け入れられず強い言葉で接していた。千賀子は「認知症でも、心は忘れてない」と静かに博に語りかけるのだった。

そんなある日、真一の妻が突然亡くなり、博と千賀子は大原家に居候をすることになったのだが…

今作の見どころは、認知症の母を往年の名女優・三田佳子が演じるところ。古い写真を見つめ、遠い記憶の中から家族の愛の姿を手繰り寄せるような繊細な演技が感動を誘う。

家族の「愛」をテーマに、熟年夫婦の「あるある」がコメディタッチに描かれ、映画を観ながらクスッと笑ってしまうシーンも多いのだが、一方で認知症の人の不安や家族の悩みがしっかり描かれ、認知症の人の気持ちに寄り添う事の大切さを教えられた。

 

 

(C)「チルド」製作委員会 (NOTHING NEW・東北新社)

2026年製作/88分/R15+/日本 監督:岩崎裕介 出演:染谷将太 唐田えりか 西村まさ彦 くるま(令和ロマン)他 配給:NOTHING NEW 劇場公開日:2026年7月17日 マスコミ試写会で5月6日鑑賞

 

 

コンビニは全てがルーティン化されている。商品のラインアップ、陳列、挨拶、作業など…。東京の片隅にある「エニーマート倉冨町7丁目店」では、従業員が秩序を守り、マニュアル通りに店舗運営が行われていることをオーナー(西村まさ彦)が常に監視していた。

副店長の堺(染谷将太)は、20代のほとんどをこの店で過ごしてきた。レジ打ち、品出し、廃棄処理などの仕事をこなし、たまに訪れるやっかいな客にも上手く対応をしてきた。

休み時間にはスマホゲームを楽しみ、マッチングアプリで知り合った女性とたまにデートをする、という現代の若者らしい日々。そこに何の不満も感じていないようだった。

ところが、ある日、新人アルバイトの小河(唐田えりか)が入ってきてから店の均衡が崩れ始める。これはオーナーにとっては耐え難い屈辱であり、ストレスは最高潮に達してしまった。

コンビニという世界の日常に小さな乱れが生じた時、それは徐々に世界を蝕み、やがて終焉へと向かう。堺が気づいたときには、店内は目を覆うばかりの大惨事になっていた…。

果たしてどこまでが現実で、どこからが妄想なのか。

私たちがしょっちゅう利用するコンビニ。そのバックヤードでは何が行われているのかを覗き見していたつもりが、ホラーの世界へと引きずり込まれていってしまった。

2026年ベルリン国際映画祭フォーラム部門に正式出品され、国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞を受賞。

 

 

(C)2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro

2026年製作/日本 配給:東宝、ギャガ 監督:是枝裕和 出演:綾瀬はるか 大悟(千鳥) 桒木里夢 清野菜名 寛一郎 余貴美子 田中泯ほか 劇場公開日:2026年5月29日 ★マスコミ試写会で5月4日鑑賞

 

ロボット工学が飛躍的に進化した少し先の未来。

建築家の甲本音々(綾瀬はるか)と工務店社長の夫・健介(大悟)は、2年前に亡くした息子・翔の姿をしたヒューマノイドを家庭に迎え入れることにした。

彼が到着した日、笑顔で「おかえり」と駆け寄り喜びを抑えきれない音々に対し、健介は戸惑いを隠せず「パパだよね」と問いかけられても「おじさんでええよ」と答えるのだった

ある晩、音々はヒューマノイドの翔に「星の王子さま」(サン=テグジュペリ作)を読み聞かせる。すると彼は、箱の中の羊の絵に満足する王子のエピソードに強い関心を示した。また、健介の会社を訪ねたヒューマノイドの翔は、木材や木に興味を示し、与えられた情報以外に次々と学習し、やがて人の感情も想像できるようになっていく。

