平野幸夫のブログ -12ページ目

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

人の不幸につけ込んで、利を貪る

ハイエナの如き不祥事が経済産

業省で発覚した。コロナ禍で売り

上げが減った中小企業の関係者

を装った28歳のキャリア官僚二

人が国の家賃支援給付金をだま

し取った事件を生んだ腐敗の温

床は何か。「バレなければ何もし

ても、罪を問われることはない」。

「モリカケ・サクラ」の政権スキャ

ンダルは、そんな思い上がりを

霞ヶ関全体に浸透させてしまった

。その後菅政権でも総務省接待

疑惑が相次ぎ、もう「公僕」という

言葉が死語になったとさえ思わ

せる。国家運営の中枢であるべ

き官僚がシロアリのように屋台骨

を蝕んでいる。

公文書という民主主義の根幹を改

ざんという行為で損壊させた森友事

件で、ようやく安倍晋三前首相夫

妻が関わった一端を明らかにする

「赤木ファイル」が開示された。まだ

全容解明への第一歩ではあるが、

佐川宣寿理財局長が改ざんを直

接指示していたことが裏付けられ

た。しかし、なぜ指示したのか、隠

蔽は誰の了解を得たのか、依然不

明のままだ。改ざんを忖度させた

張本人の安部前首相と麻生太郎

財務相は「決着済み」と逃げ回る。

加計学園の獣医学部認可を交渉

した首相補佐官(経産省から出向)

