『Pickup Cinema』

『Pickup Cinema』

新作も思い出の作品も おすすめ映画を紹介!

 

©2026「男ともだち」製作委員会

2026年製作/131分/日本  監督:三島有紀子 出演:松岡茉優 成田凌 井上祐貴 中島 歩 三浦貴大 余貴美子 池畑慎之介ほか 原作配給:ハピネットファントム・スタジオ 劇場公開日:2026年11月6日 ★マスコミ試写会で10月13日に鑑賞

 

京都に暮らすイラストレーターの神名(かんな=松岡茉優)は、30歳を目前に、仕事にもプライベートにも行き詰っていた。

絵本で賞を獲ったのは過去の栄光。現在は締め切りに追われながらクライアントの要望に応えるため徹夜で挿絵を描いている。

同性相手の彰人(井上祐貴)は、真面目で潔癖症。満たされない神名は、彰人がいながら妻子ある医師の真司(中島 歩)と不倫をしていた。奔放なように見える神名だったが、幼少期のある出来事から性的なトラウマを抱えていた。

そんな神名に、突然、大学時代の先輩ハセオ(成田凌)から電話がかかってくる。ハセオは何故か昔から神名のことを深く理解してくれていた。

7年ぶりに再会した二人は、京都、富山、広島で3つの夜を過ごすが、ハセオは、神名の体を求めることはなかった。ただ、そばにいて過去の思い出や恋愛観を話すだけ。神名に答えを与えようとするわけでも、彼女の人生を背負おうとするわけでもない。しかし、二人で過ごす時間が、迷子になっていた神名の心を、少しずつ落ち着かせていく。

人を愛することは、その人を自分のものにすることではない。そして、誰かに支えてもらうことは、その人に依存し続けることでもない。

人はときに、答えを教えてくれる人ではなく、答えを見つけるまで一緒にいてくれる人を必要とする。

ハセオは、神名にとって、そんな存在だったのだろう。

魔法使いのように現れ、彼女の心を落ち着かせ、迷子になった心を取り戻させる。そして、自分の役目を終えたかのように去っていく。「俺がいてよかったやろ?」と言い残して。

恋人でも愛人でもない。けれど、かけがえのない存在、男ともだち。

雨の日の逢瀬から始まる物語。三島監督らしい、センスの良い映像。そして何より素晴らしいキャスティング。主役の二人はもちろん、脇を固める中島 歩、三浦貴大、そして池畑慎之介。特に美術館のキュレーターを演じた池畑慎之介の知的で凄みのあるマダムっぷりは最高だった。

そして忘れられないラストシーン。心に残る、深くて美しい作品だった。

 

 

 

       ©阿部暁子/集英社・「どこよりも遠い場所にいる君へ」製作委員会

2026年製作/116分/G/日本 監督:和田純一 制作:トムス・エンタテインメント 声の出演:石橋陽彩、永瀬アンナ、土屋神葉、玉木宏 配給:松竹 劇場公開日:2026年10月9日 ★マスコミ試写会で9月17日に鑑賞。

 

物語の舞台は、自然豊かな離島「采岐島」。この島には神隠しの入り江と呼ばれる不思議な場所がある。

ある事情から、都会を離れ采岐島の高校へ進学した少年・月ヶ瀬和希は、初夏のある日、その入り江で倒れている一人の少女を発見する。

少女の名は秋鹿七緒。身元不明のため和希とその場に居合わせた高津という男性に保護されることになる。

高津の屋敷に身を寄せた七緒のことが気になる和希は、たびたび高津家を訪ねる。穏やかで優しい和希と接するうちに、警戒心の強かった七緒も少しずつ心を開いていく。

そして、七緒の言動に違和感を抱き始めていた和希に「1974年から来た」と彼女は打ち明ける。

なぜ、どうやって七緒は時空を超えてきたのか。謎が深まる中、今度は和希の秘密がクラスメイトに明かされてしまう・・・。

それぞれに秘密を抱えた七緒と和希。過去と現在が繋がるラスト、二人の運命とすべての謎が解き明かされる。

 

