平野幸夫のブログ -10ページ目

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

昨日の衆院選公示日直前、自民党

に新たな金銭スキャンダルが浮上し

た。野党議員をツイッター投稿で中

傷したアカウントが自民党と取引の

あるウェッブ制作会社と関係してい

たことが発覚したのである。大量に

投稿された内容は立憲の参院議員

二人を誹謗・中傷しており、二人は

名誉毀損の疑いが強いとして東京

地裁に慰謝料支払いを求め提訴し

た。安倍政権時代から野党攻撃の

フェイク情報を流す「ネトウヨ・アカ

ウント」の存在が指摘されていたが

、今回新たに自民党から4千万円

が寄付・交付金としてこの会社に支

出されていたことが判明した。解散

前の国会で質問を受けた岸田文雄

首相は釈明できなかった。政権与

党がデマを発信する会社に政治資

金を流していたなら、民主主義国家

の根幹を揺るがす不祥事に発展す

る可能性がある。衆院選期間中に

野党は厳しく追及すべきではないか。

朝日新聞や「BuzzFeed News」

によると、このアカウント名は「Dap

pi」と名乗り、
これまで財務省の公文書改ざん事

件で自死した近畿財務局局員は「

立憲の議員二人が吊し上げた翌日

だった」とデマを発信していたという

。このほか、枝野幸男代表の党首

討論での発言を歪曲したり、別の立

憲議員に対するデマを何度も投稿し

ていた。

このアカウントは東京都内のウェッ

ブコンサルタント会社が運営、自民

党の小渕優子議員のいる政党支部

とも取引があった。別の調査では、

90年代後半から福田康夫元首相ら

歴代自民党幹部が代表取締役とし

て名を連ね、一時岸田首相や甘利

明幹事長の名前もあったとされる。

自民党本部はこの会社に17年から

3年間に4千万円を支出したという

。闇は深い。野党は独自で徹底調

査し、選挙期間中でも判明した事実

を公表すべきだろう。4千万円が政

党助成金から流されていたら、公金

が不正に使われていたことになる。


参院本会議で代表質問した立憲の

森ゆうこ議員は「ネット工作をして、

選挙結果を不当にゆがめるような

行為を自民党議員にさせないと約

束していただけるか」と岸田首相

に問いかけた。しかし、首相は「そ

れぞれがルールにしたがって発信

すべきだ」と一般論にとどめる答

弁しかしなかった。

この疑惑は衆院選挙後も尾を引く

のは必至である。特定の相手や陣

営を誹謗・中傷するフェイクニュー

スや投稿は民主主義国家の選挙や

政策を判断する有権者の選択をゆ

がめる。既にEU欧州委員会は「偽

情報で収益を得ることをなめさせな

くてはいけない」として5月、新たな

対策と指針を発表した。

この指針では偽情報を発信した会

社に「責任を取り、協力して対応」

することを迫っており、検索表示の

優先順位を決める計算手順の公

表まで求めている。それだけネット

社会の影の部分が社会に与える

影響を重大視していることの表れ

である。

それに比べ、わが国のネット会社

規制は遅れている。それどころか

、官民の癒着ばかり際立つ。本来

なら新たに発足したデジタル庁の

所管だが、トップのデジタル担当

相だった平井卓也氏や引き継い

だ牧島かれん担当相は業者であ

るNTTと同じ高額接待を二度も

受けていた。二人とも倫理観が

欠如しているとしか思えない。接

待発覚後、平井前担当相は平然

と同席した官僚の処分を発表、自

らについては週刊誌取材が受け

た後で「割り勘で払った」と居直っ

た。牧島担当相は「議員としての

政治活動。意見交換は大事」と開

き直った。

岸田首相は衆院選を「未来選択

選挙」と名付けたが、最低限の倫

理感さえ失った閣僚起用を見せ

つけられると、まったくの虚言とし

か受け取れない。
          【2021・10・20】

政権が代わってたった10日の衆

院解散である。これほど国会を

軽視し愚弄した首相はいない。

「衆院予算委員会を開くべき」と

いう野党の要求に「国会のこと

は国会でお決めになればいい

」と安倍晋三元首相と同じ物言

いで拒否した岸田文雄首相の

本性がまた垣間見えた。コロナ

リスクが高まった時も、菅義偉

前首相も臨時国会を開かなか

を形骸化させた罪は大きい。今

回の選挙は争点は何か。シン

プルに思考すればすぐ分かる。

有権者から託された責務を忘

れ、サポータジュを続けた議員

に鉄槌を下す唯一の機会だ。怒

りの審判が下って、そんな落選

議員が多ければ多いほど国会

は蘇生する。


今頃になって体裁を繕うように、

衆院議長を引退する大島理森

議長「コロナ禍で国民の声を聞

く、伝えることの重要性を強く感

じた」と述べ、臨時国会召集への

対応について与野党で議論する

ように促した。在任中、自分で動

かなかった負い目としか受け止

められない。去りゆく者が今さら

何を言ってもむなしい。衆参いず

れかの4分の1以上の要求があ

れば、内閣に臨時国会召集を決

定するよう定めた憲法53条に違

反しているのは明白だ。与党の

トップである首相が決断すれば

、開けたはずだった。

ずっとそれができなかったのは、

「モリカケ、サクラ」に加えて河井

杏里元参院議員の選挙違反に

ついて、安倍元首相らの関与が

追及されたくなかったからであ

る。岸田首相もも甘利明自民幹

事長の金銭授受スキャンダルを

ただされるのを恐れ、前、元首

相と同じ拒否姿勢をとっている。

首相は就任からわずか10日間

で総裁選での公約を一切口にし

なくなった。もし、予算委が開か

れていたらと想像すると、甘利

疑惑と一連の公約違反で袋だ

たきにあっている姿が目に浮か

ぶ。解散直前の参院本会議で

