平野幸夫のブログ -11ページ目

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


「結果さえ良ければ、手段は常に正

当化される」。菅義偉首相が信奉す

るイタリアの政治思想家、マキァベ

リの言葉である。その首相が自分

を首相にした恩人の二階俊博自民

幹事長を交代させる人事を決断し

た。総裁選の対抗馬になる岸田文

雄前政調会長が二階氏の続投に

否定的な見解を示して、党内の支

持が高まったことのへの争点つぶ

しと見られる。これまでの菅首相の

経歴をみれば、二階氏への背信さ

え驚くにはあたらない。

もちろん、二階氏が安易に首相の

引導を受諾したわけではないはず

だ。陰で二階氏の息子への好遇や

二階派幹部の三役起用などの取

引があったと見るのが自然だろう。

併せて衆院選の投開票日を10月

17日にする選挙案が有力になっ

た。


緊急事態宣言の解除が見通せな

くなり、29日の総裁選前の解散が

難しくなった。このため首相は自ら

の解散権を封じ、10月21日の衆院

議員任期満了日前の総選挙を選

択したとみられる。「二階引き下ろ

し」で岸田氏の党改革スローガン

を骨抜きにし、「キングメーカー」と

しての権力維持を狙う安倍晋三前

首相と麻生太郎財務相の支持を

確かにして中央突破する狙いがは

っきり見えてきた。

新型コロナウイルスの感染拡大が

止まらないこの月末、首相が発した

のは「この先の光が見えている」と

根拠のない楽観的な言葉しかなか

った。作家の村上春樹氏から「首

相は目がいいようだが、耳は良く

ないようだ」と皮肉られたように、さ

らに有権者の反発を招いた。毎日

新聞の世論調査では内閣支持率

はついに30%を割り込み、26%に

落ち込んだ。安倍内閣での最低の

数字に並び、衆院選での大幅議席

減を予感させる。並の心臓なら、も

う総辞職してもおかしくない支持離

れだが、首相のあくなき権力欲から

はそんな選択はないようだ。

その権力に固執するすさまじいエ

ネルギーは何を源にしているのか

。様々な見方があるが、エコノミス

トの浜矩子氏が先週号の「サンデ

ー毎日」に注目すべき分析をして

いた。

浜氏は「官僚の書いた原稿もまと

もに読めず、頼りない風貌。世の

中には『無能なオヤジ』とバカに

する風潮がありますが、決して侮

ってはいけません。この間にも着

々と自分の野望を達成すべく、な

りふり構わず行動しています」と警

告する。

野望とは何か。浜氏は安倍前首

相のように「21世紀版大日本帝国

」を作るという危険な目標もない代

わりに、理念もない。菅首相にある

のは「自らの権力の絶対化」という

野望と喝破している。首相が自ら

の胸に刻んでいるというマキャベリ

は暴力や圧政を是としたことを紹介

。菅首相が目的のために手段を選

ばぬマキャベリストであることを改

めて強調している。


一つ一つの指弾が腑に落ちる。中

でも前首相との比較が鋭い。

「カッコつけの安倍前首相は国民の

評判を気にしました。しかし、菅首相

はそれすらありません。撥水性が高

いと申しましょうか、国民からの批判

も弾いてしまう。見て見ぬふりの目と

聞く耳を持たずの耳の持ち主です。

「奸佞」(心が曲がり悪賢い)ほど菅

首相に似合う言葉はありません。こ

の政権はスガならぬハズレくじのスカ

。彼を権力の座から引きずり降ろさ

なければ早晩、日本は終わります」


激しくうなずきたい。五輪強行開催や

コロナ無策……。ひたすら歩む亡国

への道。マキャベリはこんな言葉も

残した。首相も今かみしめているか

もしれない。

「人はささいな侮辱には復讐しようと

するが、強力な攻撃には復讐する気

が失せる」
                 【2021・8・31】


大方の予想通り、横浜市長選で菅義

偉首相が肩入れした与党候補が惨敗

した。足下に火がついても、依然、衆

院解散を目論む首相。自分の敗因さ

え分からないその暗愚に言葉を失う。

有権者は首相の酷薄な性情を見抜

いていた。政治家人生で最も大切に

すべき恩人の言葉に背いてきた「裏

切り」に、因果応報のならいを首相

に見せつけるような地元有権者の

選択だった。

今回の選挙を象徴するような場面だ

った。野党の山中竹春候補の圧勝を

うけて、傍らにいた「ハマのドン」こと

藤木幸夫・横浜港湾協会会長はこう

言い放ち、陣営の支援者らから大き

な歓声がわきあがった。

「スガはもうきょうあたり辞めるんじゃ

ないか。辞めなきゃしょうがねぇだろ

。これ本当に。電話がかかってきた

ら『辞めろ』っていいます。私は…」

藤木氏がなぜこれほどまでに菅首相

を罵倒するのかを知るには、両者の

長い恩讐の歴史を語らなければなら

ない。約50年前、秋田県の農家から

家出同然で上京した菅首相は法政

大学を卒業してもすぐ就職先がなく

、やがて横浜の小此木彦三郎衆院

議員宅に書生として転がり込んだ。

このとき小此木氏を支援した藤木会

長の父親の藤木幸太郎氏が菅氏に

