何様のつもり、IOC幹部 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 

「いったい何様のつもり」。国際
五輪委(IOC)幹部の相次ぐ発
言はそんな疑念を募らした。根拠
も明示せず「緊急事態宣言下でも
開催は可能」と言い切ったコーツ
副会長。まるで主権者のような振
る舞いに、政府は唯々諾々と従う
気配である。「国民の安全安心を
気遣う」(菅義偉首相)の言葉が
空虚に響く。各種世論調査で「中
止・延期」を求める声が7割近く
なっても強行姿勢を崩さない。こ
の流れを止めるには一人一人が一
層声を上げ続けるしかない。


止まらない感染爆発を示す深刻な
数字が毎日更新されている。重症
者は昨日、ついに過去最悪の13
03人に達し、1日の死者も84人
と高止まりだ。こんな過酷な状況
を招いてしまった負い目があるの
か、政府分科会の専門家らから、
まともな発言が聞かれるようにな
った。


「東京で緊急事態宣言が出されて
いる状況で五輪ができるとは思わ
ないし、やってはいけないという
のがみんなのコンセンサス」。こ
れまで政府寄りの姿勢が目立って
いた舘田一博東邦大教授が分科会
メンバーの意志を初めて明確に述
べたのである。いわば、首相が「
身内」と思い、その意見を隠れ蓑
にしていた専門家らがこぞって「
開催強行方針」に反旗をひるがえ
した格好だ。それでも、IOC幹
部とのオンライン会見を設定、コ
ーツ副会長らに言いたい放題にさ
せた。「開催OK」というIOC
の「お墨付き」を発信したかった
のだろうが、それがかえって不信
感を増幅させている。


コーツ会長が唯一、根拠として挙
げたのが、先日東京で相次いで回
開催された陸上、飛び込みなど4
種目のテスト大会が無事開催され
た例だった。しかし、4大会の選
手、関係者は合わせて436人に
過ぎなかった。本番の9万人とは
桁が違い、ボランティア8万人が
加われば、リスクは比べようもな
く高くなる。マイナスデータを示
して、それを克服する方法を明示
するなら分かるが、テスト大会の
数字など意味をもたない。不都合
な真実に目隠しして突き進むのは
、かつてこの国が破滅へと導かれ
た道と同じではないか。


今朝の毎日新聞で内閣支持率が20
%突入寸前の31%に急落していた
のは、その表れではないか。1カ
月で実に9ポイントも落ち込んだ
。不支持は59%と、約6割が「菅
政権NO」を表明している。信頼
なき政府に「大義なき五輪」の強
行開催などさせてはならない。何
よりこれ以上の医療のひっ迫は許
されない。


頼りはワクチン接種だが、政府の
不手際によって一向に接種率が上
がらない。医療従事者480万人
のうち第一回接種は80・5%にな
ったが、二回目終了は48%と半分
にも達していない。菅首相が約束
した「高齢者7月末終了」は悲惨
な数字にとどまっている。対象の
3549万人のうち、第1回終了
は4・7%で2回終了はわずか0
・4%と目を覆う状況が続き、い
っこうに改善されていない。



一方的に出来もしない目標をブチ
上げのに、厚労相ら担当閣僚が「
無理」と不満を述べている情報が
官邸筋から漏れ始めた。失敗を認
めず、大事な意見に耳も傾けない
。頑なで暗愚なトップは始末が悪
過ぎる。首相は五輪開催の利権を
共有するIOC幹部の「開催のご
託宣」を「これが見えぬか。頭が
高い」と如く示すしかできなくな
った。このままでは国民の命と安
全が損なわれ、政権延命の道連れ
にされてしまう。


       【2021・5・23】