の代表質問で、立憲民主の福

山幹事長に「いきなりブレ過ぎ

ではないか」と問いただされが

、岸田首相は「基本的な方向性

を申し上げた。旗は降ろしてい

ない」と強がったが、空疎に響

くだけだった。

新自由主義からの転換、令和

版所得倍政策、金融所得課税

強化……。
すべて先送りと封印。ハト派派

閥の領袖とされていたのに、安

倍元首相が提唱した「敵基地

攻撃」について議論すると言い

始めた。空いた口がふさがら

ないほどの豹変ぶりだ。どこま

で「安倍・麻生(2A)頼み」なの

かと思わせる。

これまでの政権スタート時の内

閣支持率に比べ低調といって

も、40%台後半から50%台とい

う数字が出て、総選挙で自民は

20議席減程度でおさまるのでは

ないか、という目算が出ているが

、あまりに楽観的過ぎるのでは

ないか。実現しない公約で「化粧

」しても、すぐに剥げ落ちてしまっ

た。1強支配で「国政私物化」を

続けた安倍政権以来の強権政

治に対する有権者の怒りのエネ

ルギーがマグマのように渦巻い

ていること知らないなら、強いし

っぺ返しをくらうだろう。

野党が支持を広げるには、分

かりやすいスローガンを掲げ

たらいい。

「国会を開かさない与党議員を

落とそう」


政策論議以前に「あなたは議

員の本分を果たしているか。

なぜ国会を開かさない」と問い

かける姿をアピールするだけ

で良い。その問答でどちらが

民主主義国家の国会議員に

ふさわしいか、有権者はすぐ

に判別できる。もし与党議員

がまた「国会のことは国会で

決めればいい」と首相と同じ言

葉でも発したら、しめたもので

はないか。しかし、1議員がそ

んな説明はできず、きっと困

惑する表情を隠せないはず

だ。

      【2021・10・15】

今年のノーベル平和賞にロシアと

フィリピンの2記者が受賞した。国

内の新聞各紙は「屈さず強権批

判」「表現の自由を守る」などの大

見出しを掲げ、その業績を何ペー

ジもさいて賞賛した。しかし、翻っ

て自らの足元をみると、劣化する

政治報道の現状を自省する記事

は皆無だった。今年も世界の報

道の自由度ランキングで日本は

67位と低迷したままだ。42位の韓

国、44位の米国にも大きく離され

ている。強権的な政権運営を続

けた「安倍・菅政権」を総括もせ

ずに、それを継承した岸田政権

のスタートを表層的に伝えるだけ

だ。受賞した2記者は命の危険

を感じながら活動を続けたが、国

内メディアに同じ気概を持って不

当な権力行使に迫ろうとする記

者がどれだけいるだろうか。心許

ない。

1970年代の米国でベトナム戦

争機密文書(ペンタゴンペーパー

ズ)を内部告発した元国防総省職

員のダニエル・エルズバーグさん

は政権批判をためらい、まるで政

府の言いなりの当時の米国メディ

アを憂い、「政府のラップドッグ(愛

玩犬)だ」と指弾した。今回ノーベ

ル平和賞は「報道の自由」が失わ

れつつある民主主義国家へのメッ

セージであり、エルズバーグさんの

言葉が重く響く。

政治報道で最重要なのは「権力者

への距離感をいかに保てるか」であ

る。記者の後ろには「知る権利」の

行使を託された有権者がいるはず

だが、岸田新政権のスタートに対し

、無批判に所信表明をたれ流した

メディアがいかに多かったことか。

いわく「新しい資本主義」「成長と分

配の好循環」。「目指すのは核兵器

のない世界」とも訴えた。

しかし、どれもまったく具体策がな

く、空虚なスローガンに過ぎなかっ

た。メディアの大半は、「自分には

『聞く力』がある」と持ち上げてみ

せた。岸田首相は全閣僚が多様

な人々と「車座対話」を行うと表明

したが、こちらも詳しい日程なども

不明のままだ。「みんなで前に進ん

でいくためのワンチームを創りあ

げる」という首相の言葉は何も心

に響いてこなかった。

こんな抽象的な言葉を聞いても、

誰一人納得して「任してみようか」

という気にならないはずだ。かつ

て作家の武田泰淳は妻の武田百

合子の文章作りについてこう戒め

た。

「美しい景色」「美しい心」など「美

しい」という言葉を簡単に使わない

。抽象的な言葉は中身が分から

ず、読み手に伝わらないからだ。

例えば安倍元首相や高市早苗

自民党政調会長はよく「美しい国

」「美しく強い国」と口にする。しか

し、こんな言葉に心動かされるの

は支持者だけではないか。

それと同じように岸田首相の「み

んなで前に進む」とか「ワンチー

ム」は思わず「その中身は何」と

問いかけなくなる。おそらく自分

でも内容も詰めず、口癖のように

発しているだけではないか。ただ

官僚の作った原稿を読むだけだ

った前首相よりは、ましかもして

ないが、言葉に漂う空虚感は大

して変わらない。

政治記者なら、権力者の言葉に

注意を払い、疑問があるなら聞

くべきだが、相変わらず新首相

の記者会見は首相に再質問も

せず、わずか30分で打ち切られ

ていた。前政権と変わらない「愛

玩犬」ぶりが一段と情けない思

いにさせる。既に官邸記者の大

半が「御用記者」化してしまった

。ノーベル平和賞受賞記者を褒

めている場合ではない。あまり

の彼我の差を恥じるべきであ

る。

この国では報道機関の政権隷

属化が止まらない。今年のノー

ベル平和賞を強い警鐘と受け

止めたい。
            【2021・10・10】


寄席や宴会の余興で演じられる「二

人羽織」。袖に手を通さずに羽織を

着た人の後ろから、別の人が羽織

の後ろに隠れて前の人に食事させ

たりする芸だが、政治の世界では

黒幕や院政に例えられる。4日スタ

ートした岸田文雄内閣の顔ぶれを

見ると、紛れもなく「安倍・麻生(2A)

