マーケティング・コンサルタント弓削徹 -274ページ目

DMアイデア3

DMに関するノウハウ、その3

個人情報保護法などの影響により、顧客データの取り扱いや名簿売買サイトの利用などは微妙なものになりました。ふだんからも顧客名簿の管理や入手には慎重さが求められます。

さて、大手の量販店などでは、ポイントカードの導入により、顧客データや購買行動などのマーケティングデータを把握しつつ、囲い込むという手法をとっています。

昔ながらの商店街や、一軒独立のスーパーマーケットでも、スタンプカードのような簡易なものに氏名と住所、メールアドレスなどを書き込んでもらえば、それに近い効果を上げることが可能でしょう。

次に、インターネット経由で名簿を入手する方法としては、2ステップのオファーがもっとも有望です。これは、売りたい商品に関連する情報冊子などを無料でプレゼントするというものです。この方法の良いところは、商品に興味のある人のみのデータを集めることができる点です。

また、ある特定の業種、企業に限って名簿を入手したいなら、iタウンページがおすすめです。ここでは地域や業種を絞って、かなり多くの項目にわたる情報を入手することができます。軒数が莫大でないなら手入力でExcelに移行するやり方もできますし、自動で抽出できる専用ソフトもあります。

ターゲットを絞り込まなくてもよいのなら、プレゼントサイトへ商品を提供して、応募のあった人々のデータを得る、というやり方もあります。ケータイサイトでは、もっとアクティブにメールアドレスなどを収集することができます。

できのよいDMを大量にまとめて送った場合、反響が多すぎて対処しきれなかったという経験の反省から、あまり大量には送らない方がいいですよとアドバイスしています。それなら、リスト集めも一気に行う必要もないわけです。

DMアイデア2

DMに関するノウハウ、その2。

さて、中に封入するもの、チラシなどの作り方です。 当たり前のチラシをつくっても仕方がないですよね。かといって、見る人を不快にさせないことも重要。まず、インパクトのあるキャッチフレーズが欲しい。

ビジュアルの撮影などにはコスト的な制限がつきまといますが、自分で考えるコピーなら何を言ってもタダ。コピーの書き方は次の機会に譲りますが、常日頃、自社の商品について思いを巡らせていれば、決定的なアプローチが出てくることも期待できます。

接触した顧客の何気ない一言がコピーライティングのヒントになることも多い。マーケティングも、現場百回かも知れません。

ビジュアルについては、一度つくったら使い回しをすることです。ウェブでも、会社案内でも、パッケージでも使っていく。それだけ露出させれば覚えてもらえます。情報の送り手側はすぐに飽きてしまい、「別のシリーズを考えないと」と考えたりしますが、受け手側は飽きるほどは見てくれていない。

何度もお金をかけて新しいビジュアルをつくっても、しっかり認知される前に別の表現に変わってしまうのではもったいないでしょう。

全体のメッセージとしては、自社の技術力を語る、こだわりを語る、利用客に登場してもらい語ってもらう、難解な商品を絵解きでわかってもらう、お得なセールを語る、来店のインセンティブをつける、などなど何でもありです。

表現方法は各社の状況や必要性に応じてさまざまな可能性があるので、語り尽くせません。次は、DMのリストをつくる方法に絞ってお話ししたいと思います。

反応の高いDMアイデア

DMの反応率はひと口に3%とか、0.3%といいますが、これは平均でしかありません。

7%もあれば、0.02%もあるのが実態。では、どこで差がつくのでしょう。

商品やオファー(プレゼントなどのインセンティブ)に問題がなければ、コミュニケーション戦術を変えることでレスポンス率は格段に向上するはずです。

DMを構成する要素は、封筒、パンフレット、挨拶レター、オーダーフォームなどですね。封筒は送料がかさみ、未開封のまま捨てられるなど認知率が低くなりますが、情報量は多い。

一方、ハガキは情報量が少なく、内容が見えているため見て欲しい人に届く前に別の人に捨てられて到達率が低くなるが、送料が安く、数多く送れる。

その中間をいくのが、最近よく見る圧着式ハガキですね。(とはいえハガキの料金別納、後納表示の下半分すらPRスペースに使えます。)

封筒の場合、外からもわかるような“かさばる”プレゼントを同封すると、開封率、リターン率ともに高まります。

花の種や、ティーバッグなどの安~いものでよいのです。
反応が良くなるのは、どんなに安いものでもいただくと心苦しく感じる返報性の原理によるもの。

来場・来店時に景品と交換できるものや、ゲームに参加できるものにするのも方法です。例)現場でダーツをしてもらい景品が決まるなら、ダーツを入れてしまうなど。
または、固有の抽選ナンバーを大きく印刷してもいいでしょう。

宛名はできれば手書きがいいですね。透明封筒にしても目立ちます。

形状を全く変えてしまうのも効果があります。下駄だって宛名を書けば送れますから、デザイナーにアイデアを出してくれるよう相談してみてください。夏なら、うちわそのものを送ってしまってもいいのです。

肝心なDMの中身の作り方については、次の記事で!

