物理ネコ教室107重ね合わせの原理 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 ホイヘンス先生のイラスト、もうちょっとコミカルに描いてみました。

 波動と言えば、ホイヘンスと、なんども紹介してきました。あの、オランダのホイヘンス先生であります。

 

 肖像画が女性的なので、その雰囲気は残しましたが、肖像画の美化はときどき行き過ぎることもあり、本物がそうであったとは限らないので、本物に似ているかどうかは微妙なところでしょうか。

 

 そういう意味では、1839年のダゲールによる写真(*1)の発明は、その人の「見かけ」を残すことについては偉大な発明だったんでしょうね。(写真の発明がこんなに遅かったというのも、意外な感じがします。19世紀半ばまでの人の肖像は、すべて絵画だということですね)

 

 もちろん、写真でその人の外見が記録できても、その人の内面や行動様式を記録できるわけではありません。適当にデフォルメしたマンガ的な絵の方が、その人の特徴をとらえられる場合もあります。

 

(*1)もちろん、最初の写真は白黒写真です。

 

 さて、今回は、波動現象のもっとも基本的な性質である、重ね合わせの原理です。

 

 これは、カンタンといえばカンタン、深いといえば、とても深い原理でありまする。

 

 プリントの前半を見てみましょう。

  

 

1,の(1)(2)は、波の本質を示す「重ね合わせの原理」と「独立性」の紹介です。

 

 どちらも、内容的にはむつかしくもなんともないのですが、それをきちんと理解できるかどうかは、またべつの話。

 数式で書くととてもカンタンなので、公式といえるような特別な数式ではありません。

 

 ・・・が!

 

 この「重ね会わせ」ができるというのが、波の重要な性質であることは、初心者にはなかなか理解できないことなんですね。

 

 ふうーん、波のyはy1とy2の足し算になるのかあ・・・

 くらいのイメージでしょうか。

 

 これ、どうして単純に足し算になるかって、原因を説明しようとすると、力学的な運動方程式や積分計算が必要で、そうカンタンにわかることじゃないんですよ。

 

 まあでも、実験を実際に見てしまえば、重ね合わせが成り立つことがわかります。実験は、物理現象を理解する上で、最強の手段ですね。

 

 重ね合わせの原理の細かい部分は、さすがのウェーブマシンの実験でも、リアルタイムで見ることはできません。2つの山の波(パルス波といいます)をマシンの両側から送っても、あっというまに通り過ぎるので、y=y1+y2の瞬間(プリントの一番上の波形)を見ることはむつかしいですね。ビデオに撮ってスロー再生するとか一時停止するとかしても、なかなか、わかりにくいです。

 

 ただ、2つの波が重なるちょうど真ん中の点の重ね合わせ結果だけは、普通の実験で見ることができます。山の波+山の波で、その点がより高い山になること、山の波+谷の波で、その点がゆれないことを見ればよいのです。これは、カンタンに確かめられます。

 

 また、「独立性」というのは、粒子と波の違いを理解する上で重要な概念なんですが、この言葉が登場するのは、おもに高校物理だけ。大学以上の教程で物理の波動分野を学んでも、この「独立性」という言葉はめったに出てきません。

 

 例えば、手もとにある『理化学事典』第4版には、「重ね合わせの原理」はありますが、「独立性」はありません。『バークレー物理学コース』や『ファインマン物理学』も同様です。これも、ひとつのナゾですね。

 

 光が波か粒子かというのが、初期の研究で問題になったことは、前にちょこっと書きました。それを区別する方法の一つが、この独立性に関係しています。

 

 例えば、ボールとボールを正面衝突させると、衝突した後、もと来た方向にはね返っていきます。でも、これが波と波だと、1.の(2)の図のように、お互いに衝突することなく、すりぬけるようにして、通り過ぎてしまいます。

 

 これに関わるオモシロ話は、いま作成中のマンガ『さりと量子の国』(このブログで連載予定です)で登場しますので、少々お待ちください。(あれこれ思いつくことが多い人間なので、いろんなことをやっています。けっこう時間がかかってしまうかもしれませんが笑)

 

 定常波については、たいていの教科書では、波の最初の方で出てくるので、それに合わせた内容にしてあります。現象的にはのちに学ぶ「干渉」の一種ですので、本当は干渉現象を学んでから扱いたい現象です。

 

 では、後半。

 

 

3.の問題は、定常波の問題でもっとも間違えやすい例題を扱いました。

 

 とりあえず、定常波の図が描けそうだという人は、チャレンジしてみてください。これがなかなか、うまくいかないんですね。

 なんとなく書くと、たいてい間違えます。

 

4.と5.は、波が反射するときのルールです。これ、カンタンそうに見えますが、なかなかどうして・・・かんたんに定常波の図は描けません。ぜひ、ためしてみてください。

 

 では、描き込みにうつります。

 

 

