『Pickup Cinema』

『Pickup Cinema』

新作も思い出の作品も おすすめ映画を紹介!

© 2025 Refugee The Film.LLC

2024年製作/104分/G/アメリカ・ヨルダン・パレスチナ合作 監督・脚本・製作:ブラント・アンダーセン 出演:オマール・シー ヤスミン・アル・マスリーほか 原題:I Was a Stranger 配給:ハーク 劇場公開日:2026年6月19日 ★マスコミ試写会で5月18日鑑賞

 

世界の映画祭で41冠を成し遂げたシリア内戦の実話に基づく群像ヒューマンドラマ。

2011年に始まったシリア内戦。アサド大統領の長期独裁政権への不満を発端に勃発し、罪もない市民が戦禍に巻き込まれ、国外への退避を余儀なくされてきた。その数は1400万人を超えると言われている。

シリアの医師アミラ(ヤスミン・アル・マスリー)は、自宅での誕生パーティーの最中に空爆で両親や兄弟を失い、生き残った娘と命がけで国境を越えようとしていた。

国境を守るシリア兵のムスタファは、政府軍の残虐な行為を目の当たりにし、命令に従うべきか、人間らしく生きるべきかと苦悩していた。

トルコの密航業者マルワン(オマール・シー)は、病気の息子とアメリカへ移住するため、シリア難民をギリシャ行きのボートに乗せて金を稼いでいた。

シリア人の詩人・ファティは、妻子と共に難民キャンプを抜け出して、マルワンが手配した簡易なゴムボートに乗り込みギリシャを目指すが、嵐の海で死の危機に直面する。

ファティたちを乗せたボートを発見したギリシャ沿岸警備隊のスタヴロス船長は、一人でも多くの難民たちの命を救おうと奮闘するのだが…

医師、兵士、密航業者、詩人、船長。国籍も職業も立場も異なる5人が紛争の中で交差していく姿を描くヒューマンドラマ。シリア、トルコ、ギリシャ、アメリカの4カ国を舞台に、それぞれの悲劇が緊迫感をもって描かれているが、決してそれだけではない人間の強さと愛を浮かび上がらせている。

この作品を鑑賞し、その悲惨さや理不尽さに改めて心を痛めた。しかし、実際はこれ以上なのかもしれない。そして中東やウクライナ、その他の紛争地帯、独裁国家で、現在も似た状況が展開されているのかと思うと自らの無力さを痛感すると共に安寧な生活が送れていることに感謝の気持ちを抱かざるを得ない。

紛争地帯に足を運ぶことはできないからこそ、こういった作品を通して理解を深め、考えるきっかけにしてほしい。断片的に報道されるニュースだけでは決して十分には伝わってこないと思うからだ。

Copyright (C) 2021 by Banana Yoshimoto All rights reserved.

Japanese original edition published by Shinchosha Publishing Co., Ltd., Japan in 2021.

The permission to use the original novel to produce this movie has been arranged with Banana Yoshimoto through ZIPANGO, S.L.

(C)2026 映画「SINSIN」FILM PARTNERS

 

2026年製作/108分/G/日本 監督:真壁幸紀 出演:岸井ゆきの ツェン・ジンホア 藤原季節、中田青渚、柄本時生、伊勢佳世、飯田基祐、余貴美子ほか 配給:カルチュア・パブリッシャーズ 劇場公開日:2026年6月26日 ★マスコミ試写会で4月15日鑑賞

母を亡くし、悲しみと孤独の日々を過ごしている女性ちづみ(岸井ゆきの)。喪失感のなか時間だけが過ぎていく。そんなある日、ミュージシャンの友人に誘われ、気が進まないまま彼のライブを観るために台北へと向かう。

日本から台湾へ。心の空白を埋められるかも知れない、と異国の地に降り立ったちづみだったが、一人で街を歩いていても、食事をしていても母との思い出が胸をよぎる。歩き疲れたちづみは、ホテルの部屋でベッドに倒れこみ、そのまま眠ってしまう。その夜、彼女は母を亡くして以来、久しぶりに深い眠りについた。

翌日、友人夫婦と昼食を共にしたちづみは、台湾人の母と日本人の父をもつシンシン(ツェン・ジンホア)という青年を紹介される。

夜のライブまでの数時間、シンシンと過ごすことになったちづみは、シンシンの母が有名な女優で歌手であることを知る。幼い頃から多忙な母とはほとんど一緒に過ごすことができなかったと話すシンシン。ちづみとは、また異なる孤独を抱えながら彼が生きてきたことを知る。

