平野幸夫のブログ -9ページ目

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

「疑わば用うるなかれ、用いては

疑うなかれ」。リーダーの心得を

説いた中国・清代の名著「通俗

編」の言葉である。信頼のおけ

ない人物は初めから登用するな

との戒めだが、岸田文雄首相は

新型コロナウィルス対策の雇用

調整助成金を自身の自民党支

部が受け取っていた大塚敏孝副

環境相の辞任を否定した。首相

と本人共に「国民感情に照らして

理解を得られるものでない」」と不

適当な受給を認めながらも辞任

せずに逃げ切る構えだ。同じ雇

調金を受け取り、辞任に追い込

まれた石原伸晃内閣官房参与の

ケースとどう違うのか、説明がな

い。困窮者を横目に国家財政に

巣くう白アリの如く「もらえるものは

もらう」と卑しい判断しかできない

政治家は早く退場させなければな

らない。

首相は「それぞれの立場、経歴、

影響力を勘案してどう身を処する

かを考えていくべきだ」と本人判

断に任す答弁しかできなかった。

任命責任は首相にあることを自

覚していない。人物評価ができず

登用、その結果不正が分かって

も辞任させられない優柔不断ぶ

りが際立つ。18歳以下への10万

円相当給付でも、「原則現金とク

ーポン」と言っていたのを「現金で

一括で給付することを選択肢の一

つとしてぜひ加えたい」と豹変した

。唐突な給付の変更に追い込まれ

たのは、世論の反発がすぐに読め

なかった政治センスのなさが原因

だ。

風向きが変わったら、ころころスタ

ンスを変えるのは確固たる政治理

念がないからだ。まるで野党に抱き

ついて、「言うことを聞くから、このく

らいで勘弁してくれ」とでもいうような

節操のなさである。「聞く耳がある」

と言うのが取得だけのこんなリー

ダーに国の舵取りを任していいは

ずがない。

自身が率いる派閥「宏池会」はずっ

と党内で「ハト派路線」を標榜してき

たのに、首相は最近「敵基地攻撃」

容認を口にし始めた。党内のタカ派

「安倍派」にすり寄った。一貫して見

えてくるのは、強い相手にはけっし

て刃向かわないという政治姿勢だ。

首相になれば、少しは宏池会の平

和路線を維持するのかと注視した

いるが、その兆しもない。

政府のコロナ対策の予算執行では

他にも「白アリ」のように、予算をむ

さぼる不祥事が多発している。「Go

Toトラベル」の補助金でも、旅行会

社HISの子会社が1万8000万泊

分以上も不正に受給していた。「不

正は許さない」という姿勢に欠けるリ

ーダーの下では、果敢な更迭人事

や真相究明が行なわれない恐れが

あり、悪事がのさばる土壌を生みや

すい。

岸田首相には同じ中国の古典「礼記

」の一節を聞かしたい。


「難に臨んでは、いやしくも免れんと

するなかれ」

正しいと信じた道はどんな困難が待

ち構えていても避けて通ってはなら

ないという意味だ。「聞く耳」ばかりを

強調する首相にはそんな気概は期

待できない。
                 【2021・12・15】

優柔不断、及び腰……。長く政治

記者らから「腰砕け」と異名で呼ば

れている岸田文雄首相がその決

断力のなさから世論の反発を招

いている。18歳以下を対象にした

10万円相当の給付について、衆

院で追及され「原則クーポンで、

地方自治体の実情に応じて現金

での対応を可能にする」と釈明し

た。ワクチンの3回目接種も当初

「8カ月後」を譲らなかったのが、

自治体の反発から「一部6カ月後

」にせざるを得なくなったが、ワク

チンは確保していない。官僚頼り

の政策の不備とリーダーシップの

なさが数々の混乱をもたらしてい

る。

コロナのオミクロン株に対する水

際対策で外国人の入国禁止を打

ち出し、内閣支持率が8%もアッ

プ、60%台に乗ったが、それも一

瞬に終わりそうだ。それは衆院選

で落選した石原伸晃元自民党幹

事長を内閣官房参与を起用した

からだ。首相が「お友達」を救済

する目的だったとしか思えず、ネ

ットで「私物化」「血税を再就職に

使うな」など有権者の抗議のツイ

ッターが5万件近くにのぼってい

るのは当然だろう。官房長官は

「観光立国」のアドバイスをもらう

のが目的と説明するが、今さら

石原元幹事長を登用する必然

性に欠ける。石原元幹事長は比

例復活もできず、もはや石原派

も崩壊状態。安倍晋三元首相と

菅義偉前首相がが退陣して、よ

うやく「身びいき政治」が終止符

を打つと思ったら、トップの「国

政私物化」は何ら変わることは

なかった。

石原元幹事長にはさらなるスキ

ャンダルも発覚した。自身が責

任者である政党支部が、ことも

