そういえば、昔は文学少女でした。 -2ページ目

そういえば、昔は文学少女でした。

クリスマスと誕生日に一冊ずつねだった、「世界少女名作全集」。図書室の本を全部借りよう、と思ってた中学時代。なのに今では読書時間は減る一方。ブログに書けば、もっと読むかも、私。という気持ちで始めます。洋書から雑誌まで、硬軟とりまぜ読書日記。

The Shimmering Blond Sister: A Berger and Mitry.../Minotaur Books

¥価格不明
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なんと5ヶ月ぶりの更新です。忙しすぎて全く本を読んでいなかった夏でした。電車に乗ると気絶していたんだよな。

というわけで、映画評論家ミッチと女性警官デズのドーセット・シリーズこれが7作目。

基本的に1話完結だけど、本筋以外にも、主人公ふたりの恋の行方だとか、デズのパパの体調だとか、常連さんには気がかりなことがいろいろあるのがシリーズものならでは。
先に8作目を読んでしまっていたので、ちょっと話が行ったり来たりしてしまいましたが、これでやっとつながった。

今回は、ミッチの幼馴染ケニーの母であり、初恋の人でもあるベスが登場します。ケニーとヨガ講師キンバリーの結婚が決まり、ハッピーなドーセット界隈・・・であるはずが、いろいろわけありで複雑な現実。何やら不穏な雰囲気が漂います。

その頃、住民たちを悩ませていたのが「ドーセット・フラッシャー」。週末ごとに出没してはズボンのファスナーを降ろして女性たちを驚かす露出狂です。困ったもんだ。デズはこのフラッシャーの正体を探るのに苦労していたのですが、ある夜、元警察官のオージーを尾行していて、彼が殺される場に居合わせてしまいます。オージーがフラッシャーだったのか。それとも彼はフラッシャーに殺されたのか?

デズはオージーと揉めていた経緯があることから、あらぬ嫌疑をかけられて、自由に捜査できない立場に追いやられます。
愛する人を救うため、ミッチは真実を追いかけますが、そこで知りたくないベスの過去まで目の当たりにすることに・・・さて、犯人と真相はいかに!?

謎解き自体はあんまり面白くないです。
すべてが明かされてもカタルシスがないし、腑に落ちない。

でももしかしてそれは、ブランクがありすぎて「ミステリ脳」がよく働かない、こっちの問題かもしれません。
The Blood Red Indian Summer [ David Handler ]
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すっかり間があいて忘れてしまっていたD.ハンドラーのシリーズ物。続けざまに数冊購入して読み始めましたが、もはやどういう順序なのかがよくわからないという・・・これは何作目に当たるのかしら。私は一体何作目まで読んだのかしら・・・


もちろん、独立したミステリーとして1話完結ではあるのだけど、ドーセットを舞台にした、主人公の女警察官デズと、映画評論家のミッチの恋物語としても読めるシリーズなので、順番が大切なんですよね、本当はね。


さて、今回もコネティカット州ドーセットを舞台に、愛憎の渦絵巻が繰り広げられます。

NFLのスーパースター、だけど素行が悪くて評判の大男タイロンが、身重の新妻ジャメラと共に越してきた閑静な街。天才的なプレーヤーでありながら、暴力沙汰は日常茶飯、女性関係も派手であちこちに子供がいる悪ガキだった彼は、真面目な人間に生まれ変わろうと努力しているという。妻のためにも、生まれてくる赤ん坊のためにも、これまでのような人生はリセットするんだ、と宣言するタイロンでしたが、周囲はそう簡単に彼を信じません。


タイロンの豪邸には、夫妻だけでなく、タイロンの母、弟、従弟、妻の17歳の妹、妻姉妹の父・・・とたくさんの人が同居しています。それぞれにあまり誇れない過去を抱えていたり、ワケありの匂いぷんぷん。