何気ない会話を積み重ねながら、お互いに心にできた隙間を少しずつ埋めていく二人。決して癒されることのない悲しみだが、見知らぬ街で異なる文化にふれながら、ちづみは一歩を踏み出すことにした。

“ちいさな光に照らされた人生のよろこび”を描いた吉本ばななの短編小説を、日本と台湾の合作で映画化したヒューマンドラマ。自分を慈しむことの大切さがしみじみと伝わってくる。二人がデートするお洒落なカフェやバー、レストラン、茶芸店なども話題になりそうだ。

 

 

(C)2026「お終活3」製作委員会

 

2026年製作/115分/G/日本 監督:香月秀之 出演:橋爪功 高畑淳子 三田佳子 小日向文世 剛力彩芽 松下由樹 西村まさ彦 藤原紀香 石橋蓮司 藤吉久美子 LiLiCo 勝俣州和 袴田吉彦ほか 配給:イオンエンターテイメント 劇場公開日 2026年5月29日 ★マスコミ試写会で5月10日鑑賞

 

「終活」を題材に家族のあり方や夢への再挑戦を描いてきたヒューマンコメディの第3作。

いつも喧嘩が絶えない大原家の真一(橋爪功)と千賀子(高畑淳子)夫妻。

長女の亜矢(剛力彩芽)が婚約者の涼太(水野勝)との結婚を決意するのだが、式を目前に、2人の関係に亀裂が生じ、両家を巻き込む大騒動になってしまう。

一方、真一の後輩・加藤博(小日向文世)は、母の千賀子(三田佳子)の認知症が進んでいくことが受け入れられず強い言葉で接していた。千賀子は「認知症でも、心は忘れてない」と静かに博に語りかけるのだった。

そんなある日、真一の妻が突然亡くなり、博と千賀子は大原家に居候をすることになったのだが…

今作の見どころは、認知症の母を往年の名女優・三田佳子が演じるところ。古い写真を見つめ、遠い記憶の中から家族の愛の姿を手繰り寄せるような繊細な演技が感動を誘う。

家族の「愛」をテーマに、熟年夫婦の「あるある」がコメディタッチに描かれ、映画を観ながらクスッと笑ってしまうシーンも多いのだが、一方で認知症の人の不安や家族の悩みがしっかり描かれ、認知症の人の気持ちに寄り添う事の大切さを教えられた。

 

 

(C)「チルド」製作委員会 (NOTHING NEW・東北新社)

2026年製作/88分/R15+/日本 監督:岩崎裕介 出演:染谷将太 唐田えりか 西村まさ彦 くるま(令和ロマン)他 配給:NOTHING NEW 劇場公開日:2026年7月17日 マスコミ試写会で5月6日鑑賞

 

 

コンビニは全てがルーティン化されている。商品のラインアップ、陳列、挨拶、作業など…。東京の片隅にある「エニーマート倉冨町7丁目店」では、従業員が秩序を守り、マニュアル通りに店舗運営が行われていることをオーナー(西村まさ彦)が常に監視していた。

副店長の堺(染谷将太)は、20代のほとんどをこの店で過ごしてきた。レジ打ち、品出し、廃棄処理などの仕事をこなし、たまに訪れるやっかいな客にも上手く対応をしてきた。

休み時間にはスマホゲームを楽しみ、マッチングアプリで知り合った女性とたまにデートをする、という現代の若者らしい日々。そこに何の不満も感じていないようだった。

ところが、ある日、新人アルバイトの小河(唐田えりか)が入ってきてから店の均衡が崩れ始める。これはオーナーにとっては耐え難い屈辱であり、ストレスは最高潮に達してしまった。

コンビニという世界の日常に小さな乱れが生じた時、それは徐々に世界を蝕み、やがて終焉へと向かう。堺が気づいたときには、店内は目を覆うばかりの大惨事になっていた…。

果たしてどこまでが現実で、どこからが妄想なのか。

私たちがしょっちゅう利用するコンビニ。そのバックヤードでは何が行われているのかを覗き見していたつもりが、ホラーの世界へと引きずり込まれていってしまった。

2026年ベルリン国際映画祭フォーラム部門に正式出品され、国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞を受賞。

 

 

(C)2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro

2026年製作/日本 配給:東宝、ギャガ 監督:是枝裕和 出演:綾瀬はるか 大悟(千鳥) 桒木里夢 清野菜名 寛一郎 余貴美子 田中泯ほか 劇場公開日:2026年5月29日 ★マスコミ試写会で5月4日鑑賞

 

