お知らせ
恋愛という、本人にとってとてもナイーブな問題について紹介するため、執筆にちょっと時間がかかっています。嘘や偽りがないのはもちろんですが、せっかく読んでいただくのですから、楽しんでもらえるよう浜崎の話をまとめていますのでもう少し時間をください。誰も待っていませんかね(笑)
そこで、今回はちょっとお知らせをさせてください。
以前「プレエグザム」の回で紹介した、プレエグザムがあと二週間に迫ってきました。HPを見たところ、参加する会社もけっこうあるようです。テレビに興味があってもなくてもという言い方は適切ではないかも知れませんが、現場の話を聞ける機会は滅多にあるものではないので何かの役にはたつかと思います。
若者はなぜ短期間で会社を辞めるのか。そんなことについて書いている新書が売れているようです。やりたいこと、やりたくないこと。そんなことを考える前に、知らなかった世界を覗いてみるのも楽しいかもしれません。知ったうえで判断できれば、その答えに自信が持てるんじゃないでしょうか。
社団法人 全日本テレビ番組製作社連盟(ATP) https://www.atp.or.jp/
では次回こそは、浜崎幸次郎の恋愛についてのお話でお会いしましょう。
浜崎幸次郎(仮名)26歳の場合 その2 生活編
一つの番組を制作するために、プロデューサー、ディレクター、ADが一つのチームとなり、各チーム毎に番組制作を受け持っている。個々の仕事の役割としては、プロデューサーが責任者として企画を取り仕切り、ディレクターが現場監督を務め、ADはアシスタントとしてディレクターの補佐にあたるとこが大まかなところになる。浜崎をはじめ新人たちは、まずADとしてチームに加わり、番組を制作をするための知識と経験を積み重ねていく事になった。
実際に番組制作をすることになり、それまで学生として自分中心に予定をたてていた浜崎の生活は、社会人として仕事中心の生活に大きく切り替わった。
どんな生活リズムなのか。浜崎に尋ねたところ、番組の収録を境に違いがあるという。収録前はこんな感じ。
12:00 起床。
13:00 出社。食事。
その後、その日その日の業務をこなしていく。
時にはロケに出かけたり。
19:00 放送作家さんを交えての打ち合わせは大抵夜に行われるとい う。
終わりはその時次第。
24:00 この時間を”テッペン”と呼ぶという。
テッペンを迎えて、本日の仕事の終わりを探り始めるという。
2:00 だいたいこの1,2時間の中で帰宅。
3:00
終わりの時間が深夜であるため、大変そうな印象を受けるが、冷静に見てみると、帰宅後起床まで10時間前後あるのだからそこまでゆとりがないわけでもない気がしてくる。みしろ、毎朝7時、8時代の上り中央線に乗り、23時過ぎの下り電車で帰宅する世のお父さん方の方がよっぽどハードな生活だろう。
ただ、浜崎が言っていたように番組収録後、放送までの約二週間は生活が一変するという。ディレクターが収録テープをチェックした後は放送に向けて編集作業をするため、編集所に閉じ篭るという。そして、浜崎たちADはディレクターの要望に応えるために山ほどある仕事をこなしていくという。時には編集者についてテロップを作ったり、時には追加ロケに出かけたり……とにかくやることが山ほどあり、整理するのが面倒なのだという。なので、ここで行われている具体的な作業については、また別の機会に紹介したいと思う。
とにかく収録語は忙しい。浜崎はそう何度も繰り返していた。放送日という締切があるため、その日までに全ての工程を終わらせなければならない。そのため、寝る時間は二の次で、作業の間に出来たわずかな時間を睡眠時間に当てるという。家に全く帰れないという訳ではないらしいが、浜崎は帰るのが面倒になることが多く、自然に泊り込むようになるという。ちなみに女性スタッフも同様の生活を送っているとのこと。
無事番組が出来上がり、完成された作品をお茶の間に届ける事が出来ると、達成感のあとでそれ以上にほっとした気持ちなれるという。そしてまた、振り出しに戻るように12:00起床の生活を繰り返し始める。
今回紹介した生活リズムはあくまでもh浜崎のもの。ADの皆さんの生活リズムは担当している番組によって異なってくるところはあるだろう。
