さりと魔法の国〜その2(小学生以上) | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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さり「魔法(まほう)の時代って、本当に魔法みたいなこと、できていたのかな」

れん「どんな時代だって、それはないわよ。できないことはできないんだから」

かのん「そっかなあ。ハリー・ポッターや・・・ええと、なんだっけ、ホビットが出てくる話」

しもん「トールキンの指輪物語(ゆびわものがたり)ですね。ぼく、読んだことあります。すごく長い話ですよ」

ひろじ「へえ、すごいな。ぼくはさいしょに文庫版(ぶんこばん)を読んだとき、字の小ささにびっくりして、めげそうになったよ」

しもん「ぼくが読んだのは、子どもでも読めるように字が大きくしてある、大きな本でした。図書館(としょかん)でかりたんです」

れん「しもんって、ノートにメモるばかりかと思ってたけど、ふつうに本も読むのね」

しもん「それはごかいですよ。まあ、たしかに、図書館ではしらべ物することが多いですけど」

かのん「そういえば、しもんって、あまりネットを使わないわね。スマホやパソコンでググれば、すぐにしらべ物できるのに」

 

かのん「ミオくんはなんでも知っているから、何もしらべなくてもいいんでしょ?」

ミオ「まあ、科学のことなら、だいたいはね。こまったら、この時計があるし」

さり「そのミオくんの時計って、なんでもできるよね。過去(かこ)に行ったり、ちがう世界へ行ったり」

れん「わたしたちとほかの国の人と、言葉(ことば)が通じるようにもしてくれるし」

しもん「スーパーコンピューターをもっとすごくしたようなものでしょうか」

かのん「それこそ、魔法みたいだよね」

ミオ「しつれいな。魔法なんかじゃない、科学だよ」

さり「むかしの人が見たら、科学も魔法みたいなものじゃないですか? スイッチひとつでぱっと光がついたり、炎(ほのお)が出たり・・・」

ミオ「まあ、じっさいに見てみれば、ちがいがわかると思うけど」

 

れん「魔法を見るって・・・どうやって?」

しもん「わかった! ガリレオさんの時代にいけばいい。地球が動いているって信じていなかったころ」

ミオ「うーん・・・どうかな」

さり「ガリレオさんが宗教裁判(しゅうきょうさいばん)にかけられたような時代でしょ? 科学時代じゃないですよね」

ひろじ「たしかに、法王(ほうおう)や教会(きょうかい)の人はガリレオが『星界の報告(せいかいのほうこく)』でコペルニクスの地動説(ちどうせつ)を支持(しじ)したことで、ガリレオを宗教裁判にかけたけど・・・」

れん「・・・けど?」

ひろじ「そのころ、キリスト教を世界中に広めるために教会から派遣(はけん)された人たちがいた。イエズス会の宣教師(せんきょうし)たちだ」

れん「宣教師なら、日本にも来たんでしょ。ドラマで見たわ」

ひろじ「中国に布教(ふきょう:教えを広めること)にいった宣教師たちは、一時期、ガリレオの望遠鏡(ぼうえんきょう)や地動説を中国につたえているんだ。ガリレオが宗教裁判にかけられるまえ、ガリレオはイエズス会の宣教師にとっては高名(こうめい)なヒーローで、中国への布教(ふきょう)に大いにやくだつと考えたんだ。『星界の報告』の本も、出版(しゅっぱん)されて数年(すうねん)で中国まで取りよせている」

 

さり「ええーっ、そうなの!」

れん「いがいね」

ひろじ「宣教師(せんきょうし)たちは本国のさまざまな発明品(はつめいひん)を見せることで、中国の権力者(けんりょくしゃ)に取り入り、布教(ふきょう)のたすけにしようとしたんだ。望遠鏡(ぼうえんきょう)は、権力者(けんりょくしゃ)が星占いを大事にした中国では、すごく強力な武器(ぶき)として歓迎(かんげい)されたんだって」