物語の展開の面白さ、そしてこの上ないほどの背景映像の美しさに圧倒される。入り江、社、鳥居、旧家、嵐の夜・・・そして神隠し。映画の中に散りばめられた多くの伏線が最後に繋がるのも爽快だ。

オープニングにちらっと映る、病室のシーンをくれぐれも見逃さないように。

「カフネ」で第22回本屋大賞を受賞した阿部暁子による人気青春小説「どこよりも遠い場所にいる君へ」のアニメーション映画化。

 

 

©2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

2026年製作/102分/G/アメリカ 監督:デビッド・エアー 出演:ブラッド・ピット J・K・シモンズ アンナ・ラム 原題または英題:Heart of the Beast 配給:東和ピクチャーズ、東宝 劇場公開日:2026年9月25日 ★マスコミ試写会で9月17日鑑賞

 

元特殊部隊のジェームズ(ブラッド・ピット)の相棒は、元軍用犬のオーディン。激しい地上戦を人間とともに戦ってきたオーディンは、右前足が義足で、歯にはチタンが入り、顔には深い傷跡が残っている。

戦いを終え、オーディンとともに退役したジェームズは、セスナ機で旅をしながら穏やかな余生を過ごしている。アラスカの美しい湖でキャンプをし、釣りを楽しみ、ボールで遊び、釣った魚を一緒に食べる。その姿はどこにでもいる飼い主と愛犬のようだ。

ところが夜になると、オーディンは戦地の夢を見てうなされる。

犬も人間と同じように、戦争の記憶に苦しむのだ。

その後、セスナ機での移動中にジェームズは心臓発作を起こし、機体は湖へ墜落する。ジェームズは岸へたどり着くものの、オーディンは墜落の途中で投げ出され、意識を失っていた。ジェームズはオーディンを探し出して手当てをし、なんとか命を取り留める。

しかし、そこからが過酷なサバイバルの始まりだった。

クマやオオカミ、険しい渓谷、激流、……。次々と襲いかかる自然の脅威。果たして彼らは目指すマイホームに帰り着くことができるのだろうか。

戦場で互いに命を預け合ったジェームズとオーディン。今度は過酷な大自然の中で互いの命を守り合ことになる。その姿には人間と犬という関係を超えた、深い「戦友」の絆を感じた。元特殊部隊員であるジェームズの装備や身体能力には驚かされるが、それ以上に印象的だったのはオーディンの強さと賢さだ。

仔犬の頃から厳しい訓練を受け、戦地へ送られ、何度も生死の境をさまよったオーディン。これまで辛い経験をさせてきただけに、せめて余生はゆっくり過ごさせてやりたいとジェームズが願うのはもっともなことだ。

この作品を観て「アメリカン・スナイパー」(2014)を思い出した。戦争体験は人の心身に深い傷を残す。しかし、戦争で傷つくのは人間だけではない。オーディンのように、人間が起こした戦争に巻き込まれ、心にも深い傷を負う犬たちがいることを、私はこの映画で初めて知った。

 

「ハート・オブ・ビースト」というタイトルには二つの意味がある。一つは、二人が不時着するアラスカの難所の名前。そしてもう一つは、「野生のなかの心」。これは、過酷な自然の中で深まっていく思いやりや優しさを意味するように感じられた。

単なるサバイバル映画ではなく、戦争が残す傷と絆、そして「命を守る」という深い意味が込められた作品で、最後には涙があふれた。

 

 

 

Ⓒ2026藤まる/双葉社・「時給三〇〇円の死神」製作委員会

2026年製作/119分/G/日本 監督:酒井麻衣 出演:西畑大吾、福本莉子、渋谷凪咲、齋藤潤、泉谷星奈、佐津川愛美、山口馬木也、小澤征悦ほか 配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、ギャガ 劇場公開日:2026年10月2日 ★マスコミ試写会で9月20日鑑賞