でも17歳の義妹キニトラには生まれつき類まれな歌の才能があり、タイロンとしては彼女を大切に育ててスターにしたい、と思っているのでした。


ある夜、タイロンの家でパーティーが開かれて、そこでちょっとした騒ぎが起きます。

その翌朝、対岸の砂浜に溺死寸前の姿で流れ着いたキニトラ。ちょうど息子の恋人に会うべく、ドーセットを訪れていたミッチの両親が彼女を発見します。


一命をとりとめたキニトラでしたが、体は傷だらけで何度も性暴力を受けたあとがあり、おまけに妊娠していることが発覚。誰かからDVを受けていたのではと疑う周囲に対して、意識が戻った本人は決して相手の名前を明かさず、子供の父親とは恋愛関係にあると主張。でもそんな気配なかったけど?といぶかる家族たち。どうしたって「犯人」の容疑は自然とタイロンに向いていくのですが、「被害者」が「被害を受けていない」と言い張る限り、デズも捜査のしようがありません。


でもやがて、タイロンファミリーに関連する2人の人物が射殺される事件が発生します。

今度こそ動き始める警察。果たして殺人犯は誰なのか。キニトラに暴行を繰り返してきた相手とは誰なのか。一度「悪人」のレッテルを貼られた人間は、決して更生することはないのか・・・


結末はかなり哀しいです。ああ、そんなにしてまで・・・と残酷な終焉。

それでもドーセットの日常は続いていくし、デズとミッチも一進一退を繰り返しながら、いい関係を築いていくのでした。おしまい。

おやすみラフマニノフ [ 中山七里 ]
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「さよならドビュッシー」の続編ですね。ちょっとタイトルが安易すぎな気もするが・・・

コンマスのバイオリン工房に行ったら置いてあったので、借りて読みました。


音楽大学に入学し、得意の楽器を演奏してきた学生たちも、「将来」や「生活」を考えるとき、苦渋の決断に直面します。プロの音楽家として身を立てて行けるのはほんのひと握り。かろうじて音楽業界に潜り込める人もラッキーなほう。身を削る思いで畑違いの一般企業をめざしても、それらの企業からは一顧だにされない・・・


物語は、そんな音大で、ストラディバリのチェロが密室から盗まれる事件が起こることから始まります。事件が解決しないうちに、さらなる事件が発生。どうも何者かが、秋の演奏会を邪魔しようとしているらしい。晶はその演奏会でコンサートマスターとしてヴァイオリンを弾きたいし、学長の孫の初音も、チェロの腕を披露するべく張り切っている。けれど、オーディションで結成されたオーケストラは今ひとつ融和せず、指揮者の教授ともうまくいかないまま、時が過ぎていきます。やがてとうとう、エスカレートした「犯人」は殺人予告を・・・


前作同様、天才ピアニストの岬洋介が音楽でも推理でも活躍し、ひとりで事件の全容を解き明かしてしまうのですが、その「真実」というのが、あんまり腑に落ちないというか、「は?なんだそれ?」と思っちゃう。

「ドビュッシー」のときのほうが荒唐無稽ではあったけど、その分、「そーだったのか」というカタルシスが得られたかなあ。


あと、文中の音楽演奏場面が非常に細かいです。ピアノにしろバイオリンにしろ、評論家真っ青なディテールが畳み掛けられて、これ、クラシック知らない人には鬱陶しいんじゃないかな。

なまじ齧っている立場からいうと、演奏している本人が、理論バリバリの解説を心の中でつぶやき続けながら弾いている、ということにリアリティが感じられませんでした。

ラストも不満。次回作に期待します。

Touch & Go [ Lisa Gardner ]
¥2,448
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この作者は初めてでした。もともとはロマンス小説書いてた人らしい。

