物理ネコ教室108波の干渉その2 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 今回のヤングのイラストは、その1とくらべ、カリカチュアを押さえてあります。

 

 「波の干渉」は、通常とはちょっと異なるやり方の講座になります。少し余分な説明をしますので、前後編に分けています。その後編です。

 

 では、いよいよ、オリジナル要素の強い、右ページに入ります。

 

 

 

 この右ページは「干渉のルールを発見する体験をしよう」という意図で作られています。

 

 力のモーメントのところでもやりましたが、法則の発見の追体験は非常に楽しい遊びになりますし、科学の醍醐味でもあります。機会があれば毎回やりたいくらいですが、日本の状況だと大学入試に対応できるよう、世界標準にくらべて盛りだくさんの数学的な内容を教えなければなりませんので、時間的な余裕がないんですね。

 まあ、それでも、ぼくの講義はほかの先生方からするとかなり特殊みたいで、よく「進度が厳しい中でよくそんなにいろんな実験を見せたり、いろんな遊びをしたりする余裕がありますね」と驚かれます。

 

 時間には限りがありますから、その分は何かを削っているわけです(笑)。

 キーワードは「記憶の定着」ですかね。

 そのへんについては、また別の機会に書きたいと思います。

 

 さて、本題に移りましょう。

 山と山が出会えば強め合う、山と谷とが出会えば弱め合う、という基本は、左ページの実験で押さえました。それをうまく使えば、ここにあるいくつかのケースで波の強め合い弱め合いがどうなっているのか、ある程度予想がつくんですね。

 

 (1)〜(8)までの具体的な例を自分で考え、正しく強弱が見抜けるか?

 

 これが、第1の関門です。

 

 そして、すべてのケースに共通するルールを発見できるかどうか?

 

 それが、第2の関門です。

 

 こういう発見を体験する、アクティブな講座は、毎時間やるわけには行きません。

 

 時間をぜいたくに使うので、大学受験という最終ゴールがある学校では、そんなにちょくちょくやれないんですね。

 

 でも、これをやることで、物理学の本当の面白さがわかるので、成功失敗に関わらず、なるべく積極的に取り入れるようにしています。

 

 非常に重要なことなので、けっこうな時間をとります。

 

 たいていの場合、最後のルールまで見抜く人が現れますから、この教材はいわゆる「探究活動」には最適でしょうね。でも、探究活動という言葉はぼくはキライです。

 

 「論理的に探究する」みたいなことが、ときどきいわれたりするんですが、大きな間違い。

 

 「発見」というのは、論理的に行われることはほとんどなく、類推や間違いから生まれることが圧倒的に多いのです。

 

 ・・・論理は発見のあと、より深い関係を見抜くのには必要ですけどね。

 

 さて、この右ページはぼくの個性が強く出ていますので、描き込みを見ながら説明しましょうか。

 

 でも、学生のみなさんは、その前に、ぜひ、描きこんでないプリントをじっと見て、( )に強、弱を書きこんでみてください。

 

 そして、見抜けるものなら【強弱を決めるのは(       )】のかっこに何を書いたらいいか、見抜いてみてください。

 

 毎年、ほとんどのクラスで、このルールを見抜ける人が出ます。(それも、スゴいことですね)

 

 あなたは、どうでしょうか?

 

 まず、第1の関門。(1)〜(8)の( )に、強、弱を書きこんでみて下さい。

 

 それが終わったら、四角のまとめのなかの、さきほどの(     )に、ルールを見抜いて書いて下さい。

 

 ・・・

 

 ・・・

 

 ・・・

 

 書けましたか?

 

 ・・・

 

 ・・・

 

 書けたら、次を見てください。

 

 

3.の(1)〜(6)を正解できる人は、けっこういます。クラスの半分くらいは、ちょっと時間があれば、たどりつきますね。

 

 でも、(7)と(8)は難しい。

 

 あなたは、どうでしたか?

 

 さらに(7)(8)の右側の四角のまとめの文章を見抜ける人は少ないです。

 

 でも、何人かに発言してもらうと・・・

 

 たいてい、

 

「2つの波源からの波の数を見て、それを足すと、整数になるときが強め合うときで、整数+0.5になるときが弱め合うとき」と答える人が出てきます。

 

 一見、正しそうですが・・・これだと、(7)(8)が説明できません。

 

 でも、おもしろいもので、何人かの人が間違えた答をいうのを聞いているうちに、それがヒントになって正解を見抜く人が現れるんですね。

 

 それが、プリントに書きこんであるまとめです。

 

「2つの波源からの波の数を見て、それを引くと、整数になるときが強め合うときで、整数+0.5になるときが弱め合うとき」

 

 これが、正解。

 

 足すんじゃなくて、引くんですね。

 

 あなたは、見事、見抜けたでしょうか?