 

佐倉真司(西畑大吾)は、生まれてからの20年間、まさに順風満帆の日々を送ってきた。

ところが、不祥事を起こした父が逮捕され、両親が離婚、豪邸から貧しいアパートへの引っ越し、恋人との別れ…と次々と不幸に襲われる。

父の逮捕が影響してアルバイトも見つからず、人生に絶望し大学中退を考えていた。そんな佐倉に声をかけてきたのは同級生の花森雪希(福本莉子)。花森は佐倉を「死神」のアルバイトに誘う。

仕事内容は、この世に未練があって成仏できない死者に寄り添うこと。特別に与えられた人生の「ロスタイム」を共に過ごし、願いをかなえ、あの世へと送り出すという内容だった。

時給はわずか300円。契約期間は6か月。しかし、最後までやり遂げれば特別賞与として願いをひとつかなえてもらえるという。

戸惑いながらも花森とバディを組み「死神」を引き受けた佐倉の前に現れたのは元カノの朝月静香(渋谷凪咲)だった。

それからは、出産時に子供の顔を見ることなく命を落とした女性、大好きな母に想いを届けたい小学生、謎めいたホームレス(小澤征悦)ら死者たちの切実な想いに向き合ううちに、佐倉の気持ちに変化が起こり始める。

しかし、花森が胸に秘めていた“ある真実”が、ふたりの関係を大きく揺るがしていく…。

タイトルからは想像できないほどのシリアスな物語。主演の二人のテンポの良い軽妙なやりとりが好感度抜群で、悲しさや切なさだけではない、生きることの意味や人とのつながりの大切さを教えてくれる。

  ©2026「ファーストボイス」製作委員会

2026年製作/日本 監督:橋本裕志 出演:綾瀬はるか ファーストサマーウイカ 松本穂香  配給:松竹、ワーナー・ブラザース映画 劇場公開日:2026年10月2日 ★マスコミ試写会で9月11日鑑賞

 

1989年―。日本はバブル景気に沸き、ディスコではミラーボールの下でボディコンシャスな服を着た女性たちが踊っていた。自由を謳歌しているように見えていた女性たちだったが、多くの人は「働く女性は結婚までの腰かけ」と考え、今とは全く違う社会情勢だった。

お人好しの弁護士・朝日道子(綾瀬はるか)は、お金にならない案件ばかり引き受け、仕事と子育てと家事に追われる毎日を過ごしていた。

そんなある日、理不尽な嫌がらせを職場で受けた女性・恵(ファーストサマーウイカ)が会社と上司を提訴したいと相談に来る。

話を聞けば聞くほど恵が受けていた嫌がらせは、あきれるほどひどいものだった。

しかし、当時は似たような性差別によるハラスメントが日常茶飯のように行われ、セクハラを受けた女性たちは我慢を強いられていた。

今からは想像もできないが、当時、職場の女性は男性から挨拶代わりにボディタッチをされ、接待の席でのお酌は当たり前、取引先の男性と無理やりデュエットをさせられ、何か声をあげようとすると「女のくせに!」と言われていた。そして、それが世間の「常識」だったのだ。

しっかり者の新人弁護士・藤野栞は「勝ち目がない」と反対するが、朝日は「この裁判は必ず未来につながる」と立ち上がる。会社と上司を相手にした、前例なき「ハラスメント」を巡る裁判の始まりだった。

世間の“常識”という大きな壁に風穴を開けるべく、仲間や支援者を募り、朝日たちは次々と立ちはだかる苦難を乗り越え“ファーストボイス”(最初の一声)を挙げる。

1989年に日本で初めて提訴された「福岡セクシュアル・ハラスメント裁判」に着想を得た物語を、映画化した社会派ドラマ。

「ハラスメント」という言葉もまだ浸透していなかった時代、新たな未来を切り開こうと挑んだ女性たち。その奮闘が、価値観やルールを揺り動かしていった。

ともすれば固い内容になりがちだが、時折、コミカルな要素を織り交ぜながら、親しみやすい社会派作品に仕上げられている。

 

 

© Universal Studios. All Rights Reserved.