しもん「うーん、ぼくのノートに書いてきたメモにはない情報(じょうほう)です。メモメモ・・・」

ひろじ「やがて、本国でガリレオが宗教裁判(しゅうきょうさいばん)で有罪(ゆうざい)になったことが知らされると、宣教師たちは地動説(ちどうせつ)を広めるのははばかられると考えるようになった。中国人は自分たちの国が世界の中心だという中華思想(ちゅうかしそう)を信じていたから、大地、つまり地球が宇宙の中心だという方が受け入れられやすかったこともあるのかな」

かのん「日本は? 日本にも宣教師、来てるんだよね。さっき、れんがいってたじゃん」

ひろじ「日本は中国とはちがって、宗教的な障害(しょうがい)がなかった。イエズス会は中国でガリレオやコペルニクスのことを紹介(しょうかい)する本を印刷(いんさつ)したんだけど、それが日本にも伝わり、ニュートンと同じ年に生まれたといわれる関孝和(関孝和)が影響(えいきょう)をうけた。彼は、ニュートンとはまったく独立(どくりつ)して、独自(どくじ)の方法(ほうほう)で微積分(びせきぶん)を研究(けんきゅう)している」

 

かのん「そっかー、キリスト教の人はみんなガリレオやコペルニクスの敵(てき)だと思っていたけど、ぜんぜんちがってたのね」

ひろじ「当時の教会関係者でも、ガリレオの発見(はっけん)を支持(しじ)した人はけっこういたんだ。一説(いっせつ)によると、ガリレオが誤解(ごかい)を解(と)こうと法王(ほうおう)に送った手紙がかえって教会関係者を激怒(げきど)させたというよ。そもそも、時(とき)の法王は、ガリレオとは法王になる前からの知りあい、つまり旧知(きゅうち)の仲(なか)だったんだし」

さり「なにを書いたんです?」

ひろじ「キリスト教の教義(きょうぎ:おしえのこと)について持論(じろん)を書いてしまったんだ。地動説を論(ろん)じることはけっして聖書(せいしょ)の教義には矛盾(むじゅん)していないんだって。つまり、科学の問題を論(ろん)じているうちはおおめに見てもらっていたんだけど、宗教の問題に口を出したからゆるされなくなった、ということらしい」

しもん「また新事実(しんじじつ)が・・・メモメモ・・・」

ひろじ「法王は海の潮汐(ちょうせき)の問題では、ガリレオより正しい意見をいっているくらい、科学的なことにも関心(かんしん)を持っていた人だよ。ガリレオは地球のふくざつな運動が原因(げんいん)だと考えたけど、法王は月の影響(えいきょう)だと考えたんだ」

 

れん「科学か、宗教(しゅうきょう)かって、二つにわけて考えていたけど、そうじゃなかったということ?」

さり「あ、だから、魔法の時代っていいきれない・・・」

ミオ「うん、そうなんだ。教会は地動説(ちどうせつ)をとなえる人たちと対立して、弾圧(だんあつ)したけど、だからといって、科学的な思考方法まで否定(ひてい)したわけじゃない。当時のキリスト教の人たちの中には、科学の研究をする人も多くいた。コペルニクスさんはそもそも牧師(ぼくし)だし、ガリレオさんも信徒(しんと)だからね。ケプラーさんは・・・数学が神だっていうような、独特(どくとく)の神のイメージがあったみたいだけど」

かのん「でもさ、宗教裁判でガリレオが負けちゃって、科学の進歩(しんぽ)が止まっちゃったんだよね。やっぱり、魔法の時代だったんじゃない?」

ひろじ「ミオくん、そのころあったことを、みんなにかんたんに紹介(しょうかい)してあげて」

ミオ「ガリレオさんが宗教裁判にかけられたのが1633年で、自宅軟禁(じたくなんきん:家から出ないように命じられること)になってから『新科学対話(しんかがくたいわ)』などの本を書き、なくなったのが1642年。フランスでメルセンヌさんという修道士(しゅうどうし)がミニム修道院(しゅどういん)で科学者のあつまる場所を作ったのが宗教裁判のころ。ここにはガリレオ・ケプラーの地動説を信じる人も参加(さんか)していた。イギリスでメルセンヌさんに影響(えいきょう)をうけたドイツのオルデンブルクさんがイギリスでロイヤル・ソサイティー(王立学会おうりつきょうかい)を設立(せつりつ)したのが1660年。ニュートンさんが生まれたのが1642年で、運動の法則(ほうそく)や万有引力(ばんゆういんりょく)のアイディアを考えたのが1665年からの2年間だよ」

