マーケティング・コンサルタント弓削徹 -271ページ目

マーケティング調査NOW!

マーケティング調査にはカネと時間がかかるわりに、読み替えが必要なデータの原石しかとれない、と過去の記事にも書いてきました。

そのなかでも、地域を限定して販売活動をはじめてしまうテストマーケティングは有効ではないかとの意見も書きました。

今回は、インターネットを活用したマーケティング調査について考えてみたいと思います。

2002年頃まで、ネット経由で調査することへの評価としては、しょせんディープにインターネット接続している“マニア層”だから、もともと母集団の性質に偏りがある、というものが支配的でした。

ネットで調査ができればコストは低く抑えられますし、時間もかかりません。それでも、出てきた数字を色眼鏡で見なくてはならないのでは意味がないですね。

しかし、いまやインターネットに接続できる世帯数や人口が増加し、ネットで調べたりモノを買ったりすることがごく当たり前となってきています。

そのため、ネットに接続している人は変わった人、という考え方はもはや過去のものとなりました。

ただ一方で、リサーチ会社のパネル(回答者、被験者)に登録している人は「自分から調査の対象になりたいといって手を挙げた人たちなので、やっぱり変わり者」とか、「結局はポイントや景品、お小遣いが目当てで、きちんとした回答が期待できない」との見方も無視することはできません。

それでも、たとえば調査対象となる商品がネット内で完結する性質である(パソコンソフトなどデジタル製品)とか、特異なサンプルを集めたい(特定の商品を購入・使用した経験がある)などの場合、むしろネット調査にアドバンテージがあるといわざるを得ないでしょう。

「本当に特定の商品を購入した人かどうかわからないのでは?」という場合は、対象者でないと矛盾を生じるような設問の設計にしておくことで純度を高めることが可能です。

また、調査の大小にかかわらず、低コストでスピーディに結果を得られるという点において一日の長があることも事実。

要は、ニーズに応じて使い分けるという発想が求められるのですね。

ということで、ネットと社会の融合度合いが刻々と変わるなか、2009~2010年的には「商品の性質や費用対効果をよく考えて選択する」という態度が正しいようです。

勝手にテコ入れしてます

某ビジネス誌を見ていましたら、ある雑誌広告が目につきました。

それは、つまり表現方法が発展途上だったからです。こうした広告を見つけますと、弓削のような業種ではどうしても“勝手にテコ入れ”したくなってしまいます。

$マーケティング・コンサルタント弓削徹-マーケティング2広告主は、椅子などのインテリアを修理・張替えなどしてリニューアルする工場さんのようです。

しかし、高級家具がなかなか売れない時代なので、新規事業として家具リニューアルを始めたのではないかと想像されます。ちなみに、この広告が載っていた雑誌の掲載料はかなり高額です。

そうした社運をかけた新規事業であれば、ぜひ集客に成功して注文を取り、利益を積み上げたいところだと思うのですが、この広告を制作した業者さんは真剣に考えてあげていないようです。

そこで、勝手にテコ入れしました。よほど会社に直接ファクスしようかとも思ったのですが、いきなりそんなファクスが来ても怪しいですよね。

もともとの広告デザインが左です。あまりにも当たり前で引っ掛かりのないキャッチコピーと、意図の見えない写真がパラパラとレイアウトされています。

よく見るとビフォア・アフターの写真もあるのですが、もっと明快に見せないと、です。

ボディコピーはポイント数が小さすぎて読む気が起きず、お客様が最終的に直接アクションを起こそうとした際のアウトレット(出口)も見えません。

だいいち、センスも求められるインテリアを扱う会社なら、広告表現も洗練されたデザインが求められるでしょう。

$マーケティング・コンサルタント弓削徹-マーケティング1
おおまかなテコ入れをサムネールに書いたものが左下です。

具体的なキャッチコピーやビジュアル案までは書きませんでした。ですので、これは最低限の超えるべきハードルであるといえます。


ちなみにキャッチコピー例は


欲しくてたまらなかったソファを買った、
あの15年前の気持ちがよみがえってきた。


のような、張り替えた後の高揚感を想起させる方向で考えたいところです。

お客様に敬遠されるお店

お客様の店頭での感情は、マーケティング理論ではあまり語られていないようです。

そこには、米国発祥のマーケティング学に対し、日本特有の店頭事情があるからでしょうか。たとえば、欧米のブティックでは、商品にべたべた触ってほしくないと考えている。しかし、日本人は触れてみて、手にとって、鏡を見てみなければ似合うかどうかわからない、と考えるように…。

それはともかく、店に足を踏み入れる時に気後れしたり、接客されたら買わずには店を出づらいなどの感情は、あまり計数化されていません。というか、計数化しにくい。

それでも、自分が買物する側に立ってみれば明解なこともあります。しかし、それとて多くのお店で実践されていないのが現実です。「子供を不良にしたければこうしなさい」という逆説的な教訓にならうなら、「お客様に敬遠されるお店をつくりたければこうしなさい」とでもいうべき項目が次のようなものです。

