地図
テレビ製作会社就職志望者のための合同就職セミナーテレビエグザムは毎年都内の大学を会場として行われています。今年と昨年は三軒茶屋にある昭和女子大学、その前は二年程江古田にある日本大学芸術学部を会場として開催されました。
しかし、エグザムに参加する学生さんのほとんどは、会場となる大学に来たことはありません。そのため、学生さんたちは事前に配布されたパンフレットに掲載されている地図をもとに、目的の会社が待つ建物へ急ぎます。もちろん当日は会場にも案内図が張り出され、各建物の入口には大きな立て看板もたちます。ただ、それでも緊張のため気持ちが急いてしまっている学生さんが多いようです。
目的の建物を前にして「5号館はどこですか?」
焦った表情で「迷ってしまって、面談を予約した時間に間に合わないんですが大丈夫ですか?」
そんな訴えをしてくる学生さんも中にはいます。
僕の仕事の中でも、どんな案内図を作り、どこにどんな看板を出すか気を使う部分の一つです。
ちょっと話は逸れてしまうかもしれませんが、こんなホテルがありました。そのホテルは伝統ある老舗ホテルなのですが、建物の中に入ると目に付くところには一切の案内図がないのです。トイレへの案内もありません。どうして案内がないのか伺ったところ、「案内図等の標識が立つことで伝えたい空間をお客様に感じてもらう事が出来なくなってしまうので、あえてそういったものは設置しておりません。伝える情報は最低限にしたいと考えております」ホテルの方はそうおっしゃっていました。
最低限の情報の中にトイレの案内も含まれない。
しかし、そのホテルは看板以上のサービスが行き届いているため、案内がないことに対する苦情はほとんどないそうです。
エグザムの会場とそのホテルを比べるつもりはありません。ただ、伝える情報は最低限というなんて事ない言葉に、現在が情報化社会だと言われているからなのでしょうか、考えさせられてしまいました。
病院の廊下に張られている色分けテープのような形で目的地まで誘導する事は、やれば出来ることだと思います。ただ、それがテレビ製作会社就職志望者のための合同就職セミナーの会場に合ったサービスかどうか、少し考えてしまうところです。
場所を尋ねてきた学生さんの背中に、ある会社の方がぼそっと言いました。
「制作会社に入りたいならもう少し考えてほしいな」
分からない事を尋ねることは決していけないことだとは思いませんが、安易な質問は嫌われるようです。
今年会場だった昭和女子大はその名の通り女性のための大学です。当然建物の中には女子トイレしかありません。そのため、セミナー当日はやむを得ず女子トイレに男子トイレという張り紙をして使用させてもらいました。
トイレの前で一人の男子学生さんに訪ねられました。
「すいません、トイレはどこですか?」
「ここですよ」
男子トイレと張り紙がされている女子トイレを案内しました。
「え、ここ使っていいんですか?」
「はい」
「ありがとうございます」
彼は照れたように本来女子トイレである男子トイレに入って行きました。
彼の「ありがとうございます」が、僕に対するお礼だったのか、トイレに対するものだったのか分かりませんでしたが、彼の質問は安易なものではなかったと思います。
次回は「事前準備」についてお話します。