1,については、さきほどわりとくわしく説明しましたので、そちらをごらんください。あとは、描き込みを見ていただけるとよいでしょう。

(2)の問は、一度は自分で重ね合わせの練習としてやっておくべき問題です。といっても、2つの波の変位(yの値)を、正負に気をつけつつ、単純に足して、その値の場所に点を打っていくだけですけど。

 

2.については、やはりウェーブマシンでの実験実演がのぞましいですが、教室などしか使えない場合は、長いバネを持っていって、それで定常波を作って見せればじゅうぶんです。

 

 波動の分野は、習う側に波動の体験が足りないので、とにかくなんでもかんでも、実験してみるのが一番なんですね。教科書と板書だけの波の講義というのは、教える側の怠慢です。

 

(1)の最初のまとめは、あとで干渉条件につなげるように、腹、節の場所が、山と山とが出会う場所、山と谷とが出会う場所、という前振りをしています。のちに干渉を理解するとき、このことが非常に重要になってきます。

 

(2)(3)は描き込みの通りです。

 

 なお、定常波の図は、慣例的に、2.の一番下の図を簡略化した図で表すことになっています。次のようになっていますので、進行波と定常波をひとめで区別してください。

 

 

 ↓こう書いてあったら、進行波。

 ↓こう書いてあったら、定常波。

 

 本当は、ある瞬間の波形は、進行波も定常波も同じで、上の図になるのですが、定常波を進行波と区別して書く必要があるので、わざと下の図のように書くのですね。

 もちろん、上の図のように書いてあっても「定常波の図である」と書いてあれば、定常波です。

 

 では、後半の描き込みを見てみましょう。

 

 

3.の問題(1)の答、あっていたでしょうか?

 

 ↓こう答えてしまった人は、大間違い。

 

 ↓正解は、こうです。

 

 なんとなく図を描いてしまうと、上の図になってしまうんですね。こう答える人は、とても多いのです。

 これが大きな間違いというのは、2つの波源のちょうど真ん中の点を見ればわかります。

 

 この点は、2つの波源からの距離が等しいので、Aの波源から山の波が届いたとき、Bの波源からも山の波が届きます。つまり、山と山とが出会う点、つまり、腹になる点なんですね。最初の図では、真ん中は節になってしまっていますから、大間違いというわけです。

 

 定常波の図を描くときは、腹になる点や節になる点がどこか、まず探すのがポイントです。

 

 2つの波源があるときは、その中点はかならず腹になりますか。だから、定常波の図は、真ん中の腹から描くのが利口です。(もちろん、2つの波源が同位相といって、同じゆれ方をしているときのことですが)

 

(2)の答は、単純な計算ですので、描き込みを見てください。

 

4.と5.は、やはりウェーブマシンの実験を見ることが大切です。

 

 波の反射は、物体の跳ね返りとは根本的に異なる現象です。

 

 そもそも波は「壁に当たってはね返る」のではありません。

 

 波は「異なる媒質の境界面で反射する」のです。

 

 固定端は、そこから先は固定された棒が並んでいるのと同じですから、媒質が異なります。

 自由端は、そこから先はそもそもウェーブマシンがありませんから、やはり媒質が異なります。

 

 「境界面で反射する」ということを忘れてしまうと、のち、管楽器での音の反射を考えるときに、わからなくなってしまいますので、注意してください。

 

 さて、ここから先はテクニカルな面を理解できれば、さしあたってはじゅうぶんです。

 

 自由端と固定端、それぞれでの反射波の描き方を覚えましょう。

 

 ウェーブマシンで実験すれば(実験できないときを想定して、プリントにはかなり古い教科書から取った分解写真を載せてあります)、自由端では山の波がそのまま山の波として反射し、固定端では山の波が谷の波にひっくりかえって反射することがわかります。

 

 したがって、反射する点(図のP点)がないものとして、そのままP点の向こう側まですすんだ波を描いておいてから、P点より向こう側の波を、上の規則通りに、P点のこちら側に反射波として描きます。

 

 自由端反射の場合は、P点より向こう側の波を、山は山、谷は谷として、そのまま左右に折り返して描きます。→(a)図

 固定端反射の場合は、P点より向こう側の波を、まず山は谷、谷は山となるように上下をひっくりかえし、そのあと、左右に折り返して描きます。→(b)図

 

 あとは、入射波と反射波を重ね合わせの原理にしたがって、合成してください。その合成波が定常波となります。

 

 (a)(b)の図を見ると、自由端は大きくゆれる場所つまり腹に、固定端はゆれない場所つまり節になっていることがわかります。

 

 反射により定常波ができるときは、自由端は腹、固定端は節になることが明らかなのですから、反射する点から定常波の図を描けば、カンタンに描けますね。

 

 このポイントは描き込みプリントの最後に書いてありますので、そちらを見てください。

 

 これは、二三回練習すれば、身につきます。(このブログの講座公開では、原則として演習用のプリントの公開はしていませんので、みなさんがお持ちの問題集で演習してください)

 

 では、今回はこのへんで。

 

 

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