さて、次回はとにかく忙しいという生活の中で、浜崎はどんなことを考えているのか。恋愛についてお話します。
浜崎幸次郎(仮名) 26歳の場合 その1 きっかけ
中学卒業後も事あるごとに浜崎とは連絡を取り合っていたが、テレビ業界へ就職したいとう言葉は、大学進学を決めた当時は教師になって高校野球の監督をしたいと語っていたのだから、20年近い付き合いの仲でも新鮮な響きを持っていた。
浜崎がテレビ番組を作りたいと具体的に思いを抱いたのは大学三年の夏だった。サークルの先輩にあるタレントさんのマネージャーをしている方がいて、その先輩の光り輝く金色の頭髪が自らの将来への輝きと重なって見えたのだという。さらに同じ頃、テレビ番組のAD(アシスタントディレクター)を始めた別の先輩の姿を見る機会もあり、それまでミーハーに感じていた業界を身近な世界として捕らえるようになっていったのだ。後になって聞いたことだが、浜崎自身の中ではテレビ業界で働きたいという思いは周囲が感じている程意外なものではなかったという。理由は小さい頃からテレビ、特にバラエティー番組が好きだったから。浜崎や僕が夢中になっていた代表的な番組は、元気が出るテレビ、みなさんのおかげです、生ダラ、やるならやらねば、ごっつええ感じ。以前「よくある質問2」の中で紹介したドラマ「ADブギ」を浜崎も見ていて、ドラマを通してADという職業を知ったという。
テレビ番組製作会社就職へ志す動機はミーハーであっても、具体的な目標を抱いてからの浜崎の行動は堅実だった。就職雑誌、ネット、調べられる情報は確実に入手したうえでテレビエグザムに参加した。そして、エグザムに参加する事でより自分の目標にあった会社を絞り込み、入社試験の手続きを進めて行った。手続きをする上で必ず提出しなければならないエントリーシートには、世界一のディレクターになりたい、と漏れなく記入していたという。
書類審査が通らない会社が続く中で、後に入社する事になるNから書類審査を通過したという連絡が届くと、続いて行われた筆記試験をパスして面接試験へとコマを進めて行った。
入社試験には会社側からの指定がない限りリクルートスーツを着ていくことが、世の中の大学生にとって一般的とされているが、浜崎は違った。大学へ通う時と変わらない普段着で面接に臨んだのだ。ここまで来るきっかけは先輩の金髪だったのだから、スーツを着ていこうという思いは最初からなかったという。ただ、面接会場にいた他の学生さんの中には、浜崎と同じ様に普段着で来ている人もそれなりにいたのだという。
一次面接、二次面接を普段着で通過した浜崎は、いよいよ最終となる役員面接を迎えた。
その日、浜崎は事前に通知されていた時間の30分以上前に会場に到着し、その時に備えた。着てきたものは、一次二次よりもさらにラフな、短パンとTシャツといういでたち。しかも、黒いTシャツには”斬り捨て御免”のロゴ入り。
「斬り捨てられてもいいの?」
「いえ、斬り捨てられるのは御免です。という意志表示です」
そんな会話から最後の関門もスタートした。
この頃には多少なりとも目立ちたいという思いがあったと言っていた。しかし、客観的に見れば浜崎の格好は洒落として通じるか空気を読み違えているか際どく、どこの会社でも通じるとは思えない。浜崎曰く、この会社には分かってもらえる、と自分なりに空気を冷静に読んだ結果だという。実際、斬り捨てられることなく入社したのだがから、浜崎が言っていた事は正しかった事になる。
別のある製作会社の方に、どんな人材を求めているのかという質問をしたところ、バランスの取れた人材がほしい、という答えをもらったことがある。今季限りで現役を引退し日本ハムファイターズを日本一に導いた新庄剛選手は、プロ野球選手らしからぬ派手なパフォーマンスで世間の注目を集めたが、その裏には自分のプレーに対する自信がないと出来ないとのプレッシャーも語っていた。浜崎が取ろうとしたバランスが、新庄選手ほどの高度なものであるはずがないが、彼なりの計算はあった。
面接の度に高校時代のことを聞かれたという。浜崎は高校時代、野球部のキャプテンをしており、引退時に県の高野連から優秀選手の一人として表彰された経験を持っている。この経験は誰もが持っている経験ではない。だからこそ、そこに話題が集まるようにエントリーシートの書き方を工夫したという。