振り付け政権」であることが分かる。

何より政権与党を仕切る幹事長の

座に2A陣営の甘利明元経済再生

相が就いたことで明白になった。衆

院選挙の投開票日を31日に早めた

のは、ぼろが出ないうちのご祝儀相

場狙いだが、賄賂授受疑惑を引き

ずる甘利幹事長がこのまま見逃さ

れるはずもなく、選挙戦では野党か

ら総攻撃を受けるだろう。

甘利幹事長が建設会社の総務担

当者から都市再生機構(UR)への

口利きの謝礼として、大臣室で50万

円を受け取った場面を報じた週刊文

春の記事(2016年1月28日号)は

政界に衝撃を与えた。担当者は甘

利大臣が「ありがとう」と言って現金

入り封筒を受け取ったシーンを詳細

に証言。後になって否定されないた

め、横浜銀行東海駅前支店でおろ

した50万円を両替し揃えたピン札の

コピーまで撮って、大臣室で二人並

んだ写真が掲載されたのである。

甘利経済再生相の秘書にも20万円

を大和市内の喫茶店で渡した場面

が隠し撮りされていた。秘書は笑い

ながら背広のポケットに収めていた

。担当者は二人に合わせて210万

円を賄賂として渡したと証言してい

る。その後甘利経済再生相は閣僚

を辞任したが、病気で入院を理由

に国会への招致に応じないままに

なっていた。どんな弁明もできない

と覚悟したのか、3年以上も表舞台

に出られなくなっていたのである。

それほど贈収賄行為がはっきりして

いるのに、当時東京地検は立件を

見送り、不起訴にしてしまった。安倍

内閣の致命傷になりかねなかった局

面が変わり、安倍政権は命拾いした

とも言われた。後に法務省の黒川弘

務官房長がもみ消しに暗躍していた

ことが分かった。黒川官房長はこの

時の論功行賞で事務方トップの法務

省事務次官に昇格し、とんとん拍子

で出世し検事総長になる寸前、賭け

麻雀で失脚した。まるで、伊藤詩織

さんレイプ事件で安倍首相と親しか

った元TBS支局長が不起訴になっ

た事件と丸写しのようだ。こちらも裁

判所が認めた逮捕状の執行をストッ

プさせ、立件させなかった警視庁の

中村格刑事部長と同じ構図である。

中村氏も今回の政権交代時に隠れ

るように警察トップの警察庁長官に

昇任してしまった。「モリカケ・サクラ

」ばかりでなく安倍政権の悪事は果

てしなく社会の隅々まで広がってい

た。

野党の立憲民主が今回「甘利疑惑

」を調査するチームを立ち上げ、甘

利幹事長の国会招致を求めている

のは当然だろう。「安倍・菅継承内

閣」である岸田政権のアキレス腱は

この薄汚れた贈収賄事件であるこ

とに変わりはない。

今後も安倍元首相が陰で実権を振

るうとみられるのは、甘利幹事長の

ほかに、安倍元首相補佐官だった

今井尚哉氏を内閣参謀参与として

再任させたからである。岸田首相

の秘書官には今井と経産省入省同

期の嶋田隆氏も起用、原発再稼働

推進路線が強固にひかれた。

岸田新首相が出馬表明当初、森友

事件のさらなる説明を表明していた

のに、安倍元首相の意向を忖度し

いつの間にか口にしなくなった。批

判覚悟で甘利幹事長を起用したの

も、自民党が参院選で河井杏里陣

営に1億5千万円支出した件を再

調査させない狙いが込められて
いる。

初入閣が多く、政権寄りメディアは

清新な顔ぶれと持ち上げているが

、内実は首相以下、世襲議員ばか

りである。女性閣僚の野田聖子、

牧島かれん、堀内詔子各氏はいず

れも父親が政界人の「お嬢様」育

ちである。世襲議員らに市井の人

々の困苦や怒りが真に理解できる

とは思われない。政権の中身をし

っかり凝視しなければ、表面的な

繕いに目がいきがちで、本性を見

失う。
               【2021・10・5】

まるで「菅義偉」という貧乏神にと

りつかれたように、応援された河

野太郎ワクチン担当相が失速し

た。そして大方の予想通り、岸田

文雄前政調会長が自民党新総

裁の座についた。岸田陣営を支

持した安倍晋三、麻生太郎元首

相がほくそ笑む姿が目に浮かぶ

。この国の利権構造は何も変わ

らない。「戦後最大の国難」とい

う自覚のないまま総裁選を挙行

し、看板を書き換えても、きたる

べき総選挙では国民皆保険の

国でありえない医療崩壊をもた

らした与党の責任に予想以上

の厳しい審判が下るのではない

か。