2026年製作/145分/G/アメリカ 原案・監督:スティーヴン・スピルバーグ 音楽:ジョン・ウィリアムズ 出演:エミリー・ブラント ジョシュ・オコナー コリン・ファース イヴ・ヒューソン コールマン・ドミンゴ 配給:東宝東和 劇場公開日:2026年10月1日 ★8月19日マスコミ試写会で鑑賞

 

2026年、世界はアメリカ、ロシア、北朝鮮など核保有国を中心に第3次世界大戦へ突入しようとしていた。

ダニエル(ジョシュ・オコナー)は、サイバーセキュリティの専門家で数学の天才。米政府の秘密組織・ウォーデックス社から地球外生命体にまつわる機密情報を盗み出したため追われていた。

マーガレット(エミリー・ブラント)は、カンザスシティのテレビ局の気象予報士。ある朝、一羽の鳥が部屋に入ってきたのを機に潜在的な超能力に覚醒する。その日の生放送で意味不明の言葉を話し出したマーガレットを見たウォーデックス社は、それが地球外生命体の言語と断定し、彼女を追いかけ始める。

こうして追われる身となった2人は、協力者ヒューゴ(コールマン・ドミンゴ)に導かれ、約80年にわたり隠蔽(いんぺい)されてきた、衝撃の真実を知ることになる。その秘密を開示しようとする2人の前に、ノア・スキャンロン(コリン・ファース)率いるワーデックス社が立ちはだかる。

度重なる危機を乗り越え、テレビ局にたどり着いたマーガレットは、ダニエルのファイルを全世界に公開するが、そこには思わぬ展開が待ち受けていた。

そしてマーガレットは静かに「Listen(聴いて)」と語り始める…。

ロズウェル事件やミステリーサークルなどの超常現象は散りばめられているものの、スピルバーグ作品だからと「インディー・ジョーンズ」や「宇宙戦争」のようなアクションアドベンチャーやSFスペクタルを期待して鑑賞すると、拍子抜けしてしまうかもしれない。

この作品のストーリー展開には「未知との遭遇」(1977年)に似たテイストを感じた。「未知との遭遇」では、宇宙人とのコミュニケーションツールは音だった。今回は数字。もしかしたら数学こそが全宇宙共通の言語なのかもしれない。

疑問を抱きながら個々のエピソードを追っていくうちに、それらは収束し、爽快なまでのエンディングにつながっていく。

スピルバーグ監督が50年近く描き続けてきたのは、単なる宇宙人の存在の有無ではなく、自分とは違う存在に遭遇したとき、何をすべきか、ということ。武器を使い、相手を利用しようとするのでなく理解しようと努めることなのだ、というメッセージをこの作品から受け取ることができた。

「Listen(聴いて)」は、まさに全世界、全宇宙に向けた監督の最終的なメッセージなのかもしれない。

 

©2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

2026年製作/119分/PG12/アメリカ 監督:リドリー・スコット 脚本:マーク・L・スミス 原作:ピーター・ヘラー 出演:ジェイコブ・エロルディ ジョシュ・ブローリン マーガレット・クアリー ガイ・ピアース アリソン・ジャネイ 原題:The Dog Stars 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 劇場公開日:2026年8月28日 ★マスコミ試写会で8月24日鑑賞

 

舞台は2035年のアメリカ。謎のパンデミックにより人類の90%が死滅した終末世界。廃墟と化した街では人間性を失った荒くれ者たちが略奪し合い、殺し合っていた。

生き残った整備士のヒッグ(ジェイコブ・エロルディ)は、元海兵隊員のバングリー(ジョシュ・ブローリン)と山奥のアジトで暮らしている。ヒッグは、ボロボロのセスナ機で愛犬のジャスパーと共に荒廃した街にでかけ、わずかな必需品を調達してくる。そんな時、ヒッグが必ず立ち寄るのは、亡き妻と暮らした懐かしい自宅。幸せの記憶と愛犬の存在がヒッグの心の支えとなっていた。

