マーケティング・コンサルタント弓削徹 -273ページ目

ダウンロードサイト事例~解決編

泣く子も笑う通販サイト2

まずは、ビジネスモデルに対するとらえ方から。企業は骨太の理念なくしては長生きできません。このサイトは世の役に立つ商品を提供しているのですから、きちんとした「ミッション」を胸に、ビジネス構築をしていくべきなのです。

そのときのサイトデザインは普通の広告か、雑誌の通販ページのようなフレームの集まりになっていて、「とにかく買って」という雰囲気でした。商品の性質上、十分な説明や説得が必要なのに。

そこで、ミッションの例として「この国から夜泣きに苦しむお母さんをなくしたい」を挙げ、説明しました。初めての育児に悩む新米お母さん、育児ノイローゼのあげくに子殺し…。そんな社会に向かって「有効な解決策があるのよ、音楽ひとつで変わるのよ」と、啓蒙してあげてほしいのです、NPOのように。

そう考えると、サイトの構造も変わってきます。トップページは、子育てに戸惑う新米ママのよきおばあちゃんのように、育児の大変さに共感し、知恵や情報を伝える駆け込み寺になります。その後におっとりと音楽商品へと導入、もちろんユーザビリティも見直します。

そして、広報活動がキモ。こうした一見伝わりにくい商材こそ、そして社会に貢献できる商品こそ、パブリシティにうってつけです。新聞、雑誌、テレビに上手にリリースを提供すれば、必ず取り上げられるタイプの商品です。

また、商品購入形態はダウンロードが中心なのですが、育児に手が離せないお母さんには不向きな販売方法かもしれません。むしろ、CD-Rやギフト需要を強く意識した方がよいでしょう。そして、3ヵ月後ぐらいに詳細なアクセス解析を行い、さらに見直しを行う。そこまでやれば、成功は見えてくる。そうしたらキーワード広告や類似セグメントサイトへのPPC広告出稿を始めます。

まだまだ、必要なことはあるのですが、とりあえずはここまで。

ダウンロードサイト事例~課題編

泣く子も黙る通販サイト1

このブログを見てご連絡をくれたのは、音楽ダウンロードサイトであるMを運営している方でした。

音楽ダウンロードといっても、ITMSのようなオールラウンドなものではなく、夜泣きする赤ちゃんに聴かせる「胎内音入り子守歌」というエッジなサイトです。立ち上げから数ヵ月、販売高が伸び悩んでいる、というご相談でした。

胎内音には当然、心臓音もあり、血流の音なども含まれるそうで、そのサウンドには泣きぐずっていた赤ちゃんを落ち着かせ、眠りに誘う効果があるというのです。

最近、育児ノイローゼになってしまった母親による子殺しの報道も多く、夜泣きする赤ちゃんを抱えるお母さんには切実な問題なのですね。ビジネスモデルとしても面白いし、とにかく困っている人を救うことができる点がすばらしい。

運営している方は、もともと音楽畑の方で、ご自身も一児の母。数日後に面談するお約束をしつつ、そのサイトを閲覧してみました。

と、失礼ですが、このサイトの作りが問題ありありなのですね。通販サイトとしての基本は押さえているところは上手なのですが、一見、広告ページのようなレイアウト。ビジネスモデルに対する認識が、そこに表れているようでした。

では、どこの辺りから、変わっていったらよいのでしょうか。 (この項続く)

マーケティング調査とは3

マーケティング調査に対する否定的な話ばかりしてきました。

けれど、すべての調査が役立たずだと言うつもりはないんです。

たとえば、有効と思われるマーケティング調査のひとつにテスト・マーケティングがあります。

これは地方の1都市を選んで実際に商品を発売し、広告も流して販売実績をみるもの。

このやり方なら、見栄もうそもなく、顧客が実際に財布を開くかどうかがよくわかります。

静岡や広島などは、日本全体と年齢分布が近似である地方としてよく選ばれます。

販売動向が芳しくなければ、あっさりと発売を中止してしまうわけです。

ただ、ある意味、これは資金力のある大企業の手法ですし、最近は関東地区先行発売で様子を見る、というパターンが増えています。

私は、企業の大小を問わず、とにかく市場に投入してみることをお勧めします。

とにかく売ってみて、レジがチンと鳴るかどうかを試してしまうのです。

ドッグイヤーといわれる現在、どの企業も調査に多大なカネと人と時間をかけていられるわけではありません。

いまやマーケティング調査好きの外資系企業も試行錯誤中であるわけで、…例えば一度日本市場に参入しながら撤退したあと、山一のスタッフを吸い上げて有利にもう一度再参入したものの、いまはそれも縮小しているメリルリンチ証券をみてもわかりますね。

