ソウルの路地裏のぞいてみれば -89ページ目

哀愁の清涼里(チョンニャンニ) (1)

2009年2月、僕は高校時代からの悪友を誘ってソウルへ旅行した。


悪友くん、4度目のソウルである。そのうち3回は僕がガイドをしている。


僕の住む札幌からソウルまでは大韓航空の直行便が飛んでいるが、夜にソウルに着き、朝にソウルを発つという日程である。今回は2泊3日の弾丸ツアー。使える時間は実質1日だ。


そんな弾丸ツアーで何をするかって??


決まっている。



買い物である。





買い物。






そう、お買いもの。





空前のウォン安で、韓国はお買いもの天国。



悪友くん、カバンと時計と、あれも、これも、と買い物リストを持っている。


今回、僕はそんな悪友くんの買い物のヘルプをするためにソウルまで来たのだ。



そしてもうひとつ、どうしても彼に見せたい街があった。


それが清涼里(チョンニャンニ)である。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇


国鉄「清涼里」駅は京春線の始発駅です。


「冬ソナ」の舞台の春川まで、清涼里から汽車に乗って行くことができます。


汽車の名前は「ムグンファ」号。日本で言う急行列車です。


韓国は日本と違い、どの路線でも急行はすべてムグンファ号と言います。


(特急は「セマウル号」そして新幹線は「KTX」です)


日本のように、路線によって愛称をつけたりはしません。



ソウルの路地裏のぞいてみれば

↑先日、春川からの帰りに乗ったムグンファ号の切符です。


すべてハングル表記。自販機で買えますが、ハングルが読めないと苦しいです。

(この切符は窓口で買ったので、駅員さんが時刻・号車の部分にしるしをつけてくれました)




朴正煕、最後の一日

今日は書籍紹介。

2月28日に続き、朴正煕に関する書籍である。


朴正煕、最後の一日―韓国の歴史を変えた銃声/趙 甲済
¥2,310
Amazon.co.jp

2月28日に紹介した「韓国を強国に変えた男 朴正煕」は、朴正煕の生涯を描いたものだが、本書は暗殺までの “最後の24時間” を丹念に追ったドキュメントである。




本書の著者もジャーナリストであり、膨大な取材資料をもとに、史実に忠実に暗殺事件の様子を再現している。

また「人間・朴正煕」の実像にも迫り、その清廉な人間像をも浮き彫りにしていく。



以前も書いたが、朴正煕の評価は韓国国内でも分かれている。


独裁者か、それとも韓国近代化の父か・・・


このことについて、翻訳を担当したぺ・ヨンホン氏は「訳者あとがき」でこう述べている。



「歴史が事実の積み重ねである限り、その時代の雰囲気で解釈が変わることはあっても、事実そのものを変えることはできない。朴正煕元大統領の暗の部分が強調されれば、打ち消しようのない明の部分が光り輝こうとする」



そして、現在の韓国社会は


「朴正煕が命をかけて断行した開発独裁の成果だったのではないか」


と問題提起をしている。




「韓国を強国に変えた男 朴正煕」の後に読むと、より理解が深まるであろう。

チェ・ジンシル シンドローム(3)

韓国の与党・ハンナラ党は、チェ・ジンシルの死をきっかけに、ネットの有害性・弊害が明らかになったとして法規制の検討に入った。


ネット上での悪性ルーモーに対し、サイバー侮辱罪を導入すること、およびネットに書き込む際にはすべて実名で行うこと、の2点がその骨子である。

(韓国には住民登録番号があるので、パスワードと組み合わせれば、投稿者の特定が可能になる)


この法案は故人の名をとって「チェ・ジンシル法」と呼ばれている。


法制化までにはさまざまな問題がクリアされなければならず、現在のところ、まだチェ・ジンシル法はできていない。





日本でも最近、芸能人のブログに悪質な書き込みをした一般人が警察の捜査を受けている。


韓国の現状は決して対岸の火事ではなく、近い将来の日本の姿でもあるのだ。





かつて韓国芸能界を席巻し、同時代の女性にチェ・ジンシルシンドロームを巻き起こした “国民女優” は、その死をきっかけに、再び韓国社会に大きな影響を及ぼすこととなった。