河野陣営が第1回目投票で過半

数をとれなかったのは、一言でい

うと言行不一致の危うさを多くの

党員が感じ、票が伸びなかった

のが最大の要因だろう。改革を

叫びながら、「安倍・麻生」という

2Aの顔色をうかがい続けて、幻

滅を広げた。いわば自業自得で

ある。

では岸田新総裁に「何か新たな

ことをやるだろう」と期待しても無

理ではないか。安倍内閣の中枢

にいながら、「国政私物化」にNO

とも言えず、「アベ政治」に唯々諾

々と従ってきた。昨年の総裁選で

、安倍元首相に裏切られても「下

駄の雪」のように支持を請い続け

る姿は憐憫を催したほどだ。今回

も安倍氏が高市早苗元総務相を

擁立し、自分を足蹴にするような

振る舞いをされても、なお支持を

求め続けた。もし、そんな勢力と

決別して新たな旗を掲げていたな

ら、岸田新首相は今後2Aの意向

をくみ取らずに済んだかもしれな

い。しかし、決選投票で2Aから高

市陣営の票を割り振りしてもらっ

たため、人事も政策も自分の意

のままにできなくなった。今後は

「挙党態勢」という名の下に、2A

陣営から党幹部や多くの閣僚を

起用するのは目に見えている。

早くも大臣室で賄賂まがいの現金

をもらった甘利明党税制会長や

加計孝太郎・加計学園理事長と

交友があり、文科省に新設獣医

学部認可について圧力をかけた

萩生田光一文科相らを幹事長、

官房長官に起用する案が浮上し

ている。こんな有様ではこれまで

の利権政治が改まることはない

。11月の衆院選挙では、野党か

ら「アベ・スガ政治」の継承を問

われ、苦戦するのは必至だろう

。それほど、約9年続く「アベ政

治」による不正の数々に、有権

者の怒りのエネルギーが沸々と

高まっているからだ。

これをを引き継いだ「スガ政治」

も標的になる。最大の大罪はコ

ロナの失政である。GoToキャン

ペーンで全国に感染拡大をもた

らし、後手後手の緊急事態宣言

と水際作戦で第5波まで招いてし

まった。何より看過できないのは

、病院受け入れ拒否を、平然と「

自宅療養」と言い換えたことだ。

今春の大阪と夏の東京都で300

人以上が治療も受けられず、自

宅で亡くなってしまった。残された

家族の無念さを思うと、国、大阪

府、東京都が一体となった「殺人

」と言っても言い過ぎではない。す

べての国民が医療を受ける権利

があるのに、適切な医療を受けら

れなかったのは、トップである菅

首相や小池・吉村知事の責任で

ある。

28日の記者会見で菅首相はワク

チン接種をまるで自分の手柄の

ように話したが、お門違いでない

か。ワクチン供給は義務であり施

しではない。最後まで自分の不手

際を棚に上げて、成果呼ばわりす

る薄汚い精神をみせつけた。横浜

市長選で自ら支持した候補があれ

ほど惨敗したのをもう忘れたような

振る舞いだった。

岸田新総裁は「生まれ変わった自

民党をしっかりと国民に示し、支持

を訴えないといけない」と抱負を述

べた。ご祝儀相場で新首相誕生直

後の内閣支持率は高いだろうが、

それはいつものように一時で終わ

りそうだ。
              【2021・9・30】

まさに的を射た米国ワシントンポ

スト(WP)紙の論評だった。自民

党総裁選を「日本の指導者コン

テスト」となぞらえ、「勝者は安倍

晋三氏だ」と断じた分析記事を

掲載した。今も空疎な「アベノミ

クス」にすがる候補者らの姿を見

て、選挙の内実を「岡目八目」的

に言い当てていた。第三者の方

が当事者より物事を客観視でき

、情勢を正しく判断できている。

終盤戦になって、先頭を走ってい

た河野太郎行革相が自ら失言を

連発、大失速している様相だ。「

安倍路線」の軌道を忠実に走る

岸田文雄前政調会長が有力視

されるのも、WP紙は見通してい

たかのようでもある。

「メディアジャック状態」にしてダ

ラダラ続く総裁選はかえって、候

補者らの素顔を見せてしまった。
特に思わぬ失態を重ねているの

が河野行革相だろう。議員票獲

得が進まないいら立ちからか、け

っして口にしてはならない言葉を

発してしまった。党内の当選3回

以下の議員で作る「党風一新の

会」での発言だった。


「部会でギャーギャーやっている

よりも、副大臣、政務官チーム

を非公式に作ったらどうか」