票集めの仕方を教えた。

当時の幸太郎氏は神戸の暴力団山

口組の田岡一雄三代目組長と親交

をを結んだ人物で、港湾荷役の利権

を一手に握っていた。やがて書生か

ら市議をめざした菅首相は幸太郎氏

から支援をうけて、横浜政界の実力

者にのし上がって「陰の市長」とも噂

された。いつの間にか小此木氏の地

盤を奪うように衆院議員に当選し「恩

人に背いた」と非難された。この姿を

ずっと見ていたのが幸夫会長なので

ある。

幸太郎氏の後継者になった幸夫会

長はやがて横浜経済界の実力者に

なって横浜FMの社長などを務めた

。その幸夫会長が最も許せなかっ

たのが、菅首相がぶち上げたカジ

ノ計画である。「俺の目が黒いうち

は埠頭をバクチ場にはさせない」と

公然と首相を非難し始めた。

首相はこの恩人の言葉にまったく耳

を貸すどころか姑息にも、当初カジ

ノに賛成していなかった林文子市長

に圧力をかけ、計画推進に動いた。

幸夫会長はさらに激怒、今回カジノ

反対を掲げた野党候補支援に転じ

たのである。首相が支援した小此木

八郎前国家公安委員長は唐突にカ

ジノ推進を引っ込めたが、有権者の

多くが菅首相の圧力による選挙後の

翻意を見抜いて、いた。山中候補圧

勝の一因には恩人を裏切る菅首相

の信望のなさがある。

「菅NO」という審判で惨敗したのに

、菅首相は自らの判断による衆院解

散を急いでいる。9月29日に自民党総

裁選の投票日が決まり岸田文雄氏

が出馬表明、自分の不人気から「負

けるかも」と焦り始めたように映る。

総裁交代以前にイチかバチかの解

散に出た方がまだ延命の可能性が

高いと判断したと推察できる。しかし

、先週末行われたという自民党の選

挙情勢調査は衝撃的な数字が出た

と伝えられた。

このまま解散になれば、自民党は40

議席を失い、最大60から70議席減ら

し、現有276議席から単独過半数

(233議席)を大きく割り込む可能性

が出ているという。新型コロナウイル

スに対する無策と機能不全によって

、失わなくてもよい多くの命が奪われ

いる惨状を見れば、当然の調査結

果だろう。

与党を悲観的にさせる数字を見れば

、いくら菅首相でもきっと疑心暗鬼に

かられていることだろう。中国の古典

「史記」にこんな言葉がある。確信を

欠いたあやふやな行動は成功や名

誉をもたらさないという意味だ。それ

が「自爆解散」の末路かもしれない。

「疑行は名なく、疑事は功なし」

               【2021・8・26】

全国の新型コロナウイルス感染者

の自宅療養者数がついに10万人

近くになった。東京都では、入院で

きた感染者はわずか9・5%だ。千

葉では感染して出産が近い妊婦が

入院できず、母子が死亡するなど

各地から医療崩壊による痛ましい

事例が連日伝えられる。それでも

菅義偉首相や小池百合子都知事

は臨時の大型医療施設を求める

声にも答えず、リモート勤務や外出

を控えるよう呼びかけるだけだ。内

閣支持率が発足以来最低になる

のは当然である。首相は来月上旬

の解散を画策していたが、これも断

念したという。自ら解散権を行使で

きない首相の選択は総辞職か自民

党総裁選出馬断念しかなくなった。

新聞の川柳欄に「来年の今頃は第

10波のだだ中」という句が載ったい

た。デルタ株の猛威をみれば、皮肉

だけでなく、どこか真実味を帯びる。

こんな高まる政権批判を何とかかわ

そうと、菅首相はしきりに「酸素ステ

ーション」の設置や重症化を防ぐ抗

体カクテル療法の効果をアピールし

始めた。しかし、いずれも入院して行

う治療である。保健所から数日間何

の連絡もなく、重症化してしまう患者

の救済には直接つながらない。全国

で毎日、50人以上が新たに重症化す

るのは、政府が病床を増やす施策を

とっていないのが、最大の原因だ。

メディアや医師会がいくら臨時の大型

医療施設の設置を求めても、知らぬ

顔をきめているのは、厚労官僚が動

かないからだ。これまでの対策の欠

陥を認めるような選択を自ら提示す

るはずもない。それを変えられるの

は、政権幹部の言動しかない。ずっ

と後手後手の対策ばかりを容認して

きた菅首相らも急に「やれ」とは言え

ないはずだ。そもそも首相には自ら

医療限界を招いた自覚もうかがえ

ない。

為政者は過ちを率直に認める資質

が求められる。菅首相にはそれが決

定的に欠けている。もし既に二カ月も

閉じている国会を開き、野党からも

知恵を借りる姿勢を見せれば、変わ

るのにそれができない。そんな度量

のなさが際立つ。ひたすら感染の波

が収るのを待つだけでは、無能とし

か言い様がない。野党はもっと医療

限界を招いた政権に強い姿勢で対

峙すべきだ。

政府が動かないないなら、全国の医

師会や専門家会議の学者らが協力

し、自治体に病床増床を働きかける

べきだろう。福井県の体育館を利用

した臨時の大型コロナ感染者収容施

設などの事例を大いに参考にしたら

良い。「若い人の行動がカギを握って

いる」と口癖にのように言う小池都知