「自分より経験のある人間に見栄を張った答え方をしてもしょうがないでしょ。分からないことは分からないと答える代わりに、これから知りたいやりたいという探究心は強くアピールしたね。何かを作るってそういうことでしょ」
ミーハーな動機から始まった就職活動を、浜崎はまともな言葉で締めくくった。それが彼が持っているバランス感覚なのだろう。
次回は働き始めた浜崎のお話、生活編をお届けします。
プレエグザム
本格的な就職活動を始める前の学生さんたちが私服姿で開場に集い、現役のプロデューサーやディレクター、ADの方々の話に耳を傾けていました。
お話をされた中に総務省の方がいらっしゃり、開口一番にこんなことをおっしゃっていました。
「普段はスーツを着てネクタイを締めた格好で人前に立つのですが、今日はテレビ業界を志す皆さんはラフな格好で参加するとお聞きしたので、私もそれに合わせてこんな格好で来てみました」
ジーンズにチェック柄のシャツといったいでたちで壇上でマイクを持つお役人さんは少し恥ずかしそうでもありました。
通常就職活動と聞くと、リクルートスーツを思い浮かべますが、働く場所が違えばスタイルも違っていくということを肌で感じる良い機会だったのではないかと思います。
働くスタイル。
最近ある大学の就職課の方から、現在の学生さんについてお話を伺う機会がありました。
「テレビの世界に興味を持っている学生は非常に多い。ただ、OB訪問なんかで現場で働く方の話を聞くと態度が変わってしまうんです。きつくて大変。そう言われたことに、実際に志すかどうか改めて悩むようです」
確かにきつい仕事だと思います。ただ、それはどんな業種でも同じではないのかなと僕なんかは考えてしまいます。
この話を聞いて最初にきになった事は、学生さんたちはいったい現場の方の話のどこに耳を傾けているのだろうかということです。きつい。大変。その表面的な響きだけを見るのではなく、きつくて大変だと言っているにも関わらず、なぜそこで働いているのか。そこを踏まえたうえでの悩みであったらいいなと思います。
基本的に日本人は謙虚で恥ずかしがり屋です。自分がやっていることに誇りを持っているなどと思っていても、そう口には出さないはずです。
君可愛いね。そんなことないですよ。そんなのと一緒です。違いますかね?
そこでしばらくは、学生さんの姿のお話ではなく、現在テレビの世界で働く僕のお友達や先輩、後輩の姿をお伝えしていきたいと思います。その姿は、皆さんの想像通りかもしれませんし違うかもしれません。ちょっとだけ楽しみにしていてください。
プレエグザムは今年も12月12日にヤクルトホールで開催されるようです。
詳しい事はATPのHPにアップされていたので、良かったら見てみてください。
社団法人 全日本テレビ番組製作社連盟(ATP) https://www.atp.or.jp/
喫煙
テレビエグザムの開場でも喫煙については気を使っています。開場として借りている大学キャンパス内は、本来禁煙なため、臨時の喫煙場所を設置して対応しています。また、区の条例により路上喫煙が禁止されていたりするとさらなる注意を払わなければなりません。緊張感から開放された学生さんが、帰り際に一服なんてことになったら、すぐに世間から注意を受けてしまいます。
実際にテレビの世界で働く人たちの中に喫煙されている人がどのくらいいるのか。それはわかりません。ただ、きっと沢山いるはずです。
会議室の中で肩にセーターをかけ、企画書に目を通しながら煙草を吸う。それがちょっと前まで僕の中にあった、テレビを作っている人のイメージでした。実際のところはそんな姿ばかりではないはずですが、何かを考えている姿に煙草はよく似合う気がします。ロダンの考える人が、顎を乗せている指に煙草を挟んでいたとしても、誰も違和感を抱くことはないのではないでしょうか。
会場内のあるトイレから水が溢れているとの連絡があり、現場へ駆けつけてみると男子トイレの大便器の中に煙草の吸殻が浮き、流れを止められた水が溢れ出ているところでした。
トイレから出たすぐその先には灰皿が5つ並んでいました。彼はよっぽど集中して考え込んでいたのでしょう。
就職活動は一生の問題ですから。
なんだか中学の同級生のことを思い出してしまいました。
そいつはとりあえず自分で掃除してたんだけどな・・・。