面白いんだかつまらないんだか、最後までよくわからないお話だった。


父から譲り受けた建設会社を、さらに大きく育てて大成功したナイスガイのジャスティン。貧しい生まれながら、彼と出会ったことで人生が180度変わって、幸せになった、はずだった美人妻リビー。思春期特有の不機嫌を体中から発散させている、15歳の娘アシュレイ。金曜日の夜、セキュリティ万全の彼らの家に3人組が押し入り、スタンガンを使用して家族3人を拉致誘拐します。


彼らが連れて行かれたのは、ジャスティンが建築を請け負って、完成したものの使用されていない刑務所でした。犯人グループの目的は何か。誰が彼らを雇ったのか。果たして一家の運命はいかに・・・


追う警察サイドは、地元ニューハンプシャーの刑事ワイアット、FBI、そして、ジャスティンの会社が契約しているセキュリティ会社のテッサ(元刑事のシングルマザー)。

リビーの一人称と、ワイアットかテッサの三人称を交互に重ねて、物語は進んでいきます。


人質一家は、傍から見ると完璧なファミリーに見えるのだけど、ジャスティンは若いお姉ちゃんと浮気していて、それを知ったリビーは薬物中毒になり、アシュレイも実はとんでもない秘密を抱えています。だけど、とにかくなんとか生きてここから出たい、再び家に戻って平穏な暮らしをしたい、と切実に願うリビー。彼らが助かる道はあるのでしょうか。


ジャスティンが、生命保険を利用して900万ドルの身代金を犯人に提案したことによって、指定口座への振り込みと同時に、彼らは釈放されることになるのですが、そんなにすんなり事件が解決するはずもなく・・・


事件の首謀者は、ジャスティン宅のセキュリティコードや会社の内部事情に精通している者だと見られ、関わる人たちが順番に疑われていくんだけど、なんだか警察の皆さん、詰めが甘くて間違えてばっかり。なかなか真犯人に行き着きません。

最終的に真相が解明されても、あんまりカタルシスがなくて、「なんじゃこりゃ」っていうのが正直な感想。


ただそれよりも、問題なのはヒロインのリビーが意味不明ということですね。

そりゃあ、愛する夫に浮気されてショックだろうけど、すぐにクスリに依存して、誘拐されたときには抜け殻のようになっている、という設定に共感しがたい。お嬢さん育ちなわけでもなく、若い頃からさんざん苦労して、玉の輿に乗った女性は、もっとしたたかなのではないかしら。難しい年頃の娘がいるんだからなおさら・・・


元女性刑事のテッサも、まだ29歳なのに8歳の娘がいて、しかも夫を撃ち殺した過去があるとかで、過去の作品を読まないとその経緯はよくわかんないけど、リアリティをあまり感じないキャラクターです。

そしてワイアットも、仕事と「木材」にしか興味がない朴訥な変わり者かと思いきや、一緒に捜査に加わるFBIが元彼女だったり、テッサにもすぐ惚れちゃったり、一貫性がない感じ。


うーん。

まあそんなアラアラですが、妙に勢いで読ませるのでした。暇つぶしにはいいかも。


Six Years-【電子ブック版】
¥1,756
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ハーラン・コーベンの新作。忙しいとか言ってるわりに、電車の中で読み、寝床で読み、あっという間に読み終えちゃった。それだけ、「何だって?!次はどーなるんだっ?」とスリリングだったのは確かです。

でも、この人の小説って、こんなに次々に人が死んだっけ。前はもう少しライトな味わいがあった気がするんだけど、この数年、どんどん作風がビターに厳しくなっているのではないかしら。面白いんだけどさ。。。


本作の主人公、ジェイクは若き大学教授。学生たちとは適度な距離を保ちつつ、熱心に指導を行なってユーモアにも溢れる、人気のある先生です。


でも彼はひそかに、つらい過去を抱えて生きていました。

6年前、愛する女性ナタリーとの別離がそれでした。ひと夏のロマンスと言われればそれまでの、ナタリーとの濃密な日々。彼女こそ運命の女性だと信じてやまないジェイクは、でもある日突然、彼女に別れを告げられます。それもただ振られただけじゃない。ナタリーに、「元カレとよりを戻して、結婚することになった」と言われ、あろうことか結婚式に招待までされるジェイク。嘘だウソだ、こんなのありえない!と、茫然自失になりつつ、ナタリーが自分の知らない男、トッドと愛を誓う姿を目の当たりにします。さらに、「二度と私たちの前に現れないと約束して」と非情な言葉。