 

 もちろん、大半の人はこの説明を聞いても、ぽかーんとしていたりします。

 

 そこで、こんな図を板書して、解説します。

 

 以下の説明は、普通の説明にくらべると少し説明に時間がかかるのですが、すべてのケースを同じ方法で説明がつけられるので、かならずこの説明を付け加えることにしています。

 

 波の数の引き算にどんな意味があるのかがわからないと、干渉条件を本当に理解したとはいえませんからね。

 

 

 赤い矢印は、波源AとBから出た波のどちらかがP点などに到着するまでの進み具合を描いたものです。当然、どちらも同じ距離進みますから、赤い矢印の長さはそれぞれ同じです。

 

 AとBは同位相(片方が山のとき、もう片方も山になるようにゆれること)なので、AとBの山が矢印の始点から終点まで進んだ図になります。

 

 (1)では、PはAからもBからも2波長つまり2λの距離なので、Aから出た波の山(赤)がPに到着するとき、Bから出た波の山(赤)がPに到着します。したがって、二つの波は強め合いますね。ここまでは、ほとんどの人ができます。

 

 (2)では、AQ=3λ、BQ=2λなので、Bから出た波の山がQに到着するとき、Aから出た波の山はQからλはなれた場所にいます。でも、Aからはずっと波が出続けているので、この山より先に出た波の山谷(紫)が、その先も並んでいます。AQとBQの長さの差がちょうどλ、つまり波長1つ分なので、Aから出た波はQ点に山(紫)を作っていることがわかります。山と山とが出会う場所なので、Q点は強め合います。

 

 (3)では、AR=λ、BR=3λなので、(2)と同様に考えて、紫字の山谷を見て行くと、やはりAから出た波の山(赤)とBから出た波の山(紫)が出会う場所になっていることがわかり、強め合う場所だとわかります。

 

 (4)では、AS=2.5λ、BS=2λなので、Bと同時にAから出た山(赤)は、Bから出た山(赤)がSに到着したとき、Sより0.5λ手前にいます。したがって、このときSにはAから出た波の谷(紫)が到着しており、谷(紫)と山(赤)が出会う場所になり、弱め合うことがわかります。

 

 以下、同様に(6)も(6)も説明できます。この考え方がすぐれているのは、(7)(8)のように中途半端な長さの場合も、同じように説明することができるところです。

 

 例えば(7)で同じ長さの赤い矢印を2本書き、先頭に山(赤)を描くと、Aから出た波の山(赤)とVまでの距離が0.5λだとわかりますから、そこにAから出た波の谷(紫)があることがすぐにわかります。だから、弱め合う場所ですね。(8)も同様に説明できますので、図を見ながら考えてみてください。

 

 説明が長くなりましたが、これで、なぜ【波の数の差】が問題なのか、その原因がおわかりになったと思います。

 

 なお、こういう発見授業をすると、おもしろいことがわかります。

 

 すべての高校教科書では、干渉条件をまとめの四角の右側のように、

 

 【行路差|L1ーL2|=mλ のとき強め合う】などと説明します。

 数式でなく言葉で書くと、

 【波源からの行路差が波長の整数倍のとき強め合う】ということですね。

 

 つまり、教科書では、大事なのは行路差、つまり道のりの長さの差である、ということが、強調されています。

 

 でも、ルールを発見した学生に聞くと、ほとんどの場合、次のような表現で答が返ってきます。

 

 【波源からの波の数の差が整数のとき、強め合う】

 

 【長さの差】ではなく、【波の数の差】という表現です。

 

 日本語の問題であって、式にすればどちらも同じになるんだから、どうでもいいと思ってしまいますが、じつはそうではありません。

 

 ここには、干渉に関する、本質的なポイントが含まれているんですね。

 

 じつは、学生がいう【波の数】で考えるやり方の方が、本来の干渉条件を表すのに合っているのです。高校の教科書の表現の方が、間違っているんですね。

 

 それは、大学の教科書を見れば明らかです。

 大学で干渉を学ぶ場合はたいてい【行路差】ではなく、【波の数の差】を使った式になります。

 

 一般に波が干渉する場合、2つの波源から出た波が、干渉する場所まで異なる媒質を通ってくることがあります。

 

 その場合は、それぞれの波源からの距離の差をとっても、干渉条件を正しく判断できません。

 

 【波の数の差が何個分あるか】を見ないといけないのです。

 

 四角のまとめの左側の【本来の干渉条件】の式がそれに当たります。

 

 距離Lを波長λで割った値が波の数になりますので、

 

 【|L1/λーL2/λ|=m のとき強め合う】が本来の干渉条件式となります。

 

 さらにいうと、媒質が違えば波長も違うので、もっとも一般的な式は、L1の道のりを通る光の波長がλ1、L2の道のりを通る光の波長がL2のとき、干渉条件は、

 

 【|L1/λ1ーL2/λ2|=m のとき強め合う】になります。

 

 まあ、大学で習うことなんだから、高校でそう目くじら立てることでもないよ・・・

 

 といいたいところなんですが・・・

 

 この考え方ができないと困る問題が、じっさいにセンター試験レベルで何度も出題されているんですね。

 

 出題者は大学の先生ですので、より本質的な考え方で問題をつくるのは、当然といえば当然ですが、もう少し、高校の教科書を読んでいただきたいものです。

 

 ぼくは昔から、本来の干渉条件で講義していますから、あまり問題を感じたことはありませんが、ふつうに教科書通り講義されている先生方は困ると思います。(似たようなことは、とくにセンター試験の波動の分野で多く見られると思います。作成担当者の明かな間違いの場合もありますが笑)

 

4,は、問題集などで解くと、ほとんどの学生が解けなくて、質問に来る問題です。

 それで、プリントにわざわざ入れてあります。

 

 答の描きこみをみていただければわかりますが、二つの波源によって出来る干渉模様をまず描きこんでからでないと、問題が解けないんですね。

 

 少し練習すれば、間違えなくなる問題ですが、このようにして干渉模様を描いてから解くという体験をしたことがない人は、何度でも間違えますので、ご注意を。

 

 

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