あろうに国から雇用調整給付金

を60万円受け取っていたのであ

る。申請理由は「経営の悪化」

だったが、コロナで困窮する一

般企業と同列になって給付金を

受け取るなど聞いたことがない。

制度の悪用以外何ものでもなく

、野卑で薄汚い政治家の本性を

見る思いだ。かつて環境相とし

て福島の住民に「最後は金目で

しょ」と見下した発言をした大失

態を思い出す。

今回参与に起用した岸田首相

の任命責任も厳しく問われるべ

きだ。ボロボロと続くスキャンダ

ルに野党はしっかり追及すべき

なのに、立憲の泉健太代表は「

立案型」を気取り、代表質問で

は隠蔽されたままの「モリ・カケ

・サクラ」疑惑に一切触れなかっ

た。手ぬるい質問は与党を喜

ばすだけである。こんな立憲の

変容ぶりに、また多くのリベラ

ル支持者が失望し、離れていく

のは必至だろう。

早くもその隙につけ込むように

維新が国民と一緒になって攻

勢に出ている。国民は衆院憲

法審査会に維新と一緒に与党

側として参加、改憲議論の歯車

を回し始めた。政権の「補完勢

力」として立憲・共産への対抗意

識もむき出しになっている。与

党の目論見が実現しそうで、憲

法審査会の参加会派がふえた

ことに自民の新藤義孝筆頭幹

事は「誠に喜ばしく大歓迎する

」とエールを送っている。

自民、公明、維新、国民で改憲

が発議できる3分の2を確保した

。戦後、これほど大きく国が右傾

化した時はない。中韓敵視ムード

がさらに高揚し、敵基地攻撃など

無謀な防衛政策が推進されるリ

スクも高まってきた。その前触れ

として国民の玉木雄一郎代表は

北京五輪の外交ボイコットを政府

に求めた。維新の馬場伸幸共同

代表も従軍慰安婦問題問題につ

いて、被害者におわびした「河野

談話」の撤回まで首相に要求した

。自民党タカ派も顔負けではない

か。


コロナのオミクロン株の動向に目

を奪われているに、ずっと平和志

向を保ってきた戦後政治が隣国

敵視政策による国威発揚色に色

濃く染まってきた。
              【2021・12・10】

ここぞとばかりに、野党批判がす

ざまじい。「反対、追及ばかり」、

「官僚吊し上げやめろ」「立憲共

産党」……。傷に塩をねじ込むよ

うなヒステリックな声が与党や「御

用メディア」から聞こえてくる。そん

な声に押されてか、立憲の泉健太

代表は「自民党ばかり見て対抗し

、国民に対する説明、発信が弱か

った」と述べ「政策提言型の政党」

に変えると表明した。これでは政

権の思う壺である。長く安倍・菅

政権の腐敗、暴走が続いたから

追及型を強いられたのである。

不正追及をためらう野党になって

しまえば、自滅の道が待っている

ことを忘れてはならない。

衆院選挙中から与党は特に「野

党合同ヒアリング」を取り上げて

批判。野党がかさにかけて霞ヶ

関の官僚を吊し上げているシー

ンばかりに焦点をあて、「弱い者

いじめ」をしていると印象操作し

てきた。しかし、実態は内閣提

出の73法案で立憲が反対した

のは17法案に過ぎなかったので

ある。政権は野党が請求した国

会を長期間開かなかったから、

仕方なく関係省庁の幹部を呼ん

で、経過説明を求めざるを得な

かっただけのことだ。

たまに予算委が開かれても、閣

僚らは質問に答えず、論点をず

らしたり「ご飯論法」の答弁を繰

り返してきたのである。あの「野

党合同ヒアリング」によって、明

らかになったことも多い。何より

政権への忖度発言を重ねた霞

ヶ関官僚はその卑しい姿を何度

も見せたではないか。その一方

で、メディアは「モリトモ・カケ・サ

クラ」などの政権中枢が関わった

不正の解明に自ら動かず、通り

一遍の表層的報道に終始した。

それを棚に上げて、選挙後は野

党の力不足ばかり協調するメデ

ィアの論評が目立つ。特に政治

部記者らは政権交代が起こらず

、胸をなでおろしている様子を隠

さない。今朝の朝日新聞では、安

倍元首相とよく食事を重ねていた

S記者が社会党の衰退を例にひ

き、立憲も同じ道をたどる恐れが

あると強調する「敗北よりもっと深

刻なことがある」と題したコラムを

掲載していた。

その一部を紹介すると、「確かに

、政権の疑惑や失政を指弾する

だけでは、将来への不安が募る

若者ら国民の声はつかめない」

とか「党の転覆」という言葉まで

使って与党による野党へのイメ

ージダウン戦略に手を貸してい

た。政権監視をまるで放棄した

ようなS記者にはブーメランのよ

うに「もっと深刻なこと」という言

葉が自身に戻ってくるはずだ。

日本の政治ジャーナリズムの

劣化を示す典型的論評でもあ

った。

かつて日本の報道の自由を批