ヒッグたちが暮らす山奥にもならず者たちの影が忍び寄っていた。バングリーと共同戦線を張ってはいるが、殺すか殺されるかの危険と隣り合わせの日々だった。

そんなある日、ヒッグはセスナの無線で「謎の声」をキャッチする。自分たち以外に人間的な生活をしている人々がどこかにきっと生存している。そう思ったヒッグは、未知の空へと飛び立っていく。こうして愛する存在を失ったヒッグの心の旅は続く。喪失感を乗り越え、最後に彼がたどり着いた場所とは。彼が選んだ生き方とは…。

 

パンデミックに襲われた都会は廃墟と化したが、山や湖など大自然の美しさは変わりなく、そこに生きる動物たちにもさほどの変化はみられない。一方で、極限状態に置かれた人類は、どんな行動をとるのか。希望か暴力か権力にしがみつくのか。

この作品は、リドリー・スコット監督がこれまで製作してきた「エイリアン」や「グラディエイター」のような映画とはテイストが異なる。恐怖を煽るような効果音はほとんどなく、時折、懐かしいカントリーミュージックが流れる。文明が崩壊した後の制限された世界で、人間らしく幸せに生きるために必要なのは、戦い合うのではなく、自然の中で助け合うことなのではないか、という監督のメッセージが伝わってくるように感じた。

主人公のヒッグを演じたジェイコブ・エロルディの優しくてどこか寂しげな表情には、「ラスト・サバイバー」というより、原題の「The Dog Stars」の方がしっくりくるように思えた。

 

 

©2026 K2 Pictures・3Top

2026年製作/G/日本 監督:三池崇史 出演:市川團十郎 市川新之助 祝幕:村上隆 ナレーション:杏 配給:K2 Pictures 劇場公開日:2026年9月25日 ★マスコミ試写会で8月16日鑑賞

歌舞伎界の名門・市川宗家に受け継がれる最大の節目「十三代目市川團十郎白猿襲名披露」。

2019年、市川海老蔵が市川團十郎を襲名することが発表され、粛々と準備が行われている最中にコロナ禍が世界を襲った。2年半におよぶ襲名延期を経た2022年、市川團十郎と息子・市川新之助の親子同時襲名が行われた。

この作品は、その様子を3年半にわたって記録したドキュメンタリー映画である。

そもそも歌舞伎とは何なのか?その歴史を紐解くところから始まり、歌舞伎の名門・市川家とはどういう存在なのか。300年以上も続く成田山新勝寺との絆。そして市川團十郎が、なぜここまで人々の注目を集めるのかなどが丁寧に描かれており、歌舞伎ファンはもちろん、そうでない人もその魅力に引き込まれていくことだろう。

 

「市川團十郎」を継承することの重圧と覚悟。そこには人知れず悩み、苦しみ、努力をする、主人公・海老蔵(当時)の姿があった。心身を極限まで追い込むような稽古、そして修行。

私たちがメディアを通して知っている彼とは別人のような海老蔵が映像の中にいた。そして、成長著しい息子・新之助の今後の活躍からも目を離せない。

祝幕を製作したのは世界的に活躍する現代美術家・村上隆。その創作の様子も記録されている。歌舞伎界の「今」を知ることのできる壮大なドキュメンタリーだ。

江戸時代から次々と悲劇に襲われる市川團十郎という家系の不思議。それは何を意味するのだろう。今回、コロナ禍により襲名披露が延期されたのも、その一環のように思えてならない。いや、この程度で済まされるなら、それにこしたことはないと感じた。

2026年・第83回ベネチア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門出品作品。

 

 

