チェ・ジンシル シンドローム(1) | ソウルの路地裏のぞいてみれば

チェ・ジンシル シンドローム(1)

2008年10月3日、僕は江南のしょぼくれた食堂で朝ごはんを食べていた。

店内のテレビを何気なく見ていると、突然「チェ・ジンシル自殺」の文字 (原文もちろん韓国語) が飛び込んできた。

そして画面には、弔問に訪れる韓流スターたちの姿が。


え?? チェ・ジンシルが自殺? あのチェ・ジンシルが自殺??


僕にとっては衝撃の朝だった。


ニュースによると、チェ・ジンシルはインターネット上でのいわれなき中傷に悩み、心身ともぼろぼろになり自殺したのだという。



ネット上でのいわれなき中傷のことを、韓国語で「アクソン ルーモー」という。

「アクソン」は「悪性」の韓国語読み。「ルーモー」は英語の rumor(うわさ)。


ふたつの言葉を組み合わせた造語だ。



ソウルの路地裏のぞいてみれば

(スポーツ紙はどれも1面トップで報じた)




◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇


チェ・ジンシルはかつて韓国の一時代を象徴する女優だった。



僕が韓国語を勉強していた1990年代前半、彼女は韓国で「お嫁さんにしたい女優」№1だった。


とにかくかわいかった。


僕も韓国のテレビでCMに登場した彼女を見て、韓国には何てかわいい女優がいるんだろうと驚いた記憶がある。



出演するドラマは軒並み高視聴率。 

韓国女性の間で「チェ・ジンシル シンドローム」と呼ばれるブームまで巻き起こした。


「チャングム」のイ・ヨンエ、「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョンなど、日本で人気の韓国女優はたくさんいるが、彼女たち韓流女優の源流が、まさしくチェ・ジンシルにあるのである。


そして “国民女優” チェ・ジンシルの自殺は、その後の韓国社会に大きな波紋を投げかけることとなった。


                                                           (つづく)