#ちょっと小耳に(7)

他の速記方式は読めない、書けない

前回は、田鎖綱紀(たくさり こうき)さんの弟子たちについて触れました。

若林玵蔵(わかばやし かんぞう)は速記実務の先駆けとなり、速記本として出版された怪談牡丹燈籠が言文一致小説に大きな影響を与えたこと。また林茂淳(はやし もじゅん)は帝国議会での速記採用について貢献したことなどでした。

 

今回は、速記は速記でも他の速記方式は読めない、書けないということについてです(もちろん、他の速記方式を学んだ経験がないことが前提です)。

「いや、私は読める」、「私も読めるし書ける」という方がいらっしゃれば、これから書くことは成立しなくなりますので、少なくとも私はそうだということで書いてみます。

 

日本の速記は、田鎖式から始まって、何種類もの方式が生まれ、それらを経て現在に至っています。中でも参議院式、衆議院式、中根式、早稲田式が代表的な速記方式とされています。ちなみに私が学んだものは早稲田式です。

もとはと言えば、田鎖式から派生してきているわけですから、各方式に何らかの共通点がありそうですが、よくわかりません(学術的には分類できるようです)。

50音表で1字1字見ると共通している書き方の速記文字も出てきますが、速記されたものとなるとほぼ読めません。何となく、ここは省略法を使っているな、くらいのことしかわかりません。原稿があり、それと速記されたものを見比べながらであれば、対応する箇所は大体わかりますが、その程度です。

私は学者ではないので自分が学んだ方式で書き読み出来ればいいのですが、他方式で速記している場面を見ると、やはり興味がわきますし、スラスラ速記していると純粋に「すごい!」と思います。

 

ついでに言うと、同じ方式であっても他人が書いた速記文字は読みにくいものです。なぜなら、速記文字の選択(どの文字を使うか)や省略法など自分が使いやすいもので速記するので個性が出るからです。「癖」と言ってもいいかもしれません。

平仮名やカタカナであれば多少雑に書かれていても何とか読めますが、速記は難儀します。

 

ところで、当方のホームページで、速記は第4の文字と言えるのではないかと書いていますが(そもそも速記文字と言いますし)、他の速記方式は読めない、書けないということで捉えると、ちょっと(かなり?)強引ですが、方式の数だけ枝分かれした第5の文字,第6の文字…があると言えるかもしれません。

それはそれとして、速記って奥が深いと思うのですが、いかがでしょうか。

(つづく)

 

これまでの「ちょっと小耳に」

(1)速記の始まりと今

(2)日本の速記はいつから?

(3)第1回議会からの会議録があるのは日本だけ! 

(4)日本の速記方式(前編)

(5)日本の速記方式(後編)

(6)弟子たち