判的に論じた米国テンプル大

学のジェフ・キングストン教授は

官邸記者クラブの政治記者ら特

権的なアクセスをできる立場に

ついて「政権を怒らせれば当局

へのアクセスを失うと過度に恐

れ、自己検閲に陥る」と指摘。そ

のうえで「メディアが口輪をはめ

られてしまえば、ほえられなくな

る。国民の知る権利が脅かされ

れば、健全な民主主義社会の基

盤は揺らぐ」と警鐘を鳴らした。

野党が政府の不正追及をためら

ったり、メディアが政府の「愛玩犬

」化してしまえば、もう政権与党が

専制国家同然に振る舞うことにな

る。憲法に定めた条項に反して国

会を開かないのは、その証しだ。

バイデン米国大統領は9日に開催

する「民主主義サミット」に日本を

招待したが、はたして日本に参加

資格があるのか、自問してもらい

たい。
              【2021・12・5】

立憲民主党の新代表に泉健太氏が

決まった。代表選期間中、党内外か

ら新生への道が提言された。この国

で民主主義を発展させるために、野

党第一党の勢力拡大が最重要であ

るが、そのためには上から目線で

数々注文をつける「連合」からの脱

却を急ぐべきではないか。雇用者全

体に占める労組組合員の割合はわ

ずか17%に過ぎない。非正規の雇用

者の賃金と待遇の改善に尽くさず、

与党協調路線を強いる連合は、過

酷な雇用実態に向き合わず、対峙

する相手を見失った特権集団化し

ている。そんな組織に依存していては

格差是正などできるはずもない。

「連合」の芳野友子会長は代表選前

日にテレビ番組で「立憲と国民の合

流を求めたい」と話し、来年夏の参

院選で、共産を入れた野党共闘に

否定的な見解を述べた。衆院選で

も立・共の選挙協力を非難して足を

引っ張ってきた。事実上自公政権に

手を貸す言動だった。「一体、何様

の立場で言うのか」と問いかけたく

なるほどだった。路線が気に入らな

かったら、立憲を支持しなかった良

かったはずだ。自公政権を相手に

雇用者の権利拡大を求めるのでは

なく、与党の数々の暴走、腐敗に口

をつぐんで、立憲執行部が決めた

路線に横槍を入れたのは、越権行

為としか言い様がない。

露骨に路線介入発言を繰り返すの

は、何か格別の意図があるとしか思

えない。さすがに、立憲内部から「芳

野会長は自公政権が野党に送り込

んだ『トロイの木馬』ではないか」など

と批判が強まっているという。

芳野発言を分析すると、あながちそ

の批判が的外れとは思えなくなる。

立憲・国民の合流など小池百合子

都知事の希望の党によって分断さ

れ、野党がズタズタにされた経緯を

みれば、まるで労使協調によって

政権の補完勢力になる目論見を芳

野会長が引き継いでいるかのよう

だ。

そもそも初の女性会長として、もて

はやされている芳野会長は何者か

。今朝の毎日新聞「ひと欄」がその

人物像を浮かび上がらせている。

私立女子校のダンス部で活躍した

後、家庭用品の「JUKI]に18歳で

就職、仕事は結婚までの腰掛け程

度としか考えなかったことを打ち明

けている。労組の書記になったのも

「職場異動の感覚」だったといい、

雇用者の権利拡大など労組幹部に

なる信条や理念はまったく語られて

いない。その経歴からも意識の低さ

が際立ち、「お嬢様会長」の本性が

見えた。

衆院選では小選挙区で立共協力が

一定の成果をあげたことも評価せず

、「国民と合流せよ」と今後も求め続

けるという。「正社員クラブ」といわれ

、ぬくぬくと企業協調路線を歩む「連

合」が、この国でより顕著になってい

る雇用者の賃金格差と権利擁護に

真摯に取り組むと思えない。

立憲の泉新代表は対立する相手を

見失い、既得権益維持に汲々とする

連合のくびきから決別しなければ、そ

の支持は広がらないのではないか。

平均賃金が先進国中最下位に転落

、韓国にも抜かれてしまったこの国の

現状を少しでも改善するには、労使

協調ではなく、対決路線を保たなけ

れば、勝ち取るべきものは得られな

い。自公政権にすり寄る国民民主の

宥和路線を支持する「連合」一線を画

す時である。その気概がなければ、

泉新代表は「どこまで落ち続ける国」

の救世主にはなれない。


                 【2021・11・30】

まるで政権与党による野党攻撃の

先兵のようだ。維新副代表の吉村

洋文・大阪府知事による「立憲攻

撃」が止まらない。「何でも反対、

批判から脱却してもらいたい」と繰

り返し発言し、衆院選では「文句だ

けの立憲民主党」と大文字で刷り

込んだポスターまで掲げた。自ら「

自民党が本当にびびるような野党

が必要」言いながら、選挙後も政

権批判は一切聞こえてこない。「維