     お客様に敬遠されるお店づくり8ヵ条
 ・入口に立って、お客様を待ちましょう
 ・お客様が来店したら、すぐに近寄って何をお探しか訊きましょう
 ・いつでも説明できるよう、お勧め商品のそばに立ちましょう
 ・セルフサービスではなく、ご希望に応じて商品を取り出すようにしましょう
 ・お客様に似合う商品を積極的にお見立てしてあげましょう
 ・お客様が選択できるよう、できるだけ多品種を取りそろえましょう
 ・セールストークはよく練習して、一気にまくしたてましょう
 ・店員同士、なかよく雑談しましょう

なかには、これは良いことなのではないか? と思える項目もあるのではないですか。けれど、ショッピングの主役である女性、とくに可処分所得の多い顧客層にとっては、いずれも避けるべき接客行動です。

顔なじみしか来ない商店街のはじっこの店ならいざしらず、不特定多数のお客様が多いショップでは致命的でしょう。これはマーケティングがどうのこうの、ではなく、日本人の感性の問題ですので、多くのチェーンストアでも対応できていない点です。

ただし、109や丸井など若年層向けのショッピングビルでは、この8ヵ条を実践することで逆に好成績を上げているマネキンさんがいくらでもいるのも事実。あらゆるショップに一概にあてはめることはできませんので、注意が必要です。

ブティック事例~解決編

今度はリアル店舗だ2

2度目の面談では、主に商圏の分析についてご提案しました。

人口分布や所得水準、生活状況などをできるだけ調べ、オリジナルの商圏マップをつくるのです。正直、売上げの70%は立地で決まってしまいます。コンビニエンスストアなら3000人程度の商圏でオーケーですが、食品スーパーなら1万人ぐらい、ドラッグストアなら2~3万人、ファミレスだと3~5万人、総合スーパーで7~15万人が必要です。

Webで調べたところ、出店予定地ではT町とI町を合わせて約34,000人の人口があることがわかりました。ターゲットである女性の方が1,000人ほど多いのが土地の特長です。近隣のショップやスナック、バーなどは区内でも高めの料金設定であることもわかりました。地元の皮革産業が、不景気とはいえ底堅いようなのです。

出店場所の確定はまだですが、お金をかけない調査方法としてご自分でカウンターを持ってのリサーチをお薦めしました。出店候補地の前で、通行人/車をカウントするのです。お店に必要な通行量は、一般に1日に3,000人。車は人の1.5倍でカウントしますが、立地とショップの性質上、車での来店は少ないといわざるを得ません。

また、重要なのは歩いている人のスピードなのです。普通は毎分80mくらいでしょうが、毎分50mほどのゆっくりさだと理想的ですね。ちなみに、朝の通勤時間帯の大阪では毎分120mくらい出ているそうです。ほとんど、すっとんでます。

出店場所は住宅街から駅へいたる中途になるようで、細めの道に面することになりそうです。まあ、大通りに面したからといって対岸とは寸断されてしまいますし、川や線路もお客さまを分かつものですので注意が必要です。

さて、そんな話をしつつ、店舗候補地が固まるのとショップコンセプトが煮詰まるのを待って、次は実店舗のつくり方と来店促進についてご指導したいと考えているところです。

ブティック事例~課題編

今度はリアル店舗だ1

ビジネスオーナーを目指す、ホステスさんに会いました。

いまは銀座でホステスさんをしているが、以前より服飾に興味があり、ブティックを持つことを決め、店舗物件を探し始めているという人です。まず、ショップオーナーとして知っておくべき心得などについて話をさせてもらいました。

出店場所は彼女の地元である東京都A区。業種もアパレルと決めているので、最初にショップコンセプトを考えてもらいました。これは、ターゲットは誰か、扱い商品・スタイルは何か、ユニークさや他店との優位点は何か、といった戦略です。

この地域は日本橋や銀座へ出やすいため、普通の店を出したところで、素通りされるだけです。この店に来ないと買えないもの、会えない人?(会話がしたい客も多い)がないと厳しい。

この点で、彼女も悩んでいるようです。そこで、次のステップに進むためにも地域のリサーチを提案しました。近隣の競合店をチェックする、大型店の影響を知る、出店候補地の通行量(その歩くスピードも重要、またターゲットの割合は?)、などの調査です。

並行して、資金調達の方法、店舗取得費や内装、什器代、仕入れ・運転資金、人件費、雑経費などを知って投資効果を考えることも必須です。

なかなか大変ですが、あのピーチジョンだって、最初はこういうところからスタートしたわけです。こうした知恵を絞ることにわくわくするような人でないと、成功はむずかしいでしょう。やるべきこと、考えるべきことが多いほど燃えるような人となら、私も一緒に仕事がしたいのです。 (この項続く)