党の政策決定プロセスを「ギャ

ーギャー」と悪し様に断じたので

ある。自民党の族議員が集う部

会を敵視したことに、党内から

強い反発が出て3日後に発言の

撤回に追い込まれ「不適切だっ

た。反省している。おわびして訂

正したいと思う」と頭を下げた。

信念があっての発言なら突き通

したらいいのに、あっさり引っ込

めた。これこそ河野太郎という

政治家の本性だろう。威勢のい

いことをよく口にするが、反発が

起きれば、すぐ逃げてしまう。典

型的なのが「脱原発」である。再

稼働派から突っ込まれると、い

つの間にか「脱原発」を口にしな

くなった。他人事のように「いつ

かは無くなる」と言い出した。論

点をすり替え「核燃料サイクル

は維持できない」と軌道修正し

てしまった。

批判的なメディアに攻撃的にな

る性癖も指導者にふさわしくな

い。BSTBSの番組中、飲食店

で酒提供が可能になる時期を

3択で聞かれると、「こういう質

問は良くない」と司会者にかみ

つき「責任あるメディアがこうい

う報道の仕方をするのはおか

しいではないか。メディアにも

反省していただけなければい

かん」と攻撃を始めた。

さすがに見かねた野田聖子幹

事長代行に「メディアが悪いと

いうのはどうか」と諭された。上

から目線の驕りから出た言葉

が醜態を招いた瞬間だった。人

としての品格や節度が決定的

に欠如している。総裁選どころ

かもう一度一議員として雑巾が

けのような議員活動をしたらど

うか。そうすれば、人の痛みを

少しは理解できるようになるだ

ろう。このままでは万一、総裁

選に勝っても「暴君」になった姿

が想像できる。

河野行革相の自滅によって、総

裁選の第1回投票で過半数を得

られなければ、岸田前会長と高

市早苗元総務相が決選投票で

2、3位連合を組み、岸田前会

長が勝利するとの見方が強まっ

た。WP紙の炯眼通り、「安倍

路線継承政治」がまだしばらく

続くことになってしまう。

安倍政治の害毒を総括できなか

った総裁選は最悪の結末を迎え

ることになりそうだ。今朝の毎日

新聞のインタビューで元経産官

僚の古賀茂明氏が「安倍政治」

の「負のレガシー」として「官僚支

配」「地に落ちた倫理観」「マスコ

ミ支配」「戦争のできる体制づく

り」を挙げていた。首肯するしか

ない的確な分析である。

改めて来るべき衆院選こそ、凋

落したこの国を民主主義国家と

して取り戻す機会にしたい思い

が日増しに募る。
             【2021・9・25】

国政選挙でもないのに、メディアは

自民党の総裁選に乗っ取られたよ

うに人物評ばかりを過剰にたれ流

している。朝から深夜まで画一報

道が続き、誰をもリーダー選びに

参加しているような気分に錯覚さ

せる。これがまだ9日も続くかと思

うと、一層脱力感に見舞われる。

多くの有権者の身の周りで起きて

窮状から抜け出す処方箋を候補

者らは、誰一人示さない。真に政

権を選択する総選挙まで、まだ二

カ月もある。それまでこの国は最

高責任者がいない事実上の無政

府状態同然だ。コロナの感染拡

大が収まらない中、こんな国政の

体たらくを招いた責任こそ厳しく

問われなければならない。

テレビ画面で同じ顔ぶれを何度も

なく見せられ、もやもやとした思い

で新聞の外電面を開くと、ほかの

国では曲がりなりでも民主主義

が機能していると思わせる記事

(共同)に出会った。

オランダの女性外相、カーフ氏が

アフガンニスタンからの退避をを

めぐる混乱の責任をとって辞任し

たというニュースである。カーフ外

相はオランダ下院で、政府の対応

遅れや多数の現地スタッフと軍通

訳らが避難できなかったことにつ

いて、問責決議が可決されていた

。カーフ外相は「最終的な責任を

負う閣僚として、この判断の結果

を受け入れるしかない」と受け入

れたという。

英国では1万5000人を現地から

撤退させる作戦が完了したのを見

届けて駐アフガン大使が出国した

。どちら自国の人命第一の判断に

基づく決定で、政府が普通に機能

していた。

ところが、日本は約500人に上る

大使館協力者やJAICA職員・現地

スタッフらを置き去りにしたまま、大

使以下職員12人だけがカブール陥

落前に、アラブ首長国連邦(UAE)