は国会で「記憶にない」と追及をか

わし続けたあげく、民間に天下った

。東北新社やNTT幹部らと高額接

待を受け続けた総務官僚は甘い処

分を受けただけで、武田良太総務

相は居直ったままだ。鶏卵汚職の

農水省では、白昼堂々と大臣室で

賄賂の授受が判明した。それでも

当の農水相は逮捕されず、在宅起

訴という中途半端な捜査に終わった。

霞ヶ関全体から腐臭が漂ってくる。

給付金詐取した若手官僚が登用

され、手口を思いついたのは、省

益ばかりを優先し政治家の言い

なりになって不正に甘い雰囲気が

全体に横溢しているからだろう。

今回の手口はあまりに大胆だ。逮

捕された二人のキャリアは事前に

ペーパーカンパニーまで設立、実

態のない事務所三カ所をでっち上

げ、月に200万円もの家賃給付

金をだまし取った。自宅と親族の

自宅や実家が書かれていたとい

い、少しチェックするだけで詐取行

為が分かるはずだったのに、申請

通り支払われたという。所管官庁

のキャリアの立場として血税をだ

まし取るという大胆極まりない発想

に言葉が出ない。国家機関の柱石

がガラガラと崩れ落ちるような感覚

に陥ってしまう。

悪用された今回の給付金は今春

までに9千億円が交付された。こ

れまで11の事件が摘発され、中央

官庁では初めての摘発だったが、

ほかにもあるのでは推察したくなる

。詐取に走った官僚の一人は月の

家賃が50万円の高級タワーマンシ

ョンに住み、外車二台を乗り回して

いたという。優秀であるべき官僚ら

がいつから道を踏み外し、人生を

台無しにしてしまうような行為に走

ったのだろう。詳細な供述を知り

たくなる。

それぞれ立場は違うが、末路は哀

れではないか。佐川元局長は末代

まで汚名を残し、今は家からも出ら

れない日々という。今回の若手官

僚も一生、その汚名を背負わなけ

ればならない。青雲の志に燃えた

時ははたしてあったのか。いつの

間にか物欲や地位ばかりを追い

求めていたのだろう。志のないま

ま官僚になったのか。私利ばかり

を追い求める生き方の空しさを説

いた中国の思想家、老子の言葉

が重く響く。

「富貴にして驕れば、自らその咎

(とが)を遺す」


おごりたかぶると、おのずととが

められねばならないという悔いを

残すという意味だ。前・現首相に

もかみしめてもらいたい。欲望の

高まりを諭すこんな警句もある。

「多く蔵すれば、必ず厚く失う」

       【2021・6・28】


「観客を入れた時のことを想定した提言

をいただいた。中止は提言になかった」

。こう弁明した橋本聖子五輪組織委会

長は、腰砕けになった尾身茂政府分科

会会長の提言を盾にとって有観客の準

備に入った。提言が無観客を推奨して

いることに「知らぬ顔」を決め込んだ。5

者協議で決めた「上限1万人」とも整合

性がない。「何が何でも開催を強行突

破」させる策動が際立つ。おまけに開

会式では、スポンサー、IOC関係者を

「観客でない」と言い出した。その数7

000人以上。会場では酒も提供する

という。こんな「特権ラッュ」を見るだけ

でも「誰のための五輪か」が見えてく

る。

菅義偉意向に沿って無理やり「上限1

万人」にした観客上限がさらに上乗せ

され有名無実化されようとしている。政

府寄りの一部報道によると、開会式の

観客数はチケット販売分の9300人に

加え、スポンサーなど大会関係者1万

5000人とIOC、貴賓客7300人を合

わせると2万7100人の上るという。

結局、批判が高まり断念に追い込まれ

たが、VIP席での高価な酒類の提供や

五輪会場での酒販売を予定していた。

命よりスポンサーのビジネスを優先、

「特権集団化」したIOCに言いなりに

なった日本政府の無様さを改めてさ

らけ出した。

パンデミック最中の有観客開催を決め

た政府の判断は海外メディアから一斉

に指弾されている。IOCの最大資金源

になる放映権料を払う米国NBCでさえ

は「専門家からの批判に直面する中で

有観客の方向にむかっている」と批判

的に伝えた。さらに「日本政府がさらな

る感染拡大を防ぐことができるか疑問

視されている」と報じた。またUSAトゥ

ーディは大会コストが当初の1兆700

0億円から2倍以上になっていることを

伝え、財政的問題を真正面から指摘

している。

政府寄りのプロパガンダ化が顕著な国

内メディアでは表現できない「有観客に

よる強行突破」という率直な論評が開

催の内実を言い当てている。


ほかにも至るところ矛盾だらけの基準

のオンパレードである。飲食店には「飲

酒はふたり以内で7時まで」としながら、

五輪会場の終了時刻は午前零時近く

になる種目が多く、人流は深夜までお

さまらない。観戦客らに「直行直帰」を

呼びかけても強制力はなく、守られる

保障は何もない。


スポーツ誌出身の小林伸也氏は先日

のモーニングショーで「プロ野球は感

染者1万人でも感染者は出なかった」

と有観客開催を支持していたが、まっ

たく根拠のない意見で視聴者を惑わ

せていた。そう言えるどんなデータが

あるのか。「根拠なき楽観」が横溢し

ている。

新型コロナウィルス変異株の怖さを

侮ってはならない。4月下旬に1日2

千人の感染者数に減っていた英国

では今月17日には1万人を突破し

た。99%がインド型の変異株という。

若者にワクチン接種が進んでいない

ことも起因しているという。日本でも

これから想像以上の感染者数再上

昇を考慮すべきではないのか。


五輪組織委が公表した「プレーブッ

ク(規則集)」について米国イリノイ

大シカゴ校のリサ・ブロッソウ氏と

米マウントサイナイ医科大のアニ

ー・スパロー助教授は「五輪を安全

に開催する準備が整っていない」と

米政治専門紙で警告した。その中

に身が震え上がるような記述があ

った。

「空気中に漂う『エアロゾル』による

感染が認識されていないことに加

え変異株の影響も考慮されていな

い。……五輪が世界規模のメガ拡

散イベントになるかもしれない」

海外の英智の警鐘に耳を傾けた

い五輪1カ月前である。

    【2021・6・23】

 