次回は「プレエグザム」についてお話します。
挨拶
テレビエグザムも就職セミナーの一つですから、参加する学生さんも自分たちがどう見られているか多少なりとも意識しているようです。
年輪を重ねた一目で会社の関係者である事が見て取れる紳士に、おはようごじます。
受付のお姉さんに、おはようございます。
自分とあまり変わらないように見えるあんちゃんだけどスーツを着ていないからきっと若手社員だろう青年に、おはようございます。
白いスタッフジャンパーを着た面談とは一切関係のない僕たち運営スタッフにおはようございます。
面談ブース以外でもどこで誰に見られているかわかりません。学生さんたちは、均一のハッピースマイルを心がけています。世の中に慣れた笑顔です。中には学生さんを迎える立場の僕たちが後ずさりたくなるほどの頬の筋肉の使い方をしてくる方もいらっしゃいます。
とても健気です。
彼らが普段どれだけの挨拶をしているかは知りません。もしかしたらしていないかもしれません。だから、普段挨拶なんてしていないのにこういう時ばかり張り切って、なんてやっかみを言う人もいるかもしれません。
でも、就職セミナーはそういう時なのだから、僕は張り切っていいと思って学生さんたちをみています。
学生さんの中にはこちらからおはようございますと声をかけても、俯いたまま軽く頭を上下させるだけの人もいます。こいつらに挨拶したところで得もなければ、損もしないだろう。彼の顔はそう言っていました。
とても正直です。
だから僕たちも正直に、そんな彼らに気分は良くないです。
ああいうのに限って、面談では知ったふうに語るんだよな。
ある会社の方の言葉です。
挨拶を、建前とか本音とかそんな一種のものだと思っていると後でもったいない事になってしまうのかもしれません。
ある年、一人のアルバイトスタッフが僕のところに嬉しそうにやってきて、女子学生さんからメールアドレスを渡された報告しました。聞いてみると、爽やかな笑顔でやってきたその子は他愛もない質問をしてきた後で、是非テレビの仕事がしたいので何か情報があれば教えて欲しいと言ってきたとの事でした。
しかし、残念な事にメールアドレスを託したそのスタッフは何の情報も持っていなければ、その後持つこともありませんでした。ただ、彼は他のスタッフに比べて気持ちの良い挨拶の使い手でした。ナチュラルな爽やかさです。
その子は必死になるあまりハッピースマイルに道を惑わされてしまったのでしょうか。そうでなければ僕のところにアドレスを持ってきてくれても良かったのですから。
次回は「喫煙」についてのお話です。
よくある質問2
加勢大周、浜田雅功、的場浩司の三人が扮する若手ADの三人が、楠瀬誠志郎 の「ほっとけないよ」が流れる中、悪戦苦闘しながらも自らの夢に向かって突き進む青春サクセスストーリーで、このドラマが僕とADとの最初の出会いでした。
今の学生さんはそんなドラマも「ほっとけないよ」も知らないと思いますが。
最近は、たまにバラエティー番組の中でADさんたちの様子が映し出されることがあります。登場するADさんたちは、大抵何日か着替えていないようなジーンズにTシャツ姿で、ボサボサの髪の毛に眠たそうな表情を見せています。なので、一般的に、ADと呼ばれる職業は非常にキツクてツライ職業だと思われているのではないでしょうか。実際キツイと思います。ただ、それをどう受け止めるかは個人個人で違うとは思いますが。
テレビエグザムに参加する学生さんの中には女性も沢山います。これは僕の偏見ですが、中には一度も泥んこで遊んだ事はありません、回し飲みなんてはしたない、なんて顔をしながら優雅に歩いている素敵な女性もいます。彼女たちは、きつくて汚いというイメージのついた職業と自分の生活をどう結び付けているのか、個人的に非常に興味があるところです。
学生さんの多くは、テレビ番組を作るため具体的にどんな仕事がこなされていくのかを知りません。
なので、まずADとは何の略でディレクターとは何者なのかプロデューサーとはどれだけ偉いのか。違いと役割を質問し、理解する事から全ては始まるようです。そして、本当に自分はこの職業を志したいのかファイナルアンサーをかけていくのでしょう。
僕の友人には制作会社に就職したものの、残念ながら三年で会社を辞めてしまった人もいます。彼は面接の時、世界一のディレクターになりたいと語ったそうです。