🄫2026「八つ墓村」製作委員会 🄫Yokomizo Seishi/KADOKAWA

2026年製作/日本 監督:清水崇 出演:尾上松也、奥智哉、堀田真由、高島礼子、滝藤賢一ほか 配給:松竹、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 劇場公開日:2026年9月18日 ★マスコミ試写会で8月3日鑑賞

 

井川辰弥(奥智哉)は、彼女もおらず、就活の内定ももらえない、冴えない大学生。

ある日、生き別れになった母の訃報を受け、辰弥は気が進まないまま、自らのルーツである岡山県の八つ墓村を訪れる。

途中、奇妙な探偵・金田一耕助(尾上松也)と出会い、美しい未亡人・森美也子(堀田真由)を紹介される。辰弥は、名家・田治見家の莫大な遺産相続人なのだった。

辰弥が村に戻ってきたことを喜ぶ人がいれば、そうでない人もいた。奇妙な行動をとる双子の大叔母(高島礼子)。病の床にふせっていて、突然、暴れ出す叔父の久弥(滝藤賢一)、そして、辰弥を見張るかのような不気味な村人たち。

村に着いた翌日から辰弥と金田一の周囲で、連続殺人事件が起こる。自らの意志とは裏腹に、事件に巻き込まれていく辰弥。八つ墓村に隠された怨念とは?八つ墓の意味とは?金田一と共に謎を解いていくうちに、村に隠された恐ろしい過去が浮かび上がって…。

過去に何度も映画化、ドラマ化された横溝正史の代表作のひとつ「八つ墓村」。日本の原風景とも言える、のどかな山村を舞台に、尾上松也が金田一耕助に扮することで、このミステリー作品に新風を吹き込んでいる。一方、咲き乱れる桜の下での悪夢のような殺戮シーン。狂気に駆られたかのような滝藤賢一の怪演はあまりにも衝撃的だ。

※エンドロールの後に、一瞬、衝撃的なシーンが組み込まれているのでお見逃しなく!

 

©2025 Pallas Film-Twenty Twenty Vision-View Master Films-ZDF

 

2025年製作/96分/G/ギリシャ・ドイツ・ハンガリー合作 監督:パールフィ・ジョルジ 原題または英題:Kota 配給:ハーク 劇場公開日:2026年9月25日 ★マスコミ試写会で8月1日鑑賞

 

羽毛が黒かったため、出荷をまぬがれた1羽の雌鶏。トラックの助手席から脱出し、人間社会へ飛び出した。キツネに追われスーパーに逃げ込んだり、交通量の多い車道を横切ったり、デモに遭遇したり、刺激と危険がいっぱいの世界をなんとか渡り歩いていく。しかし、とうとう猟犬に捕まり、食堂を経営する家へと連れていかれる。

九死に一生を得た雌鶏は、食堂の庭の鶏小屋に入れられ、そこで出会った雄鶏との間に初めての卵を産み落とす。ヒヨコが生まれるのを心待ちにするのだが、卵はあっさりと人間に取り上げられてしまう。

何度、産んでも、どこに隠しても大切な卵は人間に見つけられ料理されてしまう。いつかヒヨコを育てたいという雌鶏の願いは叶えられることはなく、次々と新たな危険が彼女を襲う。一方で、雌鶏が身を寄せていた一家も事情を抱えており、優しかった飼い主はある事件に巻き込まれてしまう。

1羽の雌鶏の視点で人間社会を描いた異色の作品。子孫を残す、というたった一つの目標の為に生きる鶏と、欲望にまみれた人間たちとの対比が面白い。

カメラアングルやBGMの効果で、言葉を発することもなく無表情の雌鶏の気持ちがこちらに伝わってくる。ユーモアの中に本来「生きる」とは何なのか?を問いかけてくるような作品。

CGIや特殊効果はほぼ使用せず、世界的に著名な動物トレーナーの指導のもと、8羽の雌鶏が役割を分担しながら主人公の雌鶏を実演したという。