燃え盛る火事場に突っ込むかのよ

うな無謀な政治判断である。菅義

偉首相は20日に新型コロナウイル

ス対策の緊急事態宣言を解除する

と表明した。解除の指標になるステ

ージ4(感染爆発)のまま、五輪有

観客開催にこだわる首相は「勝負

した」と側近に語ったという。そこに

は科学的根拠は何もなく、国民の

命と安全を一段と危険にさらし続け

る独善しか見えない。先の戦争末

期、悲惨な事態に目を向けず、国

民をさらなる危急の事態に向かわ

せた軍部の指導部の姿と酷似する


20日に宣言が解除されると、人々

の気が緩み、間違いなく人流が増

え始める。東京ではインド株の猛

威の予兆が見え始め、どれだけ既

存株に取って代わるかがリバウン

ドを防ぐ最大指標になるという。

7月にかけ行事は目白押しで、東

京では都議選も告示され、夏休み

に重なる五輪開催によって拍車が

かかる。そこで、最も信頼すべき科

学者の試算に目を向けたい。各メデ

ィアも一斉に報道しているで、菅首

相ら政府幹部もこのデータを知って

いるはずである。

この試算は衝撃的であるがゆえに

無視したのか。東京大の仲田泰祐

教授の推計によれば、インド株が7

月末に4割、8月末には8割を占め

る。9月の第3週には東京都の一日

の新規感染者数は1606人を超え

るとされる。また京都大の西浦博教

授や国立感染研の試算では宣言解

除後、人の流れが15%増え、五輪開

催でさらに10%増になるという。この

結果、新規感染者数は1日300人増

え、累計で1万人を超えるという。五

輪期間中の都内はまるで燃えさかる

火事場になったような危うさを感じる。
有観客を判断した菅首相は会場の安

全にどれだけ責任を持てるのか。仮

に選手や観客にから感染者が出れ

ば、その時点で開催中止の判断を

迫られるはずだ。観客らのリスクを

過小にみて「勝負に出た」と言った

首相は、五輪期間中の感染爆発

という「負け戦」の責任をとって、総

辞職しなければならないのではない

か。

野党の国会延期要求を拒否、五輪開

催の成果を掲げてて、9月に解散をす

る腹づもりだろうが、そんな目論見は

コロナの猛威と恐怖をを軽んじるから

出るのだろう。

首相の頼りはワクチン接種の拡大だ

が、9日の党首討論では、「1日100

万回になった」と虚偽説明した。しかし

、実際に100万回に達するのは今週

末で、10日以上もサバを読んでいた

ことになる。気持ちだけが先走った表

れだろうが、国民注視の数字を確認も

せず口にしたのは指導者としての適

格性を強く疑わせる。

自民党は緊急事態宣言下の深夜、東

京・銀座のクラブで遊んでいたことが

発覚、離党した松本純議員の復党を

検討しているという。国会を閉じると、

野党のチェックも機能せず、もうやり

たい放題にではないか。朝日の川柳

欄に昨朝こんな句が載って、思わず

うなずいてしまった。

「国会が嫌いな議員選んでいた」

    (東京都 尾根沢利男)