新=政権補完政党」ゆえに、それ

ができないからだ。ラジオの報道

番組で2度ほど吉村氏とトークした

ことがあるが、人の話を聞こうとせ

ず、何かにとりつかれたような暗い

目付きがずっと気になった。最近

の勢いだけの物言いは、「ヤンキ

ー政党」の幹部にふさわしく、品性

の欠片もない。

メディアが維新の手柄話のように

伝える「文書通信交通滞在費」問

題は、法改正で日割り計算にする

安易な決着になりそうだ。維新の

新人議員がSNSで声を上げたの

がきっかけで、吉村副代表もすぐ

に「領収書不要で非課税はおかし

い」と何も知らなかったようにツイ

ッター投稿した。

ところが、2014年から15年まで

衆院議員だった吉村副代表は交

通費を受け取り、1日だけの在職

で辞めた10月分を満額で受け取

っていたことが発覚、ブーメランと

化して失態が判明してしまった。

発覚後、日割りで返還したいと批

判をかわそうとしたのは、姑息と

しか言いようがない。維新は未使

用の「政党交付金」をため込んで

15億円も保有していた。ムダを省

き、身を切る改革を言うなら、この

15億円も国庫に戻したらどうか。

そんな気もないのに、吉村副代表

が「国会の常識、おかしいよ」とい

うのは止めにしてもらいたい。

あまった政党交付金は本来、国庫

に返納するのが決まりだが、議員

が作った基金に移せば、返納を免

れる。政党交付金を受け取らない

共産党の機関誌・赤旗が維新だけ

でなく自民党幹部がこの裏技を使

って蓄財していたことをスクープし

た。岸田文雄首相2638万円、麻

生太郎副総裁1930万円、萩生田

光一経産相1259万円などあきれ

る実態が判明した。どれも国民の

血税が政権与党幹部のポケットマ

ネーになっていたのである。

来月早々の臨時国会で追及すべ

き醜聞ではないか。維新以外の立

憲、国民など野党議員も同様の蓄

財をしていないか内部調査を急が

なければならない。100万円の文

書交通費などより、こちらの方が

ずっと深刻である。

維新が「立憲共産党」と言って攻撃

する自民党とスクラムを組む「立憲

バッシング」を止めないのは、参院

選での立憲・共産路線維持が脅威

だからだ。衆院選の小選挙区で立・

共支援候補が成果を挙げたのは

疑いようがない。立憲の代表選に立

った4人は毅然として、維新の批判

をかわせば良い。コロナの感染拡

大時に多くの自宅療養死を招いた

吉村府政の大失態を思い起こせば

他の野党攻撃などできないはずだ。



維新は「ヤンキー政党」と密かに思

っている。精神科医の斉藤環さんは

「仲間と気合いで何事も乗り越えよう

という根拠もない思い。そして他より

目立ちたいという承認欲」にヤンキ

ー性を見いだしている。「身を切る改

革」だけで何事も解決できるという思

考停止はこれに当てはまる。それで

いて強い者には極端に従順だ。こん

な政党は危うくて仕方ない。
           【2021・11・25】

衆院選から1カ月もたたないうちに

維新が自民にすり寄り始めた。馬

場伸幸幹事長が茂木敏充自民幹

事長と会い、自民の改憲4項目の

うち「緊急事態条項の新設」を目

指すことで合意した。維新の新人

がたった1日で100万円の「文書

通信滞在費」が支給されることを

問題視、あっという間に日割りに

することで各党合意したが、小手

先の見直しに過ぎない。その背後

で着々と憲法改悪の策略が進んで

いることを見過ごしてはならない。

立憲の代表選も、野党のリーダー

として誰がこの動きを止める覚悟

と知略があるのかという尺度で凝

視し続けたい。

馬場幹事長はこれまで自民党の

最右翼議員も顔負けの国家主義

的言動を繰り返してきた。元々自

民党タカ派の故中山太郎参院議

員の秘書をしていただけあって、

改憲が信条で、集団的自衛権行

使、敵基地攻撃能力保有、核武

装検討、原発再稼働賛成……な

どを口にしてきた。長く橋下徹氏

の側近として活動、最近までその

政界復帰を待望する発言を繰り

返している人物でもある。

議席を増やしたした維新の国会

活動の中心人物のこんな経歴を

みれば、自民の改憲路線に進ん

で応じるのは何ら不思議ではない

が、今回維新に投票した有権者

はどれだけその本性を知っていた

疑問である。こんなに露骨になっ

た改憲の動きにあきれると同時に

、先日亡くなった瀬戸内寂聴さん

の言葉を思い出す。

「私は戦争が身にしみていますか

ら、うかつに憲法9条を変えたら

どうなるのかと危惧します。戦後

60年、日本が平和でこられたのは

、9条のおかげですよ。誰一人とし

て戦争で死ななかったのですから

」(2007年6月、毎日新聞インタビ

ュー)