に退避してしまったた。後にカブー

ルに向かった自衛隊支援機もたっ

た一人しか救出できず、引き返した

。大使らが自分の安全を最優先に

して、自国民や協力者500人を依

然命の危険にさらし続けるという大

失態で、わが国外交史上でも前例

のない不始末である。

ところが、茂木敏充外相は後手批

判に「十分輸送手段は確保した」と

事実を誤認させごまかした。菅義

偉首相もたった一人の救出に「よ

かった」と言い放った。政府の責任

を問われたくないという思いだろう

が、危険が迫る現地の窮状と家族

の不安をを考えたら、けっして口に

すべき言葉でなかった。首相の責

務の自覚を欠片も感じさせない。

内閣支持率が急落していたとえ、

唐突な首相辞任によってその後の

大混乱をもたらした。今実態は無

政府状態に近い。本来なら国会で

今回の外交失態が厳しく問われ、

茂木外相の問責辞任になっても何

らおかしくなかった。それが自民党

の総裁選ばかりに目を向けようと

、国会での質疑さえ封じられてい

る。





差し迫ったコロナ対策で政府が何

に取り組んでいるのか不明のまま

。それを明らかにすべき臨時国会

を開かないのは、国会議員の職場

放棄で憲法違反でもある。野党は

国対委員同士の話し合いに任す

のではなく、もっと強く「日本国民の

命と安全をおろそかにする政府」を

アピールし、院外活動を活発化す

べきではないか。外相辞任を求め

、外務省前や厚労省前に座り込む

ぐらいの気概を示してもらいたい。

総裁選候補の中でも河野太郎、岸

田文雄両氏は外相経験者であり、

今回の外交失態を真剣に受け止

めるなら票集めにうつつを抜かす

だけでなく、「自分ならこう救出す

るか」一言でも発言すべきではな

いか。

安倍政権以来、日本外交は失態

続きで対ロシア外交では、安倍前

外相がプーチン首相と交渉しても

手玉にとられ27回の会談の結果、

北方領土はミサイル基地建設など

完全にロシアの領有化が明白にな

ってしまった。安倍政権の「一丁目

一番地」といっていた拉致問題解

決は何ら解決しなかった。それどこ

ろか北朝鮮とは話し合いのルート

さえ作れていない。

総裁選候補者らからこんな「安倍・

菅政権の外交上の負の遺産」をど

う変えるのか聞きたいが、劣化する

メディアの記者らにそんな質問を期

待するのも無理かもしれない。


        【2021・9・20】

警察内部でも批判が高まっていた

人事が強行された。安倍晋三前首

相と親しい山口敬之・元TBS局長

によるレイプ事件をもみ消した中

村格警察庁次長が頂点の同庁長

官に22日付けで発令される。政権

末期に「安倍政権」への論功行賞

をドタバタ人事で通してしまった。

一方、自民党ではどの候補も安倍

前首相の顔色をうかがう総裁選の

様相が強まっている。このままで

は誰が勝っても、「安倍政治」のく

びきから逃れられない。

「安倍政治」の最大の罪状は「モリ

・カケ・サクラ」疑惑に象徴される過

度な「えこひいき政治」である。レイ

プ事件前、当時の安倍首相のスポ

ークスマンのように、連日テレビに

出ていた山口氏は、首相との親密

な関係を誇示していた。事件の被

害者、伊藤詩織さんに就職相談に

応じるふうを装って、睡眠薬を飲ま

せ無理矢理ホテルの部屋に連れ

込みレイプに及んだ。

刑事告訴された山口氏は官邸の

アイヒマンと呼ばれ安倍首相の最

側近だった北村滋内閣情報官に

相談した。この結果、空港での逮

捕状執行直前、当時警視庁の中

村格刑事部長が執行を直前でス

トップさせた。中村部長は「自分が

止めさせた」と認めている。それで

も出世街道をひた走れたのは、「

安倍官邸」が警察人事を思うよう

に動かしていたからだ。

当然、警察OBらから「権力の犬

」化する組織の現状を憂い、中村

氏だけはトップの長官にさせては

ならないという声が強まっていた。

しかし、そんな反対を押し切り今

回異例の人事を発令したのは菅

首相も一部関与していた弱みが

あったためとされる。

中村長官は政権与党にとってこ

の上なく使い出のある人物では

ないか。来るべき衆院選の取り

締まり情報や野党候補の動向も

入手できやすくなる。選挙違反事

件捜査では与党から圧力をかけ

やすい。こんな悪事がまかり通る

のを懸念させる最悪の人事に、

改めて悪寒が走る。

総裁選で出馬に意欲を見せてい

た石破茂元幹事長が腰砕けにな

った。党内で「安倍支配」を打ち

破るなら子飼いの議員を増やす

努力をしなければならなかった

のに、「権力を奪い取る」という

覚悟が希薄で、ついてくる同僚

議員がどんどん去って行った。

河野太郎行革相を支えると言う

が、安倍首相に配慮し「モリカケ

は調査しない」と言い始めた河

野氏に重用されるとは思いにく