国家危急の今こそ、与野党を超えて

知恵を出し合って議論をすべきなの

に、それを閉ざして仲間うちだけで決

めてしまうのは議会制民主主義の精

神に反する。ほかにも財務省の文書

改ざん事件でも「赤木ファイル」も国

会開会中出さなかった。「臭いもの

に蓋」の体質は安倍政権以来、ずっ

と続いている。

今年初め亡くなった作家の半藤一利

氏は先の戦争の敗因の一つに「国家

にダメ出しする人間がいなくなった」こ

とを挙げた。首相が口癖の「コロナと

の戦い」に例えると、「菅首相にNO

といえる人間がいない」ことが悲劇を

もたらしそうだ。
          【2021・6・19】

故郷・讃岐に普段あまり口にした

くない言葉がある。「へらこい」

。自分の利益だけを考え、他人

の立場を配慮しない恥ずかしい

振る舞いを指す。平井卓也IT相

がそんな「へらこい奴」を地でい

くような言葉を発していた。五輪

事業の請負先になっていたNE

Cに「脅しておいた方がいい」「徹

底的に干す」などと部下に指示し

、NEC会長を恫喝するよう求め

ていた。暴力団組長まがいの口

汚さで、同じ高校出身として、恥

ずかしくなる。自民党の三代に

わたる世襲議員のおごりを常に

感じていたが、こんな「坊ちゃん

代議士」を重用するのは菅義偉

首相がどこか自分に似た相貌を

人物評価した結果だったのか。

平井IT相の暴言は五輪事業の

高額発注を野党に追及され、ア

プリ開発費用の削減をNECに

求めた過程で飛び出した。政府

判断で海外からの観客を認めな

くなったことで顔認証機能が不

要になった。そのため法外な契

約金圧縮をNECに求めたので

ある。NECにしてみれば、急な

契約変更のツケをを発注企業

に負担させる理不尽な削減要

求だった。



電通出身の平井IT相は新型

コロナウイルス対策事業につ

いてこれまでも高額発注を丸

投げしてずっと野党から追及

されてきた。平井IT相は「行き

過ぎがあったかもしれない」と

弁明しているが、ほかにも「N

ECには死んでも発注しない」

「どこか象徴的に干すところを

つくらなければなめられる」な

どと看過できぬ発言をくり返し

ていた。

御用コメンテーターの田崎史

郎氏はいつものように「税金を

減らす交渉をしていたので、責

められない」とかばっていたが

、政府発注の事業が政府の判

断で一方的に解除や削減が常

態化すれば、民間企業はリス

クを上乗せして高額受注しか

請け負わなくなる。理不尽な発

注はかえって契約額を高騰さ

せる結果になりかねない。

政府のためでなく自分のため

の高圧的な言動だったのでな

いか。あまり政治家の顔のこ

とを言いたくないが、閣僚の中

でも、薄汚い顔相は際立つ。

地元でよく言う「へらこい顔」を

している。地元では西日本放

送や四国新聞の社員を自ら

の選挙運動のスタッフとして

こき使うことでよく知られる。

以前、対立候補の街頭演説

に暴力団員まがいの連中に

押し寄せたこともあった。祖

父からの受け継いだ「土着

権力」のおごりが体に染み

ついた印象である。

菅政権下で総務省接待疑惑

が発覚したのは偶然ではなく

、官僚を下僕のように使い、

自分の利を最優先するという

意味ではすべてつながってい

る。暴力的な「IT相圧力」発覚

と同じくして、経産省では東芝

の株主総会に経産省参与が

介入していたことが判明した。

東芝経営陣はこの参与の協

力を得て筆頭株主の外資が

示した人事案が通らないよう

に株主に圧力をかけていた。

経産省が直接企業の経営判

断に介入するのは、一部の

株主不利をもたらす恐れが

あり、市場経済であってはな

らないことだ。

「公」「私」の区別がつかない

こんな不祥事が政権に頻発す

るのは政権の「国政私物化」

体質がより強まっているから

だろう。五輪の強行開催はそ

の行き着く末である。どんなに

コロナの感染が拡大しても、

五輪開催で国民の高揚感が

高まれば、秋の選挙に勝利

できる。こんな自分勝手の「へ

らこい」目算で政権維持を狙っ

ているのが明白だ。腐臭が絶

えない政治の現状を変えるの

は、驕りきった政治家らを舞

台から引きずり下ろすしかな

い。

        【2021・6・14】

いつもの紙つぶてが小気味よい。

「失政を五輪で隠す夏来たる」

朝日川柳欄に載った埼玉・島村久夫

さんの句である。週明けの参院決算

委で菅義偉首相は五輪中止の見解

を聞かれて「私自身は主催者でない

」と答え、開催の判断基準をまったく

示さなかった。どんなに新型コロナ

ウイルスの危険が迫っても、五輪強

行開催に突き進むことを隠さなかっ

た。一国のトップが自国のイベントの

是非を判断できないという現実を目

の当たり利して、もはや民意で現状

を変えるしかないないという思いを

強くした。二階俊博自民幹事長は7

日「内閣不信任案が出される場合は

どうぞ。直ちに解散します」と野党に

