普段は学生や愛好家の方をレッスンする事が多いのですが、たまに若い演奏家や演奏家を目指す若い方にアドバイスをする事が有ります。
大抵、日本在住で無くて日本では会った事の無いか滅多に会わない方(笑)
まあ、優秀な日本人の演奏家は沢山いらっしゃいますから、こんな田舎のマイナーな人間の処に来る事の方が珍しいかも(笑)
それでも、選んでレッスンをと希望される時は、事情が無い限りちゃんとレッスン代も頂いてこちらも真剣に~貰わないと真剣で無い云う訳で無く、自分の経験からも身銭を切る事はそれなりの覚悟が必要で、やっぱり何処か大切な事なのだと思うからです。
ちょっと教えて?って時は深く入り込めませんし結局中途半端になります。受ける側も同じ。次回に会った時にやっぱり覚えて無いんだな~と思う事は多々有ります(爆弾)ま、いいか、、と思いますけど…
レッスンなら状況を判断しながら必要だと感じたら深いところにも配慮を持って触れられます。
この配慮は能力が高い方に対してはとても大切でその方の元々の良いイメージまで壊す事にならないように、自分のアイディアがそこに良い意味合いでプラスされる様に言葉を選んで行きます。
少し上にも書きましたが自分も同じ。この数年、何十年ぶりかに巨匠に直接レッスンを申し込みアドバイスして貰い、次に行く時にはそれが自分の中で消化されてクリアーされてる事~何事も無かった様に指摘され無い事がクリアー出来てる。一応、どうですか?って言葉でも聞きますけど(笑)
さて、コンタクトを取ってくる方は明確な意識を望んでいらっしゃる。これはとっても大切な事で、なんでも良いから上手くなりたいってのは専門に勉強してる身としてはちょっと甘い。愛好家の方の場合は何が足り無いか判らないと云うのはある意味当然の事ですし、それを才能とかセンスで片付けずに、問題と解決方向をちゃんと明確に示す事が大事になる。もちろん、その人がその時点で何処あたりまで望んでいてと云う事も大事な要素です。
結局、レッスンの内容の根本に差は全く有りません。
専門家を目指す人にはより精度が高く難易度が上がるだけです。
先日のお題はピッコロにおけるハイノート。
上のファから上と云う事でしたが、詰まる所、普通の楽器の真ん中に当たる音から、どう音のセンターを捉えてそれを高い所まで同じ感覚で行けるか?って話になりました。
長くなるので今回はピッコロ限定として書きます。(長い楽器でも同じなのですが)
先ず真ん中の音から5度位音階で短い音を軽くクリアーなタンギングをして吹く(例えばドレミファソ)。その時に音の頭、タンギングした瞬間から音のセンターを打ち抜く、射抜いて無いと上の音は力~息のスピードやプレス、アンブシュアの強さに頼る事になりキツくなります。特にピッコロは楽器が短く抵抗も多いので長い楽器の様に幅に余裕が無く、うんともすんとも言わ無くなる事になる。
(因みにバロックラッパ、ナチュラルラッパとなると穴が少なくなる程に難易度はモダンより桁が増す様にシビアになります~長いくせに…)
この音階を半音づつ移調して上がって行きます。移調出来ない人は出直しましょう(笑)
真ん中のブレがハイトーンのバランスを作る為の精度を作り出せ無い原因になります。闇雲に上がっても無駄です。若いうち、体力のある人はパワーに頼っても高い音が出ますが、僕の歳では既に無理ですし、歌や弦楽器とアンサンブル出来る繊細な音やうるさく無いフォルテは先ず出せないでしょう。
最初から真ん中を打ち抜くには身体がバランスよく使われて一方向にだけ強い力や、一箇所だけを抜き出して使う様な一点集中方法は役に立ちません。因みにソルフェージュが出来るているのは必須です。
息のスピードも、量も、過大なパワーも基本的には必要無いんです。
当たり前ながら先ずは"音の頭"が聞こえてること。ここが聴こえ無いと修正しようが無い…
そして自然な呼吸をして肺が下にも極端に上にも行かず自然に浮いていて、音域が変わろうが自由に膨らんだり萎んだり出来る事。これはレッスンを受けてもらわ無いと意味は判らないかもしれません。
息を増やさない~音階を吹いて行く時に勝手にクレッシェンドがかかる時は息のパワーでハイトーンをこじ開けている状態なので自然とは言えない。
この場合は大抵プレスもかなり強い筈です。