でもジェイクは「いいやつ」なので、彼女の言葉通り、その後一切の連絡を絶ち、彼女の行方を探すこともなく、傷心を封印して生きていたのでした。

ところが!6年後のあるとき、彼は見てしまったのです。ナタリーと結婚したトッドの死亡記事を。

決意が揺らぎ、トッドの葬儀に、のこのこ出かけていくジェイクでしたが、そこで驚愕の事実を知らされます。トッドの死が他殺であること、トッドの未亡人は別人であること、6年前にナタリーと結婚したはずなのに、ティーンエイジャーの息子がいること・・・


混乱したジェイクは、ナタリーの妹や、当時のふたりを知っている人々を訪ねますが、誰も何もなかったかのようにとぼけるばかり。そして、肝心のナタリーの消息は、全く掴めないまま。


こうなったらもう、何とかして彼女に会いたい、彼女を探したい!と勢い込むジェイクを、いろんな人が邪魔しにかかります。彼を襲う謎の悪党、追いかける警察、そして「約束したはず・・・」と一言だけ届く電子メール。調べれば調べるほど、もつれていく運命の糸!ナタリーは一体どこにいるんだ!トッドとの結婚は何だったんだ!トッドはなんで殺されたんだ!どうして悪いやつらもナタリーを追っているんだ!


いやもう、途中からは支離滅裂です。登場人物の多くが、とんでもない過去の秘密を持っていて、えええええ、あなたも?まさかそこまで?いうことがどんどん起きて、収拾がつかない、どうするんだジェイク、っていうかハーラン!・・・というジェットコースター。ジェイクより一足先に私は真相にたどり着いたけど、結末をそう持ってくるか、とは思わなかった。


男の人って本当にロマンティストですね。


とあるサイトの記事を読んでいたら、この小説、ヒュー・ジャックマンで映画化の話が進んでいるのだとか!


The Silver Linings Playbook-【電子ブック版】
¥393
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映画がアカデミー賞にノミネートされて、ジェニファー・ローレンスが最優秀主演女優賞を取りましたね。

「世界にひとつのプレイブック」って、なんか変なタイトル(現題のシルバー・ライニングスは「ひとすじの希望の光」という意味)、ありふれたラブコメディーだと思っていたけど、時間つぶしにKindleにダウンロードしてあったのを読んだら、かなり面白くて一気に読みました。


主人公パットが、母に連れられて「悪い場所」(精神病院)を退院し、実家に戻るところから物語は始まります。映画版では最初から、彼がなぜそうなってしまったかが明かされてるみたいだけど、小説ではもろもろが伏せてあって、少しずつ少しずつ全容がわかるようになっています。


愛する妻ニッキとの「冷却期間」が明けたら彼女にまた会える、また一緒に暮らせる、ということだけを夢見て、パットは毎日すさまじい筋トレに励んで肉体改造し、入院前には見向きもしなかったフィッツジェラルドやヘミングウェイやサリンジャーを読み漁ります(英語教師でもあるニッキに認めて欲しい一心・・・)。


フットボールに熱中する父は口をきいてくれず、ニッキはいつまでも会いにきてくれず、孤独なパット。一人では買い物にも行けないし、ちょっとしたことで感情が高ぶり、暴れたり泣き喚いたりしてしまう彼は、まるで小さな子供のよう。新たな精神科医のクリフに少しずつ心を開き、友情を抱くようになりますが、なぜかケニー・Gのサックスを聴くと平静でいられなくなって、自分や他人を傷つけてしまう。自分が「悪い場所」にいたのはほんのわずかな期間だと思っていたのに、実は5年も経っていたんですね。ひいきチーム、イーグルスのスタジアムが変わっていたり、プレイヤーが入れ替わってるのもそのためだった。