ブラフをかけた。野党にとって千載

一遇のチャンスだろう。この恫喝に

ひるまず受けて立つべきではない

か。五輪中止は衆院選挙与党惨

敗になれば、叶う。


立憲民主の安住淳国対委員長は

不信任案提出に「党首討論での首

相の答弁次第」とまだ様子見だ。覚

悟が定まっていないと見受けた。仮

にこの恫喝に屈して不信任案提出

をためらうなら、五輪開催はもちろ

ん秋まで政局の主導権は握れない

。野党統一候補擁立に向けて調整

を急ぐ時である。二階幹事長が強

気の発言を繰り返すのは「菅不人

気」からの弱気を隠したいからだろ

う。こんなこけ脅かしに屈したら、選

挙になって野党の議席増など見込

めるはずがない。



東京新聞による都民意識調査では

内閣支持率はわずか16・1%という

衝撃的な数字だった。近づく都議会

議員選挙を前に民意の動向を見る

ための調査といい、政党支持率の

数字にも驚かされた。自民19・3%

、公明、維新ともに3・4%、立憲14

%、共産12・9%、都民ファースト9・

6%。東京都議選の結果はいつも

次の国政選挙の前兆を示すと言わ

れる。もし仮にこのまま近いうちに

衆院選になると、菅政権は大きく議

席を減らすことになり、場合によって

は単独過半数を割り込む可能性さ

えある。


この調査では、支持政党なしが30%

あり、すべては無党派層の投票行動

次第だが、五輪強行開催への反発は

依然強く、与党の低落傾向は大きく変

わらないとみられる。だからこそ菅首

相は五輪開催にこだわり、一挙に世

の中の空気が一変することを見込ん

でいるのである。冒頭の川柳は見事

にその目論見を見抜いていた。



菅首相は開催の意義を問われ「まさ

に平和の祭典だ」と答えた。誰の胸

にも響かない空虚な言葉だ。昨日の

毎日新聞はこのフレーズに政府内か

ら「今さら何だ」と苦言が漏れていた

という。開催の意義について安部・菅

政権は「復興、コロナに勝つ、国民の

命を守る」などとその場限りのフレー

ズを付けてきたが、今では誰もそんな

修飾語は使わない。



肝心な何一つ答えない菅首相はよく

9日の党首討論を受けたものだ。記

者会見で聞かれたことに答えない首

相が枝野幸男・立憲代表に国会と同

じように「国民の命と健康を守るのが

五輪開催の大前提だ」と繰り返すだ

けなら、もうアウトだろう。枝野代表も

パンチ力のない質問をして、さらなる

菅首相の失政をただすことができな

ければ民意を取り戻すことはできな

いだろう。どんなに時間が短かろう

が、二人にとって正念場である。ど

ちらが、この国の舵裁きを任せられ

るか、しっかり見定めたい。

                 【2021・6・9】


「やるなら強い覚悟を」。見識を示した

つもりだろうが、実は科学者の良心を

放棄した情けない言葉だった。政府の

新型コロナウイルス対策分科会の尾

身茂会長が苦言を述べた。前日にパ

ンデミック下の開催に「普通はない」と

言っておきながら、中止は求めない。

菅義偉首相に代わって批判をかわす

「ガス抜きでは」と勘ぐってしまう。もは

や開催の大義を失った東京五輪。感

染拡大の波が収まらない段階で、な

お強行開催しようとするのは、政権とI

OC役員ら一部の「五輪貴族」の特権

維持が根底にあるからだ。



これまでも政府の分科会メンバーから

、毅然と政府の不手際をただす言動を

見聞したことがない。政府に従属的な

言葉しか発してこなかった尾身会長が

ここにきて少しは強めの注文を出した

のは、約8割が中止か延長を求めてい

る各社の世論調査の動向を見て、軌

道修正しなければ身が持たないと判断

したからだろう。尾身会長は「規模はな

るべく小さく」と主張したが、これはかえ

って開催のお墨付きを与えたと同然と

いう見方ができる。具体的に開催のリ

スクを数値化して医療ひっ迫回避の具

体策の提示こそが尾身会長らの使命

ではなかったか。今後収束ができず、

五輪期間中に感染が拡大すれば、ど

う言い訳するのだろう。分科会には「

GoToトラベル」を止められなかった苦

い失態を思い起こしてもらいたい。



医療崩壊は「自分たちのせいでない」

と弁明しながら、ずっと強い警告を発

することはなかった。この一年半で彼

らの本性をみた思いである。それほど

期待はしないが、現実には科学者ら

の覚醒なくして感染症の収束は見込

めない。ここにきて最も危惧されるの

は変異株の暴走である。科学者が一

致して英知ある行動をしなければ、人

類は感染症を克服できないだろう。

ファイザー社のmRNAワクチンを開

発したトルコ系ドイツ人夫婦の20年

以上にわたる苦難の開発史がそれ

を教えている。



それにしてもコロナウイルスのした

たかさには慄然とする。従来と比べ、

感染力が二倍にもなるインド株は自

分の住む神戸で渡航経歴のない人

に発見された。兵庫県ではすでにイ