韓国社会は今、もう一つの「チェ・ジンシルシンドローム」の渦中にあるのである。











チェ・ジンシル シンドローム(2)

韓国では芸能人の自殺が多い。   とにかく多い。


日本でもおなじみのところでいうと、


映画「ブラザー・フッド」のイ・ウンジュ(2005年2月22日自殺)・・・


“韓国の倖田來未” ユニ(2007年1月21日自殺)・・・


ドラマ「屋根部屋のネコ」のチョン・ダビン(2007年2月10日自殺)・・・・




それぞれに事情があり、さまざまな悩みを抱えていたといわれている。


とりわけ韓国で多いのが、ネット上での誹謗中傷、すなわち「悪性ルーモー」による自殺だ。

チェ・ジンシルもしかり。

各局のニュース、ワイドショーがこぞって報道したので、ご覧になった方も多いと思う。


そして、日本人ならほぼ全員、次のような疑問を持ったはずだ。





「はたして、芸能人がネットで中傷されたくらいで自殺するのだろうか?」






この疑問を解くには、韓国人の国民性および韓国のインターネット事情を理解する必要がある。


韓国は世界トップクラスのネット大国だ。

ソウルで地下鉄に乗ってみるとよくわかる。

みんな携帯で話すか、テレビを見るか、メールを打つかしている。

ある意味、依存症だ。



そして、韓国人にとってネット上の仮想世界は、日本人が思うよりはるかに現実に近い世界なのだ。

なにしろ、派遣社員の解雇も携帯メール1本で済ませてしまう国民性なのだ。

日本では考えられないが、どうも韓国では「文書・書類」と「メール」は同等のものとして扱われているように思える。クリスマスカードも年賀状も、最近はすべてメールである。



だから、韓国人は掲示板の書き込みを「実体をもたない戯言」と考えることができない。

いちいち深刻に受け止めてしまう。

日本の芸能人なら気にしないであろう単なる噂も、韓国の芸能人はまともに受け止めてしまうのである。


チェ・ジンシルの場合は金銭トラブルにまつわる噂、ユニの場合は整形疑惑・・・


心ないたくさんの人たちが、掲示板に好き放題に書き込み、芸能人を追い詰めていったのである。





こんなことではいけない。 韓国の社会はこれではだめだ。


そう考えた国会議員たちが、チェ・ジンシルの死をきっかけに新たな法整備に動き出した。


(つづく)






チェ・ジンシル シンドローム(1)

2008年10月3日、僕は江南のしょぼくれた食堂で朝ごはんを食べていた。

店内のテレビを何気なく見ていると、突然「チェ・ジンシル自殺」の文字 (原文もちろん韓国語) が飛び込んできた。

そして画面には、弔問に訪れる韓流スターたちの姿が。


え?? チェ・ジンシルが自殺? あのチェ・ジンシルが自殺??


僕にとっては衝撃の朝だった。


ニュースによると、チェ・ジンシルはインターネット上でのいわれなき中傷に悩み、心身ともぼろぼろになり自殺したのだという。



ネット上でのいわれなき中傷のことを、韓国語で「アクソン ルーモー」という。

「アクソン」は「悪性」の韓国語読み。「ルーモー」は英語の rumor(うわさ)。


ふたつの言葉を組み合わせた造語だ。



ソウルの路地裏のぞいてみれば

(スポーツ紙はどれも1面トップで報じた)




◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇


チェ・ジンシルはかつて韓国の一時代を象徴する女優だった。



僕が韓国語を勉強していた1990年代前半、彼女は韓国で「お嫁さんにしたい女優」№1だった。


とにかくかわいかった。


僕も韓国のテレビでCMに登場した彼女を見て、韓国には何てかわいい女優がいるんだろうと驚いた記憶がある。



出演するドラマは軒並み高視聴率。 

韓国女性の間で「チェ・ジンシル シンドローム」と呼ばれるブームまで巻き起こした。


「チャングム」のイ・ヨンエ、「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョンなど、日本で人気の韓国女優はたくさんいるが、彼女たち韓流女優の源流が、まさしくチェ・ジンシルにあるのである。


そして “国民女優” チェ・ジンシルの自殺は、その後の韓国社会に大きな波紋を投げかけることとなった。


                                                           (つづく)