また、僕の後輩にADを心から楽しんでいる人間もいます。彼は出来ることならディレクターにはならずにADのままでいたいと言っていました。向上心がないわけではなく、最強のADになりたいのだそうです。ADの何がそんなに好きなのか。常に追い込まれている感がたまらない、とのことです。
完全なMです。
素敵な女性の皆さんも実は、Mだったりするのでしょうか。
次回は「あいさつ」についてお話します。
よくある質問
各会社との個別面談をするためには事前に予約が必要になり、最初に予約をとるためだけの時間が用意されています。一つの広場に参加会社が一同に机を並べ、学生さんたちは面談を申し込みたい会社の前に何度も列を作ります。一日の中で学生さんが回れる会社は時間的に考えて限られてきます。多い人で10社、平均で8社程度の面談をこなすのがだいたいの学生さんのペースです。より有意義な一日を過ごすために、まずはどこの会社の面談予約を取るか、一つの勝負どころのようです。
「○○はどこに並べばいいですか?」
「○○はまだ予約を取れますか?」
「予約がいっぱいになってしまうと○○では話がきけないのですか?」
よく質問されます。
言葉の使い方に御幣があるかもしれませんが、正直人気のある会社とそうでない会社の列はその年毎に顕著に表現されています。
その制作会社に入社したからといって全てのジャンルの番組が作れるわけではありません。主にドラマを作っている会社、ドキュメンタリーを作っている会社、バラエティーを得意とする会社などなど、それぞれに特色を持っています。各社の特色を知る事は、列を作る学生さんたちにとって最低限の予備知識となっているようで、行列のバランスを見ることで、今の世の中に何が受けているのか分かるようで面白いです。お笑いブームだと言われる最近は、タレントさんが多数出演しているバラエティー系の制作会社に予想以上に人が集まったりもしていまいた。
硬派なドキュメンタリーを制作する会社に並ぶ学生さんを見て、見た目によらず真面目な人なのかもしれないとか、人気深夜番組を制作する会社に並ぶ学生さんを見て、試験勉強せずにずっとテレビ見てたんだろうな、とか勝手なことを思ったりしてしまいます。ある年に、ドラマの代名詞ともなったような作品を生み出した制作会社が参加したのですが、僕が予想していたよりも学生さんは集まっていませんでした。みんな若いんだなと、改めて思いました。
めちゃめちゃイケてるテレビマンになりたい学生さんたちは、テレビの不思議発見を求めてテレビエグザムにぶらり途中下車をして、きっといるであろうエンタの神様の目がテンになるようなそれでいてウルルンとしてしまうかもしれないとくダネを求めておもいっきりズームインを・・・・・・くどいですね。
では次回「よくある質問2」でお会いしましょう。
事前準備
テレビエグザムには毎年全国各地から学生さんが集まってきます。
朝9時半の開場を前に、前日から泊りがけで上京して来ている学生さんたちが、会場となる大学の正門前に列を作り始め、大きなボストンバッグやキャリーバッグを手にその時が来るのを待っています。大学受験のため地方から高校生が上京して来るように彼らは就職活動のため再び状況を繰り返しているようです。
自らの将来のために上京した彼らの姿には、一つの決意が形として表現されている気がしました。
開場の30分前には、列の長さが正門の外に並びきれないものとなり、毎年開場時間は予定よりも早まっています。
会場の中に入るためには、セキュリティー上簡単な本人確認が必要となり、申し込み確認後ATPより郵送されているIDカードを見せることで入場出来ます。その際、カードには事前に発行されている個人IDの記入が必須となるのですが、この個人IDが一部の学生さんを苦しめているようです。
「すみません、IDを忘れてしまいました」
「え、ここ(IDカード)になんか書かなきゃいけないんですか?」
「どうしたら自分のIDってわかるんですか?」
会場に到着したものの、入場を認められない学生さんたちが、「IDを忘れた方は当日受付にお並びください」の案内に従い行列を作ります。
会場内で並んでいる学生さんたちは、自分たちが作った列の他に行列が出来ている事などきっと考えてもみないでしょう。そして、その列のおかげで自分たちが待たされていることも知らないはずです。