ンド株の感染者は14人になってしま

った。自分も第1回目のファイザーワ

クチン接種は終えたが、恐ろしくて外

出もためらわれる。この新型コロナ

ウィルスは生き延びるため人が油断

したすきに忍び寄るしたかな習性を

持っているかのようだ。



政府は五輪強行開催に向けなりふ

り構わず、ワクチン接種を増やそう

としているが、年齢や地域間格差を

克服する知恵がなく不公平感が募

る。先着順に申し込みを受け付け

るなど愚の骨頂である。一部の市

町村は政府の無策を尻目にいち早

く選挙人名簿を基にした接種券を

発送、混乱なく大半の高齢者の接

種を終えていた。「ワクチンの運び

屋」と自称して誇らしげだった河野

太郎担当相はすっかり存在感を失

い「ポピュリズム政治家」の限界を

見せつけた。



いま最も心配されるのはインド株

とイギリス株が重なったベトナム株

。空気中で飛沫感染するという空

恐ろしい報告例がベトナムの医療

関係者から伝わってきた。それな

のに、日本の水際対策はお粗末

極まる。インド株を見つける空港

検疫は全体の0・02%しかしてい

なかった。流入を阻止する本気が

見えない。五輪は選手だけでなく

、大会関係者数万人が来日する

が、入国後の行動規制は本人任

せである。感染者が入国してしま

うと、一挙に市中に感染が広がる

のは素人でも分かる。菅首相はま

るで呪文のように「安心安全」を口

にするが、やっていることは国民

を命の危険に追いやる機会を限り

なく増やしている。それは「「亡国

の指導者」以外何物でもない。

       【2021・6・4】

パソコン不調のため次回は6月4日に変更します。

 

「いったい何様のつもり」。国際
五輪委(IOC)幹部の相次ぐ発
言はそんな疑念を募らした。根拠
も明示せず「緊急事態宣言下でも
開催は可能」と言い切ったコーツ
副会長。まるで主権者のような振
る舞いに、政府は唯々諾々と従う
気配である。「国民の安全安心を
気遣う」(菅義偉首相)の言葉が
空虚に響く。各種世論調査で「中
止・延期」を求める声が7割近く
なっても強行姿勢を崩さない。こ
の流れを止めるには一人一人が一
層声を上げ続けるしかない。


止まらない感染爆発を示す深刻な
数字が毎日更新されている。重症
者は昨日、ついに過去最悪の13
03人に達し、1日の死者も84人
と高止まりだ。こんな過酷な状況
を招いてしまった負い目があるの
か、政府分科会の専門家らから、
まともな発言が聞かれるようにな
った。


「東京で緊急事態宣言が出されて
いる状況で五輪ができるとは思わ
ないし、やってはいけないという
のがみんなのコンセンサス」。こ
れまで政府寄りの姿勢が目立って
いた舘田一博東邦大教授が分科会
メンバーの意志を初めて明確に述
べたのである。いわば、首相が「
身内」と思い、その意見を隠れ蓑
にしていた専門家らがこぞって「
開催強行方針」に反旗をひるがえ
した格好だ。それでも、IOC幹
部とのオンライン会見を設定、コ
ーツ副会長らに言いたい放題にさ
せた。「開催OK」というIOC
の「お墨付き」を発信したかった
のだろうが、それがかえって不信
感を増幅させている。


コーツ会長が唯一、根拠として挙
げたのが、先日東京で相次いで回
開催された陸上、飛び込みなど4
種目のテスト大会が無事開催され
た例だった。しかし、4大会の選
手、関係者は合わせて436人に
過ぎなかった。本番の9万人とは
桁が違い、ボランティア8万人が
加われば、リスクは比べようもな
く高くなる。マイナスデータを示
して、それを克服する方法を明示
するなら分かるが、テスト大会の
数字など意味をもたない。不都合
な真実に目隠しして突き進むのは
、かつてこの国が破滅へと導かれ
た道と同じではないか。


今朝の毎日新聞で内閣支持率が20
%突入寸前の31%に急落していた
のは、その表れではないか。1カ
月で実に9ポイントも落ち込んだ
。不支持は59%と、約6割が「菅
政権NO」を表明している。信頼
なき政府に「大義なき五輪」の強
行開催などさせてはならない。何
よりこれ以上の医療のひっ迫は許
されない。


頼りはワクチン接種だが、政府の
不手際によって一向に接種率が上
がらない。医療従事者480万人
のうち第一回接種は80・5%にな
ったが、二回目終了は48%と半分
にも達していない。菅首相が約束
した「高齢者7月末終了」は悲惨
な数字にとどまっている。対象の
3549万人のうち、第1回終了
は4・7%で2回終了はわずか0
・4%と目を覆う状況が続き、い
っこうに改善されていない。



一方的に出来もしない目標をブチ
上げのに、厚労相ら担当閣僚が「
無理」と不満を述べている情報が
官邸筋から漏れ始めた。失敗を認
めず、大事な意見に耳も傾けない
。頑なで暗愚なトップは始末が悪
過ぎる。首相は五輪開催の利権を
共有するIOC幹部の「開催のご
託宣」を「これが見えぬか。頭が
高い」と如く示すしかできなくな
った。このままでは国民の命と安
全が損なわれ、政権延命の道連れ
にされてしまう。


