【映画】おと な り
年期の入ったアパート、壁が薄くて、音が筒抜けになってしまう。私もそんなところに住んだことはあるが、顔をほとんど見たこともないのに、なんだか隣の物音が聞こえると一人暮らしの心細さが和らいだという経験がある。映画「おと な り」はそんな感情との結びつきが高い音の記憶を題材にした物語だ。熊沢尚人作品には、「ニライカナイからの手紙」「虹の女神」など、繊細な心理描写を描いたものが多いが、今回の作品もそんな視点が伺える。ニライカナイでは「文章」、虹の女神では「映像」、そして今回のおと な りは「音」である。すべては人の記憶や思い出の要素になるものであり、情緒に作用する。主演の岡田准一、麻生久美子のキャスティングもよく、特に麻生久美子の感情的な演技はとても自然で良かった。(★★★★)