ずっと平和国家として歩んできた

この国を戦争する国に変えてはな

らないという車椅子姿からの発言

は2015年9月の東京・代々木公

園での安保法制反対の大集会で

も直接聞いた。それはまさに暴走

を始めた安倍政権への叫びのよ

うだった。

米国の独立宣言を起草した第3代

大統領のジェファーソンは憲法に

ついて、暴走しかねない為政者を

こんな言葉で戒めた。

「自由な政治は、信頼ではなく猜疑

に基づいて建設される。我々が権

力を託さなければならない人々を

制約的な憲法によって拘束するの

は、信頼ではなく猜疑に由来する。

(略)憲法の鎖によって、非行を行

わないように拘束する必要がある」

政権与党とその補完勢力になった

維新による今回の改憲の動きは、

まさに自分たち自身でこの鎖を打

ち破ろうとする非行にあたる。「緊

急事態条項の創設」は改憲4項目

のうち「自衛隊明記」への地ならし

にすぎず、最終的に憲法9条の骨

抜きが狙いだ。そもそも緊急事態

条項は災害対策基本法や感染症

予防・医療法を改定すれば済むだ

け、と多くの専門家が語っている。

来夏の参院選で自公・維・国民は

一体となって改憲の是非を争点に

掲げてくる恐れが強まっている。立

憲は先頭に立ってこれを止めるべ

きの責務を託されている。しかし、

19日の代表候補4人の記者会見で

の言葉には、改憲への危機感が決

定的に欠けていた。
                【2021・11・20】

衆院選で敗れた立憲民主党の代表

選がいつあるのか分からない。選挙

から10日も過ぎても、誰が立候補す

るのか不明のままで、第二次岸田

内閣が10日発足する。「枝野執行部

」は選挙前からずっと「ぐずぐず感」

を色濃く放っていた。選挙前から立

憲の支持率が伸び悩んでいたのに

共産票頼みの野党1本化だけで風

頼みの選挙選に突き進んだあげく

に惨敗した。敗因分析は代表選立

候補者らが侃々諤々の議論を戦

わせばいい。このまま立憲が衰退

すれば、自民党政権が維新と国民

を引き入れて憲法改悪が容易に

実現してしまう。そんな危機感が

決定的に足りない。

選挙後、立憲党内では共産との共

闘路線の見直しを求める声が目立

ち始めた。執行部メンバーの泉健

太政調会長は「進め方や枠組みを

見直すべきだ」と明言、玄葉光一郎

元外相は「今の立憲の立ち位置は

幅が狭く、政権行交代は厳しい。共

産との距離を見直すべきだ」と言い

始めた。旧国民出身の泉政調会長

はまるで「また国民と手を組みたい

」と言っているようでもある。

もし、共産と離れ国民・維新と手を組

めば、改憲勢力に組み込まれ、自民

中心の大政翼賛体制が確立してしま

う。それは戦前の専制国家に戻るこ

とにほかならない。中国がひたすら強

権国家として勢力を伸ばす中、国民

感情は安易に対中敵視政策に流れ

るだろう。その潮流を止め、対外強行

路線を止める責務を立憲が担ってい

るはずである。

冷徹に分析すれば、共産との共闘が

なかった場合、どれだけの立憲議員が

国会に戻ってこられただろうか。当選

者の獲得票から前々回の共産票を差

し引いたら、おそらく当選者はもっと少

なく、目も当てられない惨状を招いてい

ただろう。そして甘利明、石原伸晃ら大

物の自民候補は野党の分裂で当選し

ていただろう。立・共一本化は確実に

自民批判票をごっそり獲得したことを

忘れてはならないのではないか。

こんな茫然自失状態の立憲執行部を

見かねてか中堅・若手ら有志34人が

代表選のネット投票導入を福山哲郎

幹事長に申し入れた。地方議員やサ

ポーターを含めた「フルスペック」の選

挙を求める提言である。「党勢立て直

しのチャンスが代表選。本気で取り組

まないと再建できない」(落合貴之氏)

という声の通りだ。保守路線指向から

リベラル路線まで、公開討論会で徹底

的に討議して、その場面はネット発信

もできる。

12月初めには臨時国会が始まり、補

正予算案審議に入る。その時刷新し

た執行部のメンバーが新風を吹かさ

なければ、ずるずると国民・維新連合

の攻撃にさらされ、ますます存在感を

失い続けるのではないか。

代表選は、一定の成果をあげた立・共

路線を前提にしたフレッシュな顔ぶれ

を望みたい。辻元清美副代表の落選を

惜しむ声が上がるが、国会論戦で舌鋒

鋭く安倍・菅政権を追及した森裕子、西

村智奈美ら女性各氏も名乗りをあげた

らいい。既に出馬表明をしている小川淳

也国対副委員長らも加えて競えば、刷

新イメージは高まるのではないか。路線

さえ誤らなければ、人気投票でもいい。

一日でも早く、新たな代表の下に結集す

べきだろう。
                   【2021・11・9】


  (都合で次回は20日に掲載します)

