「天帝妖狐」 乙一 [集英社文庫]  | カウネット呼ぼう

「天帝妖狐」 乙一 [集英社文庫] 

16才で「夏と花火と私の死体」 で鮮烈なデビューを飾った作者の二作目がついに文庫本化。乙一は最近コンスタントに「石の目」 「失踪HOLIDAY 「きみにしか聞こえない CALLING YOU に出してどれも評判をとっています。
今回は二つの中編が収録されています。
A MASKED BALL」:上村はタバコを学校でこっそり吸うのに便利な人の気配のないトイレをみつけ、それを利用しているとある日「ラクガキスルベカラズ」という落書きを壁に見つけた。それに返事をするうちに、誰だかわからない同士の5人は匿名で深いコミュニケーションをとってゆく。そんな奇妙な日々もある日を境にバランスを崩してしまう。「コノガッコウニハ アキカンガ オオスギル」というメッセージの後に学校中の自動販売機が壊されてしまった。そしてカタカナで書き込むソイツの静粛はエスカレートしていったが
アイデアがいいなあ。閉鎖社会での匿名でのコミュニケーションの方法がトイレの落書きとは。この時期特有の息苦しさや登場人物同士のコミュニケーションのとり方の距離がなかなかにうまい。ストーリーの展開にしても技ありな作品です。