デベロッパー事例~解決編

富裕層を囲い込むために2

本件は、一言でいえば富裕層向けマーケティングです。金融資産はIT系企業オーナーや役員、自由業など、ごく限られた層に集中しているといわれています。

どうやって彼らにアクセスし、信頼関係を築くか。ここが肝要です。

前提としては、トータル・プロパティ・カンパニーをキーワードに「選ばれた人と共に付加価値を生み出していく」というコンセプトを設定。

ただのデベロッパーである、という社内の意識を変えてもらうことから始めました。

ブランディング構築のためにはパブリシティ展開が不可欠と考え、弓削の出版社とのリレーションをたどって米系経営誌「F」のキーパーソン紹介ページに「我が社の挑戦」などのタイトルで取り上げてもらうよう仕掛けました。

それを抜き刷りにして営業訪問に生かすというわけです。社内にも良い影響を与えます。

目的の顧客探しでは、過去の顧客データを再活用することはもちろん、新たに媒体として、経営誌、投資誌だけでなく、ベンツ、BMWなどの高級外車オーナーの会員誌、またダイナース、アメックスのカード会員誌などを告知の場として選択。

魅力的なオファーにより、会員組織への誘因を行います。(他にも、銀座和光の会員誌、SevenSeas、Nile’s Nileなど高額所得者向け雑誌、メディカル・トリビューン、日経メディカルなど医師向け雑誌、SevenHillsなどのウェブを検討)

こうして人的に、また紙誌から、DMから、ウェブから集められた名簿を、いやな言葉ですが所得や資産高で足切りをしてターゲットセグメントとしての純度を高め、「友の会」組織に囲い込みます。

会員には、ロイヤルティと継続性を高めるために、立体的コミュニケーションを仕掛けていきます。

まず会員誌の発行、専用ウェブ開設、メルマガを配信。

また、定期セミナーの開催、これはファイナンシャル・プランナーによる講演や資産運用相談会などです。

さらに弁護士、税理士の紹介など、個別な人的サービスも。

また、会員同士の交流を促すことも付加価値を高める手法です。この辺はマン・ツー・マンの対応が必要となり、省力化がむずかしい、しかしはずせない対応といえます。

日経グループのQUICKなどと提携して株式金融情報を提供、Q&Aを受け付けるなど、役立つ限定的な付加価値情報を発信していきます。

そして、顧客たちの指向を知るため、寄せられたはがき、Eメールの本文を、定量だけでなく定性分析を行うのです。

これには、ナレッジ・マネジメントソフトを使ったテキストマイニングを活用します。この結果を、再度サービス開発、営業活動へ生かしていくわけです。

注)1.実際にはここに記せないコアな戦術もありますがご理解ください。

2.本件クライアントは不動産業ですが、お世話になった方の関係で受注したものであり、原則的に私が金融・不動産業のコンサルティングを受けることはありません。ご了承ください。

デベロッパー事例~課題編

富裕層を囲い込むために1

クライアントは成長中のマンション・デベロッパーです。

当初は「C.I.についてのアドバイスを」という依頼でしたが、結局は当面のマーケティング戦略をお願いしたいという話に変わりました。

この会社は数年前に東京へ進出、高級マンションを開発・分譲することを主な事業内容としています。依頼があったのは、REITやSPCという言葉が出てきた頃で、マンションを販売するだけでなく、さまざまな形で投資を扱うというビジネスが成功しつつありました。

課題は、首都圏の富裕層に絞り込んで顧客開拓をしたいということと、その富裕層や企業から投資も引き出したいというもの。

当然、それにふさわしいブランド価値向上とステイタスの醸成も付随的に必要となるでしょう。

“プチバブル”といわれはじめた現在も、富裕層にターゲットを絞ったビジネスは多くみられますが、「かゆいところに手が届く」サービスやケアがなければ、なかなか彼らを取り込むことはできません。

その前に、どこに富裕層がいるのかを発掘し、コミュニケートしていかなければならない点も問題です。これは、他のビジネスでも共通の悩みかもしれません。

さて、ITを活用する部分と、人手を惜しまない部分の両方が求められる、このプロジェクト。

どんな戦略を構築したでしょうか。その詳細は、解決編で。