#ちょっと小耳に(3)
第1回議会からの会議録があるのは日本だけ! 前回は、侍の世が終わって間もない明治15年(1882)に田鎖綱紀 (たくさり こうき)さんによって誕生をみた日本の速記は、帝国議会の答弁記録などにも採用されていったとご紹介しました。 日本では、速記は明治23年(1890)の帝国議会開設と同時に貴衆両院で採用されています。つまり、速記によって会議録(*)が作成され保存されていったわけです。
では世界の議会ではどうなのでしょうか。近代の速記法は日本よりも300年ほど前に考案されていますが・・・
会議録は議会での発言内容を正確に記録したものですから、議会でどのようなことが議論されたのか、どのような結果になったのかなど後になってもわかるように文書化され保存される必要があります。
また会議録はその時代その瞬間の国情のみならず世界情勢も垣間見ることができる貴重な記録ですので、議会先進国である欧米の会議録はどのように保存されているのだろうか、映画などで見られるような重厚な雰囲気の書庫に整然と保存されているのだろうかなどと以前からちょっと興味がありました。
実は、国会の会議録が初回のものから完全に残っているのは先進国では日本だけだそうです。初回は日本においては第1回帝国議会になります。上述しましたように欧米各国の会議録も古い順から整然と保存されているだろうと思っていたのですが、様々な事情で完全保存というのは難しかったのでしょう。
そう考えると、第1回帝国議会後も起こった動乱や戦火などの中、国会の会議録はよく保存されていたと思います。
速記され文書化された国会会議録の完全保存。日本の速記は遺産的価値がありそうですね!
余談ですが、明治32年(1899)には東京・大阪間に電話が開通しました。「東京時事新報」という新聞社はすぐに電話速記を採用します。それまでは電報で記事を送っていましたが、電話口で直接速記した方が効率的だということになったからです。 それ以降地方の新聞社なども電話速記を取り入れていきます。速記者は重宝され、破格の待遇で採用されていったそうです。
*会議録は、日本国憲法において保存と公表が義務づけられている、公的な会議の記
録です。その記載事項は、国会法及び衆議院規則に定められており、議事は、第1
回国会から手書き速記により記録され、現在では、音声自動認識技術も取り入れら
れています。
本会議、委員会等の会議録は、国立国会図書館ホームページの国会会議録検索シス
テムにPDFファイルで公開しています。本会議録は官報号外として発行されてい
ます。(衆議院HPより)
(つづく)
#これまでの「ちょっと小耳に」
(1)速記の始まりと今
(2)日本の速記はいつから?