親友には子供が生まれているし、弟ジェイクもどうやら結婚したらしい。でも自分とニッキの結婚式の写真が、家からはなくなっています。母に聞くと「泥棒に盗まれちゃった」というばかり。


読者には、何があったか知らないけどまあ、パットとニッキの復縁はありえないだろう、ということがわかるんだけど、当の本人は「そんなはずはない、映画は必ずハッピーエンドなんだ」と信じています。


やがてそんな彼を見かねて、友人が妻の妹ティファニへーをパットに引き合わせます。彼女は事故で夫を亡くして失意の日々。お互いつらい別れを克服して、うまくいくといいね、という善意だったはずが、これまた全く噛み合わない。日課のランニングに勝手についてきては、黙って後ろを走るティファニー。つきまとうのをやめてもらうために、彼女をデートに誘うパット。母にお小遣いをもらってレストランに行ったものの、お金が足りなかったらどうしようと不安になって、一番安いレーズン・ブランを注文しちゃいます。


ティファニーがダンスコンテストに出るために、パットにパートナー役を頼み、猛練習が始まるのがひとつの山場。でも、それでふたりの関係が好転してハッピーエンドになるのかと思ったら、また一山、二山。


終盤でパットはある事実を知って大きなショックを受けた上、暴漢に襲われ、身ぐるみはがれて雨の中に放置される目に遭います。もう絶望の淵。だけど、あるときすべての記憶がよみがえり・・・


七転八倒の苦しみを味わったパットとティファニーは、果たして幸せをつかめるのでしょうか!?




Stay Close-【電子ブック版】
¥698
楽天

ハーラン・コーベンの「非・マイロンシリーズ」です。彼の作品では必ず誰かが失踪する、というパターンなんだけど、ここでも17年前の失踪事件が未解決なまま、新たな悲劇が!


郊外で暮らす専業主婦のミーガンは、愛する夫と生意気盛りの子供たちと、幸せだけれど平凡で退屈な日々を送っていました。彼女には秘密の過去があり、封印したはずのその過去の扉を開けてしまったことで、大きな危険に巻き込まれていくことになります。17年前、彼女の名前はケイシー。いかがわしい酒場で働く踊り子でした。そしてその頃夢中になっていた相手が報道カメラマンのレイ。


レイはレイで、素晴らしいカメラの腕前を持ちながらも落ちぶれはて、金持ちの少年少女を相手に「雇われパパラッチ」として写真を撮り、セレブ気分を味わわせてあげる、という仕事をしています。突然姿を消したケイシーへの想いにとらわれながら、浴びるように酒を飲み、時に完全に意識をなくす、ということを繰り返すレイには、17年前の「血の残像」を記憶から消し去ることができません。


ブルームは孤独な刑事。安定した仕事、家族を持ちながら突然行方不明になった男の事件を担当しますが、手がかりもないまま17年が過ぎました。それでも男の妻のもとへ足繁く通うのは、責任感なのか同情なのかそれとも・・・


17年の空白を経て、失踪事件に思わぬ展開が見られます。また一人、男が消えたのです。ふたつの失踪には奇妙な符合があったことから、ブルームが調べていくと、彼ら以外にも、忽然と姿を消した男たちがいたことがわかってきました。皆その時期が年は違っても2月~3月。そうか、マルディグラの日だ!