昨年、全体で行われた会社説明会は、「当日受付」に並んだ学生さんたちの数が多かったため、彼らの入場を待つため開演時間を遅らせました。
列の整理をしながら僕は、小学校の修学旅行の前日に担任の先生から配られた持ち物チェック表を思い出し、チェック表も空しく持参しなければいけなかったお昼のお弁当を忘れた惨めな自分の姿を懐かしんでしまいました。
筆記用具、携帯電話、油とり紙……用意しなければいけない持ち物は沢山あるかと思いますが、出かける前に自分が何者であるか再度事前確認をしてみてはどうでしょうか。それを個性と呼んでいいかどうかはわかりませんが、首から提げられているIDが、最低限の自分を表現しているものの一つなんじゃないかなと思います。
開場前にIDを首から提げて並ぶ学生さんと、慌ててIDを求めて並ぶ学生さん。
皆さん自己表現に必死のようです。
次回は「よくある質問」についてお話します。
地図
テレビ製作会社就職志望者のための合同就職セミナーテレビエグザムは毎年都内の大学を会場として行われています。今年と昨年は三軒茶屋にある昭和女子大学、その前は二年程江古田にある日本大学芸術学部を会場として開催されました。
しかし、エグザムに参加する学生さんのほとんどは、会場となる大学に来たことはありません。そのため、学生さんたちは事前に配布されたパンフレットに掲載されている地図をもとに、目的の会社が待つ建物へ急ぎます。もちろん当日は会場にも案内図が張り出され、各建物の入口には大きな立て看板もたちます。ただ、それでも緊張のため気持ちが急いてしまっている学生さんが多いようです。
目的の建物を前にして「5号館はどこですか?」
焦った表情で「迷ってしまって、面談を予約した時間に間に合わないんですが大丈夫ですか?」
そんな訴えをしてくる学生さんも中にはいます。
僕の仕事の中でも、どんな案内図を作り、どこにどんな看板を出すか気を使う部分の一つです。
ちょっと話は逸れてしまうかもしれませんが、こんなホテルがありました。そのホテルは伝統ある老舗ホテルなのですが、建物の中に入ると目に付くところには一切の案内図がないのです。トイレへの案内もありません。どうして案内がないのか伺ったところ、「案内図等の標識が立つことで伝えたい空間をお客様に感じてもらう事が出来なくなってしまうので、あえてそういったものは設置しておりません。伝える情報は最低限にしたいと考えております」ホテルの方はそうおっしゃっていました。
最低限の情報の中にトイレの案内も含まれない。
しかし、そのホテルは看板以上のサービスが行き届いているため、案内がないことに対する苦情はほとんどないそうです。
エグザムの会場とそのホテルを比べるつもりはありません。ただ、伝える情報は最低限というなんて事ない言葉に、現在が情報化社会だと言われているからなのでしょうか、考えさせられてしまいました。
病院の廊下に張られている色分けテープのような形で目的地まで誘導する事は、やれば出来ることだと思います。ただ、それがテレビ製作会社就職志望者のための合同就職セミナーの会場に合ったサービスかどうか、少し考えてしまうところです。
場所を尋ねてきた学生さんの背中に、ある会社の方がぼそっと言いました。
「制作会社に入りたいならもう少し考えてほしいな」
分からない事を尋ねることは決していけないことだとは思いませんが、安易な質問は嫌われるようです。
今年会場だった昭和女子大はその名の通り女性のための大学です。当然建物の中には女子トイレしかありません。そのため、セミナー当日はやむを得ず女子トイレに男子トイレという張り紙をして使用させてもらいました。
トイレの前で一人の男子学生さんに訪ねられました。
「すいません、トイレはどこですか?」
「ここですよ」
男子トイレと張り紙がされている女子トイレを案内しました。
「え、ここ使っていいんですか?」
「はい」
「ありがとうございます」
彼は照れたように本来女子トイレである男子トイレに入って行きました。
彼の「ありがとうございます」が、僕に対するお礼だったのか、トイレに対するものだったのか分かりませんでしたが、彼の質問は安易なものではなかったと思います。
次回は「事前準備」についてお話します。