しかし家族の時間が進むにつれ、予期せぬ出来事が起こり、夫婦は息子の死に対してのそれぞれの想いを露にする。それは愛と罪悪感が複雑に絡んだ、二人にとっては乗り越えがたい過去であった。

一方、ヒューマノイドの翔は、音々たちの知らないところで、仲間同士でつながろうとしていた。そして独自の意思をもち、やがて壮大な計画を実行しようとしていた。

タイトルの「箱の中の羊」は「星の王子さま」からの引用。本当に大切なもの(真実や愛)は目に見えない、という強いメッセージが、この作品には込められているように感じられる。

そして、現代科学の粋を結集させたヒューマノイドと、太古より自然の中で息づく樹木。全く異なる両者に思わぬ共通点があり、森の中でヒューマノイドが見せる行為に私たちは驚き、胸を突かれることになる。

家族、ヒューマノイド、愛、樹木…いくつかのアイコンが私たちに語り掛けてくるものは何なのか、想像しながら物語を追っていくのも楽しい。

2026年・第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

 

ⓒ2026 20th Century Studios. All Rights Reserved

2026年製作/119分/G/アメリカ 監督:デビッド・フランケル 出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチほか 原題:The Devil Wears Prada 2 配給:ディズニー ★4月27日マスコミ試写会で鑑賞

2006年の大ヒット映画「プラダを着た悪魔」の続編。

あれから20年、デジタル化やAIが急加速し、出版業界にも変革の波が押し寄せていた。

アンドレア(アン・ハサウェイ)は、かつて一流ファッション誌「ランウェイ」の編集アシスタントとしてカリスマ編集長ミランダ(メリル・ストリープ)の元で奮闘していたが、現在は報道記者として目覚ましい活躍を遂げていた。しかし突然、新聞社を解雇され、転職を余儀なくされてしまう。

そんな時、ミランダと「ランウェイ」が危機に直面していると知り、編集部に舞い戻る。完璧主義のミランダは76歳の今も相変わらずNYのファッション業界の頂点に君臨していたが、20年の歳月はファッション雑誌の作り方、あり方にも多大な影響を与え、彼女の足元は揺らいでいた。

アンドレアはかつての同僚エミリー(エミリー・ブラント)とも再会するが、彼女はディオールの幹部となっており「ランウェイ」存続のカギを握っていた。

ミランダ、その右腕ナイジェル(スタンリー・トゥッチ)、エミリーも巻き込み、華やかなファッション業界を舞台に、それぞれの夢や野望が渦巻く。そしてその先には思わぬ展開が待ち受けていた。

物語はもちろんだが、瞬きするのがもったいないほど映像が細やかにつくられているのには感心させられる。メットガラを彷彿とさせるようなコレクション会場で、車から降り立った赤いドレスのミランダの美しさには鳥肌が立ったし、登場人物たちの服の着こなし、アクセサリーや時計のつけ方、編集部の壁に飾られたモノクロームの写真、インテリア雑貨など、どれも素晴らしかった。

そして圧巻はミラノのコレクションショー。無数のフラッシュがたかれる中、ナイジェルと腕を組み、堂々と入場するミランダ。楽屋にしれっと現れるレディ・ガガには驚かされ、これがファッション業界の真髄なのだと納得させられた。

アメリカン・ヴォーグのカリスマ編集長アナ・ウィンターをモデルに、華麗なファッション業界で悪魔のように厳しい上司とへこたれない部下の関係を華麗に描いた前作に続き、今作はデジタル化や多様性、コスパ至上主義経済、パワハラなどの社会問題も盛り込みファッショニスタだけではなく多くの人の共感を呼びそうな仕上がりになっている。

時代が変わり、デジタル化が進んでも大切にしたいものがあり、それを守り抜くために奮闘する人たちがいる。大切なもの、それは決してファッションや出版の世界だけでなく、私たちの日常生活の中にもあるはずだ。

アンドレアのファンもミランダの支持者もポジティブな気持ちで明日を迎えよう、という気分になれる作品。