事は唐突に「渋谷で若者に予約なし

でワクチンを打ってもらう」と言い出し

た。しかし、施設名も分からず誰が

請け負うのかも不明で、どれだけワ

クチンを確保しているのかも示さなか

った。思いつきのパーフォーマンスと

しか思えない。小池都知事から実効

ある新たな施策を聞いたことがなく、

いつも標語のようなフレーズを繰り

返すだけだ。都の感染症対策部は小

池知事のやる気のなさを忖度してか

、新たな臨時大型施設の必要性につ

いて否定的だ。

度重なる失政を糾弾するのなら野党

は、もっと具体的な医療支援策や法

改正をメディアにアピールすべきだろ

う。野党系の千葉や埼玉の知事とタ

ッグを組み、自治体独自の「野戦病院

」を実際に作るのも一案ではないか。

例えば、全国の平和の名がつく共産

系の病院の支援を得られるはずだ。

新たな感染者が頼れる臨時の施設

を実際に見せることができれば、多く

の共感を得られるだろう。真に政権

を目指すのなら、批判だけでなく国

会外で汗を姿を見せてもらいたい。

        【2021・8・21】

「現在のような危機は聡明な政治

家がいなければ乗り越えられない

」。新型コロナ感染医療の最前線

に立つ倉持仁医師(宇都宮市)の

怒りの言葉である。聡明と対極に

ある言葉は愚鈍。「人流は抑えら

れている」と「ワクチン接種は進ん

でいる」としか口にできないまま結

局、ついに1日2万人を超す感染

者数をもたらした菅義偉首相には

「愚鈍な政治家」の名がふさわし

い。しかし、それだけは済ます訳に

はいかない致命的な隠蔽が発覚

した。政府が五輪期間中の2週間

、変異株「ラムダ型」の流入を隠し

続けたのである。それはまさに人

命を軽視した、現政権の国家的

犯罪にも相当する。

昨日の毎日新聞デジタル版によれ

ば、南米ペルー由来とされる「ラム

ダ株」について、米国のニュースサ

イト「デーリービースト」は今月6日、

日本国内でこの変異株が五輪直

前の7月下旬に確認されていたの

に、政府は五輪後に発表する予定

だったと報じた。この記事は国の感

染研の研究者の証言に基づいてい

た。厚労省はこの記事を受けての

国内報道機関の問い合わせに、よ

うやく初確認を認めたという。さら

に共同通信はこの感染者が五輪関

係者だったと伝えた。

ラムダ型は現在猛威をふるうデルタ

型以上に高い致死率をもたらすとさ

れ、世界各国が水際作戦を強化し

ていた。それなのに、なぜ国内で確

認直後に公表されなかったのか。誰

が口止めを指示したのか。医療関

係者から疑問視され野党も追及し始

めたが、その疑問に与党自民党から

信じがたい釈明が飛び出した。

「ひげの隊長」で知られる佐藤正久・

自民外交部会長が「もっと早く問い合

わせがあれば、答えた」と居直ったの

である。佐藤会長は「空港で陽性にな

った人のゲノム解析はすべて行ってい

る。早く発表すべきだったが、政府内

で情報が情報が共有されなかった。ラ

ムダ株に対する意識の高さがなかった

」(中日新聞)と説明したが、2週間も隠

蔽した事実経過を明白にしなければな

らない。国民の命と安全に関わる最重

要情報を公開しなかったのを容認する

発言をするのは、「与党の政策責任者

以前に議員失格である」と言いたい。

国民に「不要不急の外出を控えて」と呼

びかけながら、15日の敗戦の日に靖国

神社に参拝した自民党議員らにも同じ

言葉を投げかけたい。

「コロナ無策」でついに内閣支持率が

軒並み20%台にに急落した菅首相は

その焦りからか先週末、唐突に「酸素

ステーション」を設けると言い出した。

自宅療養者の症状悪化に備えるため

だが、具体策は何もない。症状が急

変した患者はそのステーションにどう

移動できるのか、誰がその対応をす

るのかなど詳細が不明で、思いつき

の域を出ない。首相は軽症者の重症

化を抑える「抗体カクテル」を投与で

きる拠点を整備すると明らかにしたが

、対象患者も不明である。
そもそも、各地の保健所がパンク状

態で、自宅療養者に十分連絡できな

い惨状が続いているのだ。入院もで

きない患者に誰が投与するのか、そ

の手当もせず、口にするのは無責任

の極みである。

今医療関係者が口を揃えて早急な整

備を求める臨時の大規模収容施設に

ついては、知らぬ顔を決めているかの

ようだ。昨年春の感染拡大時からの

強い声を無視続けたせいで、今さら

口にするのは自分らの失政を認める

ことを恐れているためとしか考えられ

ない。

保身に汲々とする愚鈍な指導者を交

代させる時が迫っている。首相の地

元の横浜では22日に市長選の投開

票がある。争点はカジノの是非から

政府のコロナ対応に移ってきた。首

相が全面支援する現職閣僚を辞任

した候補が野党候補に逆転されたと

の世論調査も出た。もし、このまま与

党候補が負ければ、自民党内で「菅

首相で総選挙は戦えない」という声が

一段と高まるのは必至だろう。冒頭

の倉持医師が「至急おやめになった

方がいい」と発言した通り、既に菅内

閣のカウントダウンが始まっている。

 

