チェ・ジンシル シンドローム(1)
2008年10月3日、僕は江南のしょぼくれた食堂で朝ごはんを食べていた。
店内のテレビを何気なく見ていると、突然「チェ・ジンシル自殺」の文字 (原文もちろん韓国語) が飛び込んできた。
そして画面には、弔問に訪れる韓流スターたちの姿が。
え?? チェ・ジンシルが自殺? あのチェ・ジンシルが自殺??
僕にとっては衝撃の朝だった。
ニュースによると、チェ・ジンシルはインターネット上でのいわれなき中傷に悩み、心身ともぼろぼろになり自殺したのだという。
ネット上でのいわれなき中傷のことを、韓国語で「アクソン ルーモー」という。
「アクソン」は「悪性」の韓国語読み。「ルーモー」は英語の rumor(うわさ)。
ふたつの言葉を組み合わせた造語だ。
(スポーツ紙はどれも1面トップで報じた)
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チェ・ジンシルはかつて韓国の一時代を象徴する女優だった。
僕が韓国語を勉強していた1990年代前半、彼女は韓国で「お嫁さんにしたい女優」№1だった。
とにかくかわいかった。
僕も韓国のテレビでCMに登場した彼女を見て、韓国には何てかわいい女優がいるんだろうと驚いた記憶がある。
出演するドラマは軒並み高視聴率。
韓国女性の間で「チェ・ジンシル シンドローム」と呼ばれるブームまで巻き起こした。
「チャングム」のイ・ヨンエ、「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョンなど、日本で人気の韓国女優はたくさんいるが、彼女たち韓流女優の源流が、まさしくチェ・ジンシルにあるのである。
そして “国民女優” チェ・ジンシルの自殺は、その後の韓国社会に大きな波紋を投げかけることとなった。
(つづく)