って、マルディグラって何?私はまーったく知らなかったけど、そんな祝祭日があったんですね。キリスト教系の移動祝祭日。そう、毎年違う日がそれにあたる、っていうのがポイントで、だからなかなか警察もパターンに気づかなかったということらしい。


さてさて、メインの3人に加えて、ケイシー(ミーガン)の夫や義母、かつての親友、レイの雇い主、ブルームの上司や別れた妻、それぞれの運命や事情が複雑に絡み合い、そこにサイコパスの若いカップルが乱入して、なんかもうすごいことになっていきます。作者にしてはバイオレンスがハード。


結局皆Closureが欲しいのよね。終わらせないと、次が始められない。


タイトルの「Stay Close」は、終盤である意外な主要人物が口にします。最後の最後に明らかになる真実には「えええええええ、そんなバカな」と思わないでもないけど、手に汗握るスリリングな時間を楽しみました

XO: A Kathryn Dance Novel-【電子ブック版】
¥671
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待ってましたのキャサリン・ダンスシリーズ最新作。容疑者や証人の口調、身振り手振り、言葉遣いや表情などから、隠された真実を読み解く「キネシクス」の達人=キャサリンがここでも活躍します。。

休暇中のキャサリンは、友人であるカントリー歌手カイリーとの再会を喜びます。カントリー界伝説のカリスマを父に持つカイリーは、まだ20代前半の若さながら、人気、実力とも申し分のないスター。1週間後にコンサートを控えたカイリーはでも、なんだか様子がヘン。

それというのも、とあるファンからの執拗なメールに怯えていたからです。

何度警告されても、しつこいメールをやめるどころかエスカレートさせていくエドウィンという青年がそれ。完全に社交辞令に過ぎないカイリーからの「返信」に自分への好意を感じたエドウィンは、彼女が自分と同じ気持ちで、周囲に邪魔されているだけだと思い込んでいるのです。


しかもこのストーカー、全く悪びれずにカイリーの前に何度も登場します。彼女の情報をすべて熟知していて、アドレス変えても変えてもメールを送り続けてきたりして、気持ち悪いんだなあホントに。


やがて、彼女の歌詞に絡めた殺人事件が発生。犠牲者はひとりでは済まず、第二、第三の被害者が・・・

キャサリンは休暇返上で、地元警察と連携しながら、捜査にあたることになります。

果たして犯人はエドウィンなのか、それとも全く別な何者かなのか。カイリーの運命や、いかに???


本筋以外にも、カイリーの過去の秘密、音楽業界の変遷、父と娘の葛藤、ストーカーのタイプ別傾向と対策、個性豊かな脇役たちなどなど、お楽しみ要素は満載。今作では、キャサリンのラブ・ライフにある変化が訪れて、え~、これどうなっちゃうの?と次への期待を引っ張ります(笑)。


そしてディーヴァー作品のお約束で、どんでん返しがたくさん仕掛けられていて、ハラハラドキドキ最後まで楽しめます。ちゃんとリンカーン・ライムやアメリアがゲスト出演する趣向もあり。


さらに、劇中登場するカイリーの歌は全部作者自身が作詞して、一番キーになる「Your Shadow」は公式サイトでダウンロードできるという凝りよう!面白いので早速DLして聴いてみました。ちょっとイメージとは違ったけどね。

When The Devil Whistles-【電子ブック版】
¥876
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タイトルと表紙だけ見ると「悪魔が来りて笛を吹く」みたいな話なのか?と思ってしまいますね。私は普段英語で本を読むとき、わからない単語があってもなるべく辞書を引かずにとにかく読み通す、ということを心がけているんですが、これはちょっと最初に調べてみました。悪魔が口笛を吹く、っていうのは、内部告発をするというような意味なんですね。ヒロインの職業?がWhistleblowerで、これも、不正を暴く人、ということらしい。


なんだけど、話の本筋にたどり着けるまでに随分時間がかかり、面白いんだか面白くないんだか、途中までは全くちんぷんかんぷんでした。


臨時派遣の社員として、いろんな会社に潜り込んでは、政府絡みの不正を発見して告発するのがヒロインのアリー。彼女と組んで次々にその不正を暴いていくのが敏腕弁護士のコナー。ふたりのコンビはどんどん調子よく悪事をさばき、お金を稼いでいたのだけど、やがて暗雲が立ち込めて、思わぬ闇に巻き込まれ、ふたりは絶体絶命のピンチに・・・というようなお話です。