ロボット工学が飛躍的に進化した少し先の未来。

建築家の甲本音々(綾瀬はるか)と工務店社長の夫・健介(大悟)は、2年前に亡くした息子・翔の姿をしたヒューマノイドを家庭に迎え入れることにした。

彼が到着した日、笑顔で「おかえり」と駆け寄り喜びを抑えきれない音々に対し、健介は戸惑いを隠せず「パパだよね」と問いかけられても「おじさんでええよ」と答えるのだった

ある晩、音々はヒューマノイドの翔に「星の王子さま」(サン=テグジュペリ作)を読み聞かせる。すると彼は、箱の中の羊の絵に満足する王子のエピソードに強い関心を示した。また、健介の会社を訪ねたヒューマノイドの翔は、木材や木に興味を示し、与えられた情報以外に次々と学習し、やがて人の感情も想像できるようになっていく。

しかし家族の時間が進むにつれ、予期せぬ出来事が起こり、夫婦は息子の死に対してのそれぞれの想いを露にする。それは愛と罪悪感が複雑に絡んだ、二人にとっては乗り越えがたい過去であった。

一方、ヒューマノイドの翔は、音々たちの知らないところで、仲間同士でつながろうとしていた。そして独自の意思をもち、やがて壮大な計画を実行しようとしていた。

タイトルの「箱の中の羊」は「星の王子さま」からの引用。本当に大切なもの(真実や愛)は目に見えない、という強いメッセージが、この作品には込められているように感じられる。

そして、現代科学の粋を結集させたヒューマノイドと、太古より自然の中で息づく樹木。全く異なる両者に思わぬ共通点があり、森の中でヒューマノイドが見せる行為に私たちは驚き、胸を突かれることになる。

家族、ヒューマノイド、愛、樹木…いくつかのアイコンが私たちに語り掛けてくるものは何なのか、想像しながら物語を追っていくのも楽しい。

2026年・第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

 

ⓒ2026 20th Century Studios. All Rights Reserved

2026年製作/119分/G/アメリカ 監督:デビッド・フランケル 出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチほか 原題:The Devil Wears Prada 2 配給:ディズニー ★4月27日マスコミ試写会で鑑賞

2006年の大ヒット映画「プラダを着た悪魔」の続編。

あれから20年、デジタル化やAIが急加速し、出版業界にも変革の波が押し寄せていた。

アンドレア(アン・ハサウェイ)は、かつて一流ファッション誌「ランウェイ」の編集アシスタントとしてカリスマ編集長ミランダ(メリル・ストリープ)の元で奮闘していたが、現在は報道記者として目覚ましい活躍を遂げていた。しかし突然、新聞社を解雇され、転職を余儀なくされてしまう。

そんな時、ミランダと「ランウェイ」が危機に直面していると知り、編集部に舞い戻る。完璧主義のミランダは76歳の今も相変わらずNYのファッション業界の頂点に君臨していたが、20年の歳月はファッション雑誌の作り方、あり方にも多大な影響を与え、彼女の足元は揺らいでいた。

アンドレアはかつての同僚エミリー(エミリー・ブラント)とも再会するが、彼女はディオールの幹部となっており「ランウェイ」存続のカギを握っていた。

ミランダ、その右腕ナイジェル(スタンリー・トゥッチ)、エミリーも巻き込み、華やかなファッション業界を舞台に、それぞれの夢や野望が渦巻く。そしてその先には思わぬ展開が待ち受けていた。

物語はもちろんだが、瞬きするのがもったいないほど映像が細やかにつくられているのには感心させられる。メットガラを彷彿とさせるようなコレクション会場で、車から降り立った赤いドレスのミランダの美しさには鳥肌が立ったし、登場人物たちの服の着こなし、アクセサリーや時計のつけ方、編集部の壁に飾られたモノクロームの写真、インテリア雑貨など、どれも素晴らしかった。

そして圧巻はミラノのコレクションショー。無数のフラッシュがたかれる中、ナイジェルと腕を組み、堂々と入場するミランダ。楽屋にしれっと現れるレディ・ガガには驚かされ、これがファッション業界の真髄なのだと納得させられた。

アメリカン・ヴォーグのカリスマ編集長アナ・ウィンターをモデルに、華麗なファッション業界で悪魔のように厳しい上司とへこたれない部下の関係を華麗に描いた前作に続き、今作はデジタル化や多様性、コスパ至上主義経済、パワハラなどの社会問題も盛り込みファッショニスタだけではなく多くの人の共感を呼びそうな仕上がりになっている。