 

しもん「ええと、そうすると、ガリレオが宗教裁判(しゅうきょうさいばん)で負けて、三十年くらいで、ニュートンが万有引力(ばんゆういんりょく)の法則(ほうそく)を見つけていることに・・・!」

れん「ということは、もうそのころには、太陽の回りを地球が回っているということは、常識(じょうしき)になっていたのね!」

かのん「宗教裁判で負(ま)けたのに、あっという間に地動説が復活(ふっかつ)してる」

ひろじ「ガリレオやケプラーの発見は、教会の世界観(せかいかん)とはあいいれなかったけど、事実をつたえるものとして説得力(せっとくりょく)があったということじゃないかな。だから、教会関係者でも、科学的なことに感心のある人たちは、それが正しいことを見ぬいていた。それが、じょじょに広まり、いつの間にか常識になっていったんだよ」

さり「あっ!・・・科学的なものの考え方ができる人たちが、いっぱいいたってことです! だから、魔法の時代じゃない・・・」

 

れん「でも、長い間、天動説(てんどうせつ)が信じられてきたのに、有名な宗教裁判(しゅうきょうさいばん)が終わって、たった三十年で地動説が常識(じょうしき)になったなんて、どうしてかしら」

ひろじ「それはたぶん、ネットだよ。情報革命(じょうほうかくめい)」

さり「ウソ! ネットって、そんなむかしにはないでしょ」

ひろじ「それが、あるんだなあ」

しもん「いやあ、それはさすがにないでしょう。今ならメールでどんな遠くの人とでも連絡(れんらく)がとれますけど・・・あ!」

かのん「なに?」

しもん「メールって、どんな意味(いみ)でしたっけ」

れん「もともとの意味は、手紙でしょ・・・あっ」

さり「え? え?」

かのん「なんなの?」

ひろじ「そう、メールだよ。さっき、ミオくんが話した人たちの中に、メルセンヌ、オルデンブルクがいたよね。かれらは、科学の情報(じょうほう)を交換(こうかん)する場所を作ったんだ。そこに、おもだった国の科学者たちが手紙をよこして、さいしんの情報を交換した。大学がなくても、手紙だけで自分の研究を発表する場ができたんだ。これにより、新しい科学知識(ちしき)が、いまのインターネットのように広まっていった。この状況(じょうきょう)が、地動説をあっという間に復活(ふっかつ)させたんだろう」

 

さり「そうすると、ミオくんがいってた、魔法の世界って、どういうのなんだろう」

れん「科学的な考え方とか、科学的にものを調べる方法とかとは、違う考え方や方法を使う世界ってことかしら」

かのん「科学的って・・・えっと、どういうのが科学的だっけ」

しもん「ええと、それは・・・いざ、いうとなると、むつかしいですね」

れん「じゃ、科学的じゃないものは?」

かのん「そりゃ、星占いとか、妖精(ようせい)とか・・・」

しもん「日本だったら、血液型性格判断(けつえきがたせいかくはんだん)とか、大安仏滅(たいあんぶつめつ)とかですね」

さり「ナントカ水とか、ナントカイオンとか、ナントカストーンとかは?」

かのん「そういうのだったら、いっぱいあげられそう」

 

ミオ「わかってきたみたいだね。地動説(ちどうせつ)とか天動説(てんどうせつ)とかって言葉(ことば)じゃなく、どう現象(げんしょう)を理解(りかい)するか、それが科学的かどうかが問題だよ」

かのん「どういうのが科学的なのか、教えてよ」

ミオ「それは、また、こんどね。ぼく、魔法の国に行く準備(じゅんび)をしなくちゃいけないから」

さり「ええーーっ、それ、なんですか? 行くんですか?」

かのん「わたしも行きたい!」

しもん「ぼくもです」

れん「わたしも、興味(きょうみ)あるな」

ミオ「じゃ、そのときがきたら、ね」

 

その3につづく。

 

 

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