日本人のマネー運用性向や市場規模ぐらいはきちんと調査してもよかったのに、と思わざるを得ないけれど。
いや、調査はしたけれど、分析に失敗したのかな。

マーケティング調査とは2

だいたい、調査に回答する消費者が、自分の欲しいものをきちんと思い描いて日々を暮らしているわけではありません。

ソニー創業者の盛田昭夫氏は「マーケットの調査は必要なかった。大衆は何が可能なのかを知らない。それを知っているのはわれわれのほうだ」と語っています。

また、出版業界では、「読者の声を採り入れはじめた雑誌は早晩、休刊になる」という言い伝え?があります。(「休刊」とは業界用語で実質的な廃刊のこと)

「消費者に意見を聞くなど、バックミラーを見ながらクルマを走らせるようなものだ」とは、ロバート・ラッツというマーケッタの言葉。

こちらは、ゼロックス社の事例。

まだ湿式コピー機しかなかった時代、現在では当たり前の、しかしコストの高かった乾式コピーが受け入れられるかをゼロックス社はマーケティング調査しました。

その結果は圧倒的に「安価な湿式コピーをやめてまで買いたくはない」という反応でした。

しかし、ゼロックス社はあえてこの調査結果を無視し、乾式コピー機を発売しました。

その判断が正しかったかどうかは、いまや問題にもなりません。

今度は国内の事例。

花王がおこなった「健康エコナクッキングオイル」のマーケティング調査で、買いたいと答えた人は10%にも達しませんでした。

しかし、花王はこの結果とは関係なく発売し、商品は大ヒット。
被験者は、新しい商品をうまく理解できなかったのです。
(この項まだ続く)

マーケティング調査とは

1991年のアメリカ映画、「BIG」はご覧になったでしょうか。

この映画の中で、何も知らずに玩具メーカーの社員になってしまったトム・ハンクス(実はまだ子供)が、社内で出くわした社長の言葉を聞き、何気なく質問します。

「マーケティング・リサーチって、何です?」

リサーチの結果に納得がいかない社長は皮肉と受け取り、「私も教えて欲しいよ」 と嘆息。

以前は、日本の企業もよくカネをかけてマーケティング調査をしたものです。

とくに外資系企業が好むため、よいマーケティング手法と捉えられているようです。

しかし、その結果の有効性は非常に疑わしい。

例えば、“グルイン”。

ターゲット層のモニター被験者を数人呼び、グループ・インタビューを行うものですが、主婦やOLなど女性同士の場合、お互いが妙に牽制し合い、見栄やうそを含んだ発言が支配的になったりします。

「この商品が10,000円だったら買いますか?」との質問に「ええ、これだけ便利ならぜひ買いたいわ」と答えるけれど、実際は買いやしないのです。

ウチは家計に余裕があってよ、と言いたいだけだったりするのですね。

あるいはインタビュアーの性別や年齢によっても結果は違ってくる。もしもインタビュアーがイケメンなら主婦も財布を開くふりをするのです。

「多少、高くてもリサイクル素材の商品を買いたい」と70%が答え、「リサイクル素材ではなく安価な商品を買いたい」と30%の人が答えたとします。

しかし、実際に割高な商品を買う人は70%もいるでしょうか。

少し前、スターバックスの店頭で簡単なアンケート調査を受けました。

しかし、質問者はたったいまスターバックス・ラテを淹れてくれた人。

お客さんは店頭のサービスが良くないとか、テイストがいまいちだとか、床にゴミが落ちている、などといえるでしょうか。

私は、いえませんよ。
(この項続く)