アリーには、若い頃自分が運転する車で同乗していた父を死なせたつらい過去があります。罪の意識に苛まれながらも、「私が運転していたことにしなさい」という父の最期の言葉どおりにしたアリー。離れた場所で暮らす母と妹家族に、告発で稼いだお金を振り込むのが彼女の生きがいとなっています。新進ロッカーのエリックという恋人がいるものの、彼はクスリと手を切れないし、何かというと彼女のお金を当てにしています。コンビを組むコナーに対して憧れめいた妄想を抱くけれど、ふたりの関係はあくまでもビジネス。必要以上に親しくすることは禁じられています。


一方のコナーはお金持ちの坊ちゃん。何不自由なく育ち、頭脳明晰でルックスも抜群。正義感が強すぎて父のような政治の道に進むことは断念し、法律家として華やかに活躍しています。彼もひそかにアリーに惹かれているのですが、クライアントなんだからと言い聞かせ、友達として、仕事仲間としてのスタンスを保ち続けているのでした。


ある日、アリーの彼氏エリックが渡したドラッグで少年が死亡。ようやくダメ男との関係を断ち切る決心がついた彼女でしたが、派遣先で正体がばれてしまい、ライバル会社にスパイとして潜入するように脅されます。焦った彼女はありもしない不正をでっちあげて、それがまた露呈してしまい・・・


っていうような感じでアリーがジタバタしている頃、洋上に出た一隻の船の中で恐ろしい陰謀が進行していました。謎のアジア人部隊がアメリカに対して何かしでかそうと試みているのです。


法律用語が難しいことと、細部に「そんなバカな!」っていう荒唐無稽がありつつも、テンポよく盛り上がっていく中盤以降はなかなか楽しめました。コナーが趣味で飛行機を飛ばしているのは、クライマックスで意味を持ってくるのね。このあたりはハリウッド映画みたいで面白いです。ありえないけど。

Open Season-【電子ブック版】
¥528
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やっと読めました。ジョー・ピケットシリーズ1作目。

よくある都会派ミステリーとは一線を画した、大自然を舞台にした物語で、そこがまずとても新鮮。


主人公の職業はGame Warden。なじみのない単語なんで、ピンと来ないんですが、読み終わるまで辞書を引かずにとりあえず保留にしてみた。野生の保安官というかおまわりさん、という感じね。タイトルのOpen Seasonも、狩猟解禁、っていうことだろうから、狩猟禁止の動物を撃ったり、やみくもに自然を荒らしたりする人を取り締まる仕事のようです。後で調べてみたら、「狩猟管理官」と訳されていたので、だいたい合ってた(笑)。


まあとにかくその管理官であるジョー・ピケットが、とてもまっすぐで実直で正義感が強くて、いい人なんです。子供たちがまだ小さいから30代前半といったところでしょうか。安い給料でキツイ仕事。真面目に働いても働いても暮らしは結構厳しくて、妻や娘たちに申し訳ないなあ、と思いながらも、ジョーは自然の中で生きることが気に入っている。不器用で生真面目なゆえ、周囲や上司から冷ややかに見られたりしてるところも、全然ヒーローっぽくはないんだけど、いつしか大きな陰謀に巻き込まれていく彼が、愛する家族を危機にさらされて、猛然と怒り、戦う男へと変わるのです。


残虐な場面や極悪非道な犯人も出てきますが、どこまでも正しく生きようとするジョーと、彼と深い愛情で結ばれた妻、そして大冒険を強いられる7歳の長女や、幻の小動物などの姿には、心洗われる気がします。そしてワイオミングの大自然・・・


そんなに古い話ではないはずなのに、どこか古き良きアメリカの匂いが漂ってくるのもいいです。


少しずつシリーズの他の作品も読んでいこうと思います!