時代が変わり、デジタル化が進んでも大切にしたいものがあり、それを守り抜くために奮闘する人たちがいる。大切なもの、それは決してファッションや出版の世界だけでなく、私たちの日常生活の中にもあるはずだ。

アンドレアのファンもミランダの支持者もポジティブな気持ちで明日を迎えよう、という気分になれる作品。

 

(C)2024 DANCE ANYWAY, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

2024年製作/111分/G/アメリカ 監督:マイク・フラナガン 出演:トム・ヒドルストン キウェテル・イジョフォー カレン・ギラン ジェイコブ・トレンブレイ マーク・ハミルほか 原題または英題:The Life of Chuck 配給:ギャガ、松竹 劇場公開日:2026年5月1日 ★マスコミ試写会で4月20日鑑賞

目を疑うオープニング。というのもこの映画、第三章から始まるのだ。そして、いきなりの地球滅亡へのカウントダウン。次々と天変地異が起こり、着実に世界は終わりを遂げようとしている。

そんな時、あなたならどうする?終焉を迎えることに耐えられず、自ら死を選ぶのか?大切な人と残された時間を過ごすのか。そこに突然、現れた広告が「サンキュー、チャック 39年間ありがとう」。会計士のようだが誰も知らない名前。照明もなくなった街に、その広告だけが浮かび上がる。そして静かに消えゆく星たち。

第二章で、チャック自身が登場する。街角のドラムに合わせて見事なダンスを披露するチャック。まるで「ラ・ラ・ランド」を彷彿とさせる(調べてみたら振付師が一緒だった)。しかし、時々、体調が悪くなるような素振り。彼は脳腫瘍を患っていてまさに家族に看取られこの世を去ろうとしているのだった。

最後の章ではチャックの生い立ちが紹介される。39年の生涯のなかで彼の脳裏に強く焼き付いていたアイコンや人物も場所を変えながら登場していく。第一章で出てきた人物が重なるシーンも多く、物語を追いかけながら、ㇵッとさせられることも多い。

そして、観客の私たちは気づく。これはチャックの人生とこの世の終わりを重ねた壮大な物語なのだ、と。最後まで鑑賞して、彼の脳内の走馬灯のパズルが上手くはまっていくような感覚に浸れる。そして随所に散りばめられた細かな仕掛けを確認するために再度、観たくなる。

作家スティーブン・キングが2020年に発表した短編小説「チャックの数奇な人生 イフ・イット・ブリーズ」の映画化作品。2024年・第49回トロント国際映画祭で最高賞にあたる観客賞を受賞。

 

 

C)2026 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.

2026年製作/117分/G/日本 監督:堤幸彦 出演:唐沢寿明 芦田愛菜、三浦透子、鈴木伸之、トリンドル玲奈、奥野壮、宇野祥平、野間口徹、玉山鉄二 浅野ゆう子ほか 配給:松竹 劇場公開日:2026年5月22日 マスコミ試写会で4月9日鑑賞

舞台は近未来の日本。国民的人気バラエティーショー「ミステリー・アリーナ」は、天才たちが頭脳戦を繰り広げる生放送の推理クイズ番組。樺山桃太郎(唐沢寿明)は、今日もファンキーないで立ちとハイテンションな司会ぶりで番組を盛り上げている。

今回の出題は「嵐の中、孤立した洋館で起きた殺人事件」。正解者への賞金は100億円までキャリーオーバーされており、出演者も会場のスタッフたちも興奮気味だ。

天才少女・一子(芦田愛菜)らクセの強い6人の解答者は、推理力を生かしながら、仕込まれたヒントからミステリーの謎を解き明かしていく。しかし、推理を外した解答者には、恐ろしい罰が待ち受けていた。

劇中劇の「嵐の山荘殺人事件」の展開ともに、解答者の素性や番組制作者の意図などが徐々に明らかになっていく。特に司会者役の唐沢寿明がド派手な衣装でクレイジーに踊りながら番組を進めていく一方で、実は恐ろしい人物を演じ、作品の中に潜む狂気を感じさせる。個性的な出演者の中、これまでとは全く異なるパフォーマンスを見せる唐沢の演技は特に見応えがあった。

こうして推理ショーとして始まった物語は、想像もできなかった衝撃的な結末を迎える。

原作は、深水黎一郎の同名小説。映画化は難しいと言われてきた同作品を堤幸彦監督が原作の面白さを維持しながら独自の仕掛けやネタを満載し、体感型ミステリーへと仕上げている。

 