       【2021・5・23】


「専門家が言うなら、いいじゃな
いか」。新型コロナウイルス対策
の政府分科会に反旗を掲げられた
菅義偉首相はこんな投げやりな言
葉を口にして宣言拡大に応じざる
を得なかった。「コロナ無策」が
極まって世論調査の内閣支持率が
1月と同じ33%(朝日)に急落し
たのも当然だろう。一方で、高齢
者のワクチン接種開始のPRに懸
命だ。しかし忘れてはならないの
は、7月末で終了できないばかり
でなく、若い世代に接種日程がま
ったく示されていないことだ。こ
れでは集団免疫が確立されないば
かりか、依然無症状の若者が市中
感染をまき散らす恐怖は収まらな
い。年代で区切った効果も期待で
きず、世代間の分断を加速させて
しまいそうだ。


楽観的な見通ししか出さない菅首
相が次第に追い詰められ始めた。
北海道、岡山、広島への緊急事態
宣言を出すよう迫った分科会の専
門家らが、一斉に「もう我慢でき
ない」と意を決して物申したのは
初めてのことだ。


これまで宣言解除にあたって「専
門家の意見を聞きながら決めた」
という首相説明が虚偽で、自分に
都合よくねじ曲げていたことが明
白になった。


「分科会は政府の判断を追認する
の共通認識だったが、今回はそう
ではなかった」。政権寄りと見ら
れていた釜萢敏日本医師会理事が
内情を暴露してしまった。多くの
人が「分科会は政権のお飾りに過
ぎないのでは」と考えていたのを
裏付けた格好だ。


各社の調査で、これだけ「コロナ
失政」を重ねておきながらもなお
内閣支持率が40%台あるのをずっ
と不可思議に思っていた。それが
ようやくと言うべきか、不支持が
47%になり支持の33%ははるかに
上回った。どの調査も政府のコロ
ナ対策を「評価しない」と答えた
人は7割近い。この数字は五輪開
催の賛否と連動している。ワクチ
ン接種も終わらないうちに、開催
を強行する政府の姿勢に「ノー」
と言う人が急増し始めた。


政府寄りの読売調査でも、中止を
求める人は59%に達し、「開催す
る」は39%に減った。緊急事態宣
言の対象となった6都府県に限る
と中止は64%になり、東京都だけ
では61%になった。開催地周辺の
民意は明らかに中止に傾いてきた
。これに、拍車をかけたのが、ソ
フトバンクの孫正義会長、楽天の
三木谷浩史社長らが「多くの人々
が開催を恐れている。アスリート
の派遣をどのように派遣できるの
か」「開催は自殺行為」などと相
次いで発言したことだ。特に孫会
長は巨額の放映権料を支払う米国
NBCのニュース専門放送局CN
BCに対して懸念を表明したのが
注目される。NBCへのけん制と
見られ、影響するのは必至だ。


昨日から東京、大阪でワクチンの
大量接種会場での予約が始まった
。首相は自ら言明した「高齢者の
7月末完了」を実現しようと躍起
だが、既にその約束は破られるこ
とがはっきりした。7月末に完了
するのは85%になりそうだと聞か
された首相は「ショックだ」と漏
らしたという。85%もの自治体が
「完了できる」と答えたのに驚い
たが、案の定それも不確かな数字
だったことが暴露された。秋田県
の佐竹敬久知事は「「終われるわ
けない。皆ご機嫌伺いでサバ読み
のところが一杯ある」と述べた。
首相の指示を受けて武田良太総務
相が無理やり総務官僚に聞き取り
調査させて得た数字など誰が信用
するだろうか。楽観的な数字を並
べるたびに破たんが発覚している


高齢者の接種率ばかりに焦点が当
たるが、集団免疫を獲得するには
世代を超えた接種が欠かせない。
高齢者が終了しても、未接種の若
者が多ければ、市中に無症状の感
染者による感染拡大を止めること
は難しい。今若者こそ「ワクチン
早く打って」と声を上げるべきだ
ろう。世代間の分断を引き起こさ
ないためにも、若い世代の覚醒が
不可欠だ。