           【2021・8・16】


「不要不急はご本人が判断されるこ

と」。五輪閉会直後、東京・銀座を妻

とぶらついたバッハIOC会長をかば

った丸川珠代五輪相の言葉を聞い

て、空いた口がふさがらなかった。

ずっと不都合なことに目をつぶり通

しの17日間だった。選手たちのパフ

ォーマンスの陰で、コロナの感染爆

発に手を拱ねくだけの政府の実態

がさらに明白になった。残念ながら

前回書いた「悪魔のシナリオ」通り

の展開になり、政府の機能不全と

不作為が止まらない。

「こんなはずではなかった」。菅義偉

首相の頭の中はこんな思いを繰り

返しテイルのではないか。広島と長

崎の原爆犠牲者慰霊式典に参列し

た首相は演説原稿で最も重要な部

分を読み飛ばしたり、式に遅刻する

など「心ここにあらず」の振る舞いが

目立った。それもそのはずである。

五輪開幕前は「選手たちがメダルで

もとれば、世の中の雰囲気がガラッ

と変わるはず」と側近に語っていた

。しかし、その目論見は見事に外れ

てしまった。首相が「開催国としての

責任を果たした」といくら胸を張って

も、有権者は首相自らの打算のた

めの強行開催だったことを見透かし

ていたのである。

各メディアの数字がそれを示してい

る。政府寄りの読売新聞と「政府広

報」という批判の高いのNHKでさえ、

発足後最低を更新した。NHKの支

持率がついに29%と3割を切ってし

まったのは与党に衝撃をもたらした

。前日の朝日新聞の28%という数

字と大差がない。どのメディアも「菅

首相で選挙は戦えない」という議員

の声を伝えている。

支持率急落は、コロナの感染爆発

に有効な手を打てず、五輪賛美の

ツイッターばかりを流していた首相

への有権者からの事実上の「退場

勧告」にみえる。東京都で先週、4

000人を超える数字が三日連続で

続き、誰もが身に危険を覚える状

況に陥った。五輪開幕前は1日7

27人だったのに、わずか3週間た

らずで実に6倍の感染拡大を招い

てしまったのである。この間、菅首

相は事前に何の相談もなく「中等症

以下の患者の入院拒否」を宣言し

た。コロナで陽性判定されても、病

院で手当を受けられない。国民皆保

険が機能しない事実上の医療崩壊

である。戦後最大の国難である。高

まる批判に抗しきれず、首相は「中

等症でも医者の判断で入院できる」

とあわてて軌道修正したが、遅かっ

た。都内では重症患者以外を受け

入れる余力はもうなくなっている。

すでに都内には約3万人の自宅療

養と自宅待機を強いられた患者が

いるとされる。突然症状が悪化して、

死者も出始めた。昨日、立憲民主

の対策会議に呼ばれた厚労省の

担当者は「自宅療養の死者数は把

握していない」と答えた。自治体の

システム入力が遅れていると説明し

たが、田村憲久厚労相の「肺炎症

状のある人は、原則入院」という閉

会中審査での答弁について聞かれ

、「入院できている」と言えなかった

。このままでは、春の大阪のように

「自宅死」が激増する「地獄絵」がま

た迫ってきた。



それでも、こんな酷薄な惨状を変

える方策はまだある。例えば、臨時

の「コロナ病棟」を設け、軽症、中等

症患者を収容する。昨年春から多く

の医療関係者が提言してきたのに、

国や東京都は動かなかった。福井

県などは既に体育館などを利用、臨

時の収容者施設を作って機能し始

めた。東京都でも、五輪選手村を一

時的に収容施設に転用する案が浮

上しているのに、まだ首相や小池百

合子知事は知らぬ顔を決めている

。事実上の「棄民政策」が進行して

いると言えまいか。

「人間こそウィルスかもしれない」(9

日付け朝日新聞)。米国を代表する

シンガーソングライター、ジャクソン

ブラウンの言葉が胸に重たく響く。

        【2021・8・11】


あすから始まる東京五輪に想像以

上の厳しい目が国内外から注がれ

ている。米国の全国紙USAツディ