(C)2026「山口くんはワルくない」製作委員会

2026年製作/96分/G/日本 監督:守屋健太郎 出演:高橋恭平 髙橋ひかる 岩瀬洋志ほか 配給:アスミック・エース 劇場公開日:2026年6月5日 マスコミ試写会で4月12日鑑賞

 

真面目で可愛いのだけれど、勉強が苦手で自分に自信がもてない女子高生の皐(髙橋ひかる)。仲の良い女友達はいるけれど、そろそろ彼氏がほしいお年頃。

そんな恋に夢見る皐の前に突然、現れたのは転校生のコワモテ関西弁男子・山口くん(高橋恭平)。金髪にピアス、ドスの効いた声で話す山口くんをクラスメイトは「ヤクザじゃないのか」と噂し、怖がっていた。

しかし、ある出来事で山口くんに助けられた皐は彼の意外な面を次々と知ることになる。優しくて照れ屋の山口くんは、成績も良く、スポーツやダンスも得意。早速、皐は勉強を教えてもらい、休日には転校してきたばかりの彼に街の案内もする。

「山口くんの魅力をクラスの皆にも知ってほしい。でも私だけの山口くんであってほしい・・・」と気持ちが揺れ動く皐。

そんな二人が気になって仕方がないのが、クラスメイトのイケメン男子・石崎(岩瀬洋志)だった。皐に気があるように見えた石崎のお目当ては、実は山口くん。石崎も山口くんと友達になりたいのだが、3人の気持ちは微妙にすれ違う。

学期末のクラス対抗のダンス大会も終わり、夏休みに皐たちは山口くんの地元を訪ねることになるのだが・・・

自分に自信がもてず、引っ込み思案だった少女が、恋を知ることで成長していく姿や、外見や仕草で人を判断することのナンセンスさを、ちょっとお洒落な学園生活の中で描いた作品。暴力やいじめのシーンはなく、揺れ動く高校生たちの気持ちを安心して追うことができる。

講談社「別冊フレンド」連載の同名コミック。見かけはワルだが、中身はピュアな山口くんを、「なにわ男子」の高橋恭平が好演。

 

 

 

2025年製作/120分/G/アメリカ 監督:ブラッドリー・クーパー 出演:ウィル・アーネット ローラ・ダーン アンドラ・デイ クリスティーン・エバーソールほか 原題・英題:Is This Thing On? 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 劇場公開日:2026年4月17日

 

二人の可愛い子どもにも恵まれ、NYで何不自由なく暮らすアレックス(ウィル・アーネット)とテス(ローラ・ダーン)。はた目から見ると、完璧に見える家族だったが、夫婦は結婚生活の危機を迎えていた。日常生活での小さなすれ違い、そして妻が叶えたかった夢とは…。

ある日、友人宅でのパーティーに二人で出席した帰り、アレックスは「自宅に自分の居場所はない」と気づき、発車間際の地下鉄から飛び降りる。財布を忘れたアレックスは、「出演すれば入場料がタダになる」というダウンタウンのスタンダップ・コメディのカフェに飛び入り参加する。

地下の舞台で、身の上話を始めたアレックスは、観客に拍手で迎えられ、新しい自分の居場所を見つける。こうして二人の別居はスタートした。

一方、かつてバレーボールのアメリカ代表選手だったテスには、2028年オリンピックコーチのオファーが舞い込む。

祝杯をあげようと、テスが友人とともに入ったのは、アレックスが出演しているカフェだった。テスが店内にいるとも知らず、夫婦の赤裸々な関係を話して喝采を浴びるアレックス。テスは驚くが、それがきっかけで、二人の関係は修復されていくように見えた。

しかし、人間の関係はそう単純ではない。相手を思っての発言が、逆に傷つけてしまったり、誰にも気づかれないまま、長年にわたり悩み苦しんでいた秘密があったり。日常生活のほころびを背景にしながら、新しい愛のカタチを見つけることはできるのだろうか。

そしてラスト、アレックスがテスに投げかけた言葉は「幸せになろう」ではなくて「一緒に不幸になろう」だった。

結婚生活のすれ違いから、別居に踏み切る中年カップル。どこにでもありそうな設定だと思いきや、そこはやはりブラッドリー・クーパーの監督作品。あるある、と思わせながらも物語はどんどん脳内の深みへと沈んでいくのだった。

そして、後戻りできない関係なら現実から逃避するのではなく、ぶつかりあいながらも先に進むだけ、と納得させられる。

肝心のスタンダップ・コメディは、文化の違いからか「笑い」のツボを探すのにちょっと苦労したけれど…。