#ちょっと小耳に(13)

なぜ速記が生まれたのか

前回は、私がなぜ手書き速記に惹かれたのかについて独り語りしました。

そもそもは、早稲田速記のテレビコマーシャルを見たことから「速記は天職だ!」と勝手に運命を感じ、その後の速記界の時代の変遷を感じながらも、いまだにアナログ的な手書き速記に魅力を感じているというものでした。

 

今回は、参考プランでは折り返しの「後編」に入っていきますので、気持ちを初心に、速記の原点を考えてみたく、「なぜ速記が生まれたのか」についてです。

この「ちょっと小耳に」の第1回に、世界最古の速記資料はギリシャで発見された大理石の破片に刻まれた符号で、紀元前350年ころのものと紹介しました。

日本で言えば弥生時代です。個人的な感情ですが、例えば発掘された弥生式土器を見た時に、「この土器を弥生人が使っていたのか‼」と思うと、年月を超えた不思議な感動があったりします。

ギリシャで発見された代理石の破片は、それに刻まれたものが符号で、速記に当たるものであるというのは後にそう判定されたわけですが、もし速記者が発掘し、それが速記符号だとわかったら物凄い感動があったのではないかと思ったりもします。

 

さて、本題の「なぜ速記が生まれたのか」ですが、その前段階として「なぜ文字が生まれたのか」です。

学問的には説明されていると思いますが、個人的には次のような感じかなと思っています。

まず、言葉が誕生した当初、お互いの気持ちなどを伝え合うには最低限の言葉でよかった。そこに何かを残したい状況が発生し、数字とか絵文字のようなものが考えられた。残したいものが徐々に長いもの、複雑なものへ移っていき、記憶力や簡単な絵文字などでは伝え合うことが難しくなった。そこで絵文字のようなものが進化して文字が生まれていった。

つまり、伝達するものが短いものや簡単なことは記憶できたが、社会(コミュニティ)が発展して大きくなるといろいろと複雑になり、記憶に頼っていくことには限度があった。そこで伝達手段として文字が生まれた。ざっくり言えば、文字は記憶したものを表示するために生まれた必然のもの。

そして、速記は人が話すことをそのまま瞬時に記録する、記録したい欲求から生まれたもの。これも必然なこと。

こんなところでしょうか(あくまで主観です)。

 

ところで、日本速記協会HPによると、近代速記法の起源は1588年にイギリス人が考案した速記法といわれています。そして筆記の速度が格段に向上する速記法で近代速記法に大きな影響を与えたとされるピットマン速記法の誕生が1837年です。この間250年ほどかかっています。必然とは言っても一朝一夕というわけにはいきません。

私たちは年月をかけて出来上がってきた速記を効率的に学べるのでありがたいと思います。

(つづく)

 

 

これまでの「ちょっと小耳に」

(1)速記の始まりと今

(2)日本の速記はいつから?

(3)第1回議会からの会議録があるのは日本だけ! 

(4)日本の速記方式(前編)

(5)日本の速記方式(後編)

(6)弟子たち

(7)他の速記方式は読めない、書けない

(8)原文帳(げんぶんちょう)

(9)速記用語

(10)速記教練会

(11)速記競技会 

(12)なぜ速記に惹かれたのか