「大義なき五輪」特権だけに執着 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


「やるなら強い覚悟を」。見識を示した

つもりだろうが、実は科学者の良心を

放棄した情けない言葉だった。政府の

新型コロナウイルス対策分科会の尾

身茂会長が苦言を述べた。前日にパ

ンデミック下の開催に「普通はない」と

言っておきながら、中止は求めない。

菅義偉首相に代わって批判をかわす

「ガス抜きでは」と勘ぐってしまう。もは

や開催の大義を失った東京五輪。感

染拡大の波が収まらない段階で、な

お強行開催しようとするのは、政権とI

OC役員ら一部の「五輪貴族」の特権

維持が根底にあるからだ。



これまでも政府の分科会メンバーから

、毅然と政府の不手際をただす言動を

見聞したことがない。政府に従属的な

言葉しか発してこなかった尾身会長が

ここにきて少しは強めの注文を出した

のは、約8割が中止か延長を求めてい

る各社の世論調査の動向を見て、軌

道修正しなければ身が持たないと判断

したからだろう。尾身会長は「規模はな

るべく小さく」と主張したが、これはかえ

って開催のお墨付きを与えたと同然と

いう見方ができる。具体的に開催のリ

スクを数値化して医療ひっ迫回避の具

体策の提示こそが尾身会長らの使命

ではなかったか。今後収束ができず、

五輪期間中に感染が拡大すれば、ど

う言い訳するのだろう。分科会には「

GoToトラベル」を止められなかった苦

い失態を思い起こしてもらいたい。



医療崩壊は「自分たちのせいでない」

と弁明しながら、ずっと強い警告を発

することはなかった。この一年半で彼

らの本性をみた思いである。それほど

期待はしないが、現実には科学者ら

の覚醒なくして感染症の収束は見込

めない。ここにきて最も危惧されるの

は変異株の暴走である。科学者が一

致して英知ある行動をしなければ、人

類は感染症を克服できないだろう。

ファイザー社のmRNAワクチンを開

発したトルコ系ドイツ人夫婦の20年

以上にわたる苦難の開発史がそれ

を教えている。



それにしてもコロナウイルスのした

たかさには慄然とする。従来と比べ、

感染力が二倍にもなるインド株は自

分の住む神戸で渡航経歴のない人

に発見された。兵庫県ではすでにイ

ンド株の感染者は14人になってしま

った。自分も第1回目のファイザーワ

クチン接種は終えたが、恐ろしくて外

出もためらわれる。この新型コロナ

ウィルスは生き延びるため人が油断

したすきに忍び寄るしたかな習性を

持っているかのようだ。



政府は五輪強行開催に向けなりふ

り構わず、ワクチン接種を増やそう

としているが、年齢や地域間格差を

克服する知恵がなく不公平感が募

る。先着順に申し込みを受け付け

るなど愚の骨頂である。一部の市

町村は政府の無策を尻目にいち早

く選挙人名簿を基にした接種券を

発送、混乱なく大半の高齢者の接

種を終えていた。「ワクチンの運び

屋」と自称して誇らしげだった河野

太郎担当相はすっかり存在感を失

い「ポピュリズム政治家」の限界を

見せつけた。



いま最も心配されるのはインド株

とイギリス株が重なったベトナム株

。空気中で飛沫感染するという空

恐ろしい報告例がベトナムの医療

関係者から伝わってきた。それな

のに、日本の水際対策はお粗末

極まる。インド株を見つける空港

検疫は全体の0・02%しかしてい

なかった。流入を阻止する本気が

見えない。五輪は選手だけでなく

、大会関係者数万人が来日する

が、入国後の行動規制は本人任

せである。感染者が入国してしま

うと、一挙に市中に感染が広がる

のは素人でも分かる。菅首相はま

るで呪文のように「安心安全」を口

にするが、やっていることは国民

を命の危険に追いやる機会を限り

なく増やしている。それは「「亡国

の指導者」以外何物でもない。

       【2021・6・4】