い。また石破氏に「一緒に党改

革を」と呼びかけた河野氏だが

、安倍氏が反感を募らせている

と聞き、これまでの主張をあか

らさまに変え始めた。


特に際立つのは脱原発を一切

口にしなくなったことだ。「いず

れなくなるから」という言い訳か

らは明白な覚悟が消え失せて

いた。その時々に受ける言葉

だけを語るだけの流される政

治家であることを強く思わせる。

岸田文雄氏も日に日に日和見

姿勢になってきた。当初「説明

をする」としていた森友再調査

を「考えてない」と豹変した。不

快の念を示していた安倍前首

相のいる細田派の票欲しさか

らだ。外交でも対中強硬姿勢

を鮮明にして、「敵基地攻撃」

まで「ぜひ議論したい」と言い

始めた。憲法違反の安保法制

を安倍首相と一緒に成立させ

たことを思い出させた。高市早

苗前総務相と一緒ではないか

。言動をコロコロ変えるこんな

人物が首相になれば、陰の「安

倍支配」が完結してしまう。

河野、岸田両氏が主張をトーン

ダウンさせている政策こそ、野

党が旗色を鮮明にして実現させ

るとアピールしなければならない

。多くの有権者に「悪夢のような

安倍政権」から真に脱却できる

という期待感を抱かせる公約作

りを急ぐ時だろう。


        【2021・9・15】

こんな常軌を逸した外遊があるだ

ろうか。月末に退陣する菅義偉首

相が国連総会に出るため訪米を

検討しているという。語るべき言葉

を何ら発することもできず自滅した

人物が、何を発信するというのか。

こんな「卒業旅行」に知らない顔を

して、自民党の派閥の主らに日参

する総裁選候補者ら。これまで主

張してきた政策を引っ込めて、実

力者の膝下に屈する候補者らは

政権担当能力を失った与党の醜

悪な姿を見せつける。間近に迫っ

た総選挙を見据えて、候補者らが

右往左往する姿を冷ややかな視

線で凝視し続けたい。

派手な動きから最もメディアの注

目を浴びる河野太郎行革相が露

骨に「口先男」の本性を見せ始め

た。8日に安倍晋三前首相と面会

した河野行革相は「原発を再稼働

していくのはある程度必要」と語っ

た。
表向き「脱原発」を政治信条に党

外からの支持も集めていたが、そ

れをかなぐり捨てたことを隠さなく

なった。それだけでない。「女系天

皇」に賛意を示していたのに、この

日は「男系で続いているというのが

、日本の天皇の一つのあり方なん

だと思う」と言い出した。自分の政

治信条を状況に応じて、これまで

の主張と正反対のことを平気で容

認している。

かねてからあまりの言動の様変わ

りに「変節漢」という言葉がふさわし

く思っていた。この「扇動政治家」が

仮に権力を握った時を想像して慄

然とする。質問にまともに答えない

のは菅首相と同じである。大事な説

明責任を放棄しても何ら恥じていな

い姿はワクチン供給の記者会見で

も何度も見せられた。

自身のツイッターへのアクセスを制

限する「ブロック機能」を頻繁に使っ

たり、記者会見で自分の都合の悪

い質問に答えず「次の人どうぞ」を

4回も繰り返した場面もあった。いず

れも権力者の奢りがもたらす言動

だった。現在担当のワクチン確保で

も平然と嘘をつき続けた。5月の連

休前に、モデルナ社から品不足に

よる供給停止の通告を受けていな

がら、それを隠して職域接種を奨励

した。

案の上、足りなくなって7月には供

給がストップ、大混乱をもたらした。

大学、企業が懸命に医師や看護

師らを集めたのに、接種をキャン

セルせざるえなくなったことが連日

報じられた。河野行革相は通告か

ら2カ月も後になって、しれっと供

給ストップを「白状」した。改革者を

気取るこんな人物が権力の座につ

いた時を、どんな言葉で有権者を

愚弄するのかを想像すると、一段

と空恐ろしくなる。

本性を見せたのは、岸田文雄前

政調会長も同じだ。8日、自身の

経済政策を発表し「小泉改革以降

の新自由主義政策を転換する」と

述べ「成長と分配の好循環によっ

て格差是正を目指す」と表明した

。しかし、まるで自分が与党の政

調会長だったことや安倍内閣の外

相として、安倍政権の経済政策を

閣僚の一人として支えたことを覚

えていないかのような変貌ぶりで

強い違和感を覚える。

何とか「安倍・菅政権」との違いを

鮮明にしたい思惑だろうが、言動

が首尾一貫していない。森友事

件について、出馬表明当初、「も

っと国民に説明しなければならな

い」と述べ、自殺した近畿財務局

職員の遺族らに期待感を抱かせ

た。ところが、安倍前首相が高市

早苗前総務相に支持表明したと

たん、あわてて「これ以上調べる

必要はない」と語り、腰砕けにな

った。

一見誰にでもソフトな印象を与え

るこの政治家の最大の欠点は、

