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「ミドリノツキ 上」 岩本隆雄 [ソノラマ文庫]

「星虫」 シリーズの作者の新作。正統派ジュブナイル。今度の話は「星虫」の世界とは繋がっていません。
ぶっぎらぼうでガンコな高校生・尚顕は、自習時間中に不思議な夢をみた。しかもその夢はそのとき眠りについていた世界中の人たちもみてたらしい。それからしばらくして、空から不思議な物体が降ってきた。杖状のソレは、誰が力を込めても引きぬくことはできない。しかもその杖は世界中のあちこちに出現していた。それらは先人類の遺産で、それが世界に送ったメッセージは
初期設定から「こういう話かな?」と思っていたのがいい意味で裏切られてゆく展開で、なかなかにおもしろかったです。早く下巻も読みたい。あれらの伏線がどう収拾されるのか。


「ラグナロク9 背神の遺産」 安井健太郎 [角川スニーカー文庫]

FF7ティストのファンタジー系バトル小説。今度の舞台は湖上の移動都市・イスファール。そこでリロイはカイルたちと再会する。久しぶりにのんびりとした時間を過ごしていたリロイたちだが、ウィルヘルム派から放たれた刺客がリロイたちに襲いかかり
外伝に出てた軟弱体質の《闇の種族》テーゼの本編出場、今後の活躍が楽しみです。
それにしても、最近は敵も味方も(いろんな意味で)人間止めちゃった方ばかりのパワーインフレとなってる今、生身の人間として一番強いのはレナなんでしょうか。あ、今回のレナとリロイのやり取りはなかなか楽しかったです。

「BLOODLINK 獣と神と人」 山下卓 [ファミ通文庫]


怠惰な高校生活を送っていた和志の生活は、隣に天使のような美貌を持つ小悪魔な少女・カンナが引越してきてから少しずつ変わっていった。ある日、和志は駅で突然見知らぬ美女からボストンバックを押しつけられた。その中には機関銃と無線機が入っていた。無線から流れる物騒な言葉が気になって夜の小学校に偲び込んだ和志とカンナがみたものは

「宇宙からオーロラは見えるの? 宇宙飛行士が答える380の質問」 R.マイク.ミュレイン [ハヤ

NASAのスペースシャトルのパイロットで現プロの講演者・ライターの作者が、よくある質問への答えをまとめたエッセイ。物理的なことや機械的なことだけではなく、宇宙での「日常生活」の話やあげくには無重力でのトイレの仕方まで。
なかなか楽しかったです。短い質問&回答ですので、ちょっとした時間潰しに少しずつ読んでいくのに向いているかと。
当たり前のことなんだろうけど、地球の表面を少し離れるだけでもこんなに大変なんですよねぇ。今はそれが精一杯なのに、ロクなコンピュータもなかった昔によく月まで行くことができたんだなあと不思議に思ってしまうけれども。そのあたりはノンフィクションを読んだり見たりしてみたいな。

「硝子細工のマトリョーシカ」 黒田研二 [講談社ノベルス]

「ウエディング・ドレス」 でメフィスト賞を受賞し、「ペルソナ探偵」 など構成の凝ったトリッキーな作品を送り出している作者の新作。
マトリョーシカはロシアの民族的なおもちゃで、木彫り細工の女の子のダルマのような人形の中にさらに小さな人形が入っていて、その中にさらに小さな人形がと入れ子細工になっている、アレです。あんな風に、虚構と現実が何重にも層を成しているような構成の物語。
人気ミステリ作家かつ人気女優の歌織が脚本を書き、主演もこなす2時間ドラマ「マトリョーシカ」は生放送のサスペンスドラマ。ある監督の自殺と巡る謎を追いかけるニュース番組に脅迫が行われ、生放送の最中に次々と事件が
このドラマ自体も劇中劇のような虚構の二重構成の上、さらに物語自体もどこまでが虚構でどこからが現実なのかがわからなくなるような構成で、その手の話が好きな人にはともかく、ダラっと読んでるとわからなくなりそうなので一気読みをオススメします。
物語中の現実と虚構が入り混じるようなミステリを読んだことがない人には刺激的な物語となると思います。あとは構成萌えな人にはオススメ。伏線がきれいに収束していくあたりが気持ちいい。

「Missing 神隠しの物語」 甲田学人 [電撃文庫]


現実の世界と隣り合わせに「異界」が存在している。両者の境界は強固なものではなく、たまに向うの世界に引きずり込まれて帰ってこれない人もいる。それは「神隠し」と呼ばれていた。
聖創学院大学付属高校の文芸部のカリスマ的存在の空目恭一は、魔王と渾名される冷たいが切れる男だった。そんな彼がある日「あやめ」という不思議な雰囲気の少女を見つけ、彼女として文芸部員に紹介してまった。そしてその翌日、恭一は失踪してしまう
作者は電撃ゲーム大賞の最終選考に残った方だそうな。この作品は書き下ろしですが、標準的なライトノベルに仕上がっています。
「本当の物語で感染することで異世界に引きずり込まれやすいキャリアとなる」というアイデアやキャラの作り方はなかなかにいいのですが、こういう現実との対比としての異世界を表出させることができるだけの言葉のセンスがあれば。作中で引用されている大迫賢治の物語があまりに普通だったり、魔王や基城のセリフにケレン味が感じられなくてねぇ。そのあたりがクリアできていれば。言語感性というのは努力でどうにかなるものではないかもしれないけれども。

「華胥の幽夢 十二国記」 小野不由美 [講談社文庫] 