ーの記事は「五輪首脳陣の悪魔の

シナリオが始まりつつある」と心あ

る国際社会の人々怒りを代弁した

。直前には、開会式の作曲担当、

小山田圭吾氏の障がい者虐待や

文化イベントに出演予定だったの

ぶみ氏による教員いじめや先天

性疾患のある子供への差別的発

言が相次いで発覚した。まさに「

悪魔の所業」である。人命を軽視

して大会を強行開催した菅義偉首

相、バッハIOC会長らの酷薄な性

根とどこかで通底しているではない

か。序盤から「史上最低の盛り上

がらない五輪」のネーミングにふさ

わしくなりつつある。

昨日の東京都の感染者は1832人

と1月以来の多さになった。注目す

べきは感染力の高いデルタ株によ

る感染が45%にも広がっていること

だ。重症病床の使用率もついに5割

を超えた。来月早々には2600人

になると専門家が予想。
五輪期間中、感染しても入院治療

を受けられない最悪のシナリオが現

実化しつつある。

一方、小山田氏辞任について橋本聖

子組織委会長は「責任は自分にある

」と謝罪したが、言葉だけで何の処分

も示さなかった。スキャンダルが浮上

するたびに安倍晋三前首相や菅首

相が何度も口にした常套句だった。

批判が高まってからの丸川珠代五輪

相や武藤敏郎組織委事務総長はず

っと知らぬ顔を決めて、記者の質問を

スルーして小山田氏続投を表明してい

た。予想以上に世論の怒りが高まり政

府批判が強まると、神妙な顔で謝った。

ところが、度し難かったのは武藤事務

総長の「組織委が一人一人選んでいる

わけでない」という釈明である。演出チ

ーム全体の責任に転嫁しようとした姑

息さはまた無責任ぶりを一段と増幅さ

せている。

橋本会長が今さら「大会が掲げる多様

性と調和というコンセプトから外れてい

た」と謝っても、誰も納得しないだろう。

「外れている」判断をくだしたのは、いっ

たん続投を決めた橋本会長、武藤事

務総長、丸川五輪相である。こんな五

輪憲章にもとる人事を何度も通したの

は、偶然ではない。ずっと組織委にし

みこんだ体質だった。

なぜなら今年3月、タレントの渡辺直

美さんを開会式に豚の格好で出演さ

せようとした前クリエイティブディレク

ター、佐々木宏氏の影響を払拭でき

なかったからだ。小山田氏の起用も

佐々木氏ら演出チームが決め、組織

委は何のチェックもしなかった。渡辺

直美さんに侮辱的な扱いをした佐々

木氏なら更迭直後、ほかにも同様の

事案がないか疑うべきだった。それ

をしなかったのは、組織委自体が同

じ価値観で動いたせいと批判されて

も仕方ない。

リオ五輪で安部前首相を「マリオ」姿

で登場させたのは、佐々木氏だった

。安部前首相のお気に入りの人物が

仕切る演出に異をとなえることは難

しかったかもしれないが、少し「身体

検査」しておけば、小山田、のぶみ氏

が「危険人物」だったことはすぐ分か

ったはずだ。

小山田氏ばかりが問題視されている

が、のぶみ氏はもっと悪性が高い。元

暴走族の総長で、33回の逮捕歴があ

ったことを自ら明かしていた。その自

伝には中学生時代、黒板消しのクリ

ーナーの後ろに三カ月隠した腐った

牛乳を教師に飲ましたこともツイッタ

ーに記載されていた。「菅官邸」は小

山田氏の所業がSNSで問題視され

た直後に、のぶみ氏の前歴をつかん

だとされるが、「時すでに遅し」である。

バッハ会長は20日、東京都内で開い

たIOC総会で「感動、涙がアスリートに

よって作り出され、五輪のマジックにな

る。日本にとって輝くべき時になる」と

述べた。この言葉にうなずく人はどれ

だけいるだろうか。自分にはブラック

ユーモアにしか聞こえない。アスリート

たちも感動、涙を作るため参加してい

るとは思えない。こんな浅薄なスピーチ

しか発せられない人物に社会が分断さ

れ、人命が軽視されるこの国の悲劇。

暗然とした思いが消えない。

          【2021・7・22】

(都合で、次回は8月11日に掲載します)

 