絶叫型の演説が有権者に嫌がられ

ていたのに、それに気づかず惨敗し

た枝野幸男立憲代表が辞任表明に

追い込まれた。一方で、コロナ対策

であたかも成果を上げたように幻惑

したした維新が勢力を伸ばしてしま

った。さっそく松井一郎代表が改憲

手続きの開始をアピールし始めた。

維新は選挙期間中、与党でもなく野

党でもない「ゆ党」として集票活動を

展開したが、その本性はやはり「自

民補完勢力」だった。立憲は早く体

制を刷新して、来夏の参院選に勝

利しなければ、いよいよ憲法改悪

が現実味を帯びてくる。

選挙後、「傷口に塩をねじ込む」よう

な異様な立・共共闘批判報道が目立

つ。特に、読売・産経の政治面は勝

ち誇ったように「立・共路線の失敗」

を強調するような論調が際立つ。し

かし、全小選挙区の70%にあたる2

17選挙区で野党候補が1本化した

結果、62選挙区で野党が勝利したの

である。4党の共闘態勢は一定の成

果を上げたとみるべきだろう。甘利

明幹事長など大物の与党候補の落

選も立・共共闘体制がもたらした。

立憲の敗因は比例区の票を逃した

ことが第一に挙げられる。小選挙区

では反自民の受け皿は作れたが、

党自体の魅力に乏しかった。枝野

代表は選挙前から共闘体制作りに

もずっと消極姿勢で、優柔不断さが

ばかり目立っていた。選挙期間中

は、絶叫型の演説を繰り返し、有権

者の共感を得る工夫や寄り添う姿

勢に欠けた。そんな独断的な姿に

は、特に若い有権者から顔を背か

れ、反発さえ呼んでしまった。途中

で枝野代表の側近や執行部が諫

めるべきだったのに、それもなく突

き進んでしまった。

立憲を結党させたという自負が変化

すべき障害になっていた。もう限界で

、辞任は必然だった。代表辞任だけ

でなく、何の手も打てなかった執行部

も刷新が求められる。ただ、共闘路

線の見直しについては慎重な検証が

必要だろう。一定の成果を挙げた立

・共共闘をやめるのは自公・維新の

思う壺に落ち込むことになるだろう。

立憲が逃した票を取った維新は早く

も、松井代表らが慢心したコメントを

発した。2日の定例会見で「来年の

参院選までに憲法改正原案をまとめ

て、改正を発議し国民投票を参院選

の投票日と同じ日に実施すべき」と

述べた。今回の選挙で改憲派の当

選者は76%を超えた(朝日新聞・東

大調査)背景があるからだ。少し、及

び腰の公明に代わって自民に擦り寄

り、与党入りしたい思惑も垣間見える

発言だ。

吉村洋文副代表は選挙後も立憲攻

撃をエスカレートさせている。投票日

翌日の1日、読売テレビの番組で「な

んでもスキャンダル追及したり、官僚

を吊し上げたりするとか、ああいった

パフォーマンスは僕は大嫌いですか

ら。なんでも反対する気はないです」

と発言したた。「モリカケ・サクラ」など

一連の「安倍・菅スキャンダル」の解

明を封印して恩を売り、自公政権に

組みしたしたい姿勢を鮮明にしたの

である。疑惑追及を放棄した吉村副

代表の唾棄したくなるような性根が見

えた。

今後、野党が対峙すべきは、自公政

権だけでなく、補完勢力として追従す

る維新に対しても真正面からから厳

しく対立していかなければならない。

その意味では、次期立憲代表選びに

ついては、自公や維新にやや宥和的

な姿勢を見せて共産との共闘見直し

を表明した泉健太政調会長は不適だ

ろう。直情的な言動が弱みにもなるが

、理念や原則を重んじ、代表選にいち

早く名乗りをあげた小川淳也議員の

方がより多くの党員の支持を集めそ

うだ。何より新しい顔で刷新するとい

うイメージ戦略も立てやすい。維新と

一線を画する姿勢を明快にすべきだ

ろう。
                  【2021・11・4】

「この国民にしてこの政府あり」。