十二国記 シリーズ初の短編集。5つのお話があります。雑誌発表済の「華胥」 「冬栄」 の他、伝説(?)の同人誌掲載作品のリメイク作品も。これで発表されてて単行本収録されてないのは、ドラマCDに入ってる墓参りの話だけですね。
「乗月」は月渓の話、「書簡」は陽子と楽俊のお話、「帰山」は利広とあの人の夢の共演。どれもしみじみとした味わいがあってよかったです。
あれだけ人工的な十二国記のシステムでも、人がそれを運営する以上軋みは避けられないんだなあとしみじみ。この前の「黄昏の岸 暁の空」といい、中枢にいる人ほどシステムに対する不信感を抱いてるものなのかもしれません。物語全体の方向性としては、王麒麟システムに頼らない国のあり方を模索し、現在の天帝支配のシステムを脱することまではいかないのかなあ。
このシリーズは古代中国風の世界観での、この世界と隣り合わせにある別の世界での物語。非常に魅力的なお話です。本好きな方なら当然チェックいれてるシリーズだ。

「チェンジリング 碧の聖所」 妹尾ゆふ子 [ハルキ文庫] 

「チェンジリング 赤の誓約」 の続き。この2冊で話は完結します。
妖精をみる力を持っていたせいで、なかなか社会に溶けこめずに生き辛さを感じていた平凡なOLの美前。そんな彼女が実は異世界のお姫様で、異世界からの刺客に命を狙われ続けるが、自分を守ってくれる騎士(口ベタな少年。美形)と共に異世界に旅だったのが前作までのお話。今度はケルト神話をベースにした異世界を中心に話は進みます。
「平凡な少女が実は」は少女小説やマンガでの王道パターンではありますが、このお話が際立っているのは圧倒的な「いたたまれなさ」。前巻での日常生活で主人公が周りから浮いてる描写もリアルなだけに痛かったですが、「帰ってきた本来の世界」であるはずの《輝きの野》にも彼女が安らげる場所があるわけではなくて。《世継ぎの君》であっても皆から愛され、ちやほやされるわけではなく、むしろその力だけを目当てに色々な人たちに狙われ続ける日々。「自分のために誰か死ぬのは嫌だ」と思っても、それは逆に美前のために犠牲になる人の誇りを傷つけるだけのシロモノで。でもそれが、どこにも居場所がないだけではなく、逃げ場所すら存在しない美前が最後に選び取った答えはという展開に結びつくわけですが。
また、きちんと話が構成されていて、《輝きの野》の真実がわかり価値観がひっくり返るところや、それまでの伏線が見事に収束していくあたりがなかなかに快感です。
それにしても、妹尾ゆふ子さんは異世界の描写がとてもうまい方なんですが、今回の《輝きの野》の作り方が2冊で終わるのにはもったいな過ぎるほど見事なでき映えで。こっちの世界とは確実に違う空気、世界の理と風土、文化、そして精神構造、信念。それらがきちんと筋が通っているから、世界がカキワリじゃなくて、ちゃんとした確かさを持っているのです。さすが。

「天帝妖狐」 乙一 [集英社文庫] 

16才で「夏と花火と私の死体」 で鮮烈なデビューを飾った作者の二作目がついに文庫本化。乙一は最近コンスタントに「石の目」 「失踪HOLIDAY 「きみにしか聞こえない CALLING YOU に出してどれも評判をとっています。
今回は二つの中編が収録されています。
A MASKED BALL」:上村はタバコを学校でこっそり吸うのに便利な人の気配のないトイレをみつけ、それを利用しているとある日「ラクガキスルベカラズ」という落書きを壁に見つけた。それに返事をするうちに、誰だかわからない同士の5人は匿名で深いコミュニケーションをとってゆく。そんな奇妙な日々もある日を境にバランスを崩してしまう。「コノガッコウニハ アキカンガ オオスギル」というメッセージの後に学校中の自動販売機が壊されてしまった。そしてカタカナで書き込むソイツの静粛はエスカレートしていったが
アイデアがいいなあ。閉鎖社会での匿名でのコミュニケーションの方法がトイレの落書きとは。この時期特有の息苦しさや登場人物同士のコミュニケーションのとり方の距離がなかなかにうまい。ストーリーの展開にしても技ありな作品です。

「キル・ゾーン 地上より永遠に」 須賀しのぶ [集英社コバルト文庫]

未来世界SFミリタリーアクション陰険漫才ラブロマンス(?)「キル・ゾーン」 シリーズついに完結。
前作を読んだときに「あと1冊て話にカタがつくのか?」と心配しましたが、見事に風呂敷をたたんでくれました。あまりに展開が早過ぎるために、「もうすこしゆっくりじっくり書いてほしかったなあ」と思わないでもないですが、とにかく作者には「長いことごくろうさまでした。途中からですが発売を待ち焦がれながらリアルタイムで楽しんできました。楽しい時間をありがとうございました」と伝えたい気分です。
みんなみんなハッピーエンドとはいえないけれども、それぞれのキャラが乗り越えるべきところはちゃんと乗り越えてくれたのでよかったです。このシリーズを読むなら一作目「キル・ゾーン」から「ブルーブラッド」も含めて発刊順に。最初の方は作者もデビューしたてで正直いって下手なんですが「ブルー・ブラッド 虚無編 上」 「下」 あたりの深さは読むだけの価値があると思います。全部でシリーズ24冊あるので今から読むのはなにかと辛いですが

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