昨日の衆院選公示日直前、自民党
に新たな金銭スキャンダルが浮上し
た。野党議員をツイッター投稿で中
傷したアカウントが自民党と取引の
あるウェッブ制作会社と関係してい
たことが発覚したのである。大量に
投稿された内容は立憲の参院議員
二人を誹謗・中傷しており、二人は
名誉毀損の疑いが強いとして東京
地裁に慰謝料支払いを求め提訴し
た。安倍政権時代から野党攻撃の
フェイク情報を流す「ネトウヨ・アカ
ウント」の存在が指摘されていたが
、今回新たに自民党から4千万円
が寄付・交付金としてこの会社に支
出されていたことが判明した。解散
前の国会で質問を受けた岸田文雄
首相は釈明できなかった。政権与
党がデマを発信する会社に政治資
金を流していたなら、民主主義国家
の根幹を揺るがす不祥事に発展す
る可能性がある。衆院選期間中に
野党は厳しく追及すべきではないか。
朝日新聞や「BuzzFeed News」
によると、このアカウント名は「Dap
pi」と名乗り、
これまで財務省の公文書改ざん事
件で自死した近畿財務局局員は「
立憲の議員二人が吊し上げた翌日
だった」とデマを発信していたという
。このほか、枝野幸男代表の党首
討論での発言を歪曲したり、別の立
憲議員に対するデマを何度も投稿し
ていた。
このアカウントは東京都内のウェッ
ブコンサルタント会社が運営、自民
党の小渕優子議員のいる政党支部
とも取引があった。別の調査では、
90年代後半から福田康夫元首相ら
歴代自民党幹部が代表取締役とし
て名を連ね、一時岸田首相や甘利
明幹事長の名前もあったとされる。
自民党本部はこの会社に17年から
3年間に4千万円を支出したという
。闇は深い。野党は独自で徹底調
査し、選挙期間中でも判明した事実
を公表すべきだろう。4千万円が政
党助成金から流されていたら、公金
が不正に使われていたことになる。
参院本会議で代表質問した立憲の
森ゆうこ議員は「ネット工作をして、
選挙結果を不当にゆがめるような
行為を自民党議員にさせないと約
束していただけるか」と岸田首相
に問いかけた。しかし、首相は「そ
れぞれがルールにしたがって発信
すべきだ」と一般論にとどめる答
弁しかしなかった。
この疑惑は衆院選挙後も尾を引く
のは必至である。特定の相手や陣
営を誹謗・中傷するフェイクニュー
スや投稿は民主主義国家の選挙や
政策を判断する有権者の選択をゆ
がめる。既にEU欧州委員会は「偽
情報で収益を得ることをなめさせな
くてはいけない」として5月、新たな
対策と指針を発表した。
この指針では偽情報を発信した会
社に「責任を取り、協力して対応」
することを迫っており、検索表示の
優先順位を決める計算手順の公
表まで求めている。それだけネット
社会の影の部分が社会に与える
影響を重大視していることの表れ
である。
それに比べ、わが国のネット会社
規制は遅れている。それどころか
、官民の癒着ばかり際立つ。本来
なら新たに発足したデジタル庁の
所管だが、トップのデジタル担当
相だった平井卓也氏や引き継い
だ牧島かれん担当相は業者であ
るNTTと同じ高額接待を二度も
受けていた。二人とも倫理観が
欠如しているとしか思えない。接
待発覚後、平井前担当相は平然
と同席した官僚の処分を発表、自
らについては週刊誌取材が受け
た後で「割り勘で払った」と居直っ
た。牧島担当相は「議員としての
政治活動。意見交換は大事」と開
き直った。
岸田首相は衆院選を「未来選択
選挙」と名付けたが、最低限の倫
理感さえ失った閣僚起用を見せ
つけられると、まったくの虚言とし
か受け取れない。
【2021・10・20】