政権転落の崖っぷちからもう落下

する寸前だ。毎日新聞調査によ

る菅内閣の支持率が過去最低の

30%になった。不支持は過去最

高の62%でダブルスコアである。

時事通信の調査は29・3%とこち

らも既に危険水域に足を突っ込

んでいる。陰湿な強権発動によ

って酒類提供の禁止を求めたこ

とへの反発が大きいが、「ワクチ

ン不足」と「五輪強行開催」など人

命無視の政権運営に起因する。

五輪まで5日、大義を見失い、不

信感ばかりが高まる大会に祝

祭気分はまるでわいてこない。バ

ッハIOC会長に媚びて、ますます

増長させる菅首相。大会期間中

、その姿を見せられる続けると思

うと、悪寒が走る。

東京赤坂の迎賓館での豪奢な歓

迎会を前にバッハ会長は、記者

に「緊急事態宣言下で適切か」と

聞かれ、「延期前から決まってい

た。我々はゲストでしかない」とば

つが悪そうに答えた。こんな場を

設けた菅首相や組織委にこそ、た

だすべき問いかけだったが、バッ

ハ会長には主催者としての自覚も

ない。費用はすべて血税によって

まかなわれことを参加者らは忘れ

ているようだ。

IOCは国連の機関でもなく、スポ

ーツ利権にまみれた「五輪貴族」た

ちが跋扈する特権クラブに過ぎない

。バッハ会長は改装されたホテルオ

ークラの最上階の1泊数百万円の

スイートルームをあてがわれ、我が

物顔で振る舞う。会長以下は、広島

、長崎を訪問したが何の心に響くメ

ッセージも発せられなかった。見せ

かけの「反戦ポーズ」は地元の被爆

者らから見破られ、「平和を利用す

るな」と抗議の声が上がったのはせ

めてもの救いだった。

看過できないのは、バッハ会長が

開催強行について「日本国民にリ

スクはもたらさない」と発言したこと

である。既に入国者らからコロナの

陽性反応が出ているではないか。

そのウガンダ選手団からは感染の

有無が分からない一人が行方不明

になった。連日数百人規模の選手

団が入国しているが、防疫体制は

穴だらけだ。

「バブルでしっかり管理されている

」という大会組織委のルールブック

は穴だらけだ。選手村や待機ホテ

ルではGPSによる管理が機能して

いない。選手やスタッフを監視する

人員を配置していないので、当たり

前のようにすり抜けられている。

メディア関係者に「出歩かないよう

に」と要請しても、取材を止めること

などできない。「隔離中は15分以内

の外出」など守られるはずもない。

母国でワクチンを2回打って入国し

た記者が「街に出歩く日本人は皆

ワクチンを打っているのか」と問い

返すのは当然だ。組織委はその質

問に答えられないはずだ。待機ホテ

ルでも一般客と入国者との区別が

なく、同じ食堂を利用するという苦情

が多く出ている。丸川珠代五輪相や

橋本聖子組織委会長がいくら「今後

は監視を徹底する」と釈明しても、

一向にその気配がない。

既に五輪の「バブル」は崩壊したも

同然である。それを無視して依然「

リスクを与えない」と言い放つバッハ

会長の傲慢さは、菅首相らによる

過剰な接待と供応に起因する。ど

んなに政権批判が高まっても、窮

地に追い詰められた菅首相は五

輪開催しか道がなくなった。

その道連れにされる国民はたまっ

たものではない。特に東京の感染

者は17日、ついに1400人にのぼ

り、8月に1日2000人超えが現実

になりそうだ。五輪後、もっと悲惨

な「メガ拡散」を指摘する専門家も

いる。こんな苦境から脱するには、

早期の内閣総辞職かも政権交代

しかない。支持率30%割れは、そ

の兆しを表している。一昨日の朝

日新聞川柳欄の句が有権者の思

いを代弁していた。

「待ち遠しお灸すえる投票日」
       (埼玉・田口尚孝)

