「解散恫喝」受けて立て | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

いつもの紙つぶてが小気味よい。

「失政を五輪で隠す夏来たる」

朝日川柳欄に載った埼玉・島村久夫

さんの句である。週明けの参院決算

委で菅義偉首相は五輪中止の見解

を聞かれて「私自身は主催者でない

」と答え、開催の判断基準をまったく

示さなかった。どんなに新型コロナ

ウイルスの危険が迫っても、五輪強

行開催に突き進むことを隠さなかっ

た。一国のトップが自国のイベントの

是非を判断できないという現実を目

の当たり利して、もはや民意で現状

を変えるしかないないという思いを

強くした。二階俊博自民幹事長は7

日「内閣不信任案が出される場合は

どうぞ。直ちに解散します」と野党に

ブラフをかけた。野党にとって千載

一遇のチャンスだろう。この恫喝に

ひるまず受けて立つべきではない

か。五輪中止は衆院選挙与党惨

敗になれば、叶う。


立憲民主の安住淳国対委員長は

不信任案提出に「党首討論での首

相の答弁次第」とまだ様子見だ。覚

悟が定まっていないと見受けた。仮

にこの恫喝に屈して不信任案提出

をためらうなら、五輪開催はもちろ

ん秋まで政局の主導権は握れない

。野党統一候補擁立に向けて調整

を急ぐ時である。二階幹事長が強

気の発言を繰り返すのは「菅不人

気」からの弱気を隠したいからだろ

う。こんなこけ脅かしに屈したら、選

挙になって野党の議席増など見込

めるはずがない。



東京新聞による都民意識調査では

内閣支持率はわずか16・1%という

衝撃的な数字だった。近づく都議会

議員選挙を前に民意の動向を見る

ための調査といい、政党支持率の

数字にも驚かされた。自民19・3%

、公明、維新ともに3・4%、立憲14

%、共産12・9%、都民ファースト9・

6%。東京都議選の結果はいつも

次の国政選挙の前兆を示すと言わ

れる。もし仮にこのまま近いうちに

衆院選になると、菅政権は大きく議

席を減らすことになり、場合によって

は単独過半数を割り込む可能性さ

えある。


この調査では、支持政党なしが30%

あり、すべては無党派層の投票行動

次第だが、五輪強行開催への反発は

依然強く、与党の低落傾向は大きく変

わらないとみられる。だからこそ菅首

相は五輪開催にこだわり、一挙に世

の中の空気が一変することを見込ん

でいるのである。冒頭の川柳は見事

にその目論見を見抜いていた。



菅首相は開催の意義を問われ「まさ

に平和の祭典だ」と答えた。誰の胸

にも響かない空虚な言葉だ。昨日の

毎日新聞はこのフレーズに政府内か

ら「今さら何だ」と苦言が漏れていた

という。開催の意義について安部・菅

政権は「復興、コロナに勝つ、国民の

命を守る」などとその場限りのフレー

ズを付けてきたが、今では誰もそんな

修飾語は使わない。



肝心な何一つ答えない菅首相はよく

9日の党首討論を受けたものだ。記

者会見で聞かれたことに答えない首

相が枝野幸男・立憲代表に国会と同

じように「国民の命と健康を守るのが

五輪開催の大前提だ」と繰り返すだ

けなら、もうアウトだろう。枝野代表も

パンチ力のない質問をして、さらなる

菅首相の失政をただすことができな

ければ民意を取り戻すことはできな

いだろう。どんなに時間が短かろう

が、二人にとって正念場である。ど

ちらが、この国の舵裁きを任せられ

るか、しっかり見定めたい。

                 【2021・6・9】