与党の支持率も急落している半面
で野党の支持率も伸びなかったが
、立憲の枝野幸男代表が「解散に
追い込む」と表明してから数字が
上がり始めている。民意は「五輪
開催中止」と「菅内閣総辞職」に

動いている。

           【平野幸夫】


世界の危惧を代弁する勇気あるメ
ッセージである。「科学に耳を傾
け、危険な茶番を止める時が来た
。五輪は中止されなければならな
い」。米有力紙ニューヨークタイ
ムスで元五輪代表のポイコフ・パ
シフィック大教授は強い調子で警
告した。「スポーツイベントはス
ーパースプレレッダー(感染大爆
発の場)であってはならない」と
いう指摘に誰もが納得するはずだ
。それなのに、IOC理事会は昨
日、開催を全面支持した。全国

の死者が連日100人を超える現
実に向き合わず、ワクチン接種率
も極貧国並みを恥じない政府は、
80年前の敗戦をまた繰り返してい
るように見える。


大ベストセラー「昭和史」などを
書き、先日亡くなった作家の半藤
一利さんは約310万人の死をも
たらした政府と軍部の指導者が根
拠なき自己過信に陥っていたと断
じ、危機にあって「底知れぬ無
責任」だった姿を描いた。「コロ
ナ敗戦」と言われる今の状況と多
く重なって映る。菅義偉首相ら政
権幹部の言動には怒りを通り越し
て、滑稽にさえ感じる。


国会で「こんな状況で五輪を開催
するのか」と聞かれた首相は、直
接答えず用意した原稿を17回も繰
り返すだけの愚鈍ぶりをさらけ出
した。頭の中には五輪強行開催後
の衆院解散しかないようだ。自分
に従わない意見には一切聞こうと
しない姿はもう独裁者と言える。
首相が「ワクチン接種を7月末に
完了する」と決めた時には、河野
太郎担当相らが「できません」と
反対したという。それも無視され
たやり取りが官邸詰め記者らから
漏れた。誰ももう菅首相を止めら
れない。緊急事態宣言を出すべき
対象は菅政権自身でないか。10
0年に1回あるかどうか危機に、
機能不全に陥ったその姿に戦慄が
走る思いだ。


頼みはワクチン接種だが、高齢者
には、打ち手が足りず7月末どこ
ろか秋までずれ込み気配が濃厚だ
。全国民に行き渡るのは1年後に
なってもおかしくない。そんな時
に逆なでする発言やアクシデント
が続発する。当初「運び屋に徹す
る」と胸を張っていた河野担当相
は各地で予約混乱を招いた責任を
を謝りもせず「ワクチンの供給に
はまったく問題がない。少し気長
にお待ちください」と言う始末だ
。さらに幼児相手に言うように「
予約券を手元に置いて電話をかけ
てください」と呼びかけた。わざ
わざ閣僚が口にすべきことか。あ
きれて、情けなくなる。5月の連
休以降、河野担当相は12回もテレ
ビ出演し、「やっている感」を演
出したが、説得力のある接種見通
しは何も示せなかった。そんな河
野氏自身の姿も「ワクチン敗戦」
を物語る。


テレビ局もいい加減、そんな河野
氏を有り難がって、番組に呼ぶの
はやめたらどうか。批判なき報道
はプロパガンダ(政治宣伝)に過
ぎない。心ある視聴者がその劣化
を嘆いていることに気が付くべき
だろう。


最も深刻な大阪は悲惨だ。連日50
人以上が死亡、重症者さえ入院で
きない状況が続く。こちらも連日
テレビ出演をしている吉村洋文府
知事はもっと悪性が高い。診療の
ひっ迫で急増する自宅死亡者の合
計数を先月まで非公表にしていた
。吉村知事は「個人のプライバシ
ーに最大限配慮する」と言い訳し
ていたが、あまりの急増ぶりに公
表せざるを得なくなった。


公的機関しか死亡情報は把握でき
ないのにずっと隠し続けたのは、
いち早く緊急事態宣言解除し「感
染大爆発」を招いた大失態の責任
を回避する意図があったためでは
ないか。高まる批判などないかの
ように「しれっと」した顔で非を
認めない吉村知事が画面に映ると
、瞬時にチャンネルを変えること
にしている。


「底知れぬ無責任」という言葉が
ふさわしい国や自治体の指導者ら
。これ以上醜態を見ないように退
場させるには、何をすべきか自問
する日々が続く。

           【平野幸夫】