        【2021・7・18】


何度釈明しても、怒りが収まる気

配はない。新型コロナウイルスの

感染拡大で緊急事態宣言が出る

前、飲食業関係者に大混乱を招

いた西村康稔コロナ担当相に対

し、辞任を求める声が日増しに高

まっている。この人物と何度もラ

ジオの報道番組で討論したことが

あるが、その傲慢さにはいつも辟

易させられ、今回も「やはり本性

が出た」という思いだ。いつも以

上にたちが悪いのは、陰湿な権

力行使で弱い物いじめをしたと

いう自覚がうかがわれないから

である。

その発言は、恫喝そのものだっ

た。酒類の提供停止に応じない

飲食店に対し、金融機関から順

守を働きかけるよう求め、融資打

ち切りまで求めていた。経済担当

相にそんな権限はなく、コロナ特

措法の条項にもない。それなのに

、提供停止を徹底させるため、国

税庁から飲食店に通達まで出させ

た。十分な補償もなく、事実上閉

店を迫るような大臣発言に強い反

発が出るのは当然である。過去の

緊急事態宣言で時短営業を強い

られた飲食店への協力金も支給が

遅れ、すでに閉店してしまった店も

多い。

今回の緊急事態宣言は生活の基

盤さえ失わさせる恐れが強い。本

来、政治がなすべき責務は困窮す

る弱者の救済である。融資停止は

その使命を忘れたどころか、さらに

痛み付ける強権の行使である。西

村担当相は世論の反発の高まりを

受けてツイッターで「混乱を招いて

不安を与えることになってしまった

。趣旨を十分伝えられず、反省して

おります」と釈明したが、発言は本

音ではなかったか。謝って済むは

ずがない。大臣辞任や議員辞職

を求める声が高まるのは当然で

ある。



奢りと染みついた選良意識。この

人物と会話するとき、相手は常に

それを感じるのではないか。福島

の原発事故後、毎日放送のラジオ

報道番組で二度ほど討論相手に

なった。その時の、西村担当相の

傲慢な振る舞いが今も記憶に残る

。番組中、人を小馬鹿にするよう

な態度に終始した。当時の民進党

議員と3人によるやりとりだったが

、自分が言いたいことだけいうと、

その後で発言する自分や民進党

議員の顔も見ず、自分のスマホの

画面を見入ったりして、不真面目

な態度が目について仕方なかった

。何度も「出演したくなかったら断

ったら良かったのに」と思わせた。


「この高慢さはどこから来るのだ

ろう」と自問してすぐに思い当たっ

た。敗れはしたが、当時派閥の領

袖だった森喜朗元首相に担がれ

て自民党総裁選に立候補した経

験があった。それが自分を実力

以上に過度な自信をもたらせた

のでないか。案の定総裁選のこと

を聞くと、自慢げに話し込んでき

た。番組終了後、こちらが了解も

していないのに自分の選挙運動用

のメールマガジンを送りつけてきた

。官僚出身議員にありがちな面白

みのない文言の羅列で辟易させら

れ、送信停止も求めた。


以前にも書いたが、その後のスキ

ャンダルもこの人物の本性を表し

ている。視察旅行に出かけたベト

ナム・ホーチミンのホテルで複数

の売春婦を部屋に呼んで、乱交

パーテーをしていた。文春砲にす

っぱ抜かれた西村担当相はしば

らくなりを潜めていたが、すぐに

馬脚を現した。


岡山県を中心に西日本で200人

以上が亡くなった豪雨災害に見舞

われた2018年7月の夜、東京・

赤坂で当時の安倍晋三首相を囲

んだ複数の自民党議員ら酒宴を

ひらき、どんちゃん騒ぎをしていた

。西村担当相はあろうことか、そ

の様子を写した写真を「赤坂自民

亭」と題して自慢げにツイッターに

アップしたのである。百年に一度

あるかないかの大水害の発生を

知っていながら、酒宴をやめなか

ったことを野党は厳しく追及した。

とりわけ写真撮影とネット掲載を

してしまった西村担当相の政治家

としての資質の欠如が明白になっ

たのである。


何度も失態を繰り返し、人の痛みが

分からない、こんな人物を重用する

菅義偉首相。今回の西村発言に「

聞いていない」と知らぬ顔をしたが

、そんなはずはない。内閣府、金融

庁、経産省、国税庁が練った案は5

大臣会議で了承されていたではない

か。嘘に嘘を重ねる。東京都議選で

惨敗に続く、今回の失態は政権の

延命に致命的な影響をもたらすだろ

う。
               【2021・7・13】

「五輪が世界規模のメガ拡散イベ

ントになるかもしれない」。米国イリ

ノイ大シカゴ校のニー・スパロー助

教の1カ月前の警鐘が現実になっ

てきた。新型コロナウイルスの感

染再拡大が続く東京の7日の感染

者は920人に急増、来月22日まで

緊急事態宣言が出されることにな

った。スパロー助教が変異株によ

るエアロゾル感染を懸念した通り、

この日は35%が変異株による感

染に置き換わっていた。先月、多

くの専門家も同じ危惧を菅義偉首

相に伝えていた。しかし、それを聞

き入れず前回の宣言を解除した。

内閣総辞職に相当する大失態で

ある。宣言を繰り返すだけでなく、

今は「五輪中止」を表明すべき最

後の機会ではないか。


菅首相はずっと専門家の意見を軽

視し続けてきたが、さすがに東京の

感染者数が1日900人を超えると、

 