19世紀の英国の歴史家、トーマス

・カーライルの警句だが、今ほど

この言葉の意味を考える時はな

い。あすの衆院選の投票率がど

うなるか気がかりである。政治学

者らは「前回並みの50%台前半

ではないか」と見積もるが、そう

なれば、また「1強多弱」の国会

勢力分布は変わらなくなる可能

性が高まる。9年間もこの国を壊

し続けた「安倍・菅政権」とそれを

継承した岸田政権を有権者が免

罪符を与えたことになる。そうな

れば、一段と民主主義国家の屋

台骨が揺らぎ、専制国家の仲間

入りすることになるだろう。それを

防ぐために自分の周囲の人々の

一人でも多く「投票所に行ったか

」と声をかけたい。

言うまでもなく、代議制の民主主

義国家では、投票は直接国政に

個人が権利行使ができる唯一の

機会である。それをせず、投票を

放棄すれば選挙後、どんなに自

分の意にそわぬ政治が行われて

も、意義を口にする資格はない。

前回衆院選の投票率は53・68%

と低調だった。前々回は52・66%

と小選挙区制導入以来最低だっ

た。このためいずれも全有権者

に対するする自民党の得票率は

たった約25%になっていた。その

結果が一強支配をもたらしてしま

ったのである。4人に1人しか支

持していないのに国会では絶対

多数の議席を保てるという不条

理がまかり通る仕組みだ。

9年間の自公政権で顕著になっ

たのは、国政の私物化である。「

モリ・カケ・サクラ」疑惑を引きお

こした安倍元首相は118回も国

会でウソを突き続けた。安保法

制は日本を米国と一緒に戦争す

る国に変えた。岸田首相は当時

外相として、野党の追及に対し安

倍元首相の盾となった。そこには

平和国家を志向した宏池会の領

袖としての振る舞いは欠片も見せ

なかった。6年前のことになるが、

もう既にこの時から現在の「2A(

安倍・麻生氏)支配」の素地を自

ら作っていたことになる。

総裁選の公約をほとんど翻し、安

倍首相が支援した高市早苗政調

会長の作った公約をすべて通して

しまった。岸田政権とは名ばかり

で実質「第三次安倍政権」と言え

よう。それを仕切るのが高市政調

会長で、安倍首相は将来の「高市

首相」を目論見、キングメーカー気

取りで全国を遊説しまくっている。

選挙後のどす黒い思惑や自公政

権の罪状を取材することもなく、通

り一遍の選挙報道を流しているの

がNHKと民放各局である。今回は

極端に選挙番組が減った。ワイドシ

ョーや情報番組は自民党総裁選に

比べ、4割近くも少ない。昨日の朝

日新聞では、ある民放キー局のプ

ロデューサーが「世の中の問題を

提示したくても、政権批判のように

捉えられてしまう。手足が縛られて

いる感じがあり、やりずらい」と告

白していた。

放送の使命である権力監視機能

を自ら放棄した自発的隷属である

。以前の衆院選で、TBSのニュー

ス番組に登場した安倍元首相が

番組中、政権批判をした市民の

声を流したことに対し「おかしい」

と声を高めて局に抗議した。これ

を受けて当時の高市総務相が放

送法4条による免許停止の可能

性まで表明した。国会では「表現

の自由への介入」「知る権利の

侵害」などと野党が追及する場面

があった。

これ以来、極端に選挙報道が減

ってしまった。投票率の低さは、

政権の脅しにメディアが屈してし

まった自主規制が大きく影響し

ている。今回の衆院選でも投票

日直前になっても、選挙情報は

時間、質とも際立って低い。これ

では政権与党の思う壺だろう。

投票率は5%違えば、状況は一

変する。2009年の衆院選は当

時の麻生首相の失政と暴言もあ

って投票率は69・28%まではね

あがり、政権交代までもたらした

。その麻生元首相は今回も地球

温暖化を賛辞、農家を冒涜する

