先日、定例句会を開催しました。五月の風は心地よく窓を開けていて気持ちのいいものです。
私たち「風薫」の由来は五月にあります。結成が五月でしたので「風薫」とし、当初は「かぜかほる」と呼んでいましたが、人から「フウクン」と呼ばれることが多く、そのまま字名のようになりました。今では自分たちも「フウクン」と名乗っています。風薫季節、植物、生きものいろいろに生命力を感じます。人も健やかにすべからく生きよという季節だと思います。
今月の兼題(テーマ)は、飛ぶ生きものや鳥などです。
高崎志朗
つがい飛ぶゆらりゆらりと甘き水
岩魚釣り腰のスプレー甲子高原
剣桂鎮まる森に夏光る
「熊注意」尚仁沢や夏木立
五月雨染みて染みてやふたり傘
相傘や吾が肩は濡れ五月雨
疋田 勇
母の日や洗濯板でデニム洗ふ
夏服の見切り発車の夜道かな
白玉を腹いつぱいに食べたきや
居合道甘味欲しかな水ようかん
山 多華子
五月闇鳥はかすみ森へいく
夏の雨葉っぱ揺らしてみずみずし
葉桜や川面の空も揺れており
ドクダミや開かずの扉群れて咲く
薄暑光浴衣と下駄を買い揃え
渡辺 健志
函館の桜見上ぐる先の塔ひとつ
歳三の生き様辿り星桜
吹き荒ぶ断崖泳ぐ鯉幟
天使の輪夕焼びたるつるし雲
駅前のホテルも見えぬ驟雨かな
夏の夕越後平野の田を染める
金色に溶ける夕陽の七変化
トビヘビや曲線描き空掴む
ひらひらとオーロラは揺れ蝦夷の夏
大竹 和音
てんとむしマイクロカメラ内蔵し
一人だけ作業着のまま鯉幟
怪獣の着ぐるみ重し生ビール
グリル板けづる深夜の氷水
前線の傭兵虚し流星群
燕の子迷子の羽田エアポート
囲まれたダチを遠目に青芒
小林 泰子
初夏やピヨピヨと啼く信号音
白鷺や空を切り裂き雲となり
蚊喰鳥8の字描いて夜を呼ぶ
白石 洋一
実らぬ花を愛でる人の浅はかさよ
猫庭先で死ぬ庭に葬る五年の命
蕨の味噌汁と玉ねぎの糠漬けと玄米
豆をミルで粉にし漉して啜る
波佐見焼人混みは観察日
平戸の教会人々の想いは
四月去り一升瓶八ワイン六ウイスキー三
トンビ舞う澄んだ空の滑り台
防火槽水面の湯気朝陽射す
プログレの音に過去の想い出響く
刈谷 見南國
甲へ乙へと母辿りけり時鳥
夏鶯ところ変へつつだべる旅
通学路小さくなりたり時鳥
スリッパあふるネカフェの廊下時鳥
編曲もやっぱ京平夏鶯
体育館と猪木の記憶時鳥
食べ忘る海苔ひと袋時鳥
缶余るチエツクアウトや夏燕
時鳥空港までのしづかな雨
福冨 陽子
鈴音のアオジ鳴く朝雲低し
あげは蝶産卵の葉々探し来る
尻尾なき蜥蜴敷居に横たはる
仙台や隅々までも夏人たち
干せぬまま箱に詰め込む絽紗着物
たまねぎの皮の虚しき薄帷子
夏薊雨降る朝に咲き始む
三味線の稽古終はれば夏の空
夏行より帰れぬ子らと思へば
じゃがいもの花