聞き入れざるを得なくなった。重症

者数数も4月から6月までの数を超

えてしまった。感染状況の悪化は予

想以上だ。京大ウイルス研の試算

では、今月中旬1000人に達する

見通しだ。このままでは来月初め、

スパロー助教の警鐘通り、「メガ拡

散」が進み1日4000人になり、重

症病床も逼迫するという。


政府は3回目の宣言解除後、「早く

ワクチン打って」と呼びかけるだけ

で、PCR検査拡大など有効な措置

を何一つ講じなかった。そのあげく

がこの体たらくである。東京都議選

では有権者が「自公与党の過半数

割れ」という厳しい審判を下した。自

らの足下に火がついたと見られる

菅首相は、五輪強行開催だけにし

がみつき、専門家の指摘を聞き入

れるしか術がなくなった。


先月21日の五者協議では最大1万

人と決めていたはずだが、事態の

悪化でそれも無理になって、組織委

関係者は唐突に「無観客」と言い出

した。それでも菅首相はなお「一部

の有観客開催」にこだわっていると

いう。無観客なら「コロナに打ち勝

った証し」と言えなくなるからだ。2

週間後に迫っても、なお開催規模

が決まらない前代未聞の事態だ。


萩生田光一文科相はスパコン「富

岳」のデータまで引用、国立競技場

の感染リスクが低いことをアピール

して、有観客にしたい菅首相に追

従した。VIP、IOC関係者、スポンサ

ー枠は約1万人いるとされ、観客と

は別枠扱いである。いわば「五輪特

権ファミリー」だけはどうしても入場

させたい意図が見え見えである。そ

んな姿を映像でみせつけたら、また

世論の反発を招くはずだ。スポンサ

ー企業を優遇するのは、政権与党

幹部が彼らの政治献金を受けると

いう「五輪利権」が基盤にある。今

回の大会は特権者だけがその恩恵

を受ける構図がより鮮明化しつつあ

る。

彼らが絶対「中止」を口にすることは

ないが、感染の「メガ拡散」が広がれ

ば、中止の判断もあり得るかもしれ

ない。その場合、国内外へ多大な影

響を及ぼすのは必至で、内閣総辞

職に追い込まれるだろう。


今朝の毎日新聞はワクチン配送を

めぐる混乱は菅首相と加藤勝信官

房長官の二人が「自治体に回す予

定だったモデルナ社製ワクチンを職

域接種に回せ」と指示したためだっ

た内幕を伝えている。首相指示で自

治体に回すモデルナ社製ワクチンが

先月30日から一挙に500万回も減

ってしまった。政権が頼りにしたワク

チン接種さえも、自ら判断の誤りで、

全国の自治体が予約をキャンセル

するという大混乱をもたらした。「や

る事なす事すべて裏目」。自治体か

らも政権への批判が一段と高まっ

ている。

             【2021・7・8】

「怒りを通り越して悲しみを感じる」。

新型コロナワクチンが届かず、新

規予約の停止に追い込まれた兵

庫県明石市の泉房穂市長の言葉が

全国の首長の無念さを代弁してい

るのではないか。菅義偉首相が「1

日100万回に達した」と誇示してい

たワクチン接種が供給不足で一部

ストップした。職域接種を急がせて

いた河野太郎ワクチン担当相は十

分な謝罪もせず「需要が供給を上

回ったため」と言い放った。菅首相

の「高齢者接種は7月末で完了す

る」という約束は案の定反古になり

そうだ。そしてまだ五輪の有観客

開催にこだわる。最優先すべきも

のが分からない指導者に強烈なし

っぺ返しをすべき時が迫っている。


自分の住む神戸市では、国からの

供給が不足しているとしてファイザ

ー社製ワクチンの1回目接種停止

と6日以降の予約キャンセルを決

めた。その数は5万人にのぼる。

あおるだけあおって、挙げ句の果

てのはしご外し。河野太郎担当相

の大失態に言葉を失うほどだが、

本人はしれっとした顔で記者会見

に出て、未承認分の接種再開に

ついて「7月中は難しい状況にな

っている」と述べた。今後の配送

目標について説明したが、自治体

希望の三分の一にとどまっている

。調達努力もせず、ずっと見通し

を誤り続けた結果である。

大阪市では6月最終週から今月4

日まで約37万回の供給があった

のに、5日から18日までは18万回

に半減するといい、7月末どころか

8月中の高齢者接種もおぼつかな

い。こんな時こそ、全国の自治体の

首長が声をそろえて、政府に対応

を迫るべきなのに、吉村洋文大阪

府知事は2日、河野担当相に会い

「大都市優先供給を」と要望した。

「都会の自分たちの方が大事」とい

う価値観を持つ頭の中が透けて見

える。今春、自らの判断ミスで自宅

待機中多くの人命を失わせた罪を

まだ自覚できていないようだ。命の

大切さは都会だろうが、地域だろう

がどこに住んでも同じだ。わざわざ

東京に出かけるパーフォーマンス

に反吐が出る思いだ。

就任当初、ワクチンの「運び屋」と

自負していた河野担当相の表情は

曇り通しだった。今回の不始末で

企業や職域接種は大混乱だ。10

00人以上の申請数に合わすため

、近隣の医師や看護師らに頼んで

、何とか目標に達した企業などに困

惑が広がる。「ワクチン接種を急げ

」と大号令をかけていた菅首相から

も何の釈明も聞かれない。

それどころか2日、太平洋の島嶼

国にワクチン300万回分を提供す

ることを表明した。ワクチン不足で

自国の接種が遅れているのに、中

国への反感だけで安易な約束をし

てしまった。感染対策の遅れの連

続という自ら招いた国難の時、自

国の人命を第二にして、中国への

敵意をむき出しにしている。

首相の心は「コロナに打ち克った証

」としての五輪有観客開催にしかな

いようだ。予想された感染再拡大の

数字がはっきりしてきたが、それに

焦っているのか、首相周辺から「一

部無観客で調整」という声が上がり

始めた。これに呼応してか、一時姿

を見せなかった小池百合子都知事

も「無観客を軸に」と述べた。不仲を

棚に上げ、「何が何でも開催を強行

する」という思惑が一致するのであ

ろう。しかし、今後の推移次第で「開

催中止」の声が一段と高まるのでは

ないか。「感染拡大下の五輪強行」

という五輪史上にもない独善的な開

催は許しがたい。しかし、それれを

止めることができるのが、感染爆発

であれば、何とも悲しいことだ。


                  【2021・7・3】