演説をした。いつまでこんな野卑

な政治家の跋扈を許すのか。こ

の国を貶め続けている輩を一斉

退場させなければ、またカーライ

ルの言葉を口にしたくなってしま

う。
         【2021・10・30】

まさかの5万票の大差だった。当

初楽勝すると見られていた参院静

岡選挙区の補選で自民候補が野

党候補に敗北した。2度も応援に

入った岸田文雄首相が危機感を

募らせている姿が目に浮かぶ。

国会の論戦から逃げていながら

「未来選択選挙」を訴える矛盾を

有権者は見透かしていた。新聞

各社の衆院議席予想によれば、

自民党の過半数維持をめぐる攻

防が焦点になっているが、今回の

与党敗北が導火線になって、一挙

に情勢が変わりそうだ。無党派層

が動けば、自民単独過半数割れ

もあり得るのではないか。

有権者から「安倍・菅政権」の看板

の書き換えに過ぎないと審判を下

されたも同然の補選の結果である

。後手後手の連続だったコロナ対

応、「モリトモ・カケ・サクラ」スキャ

ンダルに向き合わず、河井克行元

法相への1億5千万円支出……。

枚挙のいとまがないほど残された

負の遺産の精算も終わっていない

。加えて大臣室で二度も賄賂をも

らって閣僚を辞任した甘利明氏を

党の幹事長に抜擢した人事。「聞

く耳を持っている」と言いながら、自

分に不都合なことに知らぬ顔をす

る首相の傲慢さへの有権者の最初

のしっぺ返しに見える。

衆院選への影響を心配してか今朝

、岸田首相は「県民の皆さんの判断

を厳粛に受け止めたい」と殊勝なコ

メントを発した。しかし、有権者の怒

りが簡単に収る気配はない。なぜな

ら、今回の補選は無党派層の野党

候補への投票が顕著だったとみられ

るからだ。朝日・共同の投票所での

出口調査によると、いずれも無党派

層の7割が野党候補に投票していた

ことが判明している。政権批判票が

なだれを打つように動いたことが分

かる。

衆院選で静岡から立候補予定の塩

谷立・元文科相は演説で「この勝敗

が岸田政権を左右する」と訴えてい

たという。それほど、与党あげての

必勝体制で臨んでいたのである。5

万票の大差はその思惑がもろくも

崩れ去ったことを示す。

ベテラン政治記者らから陰で長く「腰

砕け」とニックネームで呼ばれていた

岸田首相は総裁選で公約に挙げた

令和版所得倍増政策、金融所得課

税強化、健康管理庁新設などが党

の公約に盛り込めなかったことで、

またその本性を露わにした。

それでもまだ「旗は一切降ろしていま

せん」と言い張っている。さらに会見

では「私が提示してきた政策に一点

のブレも後退もない」と言い放った。

有権者の目は節穴だらけでだませ

ると信じ込んでいるのか。思い上が

った性根次々とが隠せなくなってい

る。

遠藤利明・自民選対委員長は衆院

選公示後、苦戦が伝えられ始めた

21日「急告 情勢緊迫」と題した通

達を各候補に送った。引き締めを

図る目的だが、静岡の補選結果に

よってさらなる情勢分析の見直しが

必至だろう。

与野党の接戦が伝えられる63選挙

区で、野党共闘の候補は一躍勇気

付けられそうだ。自民の単独過半数

は233議席だが、無党派層が静岡

の結果を見て「自分が動けば傲慢な

政治が変えられる」として投票に動

けば、一挙に野党が有利な終盤戦

になるだろう。

安倍元首相らが立憲と共産の共闘

を批判して「共産の力を借りて立憲

が政権を握れば、日米同盟は、そ

の瞬間に終わりを迎えてしまう」と連

呼している。しかし、そんな危惧が米

国の外交責任者から発せられたこ

とは一切ない。まさに虚言である。自

らの失政への反省もなく、デマを叫

び続ける姿はまたさらなる有権者の

反発を招きそうだ。
              【2021・10・25】