常にその時の状況に流されるこ

とだ。党内ではハト派と呼ばれる

宏池会の流れを持つ派閥を率い

ながら、外相として憲法違反の集

団的自衛権を盛り込んだ安保法

制を推進した。戦前回帰の極右

思想を持つ安倍前首相とずっと

同じ政治行動を続けてきた岸田

会長が改革波を名乗る資格はな

い。

極右といえば、安倍前首相の政

治思想をまた再現させようとする

高市前総務相は中でも最も危険

な政治家だろう。総裁選でどれだ

け票を集めるのか。自民党に「安

倍・菅政治」の残滓の度合いを測

る尺度になる。
         【2021・9・10】

「天下は悪に亡びずして愚に亡ぶ」。

金沢勤務時代に知り合った禅宗の

高僧、板橋興宗氏(故人)はこう教

えた。「悪」は自覚して反省すれば

、そこに救いがもある。しかし、何

が「悪」なのか、何が「愚」なのか、

それが分からないのを本当の「愚」

という意味だ。退陣する菅義偉首

相は自らの愚かさに気がつかず、

国政に大混乱をもたらしてしまった

。政局は一挙に自民党総裁選に移

ったが、メディアはどの候補者にも、

安易に「国民的人気」という言葉を

使うべきでない。心しておくべきは、

ほとんどの有権者に投票権がない

ことだ。有権者に首相を選ぶような

錯覚を与える過大報道が罪深いこ

とを意識しておくべきだ。

権力の心地良さばかりに心奪われ

、大事な言葉を一切発することがで

きなかった菅首相。常套句の「そこ

は」や「それは」の中身が伝わらな

かったのは、使うべき言葉を知らな

かったためだろう。それを自覚しな

かったのは、暗愚と言われても仕方

ない。権謀術数だけで人を蹴落とす

ことに砕身してきた人生の末路はあ

まりに無残に見える。憐憫さえ思わ

せる象徴的なシーンを、麻生太郎

財務相の地元の西日本新聞の二

人の記者が詳細に伝えていた(4日

付け)。

記事によると、菅首相は総裁選の票

集めに行き詰まり、河野太郎行革相

を党の要職起用で乗り切ろうとして2

日夜、河野氏所属の派閥のトップ、

麻生太郎氏に了解を求めようとした。

すると、麻生氏は声を荒げ「おまえと

一緒に、沈めるわけにはいかねえだ

ろう」と断られた。それでも説得した

が、首を縦にふられることはなかった

。安倍晋三前首相にも党人事への

協力を求めたが、こちらも「三くだり

半」を突きつけられた。

驚くのは、「黒幕」たちの非情さと、

使い捨てられた権力者の悲惨な末

路である。麻生氏とのやりとりは、「

ヤクザの親分子分」を思わす。親分

の非情さと「沈めさせられる」子分

の殺伐とした心情を想像させる。こ

んな輩に国の舵取りを約10年も託

していたかと思うと、改めて背筋が

凍る思いになる。

その麻生派から河野氏が総裁選に

名乗りを上げた。「親分」は「自分で

やれ」と派あげての全面協力は約束

しなかったという。メディアは河野氏

や石破茂元幹事長に対し「国民的

人気が高い」と枕詞のように付ける

。しかし、それは妥当ではない。確

かにどの世論調査でも、「次期首相

に期待」の問いに、二氏はそれぞれ

15%前後の支持を集めるが、そん

なわずかな数字だけで果たしてそれ

を「国民的人気」と言えるのか、強い

疑問を覚える。安倍・菅氏に対する

不満を持つ党内の不確かな数の塊

に過ぎないのではないのか。二氏の

政策の中身に共感した調査数字

には見えない。

安易にもてはやすと、碌な結果をも

たらさないことは菅首相の就任当

時の数字を見れば、明らかだ。最

初の内閣支持率はどこも70%近く

あった。メディアが一斉に「雪深い

田舎から出てきた」「ホットケーキ

好き」などと他愛もないフレーズを

付けて人物評価してきた影響が

大きい。政治家としての資質を十

分検証する報道は皆無に近かっ

た。

河野氏も漠然と「若手から支持を

集める」と言われるが、政策はブ

レの連続である。野党当時「反原

発」を掲げ、一時期支持を広げた

。しかし、安倍内閣で閣僚に起用

されてからその旗を収め、「反原

発」を一切口にしなくなった。外相

になってからは、「外相専用機が

ほしい」など勘違い発言が目立っ

た。コロナワクチンでも何度も自

治体に混乱をもたらしたのに、非

を認めず謝罪や説明もしなかった

。記者会見では答えたくない質問

に「次の人どうぞ」を4度も繰り返

し、傲慢ぶりを見せつけた。

石破氏も二階氏に擦り寄るだけ

で、まだ出馬の決断もできない。

一貫性のなさは昨年の総裁選に

敗れて菅首相支持の発言を繰り

返していたことでも明らかである

。負の遺産ばかりを残した「安倍

・菅政権」を総括するためにも、

メディアには今こそ候補者らとの

距離感をもった報道が求められ

る。最重要なのは、間近の衆院

選である。
            【2021・9・5】