息が適度になるととプレスが不用意に強い事に気がつきます。ただしプレスは適度には絶対に必要です。でも、その時々にどの位力がかかっているか唇で感じ取れて無いと直ぐに終わります。楽器の持ち方と言うか、プレスを含めた楽器のキープも大事です。頭(感覚)、身体(呼吸)の準備が出来た唇の上にマウスピース乗る。
上の音に向かって身体の中の力が下方向に強く向く時もきっとキツイでしょう。力は360度バランス良く。僕は吹き手を観察して、例えばエネルギーが前に下に向いてる様に見て取れれば、そちらにだけで無くて、同じ様に後ろ上の方向に力を感じてと伝えます。
この時に使っている力と"同じ強さを使う"と伝えるのはNG。以前に書いた様に力で抗うのは倍の力を使う事になり良い方向には向かない。
言葉の受け取り方を考えて身振りを交えて言葉のトリックを使い"同じ様に反対方向へもエネルギーを感じて"と伝える事で、大抵は一方向に向かう力がバランスの取れる方向に分散します。どちらが反対方向かはその時の判断次第。
上手くいかなければ違う言葉を使う事になります。
バランスの取れた状態を覚える事が大切でその指示が大切で無い事は伝えます。
そこを保ちながら上まで、決して先を慌てずに上がって行きます。もちろん音頭からセンターを打つ様に。決して大きな音で無く。崩れたら最初に戻り仕切り直す。
ここまで、感覚の鋭い人なら直ぐに掴めます。ただ、この時にシラブルを意識的に使わないことも大事。「イー」と意識をすると舌の真ん中部分まで全て上がってしまい、ただでさえ息の流れの細いピッコロにはきついアプローチになります。確かに舌の両端や全体は上に上がりますが、真ん中は下がっていて息の通り道をキープしてる事が大事。これは意識的にそうするより 「ア」「タ」と意識する事で自然にそうなるので「イー」の意識を排除するだけで十分。(決して無理やり下げる意味では有りません。「ア」のままで声で舌から上に歌って見ると判ります。)響きを頭の方や頭の後ろに感じる事が出来れば話は早いです。実はリップスラー、長いベー管の下のドとソのリップスラーでその辺りがちゃんと掴めていて、そのままハイトーンのリップトリルまで繋げる練習はピッコロにも有効です。
シラブルについての僕の考えは前に記してます。
この辺りまで出来る様になると、自然と身体の内側がしっかりとして、背筋が程よく伸びる様な感覚が生まれてる筈です。
程良い、バランスの取れた身体の緊張。
(決して反ってるわけではありません!)
もしこれがリラックスしてるだけだと中音域は吹けても、低音域はぼけた響きで上に行く時に何処かで力の使い方を変えないと行けなくなりますし、高音域は確実に頭打ちになります。下腹だけ、下腹中心にに息が入る状態は要注意。普段の呼吸の様に真ん中から上下にバランスよく膨らむ感覚が良いと思います。その時に肺が浮かぶ感覚があるとより自由になる。(100%近く吸っても普通に、普通以上に軽く響く声で話が出来る呼吸で有り、ピッコロやハイトーンの場合は実際には80%位までに抑えないとブラックアウトして倒れるかも知れません。)
ここまで来た時には"支えの意味"が分かると思います。下から上まで同じバランスのコントロールになれる。
そして、この辺りまで来れたら、5度上がる音階で、上に上がったら一度止めてその感じを覚えたまま一度ブレスをして、今度は上から降りてきます。そのフレーズの一番上の音の感覚を最初からいきなり再現する~狙う事が出来る様に。
気をつける事として息を入れすぎ無い事を意識しているうちに今度は消極的な息や気持ちになり易いので、そこは音を聴きながら響きを失わ無い様に息の流れは確保します。場合によっては今度はもう少し息を吐いてと声をかける事になります。
以上が掴めたらそこから響きを膨らませる事を意識する事で段々と大きなサウンドにもなる。
これらの作業は方向性はその日のうちに掴めても、実際にコンサートで使えるには暫く、1~3ヶ月、半年、一年~ と人や音域によっても違うとは思いますが、ゆっくりと時間をかけて自らを育てないと失敗します。
先日の方はしっかりと掴まれました。
僕のアドバアイスがこの先にゆっくりと役に立つと良いな~と思います。自分の感覚に共感してもらいそれが良い方向に働く事ほど嬉しい事は有りません。
良い感じのレッスンだったので覚書も含めたBlogです。